各国の電気事業(アジア)
フィリピン
2018年9月時点
主要指標
首 都 | マニラ |
面 積 | 29万9,404km2 |
人 口 | 1億324万人(2016年) |
GDP | 3,049億ドル(2016年) |
エネルギー資源 | 石油、石炭、天然ガス、地熱、水力、 |
企業形態 | 民営(MERALCOなど)・国営(NPC) |
発電設備容量 | 2,142万kW(2016年) |
発電電力量 | 908億kWh(2016年) |
販売電力量 | 742億kWh(2016年) |
電化率 | 88%(2016年) |
電気事業の企業形態
発 電: | 独立発電事業者(IPP)が中心。電力産業改革法(EPIRA)の施行によりフィリピン電力公社(NPC)は発電資産をIPPに売却中で、年々規模は縮小。 |
送 電: | 比・中合弁のNGCP社が事業を運営。 |
配 電: | マニラ電力会社(MERALCO)、ビサヤス配電会社(VECO)、ダバオ配電会社(DLPC)など250の民間電力会社と120の地方電化協同組合(EC)、及び8つの自治体が配電事業を実施。なお、最大の配電会社であるMERALCOの販売電力量は全国の約5割を占めている。 |
卸電力取引: | 卸電力スポット市場(WESM)がルソン地域(2006年6月より)、ビサヤス地域(2010年12月より)で運用開始。 |
電力需給動向
1.発電設備総発電設備量(2016年):2,142万kW。電源種別構成は、水力16.9%、石炭火力34.6%、石油火力16.9%、ガス火力16.0%、地熱9.0%、再生可能エネルギー6.6%。
<発電設備容量の推移> 単位:万kW
年 | 水力 | 石炭火力 | 石油火力 | ガス火力 | 地熱 | その他 再エネ | 合計 |
2012 | 352 | 557 | 307 | 286 | 185 | 15 | 1,703 |
2013 | 352 | 557 | 335 | 286 | 187 | 15 | 1,733 |
2014 | 354 | 571 | 348 | 286 | 192 | 44 | 1,794 |
2015 | 356 | 584 | 361 | 286 | 192 | 67 | 1,845 |
2016 | 362 | 742 | 362 | 343 | 192 | 142 | 2,142 |
2.発電電力量
発電電力量(2016年): | 908億kWh。電源別発電電力量:水力8.9%、石炭火力47.7%、ガス火力3.1%、石油火力(ディーゼル含む)6.2%、地熱12.2%、再生可能エネルギー0.4%。またNPCは遠隔地の小規模発電事業に特化しており、発電量は僅かである。 |
地域別構成: | ルソン地域73.2%、ビサヤス地域14.3%、ミンダナオ地域12.5%。 |
3.販売電力量
販売電力量(2016年): | 742億kWh。用途別構成は工業用32.5%、家庭用34.6%、商業用29.4%、その他3.6%。 |
電化率(2016年): | 88%。 |
電源開発動向
○ | エネルギー省が策定した「長期電力需給見通し(PDP)2016-2040年」において、2040年の最大電力需要は2015年比の約4倍に相当する4,929万kWと想定されている。地域別の最大電力および設備容量は下表のとおり。 |
○ | ただし上記PDPでは具体的な発電所名や建設地点は示されておらず、具体的な電源開発は民間事業者に委ねられている。 |
<地域別電源建設設備容量> 単位:万kW
地区 | ルソン系統 | ビサヤス系統 | ミンダナオ系統 | |||
最大電力 | 設備容量 | 最大電力 | 設備容量 | 最大電力 | 設備容量 | |
2016年実績 | 973 | 1,498 | 189 | 329 | 165 | 316 |
2040年想定 | 2,887 | 2,985 | 868 | 921 | 987 | 1,023 |
環境問題への取り組み等
○ | フィリピン政府の「気候変動委員会」(CCC)は具体的指針として、2010年に「気候変動国家枠組み戦略2010~2022年」(NFSCC2010-2022)を策定。また「国家気候変動行動計画2011~2028年」(NCCAP)の中で行動計画を提示。 |
○ | CCCは、エネルギーの効率向上や省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの開発、輸送部門におけるバイオ燃料の利用などを推進。CDMを活用した温室効果ガスの排出削減、新技術の導入なども進めている。 |
○ | 2015年、COP21パリ会議に先立ち、2015年10月1日に約束草案(INDC)を提出。2030年における温室効果ガス(GHG)排出を2000~2030年のBAUシナリオ想定(GHG排出削減のための対策を講じない場合)と比較して70%削減することを表明。 |
再生可能エネルギー開発動向
2008年: | 「再生可能エネルギー法(Renewable Energy Act)」が成立。同法の目的は、再生可能エネルギーの調査・開発および利用を通してエネルギー自給を達成するために再生可能エネルギーの開発を促進すること、財政的・非財政的な優遇措置の実施による効果的な利用および広範囲な商業的利用を促進することにより、再生可能エネルギーを増大させることなどである。 |
2010年: | 「エネルギー規制委員会」(ERC)は、再生可能エネルギー事業における固定価格買取制度(FIT)の運用に必要な骨格を公布。 |
2012年7月: | 買取価格を発表。 |
エネルギー省策定の: エネルギー計画(PEP) |
再生可能エネルギーを2030年までに、2010年時点の3倍にあたる1523.6万kWにすることを目標に挙げている。 |
原子力開発動向
1973年: | 第1次石油ショックを受けて、将来のエネルギー供給に強い危機感を抱いた当時のマルコス大統領が、バターン州にあるバターン原子力発電所(BNPP、PWR炉/出力62万kW)の建設を決定。 |
1986年: | バターン原子力発電所は完成後に4,000カ所以上の欠陥が見つかるなど、安全性に重大な懸念が判明。マルコス政権を倒したコラソン・アキノ大統領が閉鎖を決定。 |
2016年6月: | ドゥテルテ新政権が発足。再稼働に向けた作業に着手することを承認したが、その後に大きな動きは見られていない。 |
バターン原子力発電所の設備は一度も燃料装荷していないため、 防護服なしで間近まで接近して見学できる特殊観光スポットとなっている。 |