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各国の電気事業(アジア)
 

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タ イ

ベトナム

マレーシア


ベトナム
2021年10月時点

主要指標

首 都 ハノイ
面 積 32万9,241km2
人 口 9,762万人(2020年)
G D P 3,406億米ドル(2020年)
エネルギー資源 石炭、石油、水力、天然ガス、太陽光
企業形態 国有(ベトナム電力グループEVN)
発電設備容量 6,926万kW(2020年)
発電電力量 2,471億kWh(2020年)
販売電力量 2,170億kWh(2020年)
電 化 率 99.26%(2020年)

電気事業の企業形態

電気事業者 発送配電を一貫して運用する国営企業として1995年にベトナム電力グループ(EVN)設立し、発電会社、給電指令所、送電会社、配電会社などを保有・管理。
発電分野 民間(国内IPP、外資BOT)も参入。またGENCOの民営化を予定し、2018年2月にGENCO3株式、2021年2月にGENCO2株式の一部が市場に放出された。GENCO1は株式放出を準備中(2021年6月時点)。
電気料金 全国一律。

発 電 EVN (国営) EVN GENCO1-3 ( JST ) *GENCO1は民営化準備中 IPP,BOT PetroVietnam Vinacomin等 給 電 EVN直轄企業 Electric Power Trading Company (EPTC) EVN直轄企業 National Load Dispatching Center (NLDC) 送 電 EVN独立採算企業 National Power Transmission Corporation (NPTC) 配 電 EVN独立採算企業 5 Power Companies (Northern, Central, Southern, Hanoi and Ho Chi Minh City) 小 売 コミューン事業者 Load Distribution Unit(LDU) 需 要 家

電力需給


発電設備

電源別の発電設備容量(2020年)
単位:万kW
  水 力 石 炭 石油・ガス 再エネ 輸 入* 合 計
設備容量 2,068.5 2,043.1 903.0 1,784.0 127.2 6,925.8
(%) (30) (30) (13) (26) (2) (100)
注)「輸入」はラオス国内にある水力。


事業者別の発電設備容量(2020年)
単位:万kW
  EVN PVN Vinacomin BOT/IPP その他 合 計
設備容量 3,116.6 415.5 207.8 3,116.6 69.3 6,925.8
(%) (45) (6) (3) (45) (1) (100)
注)事業者別の容量は比率より算出した値。

発電電力量
総発電電力量(2020年):2,471億kWh。内訳は、水力30%、石炭50%、石油ガス火力15%、再エネ5%、その他1%となっている。

販売電力量
EVNの販売電力量:2,169億kWh(2020年)。産業用54%、家庭用34%。この割合には近年大きな変化が見られないが、販売電力量は過去10年以上にわたって前年比約10%増で推移している。
最大電力は例年6~7月に記録しており、2021年6月時点の最大電力は4,214.6万kWであった(2020年は3,861.7万kW、2019年は3,824.9万kW)。

電源開発


国家エネルギー開発戦略の方向性
2020年2月、国家最高権力者であるグエン・フー・チョン共産党書記長兼国家主席(当時)は「ベトナムの2030年までの国家エネルギー開発の戦略的方向性」を発表。エネルギー政策の最上位に位置付けられており、下位に当たる各種戦略およびマスタープランは本方向性に沿って策定される。

「ベトナムの2030年までの国家エネルギー開発の戦略的方向性」における開発目標*1
目 標 現 在 2030年まで 2045年構想
一次エネルギー供給量
(単位:石油換算トン)
7,818.3万
(IEA 2017年値)
1.79億~1.95億 3.2億~3.5億
総発電設備容量
(万kW)
4,857.3
(EVN 2018年末値)
12,500~13,000 (言及なし)
総発電電力量
(億kWh)
2,123
(EVN 2018年末値)
5,500~6,000 (言及なし)
再エネ比率*2 N/A 15~20% 25~30%
最終エネルギー消費量
(石油換算トン)
6,405.3万 1.05億~1.15億 1.6億~1.9億
電力供給信頼度 N/A ASEAN加盟国 第4位 ASEAN加盟国 第3位
注)*1 本表はPDP8第3次草案(改訂中)からの引用である。
  *2 再エネ比率:一次エネルギー総供給量に占める再エネのシェア

(優先事業)
(1) 迅速なエネルギー開発と持続可能なエネルギー開発
(2) 総合的・競争的かつ透明性の高いエネルギー市場の早期導入
(3) 電気事業者の所有形態の多様化
(4) 電気事業体制の再編


「第8次電力マスタープラン(PDP8)」(2021年10月首相提案中)(2021年12月改定中)
PDP8は、(1)安定供給、(2)電源開発および系統開発の効率性、(3)エネルギー多様化が主眼。また、具体的に石炭火力削減、LNG火力の開発、輸入増を明示。
現地では2021年内に首相決定を行い、発効予定とされている COP26におけるベトナム国の2050年までのカーボンニュートラル宣言を踏まえ、PDP8を再度見直している(2021年12月時点)。
単位:MW
  2020
(現状)
2025 2030 2035 2040 2045

石炭火力(国内炭) 14,281 16,841 16,961 17,451 16,391 14,726
石炭火力(輸入炭) 6,150 12,682 20,362 26,392 31,992 35,192




ガス火力(国産ガス) 7,097 9,054 10,636 7,900 7,900 7,900
ガス火力(国産ガス⇒LNGに切替) 0 803 4,147 4,569 4,104 4,854
LNG火力 0 2,700 12,550 27,650 32,900 38,150
機動性の高いLNG火力(内燃エンジン) 0 600 1,400 4,900 10,800 15,600
石油火力 1,933 898 138 0 0 0

水 力 17,085 19,697 19,792 19,792 19,792 19,792
小水力(30MW未満) 3,600 4,800 5,000 5,300 5,500 5,900


風力発電 630 11,320 16,010 23,110 30,910 39,610
洋上風力* 0 0 2,000 9,000 15,000 21,000
太陽光発電 16,640 17,240 18,640 30,290 42,340 55,090
バイオマス、その他再エネ 570 2,050 3,150 3,860 4,510 5,310

揚水および蓄電池 0 0 1,200 4,500 6,000 7,800

中国からの輸入 700 700 700 700 700 700
ラオスからの輸入 572 2,808 4,977 4,977 4,977 4,977
注)「輸入」はラオス国内にある水力。

中南沿岸部におけるニントゥアン原子力発電所計画白紙撤回:2016年10月
国内初となるニントゥアン原子力発電所建設計画が進行し、日本の関連各社・施設にもベトナムから多数の研修生が来日していたが、2016年11月末にロシアおよび日本建設分ともに国会で白紙撤回案が可決。
撤回の理由は (1)経済性(コスト高)、(2)需要想定の下方修正、(3)財政難を挙げている。

自然災害、異常気象
ベトナムは、世界で最も災害が起こりやすい国のひとつ(WHO)。3,440kmに及ぶ海岸線と複雑な地形があり、気象災害(台風、洪水、豪雨、干ばつなど)と物理災害(地滑りなど)のリスクを持つ。沿岸部や低地のデルタ地帯に住む人口の約70%が洪水のリスクにさらされていると推定。
商工省(MOIT)はEVNに「防災・制御の安全性確保」を指示。
 - 雨季・洪水シーズンにおける電力供給の安全性の確保。
 - 送変電設備の安全性を定期的に点検・評価。
 - ダム、洪吐設備、工事、取水口などの状態を点検・評価し、雨季・洪水シーズンが訪れる前に保修。
 - 災害対応計画を見直し、緊急事態に対応するための計画などを補足。

新型コロナへの対応
MOITはEVNに対し、医療施設・家庭用などの電気料金減免を指示。2020年~2021年にかけて4回の料金施策を導入した。第5回(2021年9~11月)の実施について、EVNよりMOITへ提案中(2021年10月時点)。
 - 第1回(2020年4~6月): 9兆3000億VND(約445億円)の削減を実施
 - 第2回(同10~12月):3兆VND(約144億円)の削減を実施
 - 第3回(2021年6~12月):1兆5,000億VND(約72億円)の削減見通し
 - 第4回(2021年, 家庭用:8~9月、医療施設:6~12月):2兆5,000億VND(約120億円)の削減見通し

地球環境問題への取組み状況


カーボンニュートラル、脱炭素・低炭素化
2021年10月、グリーン成長戦略を策定。
- 同戦略では、カーボンニュートラルな経済社会を実現するための目標が設定されており、2050年までにGDPあたりのGHG排出原単位を2014年比で30%以上削減するよう努め、各期間(10年間)の平均GDPあたりの一次エネルギー消費量を年当たり1.0%削減するとしている。
- 具体的には、一次エネルギー総供給量に占める再エネ比率を25~30%に、デジタル経済をGDP比50%に高め、森林被覆率を42~43%で維持し、灌漑農作物総面積の60%以上において先進節水型の灌漑を適用するとしている。
脱炭素・低炭素化に向けて、エネルギー分野がGHG排出量削減の中心となっている。政府は再エネ開発に注力しているが、ここ1~2年で急激な伸びを見せる太陽光発電には懸念の声も上がっている。中南部では太陽光開発が集中したことで送電網の整備が間に合わず、出力抑制が必要となる事態が起きている。
- 変動型再エネの導入量増加に伴い、調整電源の確保が必要となる。PDP8第3次草案では、環境負荷の大きい石炭火力の新規開発を抑制する一方で、CO2排出量の少ないLNG火力を拡大する方針を示している。

環境保護
改正環境保護法は環境保護(大気、水、土壌、海洋等)を目的とする法律であり、2020年11月に国会承認、2022年1月より発効予定。
- 2016年4月、フォルモサ製鉄所が試運転期間中に未処理の廃水を海に流した ことによる魚大量死が北中部ハティン省とその周辺の2省において発生。天然資源環境省(MONRE)を始めとして政府側に環境保全の重要性を改めて認識させる機会となり、それ以降、環境保全に向けた政府方針を強化。
気候変動について、気候変動適応を定義し(第90条)、MONREが中心となり適応計画を作成していくこととなった。またGHGを定義し、これらの排出削減に向けて、MONREがMRV(Monitoring, Report, Verification)を推進することを明記。さらに、国内炭素市場の構築を目指すことも規定されているが、責任機関含めて今後検討される状況である。
環境パフォーマンス指数(EPI)でベトナムは大気汚染と生物多様性保護の観点から世界180カ国中141位(2019年)となっており、2大都市であるハノイ市とホーチミン市は、東南アジアで最も汚染された都市のトップ15に入っている。
MONREによると、都市部の大気汚染の主な原因は、交通セクター、産業活動、建設業、農業・手工業、不十分な廃棄物管理とされている。

パリ協定関連
2020年7月改定のベトナムの「国が決定する貢献」(NDC:Nationally Determined Contribution)では、追加の気候変動対策を実施しなかった場合と比べて、2030年までのGHG排出量を国内の自助努力で9%削減するとの目標を定めた。併せて、二国間クレジット(JCM)を含む国際支援を加えた削減目標を27%に上方修正した。
JCM実証事業(経済産業省、2021年6月時点)は以下の3件。
- 国立病院の省エネ・環境改善(三菱電機)
- BEMS開発によるホテル省エネ(日比谷総合設備)
- 漁船用特殊LED照明導入(スタンレー電気)
上記のプロジェクトはすべて終了し、JCMクレジットを発行。
JCM資金支援事業(環境省、2021年6月時点)は32件。

再エネ導入
2050年までを見据えた再エネ開発戦略(2015年11月承認):オフグリッド地域における地方電化の推進、持続可能な環境の開発、GHG排出の抑制、化石燃料(エネルギー利用)の輸入量低減、気候変動といった環境負荷を下げることで持続可能な社会経済の開発に取り組む方針。
固定価格買取制度(FIT):2011年に風力発電に対しFITが導入され、その後FITの対象が順次拡大した結果、現在は以下の通りとなっている(適用価格は現行または直近の旧価格を掲載)。募集期間の定められた太陽光・風力の導入量が急拡大した。なお、小水力向けには回避可能原価ベースの価格が適用されている。
FIT制度は今後、入札制度(リバースオークション)に移行する見通し。
  適用価格
(セント/kWh)
FIT制度導入時期
またはFIT募集期間
風 力 陸上風力 8.50 (旧)2011年8月20日導入
(旧)2018年11月1日~2021年11月1日までに運開
洋上風力 9.80
廃棄物 焼却ごみ 10.05 (現)2014年6月20日導入
埋め立てガス 7.28
バイオマス コジェネ利用 7.03 (旧)2014年5月10日導入
(現)2020年4月25日導入
その他 8.47
太陽光 陸 上 7.09 (旧)2017年6月1日~2019年6月末までに運開
(旧)2019年7月1日~2020年12月末までに運開
水 上 7.69
屋根置き 8.38
注)「料金支払は、米ドル建てでのベトナム・ドン払い。
   買取期間はいずれも20年間。



※ 2021年10月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。

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