ベトナム |
主要指標
首 都 | ハノイ |
面 積 | 33万1,317km2 |
人 口 | 9,818万人(2022年) |
G D P | 3,662億米ドル(2021年) |
企業形態 | 国有(ベトナム電力グループEVN) |
発電設備容量 | 8,070万kW(2022年) |
発電電力量 | 2,724億kWh(2022年) |
販売電力量 | 2,170億kWh(2020年) |
電 化 率 | 99.26%(2020年) |
電気事業の企業形態
電気事業者 | 発送配電を一貫して運用する国営企業として1995年にベトナム電力グループ(EVN)が設立され、発電会社、給電指令所、送電会社、配電会社などを保有・管理。 |
発電分野 | 民間(国内IPP、外資BOT)も参入。またGENCOの民営化を予定し、2018年2月にGENCO3株式、2021年2月にGENCO2株式の一部が市場に放出された。GENCO1は株式放出を準備中(2023年4月時点)。 |
電気料金 | 全国一律。 |
電力需給
電源別の発電設備容量(2022年)
水 力 | 石 炭 | 石油・ガス | 再エネ | 輸 入*1 | 合 計 |
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2,299.9 | 2,608.7 | 902.5 | 2,202.2 | 57.2 | 8,070.4 |
事業者別の発電設備占有率(2020年)
EVN | PVN | Vinacomin | BOT/IPP | その他 | 合 計 |
---|---|---|---|---|---|
45 | 6 | 3 | 45 | 1 | 100 |
総発電電力量(2022年):2,724億kWh。
内訳は水力35%、石炭39%、石油ガス火力13%、再エネ13%となっている。
EVNの販売電力量:2,169億kWh(2020年)。
産業用54%、家庭用34%。この割合には近年大きな変化が見られないが、販売電力量は過去10年以上にわたって前年比約10%増で推移している。
最大電力は例年6~7月に記録しており、2021年6月時点の最大電力は4,214.6万kWであった(2020年は3,861.7万kW、2019年は3,824.9万kW)。
電源開発
〇 | 2020年2月、国家最高権力者であるグエン・フー・チョン共産党書記長兼国家主席(当時)は「ベトナムの2030年までの国家エネルギー開発の戦略的方向性」を発表。エネルギー政策の最上位に位置付けられており、下位に当たる各種戦略およびマスタープランは本方向性に沿って策定される。 |
「ベトナムの2030年までの国家エネルギー開発の戦略的方向性」における開発目標 | |||
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目 標 | 現 在 | 2030年まで | 2045年構想 |
一次エネルギー供給量 (単位:石油換算トン) |
7,818.3万 (IEA 2017年値) |
1.79億~1.95億 | 3.2億~3.5億 |
総発電設備容量 (万kW) |
4,857.3 (EVN 2018年末値) |
12,500~13,000 | (言及なし) |
総発電電力量 (億kWh) |
2,123 (EVN 2018年末値) |
5,500~6,000 | (言及なし) |
再エネ比率*1 | N/A | 15~20% | 25~30% |
最終エネルギー消費量 (石油換算トン) |
6,405.3万 | 1.05億~1.15億 | 1.6億~1.9億 |
電力供給信頼度 | N/A | ASEAN加盟国 第4位 | ASEAN加盟国 第3位 |
(優先事業)
(1) 迅速なエネルギー開発と持続可能なエネルギー開発
(2) 総合的・競争的かつ透明性の高いエネルギー市場の早期導入
(3) 電気事業者の所有形態の多様化
(4) 電気事業体制の再編
PDP8は、(1)安定供給、(2)電源開発および系統開発の効率性、(3)エネルギー多様化が主眼。また、具体的に石炭火力削減、LNG火力の開発、輸入増を明示。
当初は2020年内に首相決定を経て発効予定とされていたが、COP26におけるベトナム国の2050年までのカーボンニュートラル宣言を踏まえ見直しを行い、2023年5月に正式決定・公表された。
PDP8による電源構成見通し | ||
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単位:万kW | ||
2030年 | 2050年 | |
石炭火力 | 3,012.7 | 0 |
(バイオマス・アンモニアへの転換) | - | 2,563.2~3,243.2 |
国産天然ガス火力 | 1,493.0 | 1,493.0 |
(LNGへの転換) | - | 7,900 |
(水素への転換) | - | 703.0 |
LNG火力 | 2,240.0 | 2,090.0~2,990.0 |
(水素混焼) | - | 450.0~900.0 |
(水素への転換) | - | 1,640.0~2090.0 |
陸上風力 | 2,188.0 | 6,005.0~7,705.0 |
洋上風力 | 600.0 | 7,000.0~9,150.0 |
太陽光 | 1,283.6 | 16,859.4~18,929.4 |
バイオマス | 227.0 | 601.5 |
水 力 | 2,934.6 | 3,601.6 |
揚 水 | 240.0 | - |
蓄電池 | 30.0 | 3,065.0~4,555.0 |
排 熱 | 270.0 | 450.0 |
その他 | 300 | 30,900~46,200 |
電力輸入 | 500.0 | 1,104.2 |
合 計 | 1,5048.9 | 47,922.9~58,442.9 |
国内初となるニントゥアン原子力発電所建設計画が進行し、日本の関連各社・施設にもベトナムから多数の研修生が来日していたが、2016年11月末にロシアおよび日本建設分ともに国会で白紙撤回案が可決。
撤回の理由は (1)経済性(コスト高)、(2)需要想定の下方修正、(3)財政難を挙げている。
ベトナムは、世界で最も災害が起こりやすい国のひとつ(WHO)。3,440kmに及ぶ海岸線と複雑な地形があり、気象災害(台風、洪水、豪雨、干ばつなど)と物理災害(地滑りなど)のリスクを持つ。沿岸部や低地のデルタ地帯に住む人口の約70%が洪水のリスクにさらされていると推定。
商工省(MOIT)はEVNに「防災・制御の安全性確保」を指示。
地球環境問題への取組み状況
2021年10月、グリーン成長戦略を策定。
- 同戦略では、カーボンニュートラルな経済社会を実現するための目標が設定されており、2050年までにGDPあたりのGHG排出原単位を2014年比で30%以上削減するよう努め、各期間(10年間)の平均GDPあたりの一次エネルギー消費量を年当たり1.0%削減するとしている。
- 具体的には、一次エネルギー総供給量に占める再エネ比率を25~30%に、デジタル経済をGDP比50%に高め、森林被覆率を42~43%で維持し、灌漑農作物総面積の60%以上において先進節水型の灌漑を適用するとしている。
脱炭素・低炭素化に向けて、エネルギー分野がGHG排出量削減の中心となっている。政府は再エネ開発に注力しているが、ここ1~2年で急激な伸びを見せる太陽光発電には懸念の声も上がっている。中南部では太陽光開発が集中したことで送電網の整備が間に合わず、出力抑制が必要となる事態が起きている。
- 変動型再エネの導入量増加に伴い、調整電源の確保が必要となる。PDP8第3次草案では、環境負荷の大きい石炭火力の新規開発を抑制する一方で、CO2排出量の少ないLNG火力を拡大する方針を示している。
改正環境保護法は環境保護(大気、水、土壌、海洋等)を目的とする法律であり、2020年11月に国会承認、2022年1月より発効予定。
- 2016年4月、フォルモサ製鉄所が試運転期間中に未処理の廃水を海に流したことによる魚大量死が北中部ハティン省とその周辺の2省において発生。天然資源環境省(MONRE)を始めとして政府側に環境保全の重要性を改めて認識させる機会となり、それ以降、環境保全に向けた政府方針を強化。
気候変動について、気候変動適応を定義し(第90条)、MONREが中心となり適応計画を作成していくこととなった。またGHGを定義し、これらの排出削減に向けて、MONREがMRV(Monitoring, Report, Verification)を推進することを明記。さらに、国内炭素市場の構築を目指すことも規定されているが、責任機関含めて今後検討される状況である。
環境パフォーマンス指数(EPI)でベトナムは大気汚染と生物多様性保護の観点から世界180カ国中141位(2019年)となっており、2大都市であるハノイ市とホーチミン市は、東南アジアで最も汚染された都市のトップ15に入っている。
MONREによると、都市部の大気汚染の主な原因は、交通セクター、産業活動、建設業、農業・手工業、不十分な廃棄物管理とされている。
2020年7月改定のベトナムの「国が決定する貢献」(NDC:Nationally Determined Contribution)では、追加の気候変動対策を実施しなかった場合と比べて、2030年までのGHG排出量を国内の自助努力で9%削減するとの目標を定めた。併せて、二国間クレジット(JCM)を含む国際支援を加えた削減目標を27%に上方修正した。
JCM実証事業(経済産業省、2021年6月時点)は以下の3件。
- 国立病院の省エネ・環境改善(三菱電機)
- BEMS開発によるホテル省エネ(日比谷総合設備)
- 漁船用特殊LED照明導入(スタンレー電気)
上記のプロジェクトはすべて終了し、JCMクレジットを発行。
JCM資金支援事業(環境省、2021年6月時点)は32件。
2050年までを見据えた再エネ開発戦略(2015年11月承認):オフグリッド地域における地方電化の推進、持続可能な環境の開発、GHG排出の抑制、化石燃料(エネルギー利用)の輸入量低減、気候変動といった環境負荷を下げることで持続可能な社会経済の開発に取り組む方針。
固定価格買取制度(FIT):2011年に風力発電に対しFITが導入され、その後FITの対象が順次拡大した結果、以下の通りとなった(適用価格は現行または直近の旧価格を掲載)。募集期間が定められた太陽光・風力の導入量が急拡大したが、運開が間に合わなかった太陽光・風力開発プロジェクトが84件ある。これらのプロジェクトについて、政府はEVNに対し、新たな固定価格で買取るように指示しているが、EVNが提示している価格が低いことから、事業者との合意が難航している。
FIT制度は今後、入札制度(リバースオークション)に移行する見通し。
適用価格 (セント/kWh) | FIT制度導入時期 またはFIT募集期間 |
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風 力 | 陸上風力 | 8.50 | (旧)2011年8月20日導入 (旧)2018年11月1日~2021年11月1日までに運開 |
洋上風力 | 9.80 | ||
廃棄物 | 焼却ごみ | 10.05 | (現)2014年6月20日導入 |
埋め立てガス | 7.28 | ||
バイオマス | コジェネ利用 | 7.03 | (旧)2014年5月10日導入 (現)2020年4月25日導入 |
その他 | 8.47 | ||
太陽光 | 陸 上 | 7.09 | (旧)2017年6月1日~2019年6月末までに運開 (旧)2019年7月1日~2020年12月末までに運開 |
水 上 | 7.69 | ||
屋根置き | 8.38 |
買取期間はいずれも20年間。
2022年度のEVNグループの赤字は、燃料費高騰などの影響により31兆ドン(約1,774億円)となった。EVNは、燃料費高騰による逆ざやを解消するため、早期の料金引き上げを求めているが、大幅な引き上げは景気減速下の物価上昇に拍車をかけかねないため、承認を進める商工省など政府の判断が焦点となっている。
電気料金が据え置かれた場合、5月末までにEVN本体の資金は底を突き、22~23年の赤字は計93兆ドン(約5,321億円)を超えるとされている。
電気料金を5~10%引き上げる場合は商工省、10%以上であれば首相の承認が必要となるが、ファム・ミン・チン首相は大幅な値上げに消極的な姿勢を見せている。
※ 2023年5月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。