ホーム > データ集 > 各国の電気事業(アジア) >タイ

 


タイ
2023年5月時点

主要指標

首 都 バンコク
面 積 51万3,140km2
人 口 7,169万人(2022年)
G D P 4,952億米ドル(2022年)
企業形態 国有(EGAT、MEA、PEA)
発電設備容量 4,286万kW(2022年)
発電電力量 2,158億kWh(2022年)
消費電力量 1,973億kWh(2022年)
電 化 率 100%
※非対応ブラウザにつき地図が読み込めません。※

電気事業の企業形態

シングル・バイヤー制の下、タイ発電公社(EGAT)が自社の発電とIPPや近隣諸国からの電力購入によって、首都圏配電公社(MEA)と地方配電公社(PEA)、および大口需要家に電力供給。なお、MEAは首都圏で、PEAはその他の地域で配電及び小売事業を独占的に行っている。

9万kW以下の小規模発電事業者(SPP:Small Power Producer)はEGATへの売電だけでなく、需要家への直接供給も認められている。2022年の総発電設備容量は、IPPが約1,675万kW、SPPが約920万kW。

2002年には再生可能エネルギーの開発を促進するため、売電容量1,000kW以下(後に1万kW以下およびコジェネ発電まで範囲を拡大)の極小規模発電事業者(VSPP:Very Small Power Producer)の参入を許可。


発 電 VSPP EGAT IPP* SPP 自家発 送 電 EGAT 配 電 MEA PEA (余剰電力) 小 売 需 要 家

*IPPはEGATの関連会社を含む

電力需給


設備容量(2022年)

※VSPPの設備は本表には含まない
  発電種別 設備容量(万kW)
EGAT 汽 力 368.7
コンバインドサイクル 908.6
再生可能エネルギー(水力含む) 311.7
ディーゼル 3.0
その他 100.0
国内発電事業者 IPP 1,674.9
SPP 919.5
輸入等 623.5
合 計 4,909.9


発電電力量

発電電力量(2022年):約2,158億kWh、前年比2.9%増。

1994年まではEGATが国内発電電力量のほぼ全量を賄っていたが、発電市場の開放によりシェアは減少し、2003年以降は50%未満に低下。

電力輸入量(2022年):354.72億kWh(ラオス、マレーシア)。

電力輸出量(2022年):20.62億kWh(ラオス、カンボジア、マレーシア)。



国内発電電力量の推移(発電事業者別)
単位:100万kWh
  EGAT IPP SPP VSPP 合 計
2018 64,326 54,285 48,684 10,463 177,759
2019 65,218 55,152 54,629 11,504 186,503
2020 66,490 45,269 53,467 11,259 176,473
2021 64,773 52,695 50,962 11,922 176,360


消費電力量
消費電力量(2022年): 約1,973億kWh、2022年は前年比2.9%増。
用途別比率(2022年): 工業用が44.9%と一番多く、次いで家庭用27.2%、商業用23.4%。


用途別消費電力量
単位:100万kWh
  住宅用 商業用 工業用 公共用 農業用 その他 合 計
2015 41,286 42,466 83,984 179 387 6,532 174,833
2019 49,202 49,128 86,104 211 468 7,847 192,960
2020 52,860 43,950 82,158 204 417 7,458 187,046
2021 54,290 41,529 86,427 201 398 7,623 190,468
2022 53,747 46,097 88,574 216 335 8,287 197,256

電源開発


電源開発計画(PDP=Power Development Plan)は3~5年毎に大改訂されており、現在の最新版は2020年10月に策定された2018年~2037年を対象とするPDP2018R1(前回の電源開発計画は2019年4月策定のPDP2018)。主なポイントは以下のとおり。

1. 2018年~2037年の年平均GDP成長率を3.8%、電力需要の年平均伸び率を3.0%と想定。最大需要電力は、2018年時点の3,410万kWから2037年には約6,200万kWまで達する見通し。
2. 2037年における発電設備容量は7,721万kW。その構成比は、天然ガス41%、石炭・褐炭7%、再生可能エネルギー36%、輸入9%。
3. 新規電源設備:2037年までに5,643万kWを開発する計画。
4. 再生可能エネルギー:2037年までに新規電源設備の37%を占める2,077万kWを計画(太陽光1,147万kW、風力149万kW、バイオガス40万kW、バイオマス290万kW、ごみ発電198万kW)。
5. 原子力:PDP2015では導入が計画されていたが、PDP2018以降記載なし。

電気事業再編動向

~1980年代

EGAT(1969年設立)が全国の発送電や他国との電力融通を、MEA(1958年設立)とPEA(1960年設立)が供給エリア内の配電・小売を、それぞれ独占的に実施。

1990年代

公営企業の事業再編が進められ、電気事業においても1992年に具体的な民営化計画が策定され、1996年までに電力3公社を分社化し完全に民営化を計画。

1992年以降、100%外資の「独立系発電事業者」(IPP)や9万kW以下の「小規模発電事業者」が発電分野へ参入することが認められた。

これを受け、EGATは全額出資のIPP子会社として、1992年にEGCO社、2000年にRATCH社を設立。この2社は、EGATから買い取った既設発電所の運営、EGATへの売電を行っているほか、海外のIPP事業や国内のIPP・SPP事業へも参画。

電力3社の民営化は進展なし。

2000年

閣議で自由化を段階的に実施し、最終的には小売供給を自由化するとともに電力プールシステムを導入することを決定。

2003年

米国加州の電力危機の教訓から、政府は電力プールシステム導入による事業再編を放棄し、12月の閣議で、EGATを唯一の電力購入者とするシングル・バイヤー制の導入と独立規制機関の設立を決定。

EGATについて、タクシン首相(当時)は組織再編せずに民営化する方針(発電と送電は会計分離のみ)。しかし、雇用不安を理由に労働組合が株式会社化に猛反対したため計画は大幅に遅延。

2005
 ~2006年

政府がEGATの賃上げ要求を承認したことなどにより、EGATの株式会社化が合意に達し、6月には株式会社化を実施。

しかし、電気料金値上げに対する反感、手続きの不透明性等の理由で、市民団体などは、民営化差し止めを請求。これを受けた最高行政裁判所は、2006年3月、上場差し止めと組織転換を命令し、EGATの民営化は中止。現在、EGATは公社体制に復帰。

電力安定供給に向けた取組み


自然災害、異常気象対策

タイにおける雨季は6月から10月の期間で、年間降雨量の約80%が集中している。そのため、モンスーンやサイクロンによる豪雨は流域内で大量の流水をもたらし度々、洪水が発生している。洪水は同国における自然災害の中で最も深刻な災害である。

2018年、EGATが保有するダムのリアルタイムな水位状況を把握するために、水位監視センターを開設した。国家水資源局と調整し、適切な水量管理が可能。


環境問題への取組み等


カーボンニュートラル、脱炭素・低炭素化

2015年:パリで開催されたCOP21において、約束草案(INDC)を提出し、2030年目標としてBAUシナリオに対しGHG排出量20~25%削減を公表。

2021年:「国家エネルギー計画枠組み」を承認し、2065年から2070年までに、クリーンエネルギーへの段階的移行とカーボンニュートラル達成を目指すことを宣言。低炭素経済・社会の実現に向け、エネルギー分野で以下の取り組みを推進する。
(1) 再エネ発電比率を50%以上にする。
(2) 最新技術を使って、エネルギー効率性を30%以上改善する。
(3)「4D1E」に従って、エネルギー産業を再構築する。

・脱炭素(Decarbonization):エネルギー分野のCO2削減。
・デジタル化(Digitalization):デジタルシステムの採用による効率化。
・分散化(Decentralization):分散型電源の活用。
・規制緩和(Deregulation):エネルギー関連規制の見直し。
・電化(Electrification):化石燃料の代わりに電気を利用。


再エネ導入

2013年、政府は固定価格買取制度(FIT)を太陽光に導入、その後、対象を再エネ全般に拡大した。

2011年12月:「代替エネルギー開発計画(AEDP2012)」を閣議決定。その後、2013年7月の改定により、導入目標値を920万kWから1,393万kWに引き上げるとともに、発電種別の内訳が大幅に変更。具体的には揚水発電分の計画を除外し、300万kWのネピアグラス(エネルギー作物の一種)によるバイオガス発電を新たに計画。

2015年5月に2015年~2036年の代替エネルギー開発計画(AEDP2015)が策定。2036年の導入目標値を1,968万kWに設定。バイオガス発電(ごみ、廃水、Energy Crop由来)は128万kWに縮小。

2023年4月、エネルギー規制委員会(ERC)は、2022~2030年のFITの事業者として、175社(総発電設備容量は4,852MW)を発表。今回は第一弾として、総発電設備容量5,200MW(内訳:バイオガス335MW、風力1,500MW、地上設置型太陽光2,368MW、蓄電システム付の地上設置型太陽光1,000MW)を募集し、約1万7,000MWのプロジェクトが提案されていたが、バイオガスはERCの基準を満たすことができなかったため承認されなかった。ERCは、第一弾のプロジェクトに選定されなかった企業に対し、5月の総選挙後に実施する第二弾の募集への参加を奨励している。


電気事業の収支状況

2022年のEGATの収支状況はまだ公表されていないが、燃料費高騰の影響を大きく受けると考えられる。EGATは、電気料金に含まれる燃料調整料金に対してERCから補助金の負担を命じられ、2022年9月時点で1,000億バーツ(約3,900億円)を超える補助金を拠出している。
一方、財務省はEGATへ850億バーツ(約3,300億円)の融資を承認している。なお、タイの電気料金は高騰し、過去最高となっている。
(参考)2023年5~8月の電気料金:1kWh当たり4.77バーツ(約18.6円)





※ 2023年5月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。

ページトップへ