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2024 年度

海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。

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2024年度

2024.07.08
中国:グリーン電力証書の発行および取引システムをオンライン化
国家能源局は2024年7月8日、国内のグリーン電力証書の発行および取引システム運営のオンライン化を発表した。これまでグリーン電力証書発行の管理業務を担ってきた再生可能エネルギー情報管理センターの基礎データをアップデートし、登録事業者が申告する設備の基礎情報と発電量について、送配電事業者と電力市場の取引のデータと照合し、必要な事前検証、取引中の照合などのプロセスを通じて証明書を発行する。一連のプロセスは自動的に行われ、発行業務の質と効率を向上させたとしている。
2024.07.08
中国:MW級水素専焼ガスタービンの実証試験に成功
大手発電会社国家電力投資集団公司は2024年7月8日、傘下の北京重燃能源科技発展有限公司が主導して開発したMW級水素専焼ガスタービンの実証試験に成功したと発表した。同社は水素ガスタービン特有のバックファイア、不安定燃焼や高NOx排出などの課題を、独自に開発したミクロ混合純水素燃焼技術、運転制御技術、燃料システムにより克服している。今回の総合的な実証試験により、制御および保護システムなどの有効性と信頼性を検証した。実証成功によって同社は低炭素産業チェーンにおける技術競争上の優位性を獲得し、水素エネルギーの開発とグリーンかつ低炭素のエネルギー転換を促進する上で重要な成果を得た。同タービンの開発には上海の研究機関が燃料系統に参画し、湖北の関連会社が試験プラットフォームを提供している。
2024.07.08
ドイツ:RWEが年間30億kWhの再エネ電力を募集
エネルギー情報誌は2024年7月8日、ドイツの大手電力RWEが2025、2026年に風力、太陽光発電から30億kWhを購入するための入札を実施すると発表したと報じた。対象となるのは政府の固定価格買取制度などの支援を受けていない5,000kW以上の設備または年間発電電力量1,200万kWh以上の設備である。募集は8月16日に締め切られる。RWEは購入した電力を自社が契約する長期電力売買契約(PPA)の補完に活用する方針。自社の電力消費を持続可能な電力で供給することを求める企業が増加して、再エネ電力のPPA契約を求める需要は昨年から倍増しているとRWEは話す。RWEの入札とは逆に、再エネデベロッパーのPNEは2024年6月に年間3億kWhの再エネ電力を販売するための入札を開始しており、入札を通じて再エネ電力を売買するケースが増えている。
2024.07.05
ドイツ:政府、H2-ready発電所入札を2025年初めまでに実施と発表
連邦経済・気候保護省は2024年7月5日、2024年末~2025年初めまでに、第1回H2-ready発電所入札を実施すると発表した。同入札は「発電所戦略」の一環で、発電所合計設備容量1,250万kWと貯蔵容量50万kWを募集する。入札は大きく2つに分けられる。1つ目は脱炭素化に向けて、H2-readyガス火力発電所の新設(500万kW)と既設発電所のH2-ready転換(200万kW)が入札対象となる。これらの発電所は運転開始8年目以降、グリーンまたはブルー水素燃焼に切り替えなければならない。投資費用に加えて、運転費用(水素燃焼転換後、年間稼働時間800時間分について、水素燃焼によるコストと天然ガス燃焼によるコストの差額)にも補助金が支払われる。さらに、水素スプリンター(運開時から水素のみで稼働する)発電所50万kWと、長期貯蔵設備50万kWも入札に掛けられる。2つ目は安定供給の確保を目的とする入札で、ガス火力発電所500万kWを募集する。投資費用のみの補助となるが詳細条件は未公表で、水素転換に非対応の発電所も入札対象となるかについては不明だという。
2024.07.03
インドネシア:ジョコ大統領、EV関連産業における重要な地位を築く姿勢を強調
2024年7月3日付の報道によると、韓国の総合化学メーカーLG化学(LGグループ)の子会社でEV向けバッテリー大手のLGエナジーソリューションと韓国の完成車メーカー大手の現代自動車などの合弁会社であるヒュンダイLGインドネシア(HIL)グリーンパワーが西ジャワ州カラワン県に設立した国内初の電気自動車(EV)向けバッテリーセル工場が開所した。この工場では年間10GWhのバッテリーを生産する。開所式に出席したジョコ大統領は、国内で製造したバッテリーを搭載した新型車の披露に伴い、以前は国内の豊富な天然資源を無加工の状態で輸出していたが、製錬所とバッテリーセル工場の建設によりインドネシアは世界のサプライチェーンにおける重要な地位を築くだろうと述べた。なお、HILグリーンパワーは、本工場の生産能力を3倍に増強する計画を既に示している。
2024.07.03
ドイツ:欧州最大の太陽光発電所が運開、無効電力供給により系統安定化に寄与
ドイツの送電系統運用者(TSO)50Hertzは2024年7月3日、欧州最大のWitznitz太陽光発電所(650MWp)が全面的に運転を開始したことを発表した。同発電所は50Hertzの超高圧送電線(380kV)に接続され、電圧調整を行う際に必要な無効電力を同社に供給する契約も締結している。同発電所は将来的に150Mvar規模の無効電力を供給する計画であり、近隣のLippendorf褐炭火力発電所が供給している無効電力(400Mvar×2基)の一部を代替する。なお、同発電所を運転する再エネ開発会社のMOVE ON Energyは、Shell Energy Europeと15年間の長期電力売買契約(PPA)を締結している。
2024.07.01
EU:2024年上半期の再エネによる電力供給が初めて50%を超過
欧州電気事業者連盟(Eurelectric)は2024年7月1日、EU域内の2024年上半期の電力需給状況を発表し、初めて再エネ電源による供給が50%を上回ったと報告した。24%を占める原子力と合わせるとCO2排出のない電源で74%を供給したことになり、2023年の68%から大きく伸びた。これは、原子力の比率は変わらないが再エネによる電力供給が増加したことが原因である。Eurelectricは、他のセクターに先駆けて電力事業で脱炭素が進んでいることを称賛するが、一方で電力需要については課題を指摘する。2022年から2023年にかけて3.4%減少した需要は、2024年上半期でも2022年の水準に回復しておらず、これは穏やかな天候に加えて産業設備のEU域外への転出や経済回復速度が遅いことが要因としている。電力需要が減少傾向にあればクリーン電源への投資が進まないと、Eurelectricは懸念を示しており、新たに選出される欧州委員会には電化の促進を指標とする政策の導入を求めている。
2024.07.01
米国:ニューヨーク州、2030年までに再エネ電力70%の達成は困難との見通し
ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)は2024年7月1日、クリーン電力基準に関する報告書草案(Draft Clean Energy Standard Biennial Review)を発表した。同報告書は、サプライチェーンの問題やインフレなどの要因により、2030年までに電力の70%を再エネで賄うという同州の目標達成はますます困難となっており、期限を遅らせる必要がある可能性を指摘している。NYSERDAによると、2030年の州内電力需要は16万4,910GWhに増加するという予測に対し、現行の再エネ開発のペースでは2030年時点での再エネ発電電力量は7万3,292GWhにとどまり、70%目標から大きく乖離することが予想される。一方で、必要な政策や十分なインフラ投資が実施されれば、2033年に70%目標を達成できる可能性があると示している。
2024.07.01
米国:連邦地裁、バイデン大統領によるLNG輸出許可の一時停止を解除
ルイジアナ州の連邦地方裁判所は2024年7月1日、エネルギー省(DOE)による天然ガス輸出許可の一時停止を解除する判決を下した。同年1月、バイデン大統領はLNG天然ガス輸出による地球温暖化などへの影響を精査するため、自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への新規LNG輸出の審査を一時停止することを発表した。しかし、共和党を支持する16州の連合は、経済に悪影響を与えると異議を唱えて、訴えを起こしていた。判事はこの判決について、DOEが許認可手続きを見直すために承認を一時停止する権限はなく、必要性を正当化できなかったためと説明している。DOEは判決に同意できないとし、次のステップを検討中であると声明で述べた。
2024.06.29
英国:OVO Energy、資金の外部調達や資本の一部売却など検討
英国の大手報道機関は2024年6月29日、主要小売事業者OVO Energyが資金の外部調達や資本の一部売却などを検討していると報じた。金融関係者の情報によると、同社は資金調達や既存借入金の扱いについて複数の金融機関と接触を図っているとみられる。事業の完全売却が行われる可能性は低いとされるが、今後行われる事業戦略の見直しの中で事業売却が選択肢として挙げられるとみられている。同社は2009年に当時の大手6社(ビッグ6)による寡占市場の打破を目的に設立され、2020年には大手SSEの家庭用小売部門を買収するなど、市場シェア第4位の規模まで急成長した。また、「Kaluza」と呼ばれるプラットフォーム事業も展開し、同社の成長に貢献した。三菱商事がOVO Energyの約20%を所有している。なお2022年には、エネルギーの先物調達を行っていた中でエネルギー価格が下落したことにより13億ポンド(約2,658億円)の調整前損失が生じたとされている。
2024.06.28
米国:連邦政府の権限を制限する最高裁判決、バイデン政権運営にも影響へ
米国最高裁は2024年6月28日、議会によって制定された曖昧な法律を連邦政府などの行政府が合理的に解釈する指針としていたシェブロン原則(Chevron deference)を覆す判決を下した。同原則は1984年の最高裁判決(Chevron対NRDC)にて、専門知識を持つ政府機関(行政府)が法律に基づいて具体的な政策決定を行うことが示されたもので、環境保護庁(EPA)による環境規制などに適用されてきた考え方。本判決により、裁判所が法律の解釈権を取り戻し、行政府の規制能力が大幅に制限されることが懸念されている。報道では、インフレ抑制法(IRA)の条項や、クリーンエネルギー関連のタックスクレジットに関する財務省の指針、FERCによる規制なども影響を受ける可能性がある。
2024.06.26
豪州:2050年に向けた電力供給のロードマップを公表
エネルギー市場の運営管理を行うAEMO(Australian Energy Market Operator)は2024年6月26日、電力供給の脱炭素化を進めるためのロードマップ(ISP)を公表した。ISPは東部各州をカバーする全国電力市場(NEM)の需給状況を示して、2050年のネットゼロを達成する最適なロードマップを提示するもので、AEMOは関係者のヒアリングを行いながら2年ごとに更新する。オーストラリアでは寿命を迎えた石炭火力発電の停止が相次いでおり、AEMOは2035年までに90%が、2040にはすべての石炭火力が運転を停止すると想定している。今回公表されたISPは従来から大きく変更されておらず、再エネ電源を増やしながら安定電源としての蓄電池とバックアップ電源としてガス火力を活用することが最もコストが安価であると評価している。再エネ電源の中ではルーフトップ太陽光や家庭用蓄電池の導入が進むと想定し、家庭の電源がエネルギー移行で大きな役割を果たすと考えている。
2024.06.26
インド:カイガ5、6号機のEPC契約をMegha Engineeringが落札
Megha Engineering & Infrastructure Ltd(MEIL)は2024年6月26日、原子力発電公社(NPCIL)が建設を計画しているカイガ原子力発電所5、6号機(PHWR、70万kW×2)のEPC契約の競争入札で、約1,280億ルピー(約2,480億円)で落札したと発表した。テランガナ州ハイデラバードを拠点とするインフラ・エンジニアリング企業のMEILが最低価格を提示し、国営BHEL、大手エンジニアリング企業のLarsen&Toubroを抑えて落札した。同社が原子力事業に参入するのはこれが初めてとなる。競争入札はNPCILにより、2023年5~10月にかけて実施された。
2024.06.24
米国:AEP他、発電所併設のデータセンター負荷の接続サービス契約に抗議
大手電力会社アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)とエクセロン社は2024年6月24日、タレン・エナジー社が所有するペンシルベニア州のサスケハナ原子力発電所から、併設するアマゾン社のデータセンターに直接電力を供給する相互接続サービス契約(ISA)に関する抗議文を、連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提出した。抗議文によれば、ISAでは発電所併設の負荷について、何の説明もなくPJM料金体系で定義されている「ネットワーク負荷」ではないとしていると批判。AEPとエクセロンは、同負荷がPJMの電力系統と同期し、電力系統から供給を受ける可能性があるように見えるとし、電力系統とアンシラリーサービスを利用することで恩恵を受けるが、対価を支払っていない負荷が増加すると指摘する。また、将来的に、類似した条件で大量の負荷が発電所に併設されることになれば、発電資源がPJM容量市場から離脱することで供給力不足が生じるとした。
2024.06.22
欧州・バルカン諸国:バルカン半島の4カ国で大規模停電
2024年6月22日報道によると、同月21日の午後12時20分頃から、アルバニア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナおよびクロアチアの一部において、大規模な停電が発生した。周辺国の送電系統運用者(TSO)との協力により、停電は夕方までにほとんどの地域で復旧した。停電発生当時の気温は40℃に達しており、モンテネグロのエネルギー相は現地メディアに対し、猛暑とそれに伴う電力需要の急増に起因する、送電網への過負荷が原因との見方を示した。今後、欧州における送電系統運用者の協調機関である欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)が停電の詳細な原因について調査予定である。
2024.06.20
オランダ・ドイツ:TenneT、ドイツ政府への同国送電事業の売却を断念
オランダとドイツの送電系統運用者TenneTは2024年6月20日、ドイツ政府と交渉していた同社の同国送電事業の売却交渉が不調に終わり、協議を終了したことを発表した。2023年11月の気候・変革基金(KTF)に係る違憲判決に伴い、ドイツ政府が財源を確保できなくなったことが交渉不調の主因とみられる。今後、Tennetは両国の送電事業への莫大な投資のために自前で資金調達を行う必要があるが、同社の発表によれば、ドイツ政府は同国内の送電事業の株式上場や公的資本の活用などについて支援することを約束しているという。
2024.06.20
米国:ERCOT、テキサス州の電力需要が6年以内に2倍となる予測を発表
テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)は2024年6月20日、テキサス州は今後数年間で電力需要がどの程度増加するかという予測を大幅に引き上げ、6年以内に電力需要が約2倍となる見込みを発表した。予測を引き上げた主な要因として、新たな法律により送電線への接続を希望する企業数が確定する前にカウントされるようになったこと、データセンターや水素製造工場、石油・ガス会社など電化を進める需要家が大幅に増えていることの2つが挙げられている。ERCOTのパブロ・べガス会長兼CEOは「これまでとは異なる需要の伸びを目の当たりにしており、これらのニーズに確実に応え、テキサス州民の期待に応え続けるために計画の再考を迫られている」と述べている。ERCOTの専門家によると、2030年までに電力需要が150GWに達する可能性があるとしている。
2024.06.19
中国:特定産業の天然ガスの消費に関する規制を公表
国家能源局は2024年6月19日、天然ガスの消費(利用)の効率化に向けた規制案(管理方法)を発表した。2060年のCN目標の達成に向け、国際情勢による価格変動リスクの回避など天然ガス供給の安全確保を目的に、家庭・公共での利用を優先し、メタノール生産、肥料、石油化学産業など低付加価値産業での利用が規制される。低付加価値産業には、工業用原料としての水素の生産に天然ガスを利用することも含まれている。規制対象は国産ガス以外に、輸入天然ガスも含み、8月1日から施行となっている。
2024.06.18
英国・米国:オクトパスエナジー、米国の再エネ発電事業に初進出
英国のオクトパスエナジー(Octopus Energy)は2024年6月18日、米国オハイオ州とペンシルベニア州の太陽光発電所(計100MW)を買収し、再エネ発電事業としては初めて米国に進出したと発表した。具体的にはOctopus Energyグループのうち発電事業のOctopus Energy Generation社が同社の再エネ投資ファンド(ORI SCSp)に代わって、米国の再エネ開発事業者Vesper Energy Development社から太陽光発電所を買収した。なお、Octopus Energyはエネルギー小売事業や電気自動車のリース事業を、米国テキサス州で2020年以降展開している。
2024.06.18
米国:連邦議会上院、先進原子力技術の導入を促進するADVANCE法を可決
連邦議会上院は2024年6月18日、先進的な原子力技術の開発と導入を支援する超党派の法案「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力の導入促進法(ADVANCE Act)」を88対2で可決した。下院は既に同法案を2024年5月9日に393対13で可決しており、今回の上院での可決を受けバイデン大統領の署名を待つ状態となった。同法案は原子力規制委員会(NRC)に対し、新しい原子力技術の許認可プロセスを迅速化する方法を検討するよう指示し、その技術の導入に成功した最初の先進原子力発電事業者の許認可費用を賄うための連邦資金を確保する。また、他国における先進型炉開発を支援し、同炉の規制を策定する国際社会においてNRCが主導する権限を与え、米国技術の輸出承認プロセスを改善するようエネルギー省に指示している。法案提出者の一人で上院環境・公共事業委員長のカーパー氏は、「ADVANCE法は今後数十年間における次世代の先進型炉の安全かつ着実な展開の基礎となる」と述べている。
2024.06.17
ブラジル:地方裁判所がアングラ3号原子力発電所の工事再開を承認
ブラジル連邦電力持株会社エレトロブラス傘下の原子力発電公社Eletronuclearは2024年6月17日、工事中のアングラ3号原子力発電所(PWR、1,405MW)について、リオデジャネイロ裁判所が事業の継続を承認したことを発表した。同発電所の建設は1984年に開始されたが、財政上の理由で2年後に中断、2006年からプロジェクトが再開されていた。しかし、連邦政府の工事契約などに関わる汚職疑惑によって2015年から再び工事が中断され、Eletronuclearが2022年に工事の再開を発表したものの、リオデジャネイロ州Angra dos Reis市政府が工事の停止を命じ、地方裁判所で係争となっていた。今回、同市長との協議が妥結し、地方裁判所から事業継続が容認されたことで、建設工事が再開することになった。運開に向けた同発電所の工事再開は、地元Angra dos Reis市の雇用や経済はもとより、ブラジル電力系統における安定供給においても、プラスの効果があると見られている。
2024.06.17
香港:香港政府、水素エネルギー開発戦略を発表
香港特別行政区政府は2024年6月17日、水素エネルギー開発戦略を発表した。規制の緩和、基準の策定、市場との協力、慎重な推進という4つの方針に基づき、安全な技術の適用、インフラ整備、水素エネルギー開発に適した環境を作り出すなど6つの課題の解決を目標に掲げた。政府は2025年の上半期に、水素の生産、貯蔵、輸送、供給、使用を規制する法的根拠となる法改正案を法制審議会に提出する予定。2027年までに燃料としての利用など国際基準に合わせた水素エネルギー基準認証モデルを整備する。政府の会見では水素エネルギーを将来の国家エネルギーシステムの重要な部分として明確に位置づけており、香港が水素エネルギーの開発機会を掴むことは、カーボンニュートラルへの移行、新たな生産性の開発、国際競争力の維持に役立つと期待している。
2024.06.13
ブラジル:EV法案、連邦議会を通過し、大統領に提出
エネルギー情報サイトは2024年6月13日、EV法案が連邦議会(上・下院)での度重なる審議を経て承認され、大統領に署名のため送られたと報じた。同法案では、技術開発や低炭素排出車両の生産促進に向けて、5年間で約36億ドル相当の財政的なインセンティブや工業製品税(IHI)の減税などの措置が盛り込まれた。これらのインセンティブを受けるには、企業は政府からの承認が必要とされる。プロジェクトには、新製品や車両モデル、研究・イノベーションサービス、自動車工学分野、自動車のリサイクルまたは循環型経済ユニットの設置、産業ユニットや組立・生産ラインの移転なども受け入れるとしている。また、車両や製品の対象として、軽自動車、トラック、バス、エンジン付きシャーシ、自走式機械、自動車部品・システムなどの他、モビリティと物流の戦略的ソリューションなどが含まれる。
2024.06.12
イタリア・ペルー:Enel、ペルー配電資産の売却を完了
イタリアのエネルギー大手Enelは2024年6月12日、ペルーにおける配電資産の売却が完了したことを発表した。具体的には、Enel PerúがEnel Distribución PerúとEnel X Perúの株式を中国資本のNorth Lima Power Grid Holdingに約29億ユーロで売却した。同売却は2023年4月7日に発表されており、ペルー国内の独占禁止法などの規制要件をクリアしたことを受け、今回完了に至ったもの。また、同売却に伴い、Enelの純負債は約29億ユーロ減少し、2024年の純利益に約5億ユーロのプラス影響がある。同社は2024~2026年経営計画のもと、事業エリアの見直しを進めており、2024年5月にはペルーにおける発電資産の売却完了を発表していた。
2024.06.12
米国:Google、地熱発電を利用したデータセンターへの電力供給を拡大
Googleは2024年6月12日、同社データセンター事業への地熱発電による電力供給量を増加させるパートナーシップをバークシャー・ハサウェイ・エナジー社の子会社であるNV Energy社との間で締結したことを発表した。NV Energy社は電力供給量を締結前の3,500kWから6年以内に11万5,000kWに増加させることを目指している。供給源となる地熱発電の開発は、高温岩体地熱発電(EGS)に取り組むスタートアップのFervo Energy社が担当する。本パートナーシップの核はクリーン移行料金(CTT:Clean Transition Tariff)と呼ばれる制度で、電力会社と需要家が長期エネルギー協定を結ぶことにより、クリーン電力を供給する新規プロジェクトへの投資を促進する。契約はネバダ州公益事業委員会の審査・承認を待っている段階だが、Googleは、CTTの仕組みが広く採用されれば、クリーンエネルギーの容量拡大や新技術の展開の加速といったメリットを生むと説明している。
2024.06.11
中国:中国が南シナ海で浮体式原子炉の新設計画を進めているとの報道
米国のニュース週刊誌は2024年6月11日、中国が係争中の南シナ海での足場を固めるため、一連の浮体式原子炉を新設する計画を進めていると報じた。中国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムを含む国々が領有権を主張する海域に、移動式「power banks」と称される、船舶に搭載できるように設計された小型原子炉を建設し、定置施設と他の船舶に電力を供給し、飛行場などの軍事インフラが整備された中国の人工島にエネルギーを供給することを計画しているという。同国は2016年に浮体式原子炉の建設を開始し、南シナ海に20基もの浮体式原子炉を配備する計画を発表したが、2023年5月に同計画は安全に係る懸念から中断されていた。同計画は、南シナ海の領有権を主張する国々の間における緊張を高めているという。
2024.06.11
デンマーク:Siemens Gamesaが21MWタービンを開発か
エネルギー情報誌は2024年6月11日、タービンメーカーSiemens Gamesaが2万1,000kW級のタービン開発に着手したと報じた。タービンの大型化は洋上風力発電のコスト低減で大きな役割を果たしてきたが、コスト上昇(インフレ)やサプライチェーンの課題などから欧米市場で事業開発が困難になっていることもあり、近年はタービン開発競争の動きは沈静化していた。また、大型化したタービンを施工できる船舶の不足が市場拡大の障害になっているとも考えられている。記事によると、同社はEUのイノベーション基金から補助を受け、デンマークの試験センターで大型タービンの試験を開始するが、このタービンの発電出力を明らかにしていない。大型タービン開発では中国メーカーのDongfangが中国国内で1万8,000kWのテストを開始したと報じられている。
2024.06.11
欧州:蓄電池の年間導入容量が過去最大の1,720万kWhを記録
欧州の太陽光発電事業者団体SolarPower Europeは2024年6月11日、欧州蓄電池市場の概況と展望をまとめた報告書を発表し、2023年の蓄電池(BESS:バッテリー式エネルギー貯蔵システム)の新規導入容量が前年比94%増の1,720万kWhとなったことを発表した。また、2023年末時点で稼働している蓄電池の総容量は3,580万kWhとなった。導入拡大の背景には再エネ電源の大量導入や技術進歩、政策支援に加えて、近年のエネルギー価格高騰による自家消費需要の高まりがあると指摘されており、2023年の新規導入量が1,200万kWhとなった住宅用途の蓄電池が成長の牽引役となっている。SolarPower Europeによると今後住宅用途の導入量はピークアウトするものの、商業・産業・電気事業向けの大規模蓄電池の導入が拡大することで、2024~2028年の年間導入ペースは30~40%増で推移するとの見方が示されている。
2024.06.11
米国:FERC、Mountain Valley Pipeline運用開始を承認
連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2024年6月11日、ウェストバージニア州北西部からバージニア州南部にかけての天然ガスパイプラインMountain Valley Pipeline(MVP)の運用開始を承認した。同パイプラインは総延長303マイル(約487km)、1日当たり最大20億立方フィート(2Bcf/d)の天然ガスを輸送可能。当初2018年に開業する予定だったが、一部環境保護団体からの訴訟などにより延期されていた。パイプライン・危険物安全局(PHMSA:Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)は、遅延期間中に設置が完了したパイプラインの安全検査に合意しており、パイプライン稼働後もデータを確認する予定としている。
2024.05.31
サウジアラビア:サウジアラビアの太陽光発電コスト、世界最安値を更新
2024年5月31日付報道によると、サウジアラビアの太陽光の均等化発電原価(LCOE)発電コストが10.4ドル/MWhで世界最安値を更新した。レポートを発表したノルウェーのエネルギー調査会社Rystad Energyは、最安値となった要因として、開発コストの低さ、プロジェクトの大規模化、機器価格の低下、人件費の安さ、豊富な日照などを挙げている。なお、隣国のアラブ首長国連邦(UAE)アブダビでは、2020年にAl Dhafra Solar(2GW、2023年11月運開)が13.5ドル/MWhの世界最安値を記録していた。
2024.06.09
EU:欧州議会選挙、右派の伸長とグリーン系会派の後退で明暗
複数の報道によると2024年6月6~9日にかけて、5年に1度の欧州議会選挙が実施され、日本時間6月11日現在の暫定的な集計に基づく結果として、まず、二大会派の「欧州人民党(EPP、中道右派)」および「社会民主進歩同盟(S&D、中道左派)」、これに、大きく議席を減らしたものの「欧州刷新(RE、中道リベラル)」を加えると、中道三会派で720議席中の過半を維持する見通しとなった。また、今回選挙では、「アイデンティティと民主主義(ID、極右)」、「欧州保守改革(ECR、右派)」をはじめとする右派の勢力伸長が伝えられている。特に、フランスではIDに属する「国民連合」が31%の得票率で、REに属する政権与党(得票率15%)を大きく引き離し第1党になったことで、マクロン大統領が直ちに国民議会の解散を表明する事態となった。ドイツでは、同じく極右の「ドイツのための選択肢(AfD、選挙直前にIDから離脱、所属会派なし)」が16%の得票率で国内第2党に躍進した。一方、前回2019年の欧州議会選挙で躍進した「緑の党・欧州自由連盟(Green/EFA、環境系)」は大幅な議席減となり、会派の規模としてはこれまでの議会内の第4位から第6位に転落する見通しである。全般的に、有権者にとっての関心が足元の生活防衛や治安、産業競争力の維持などに移行するにつれて、生活負担を伴う印象を与えがちな脱炭素化・気候変動政策の優先度が、相対的に低下したとする見方が強い。また欧州電気事業者連盟においても、右派の伸長により、電化をはじめとする既に合意済みの気候変動目標を後退させる動きが生じることに、警戒する声も上がっている。今後、新メンバーによる欧州議会の第1回本会議セッションは7月16日に開催され、新たな議長の選出などが行われる予定である。
2024.06.06
中国:世界最大級の18MWクラス洋上風力タービンの設置に成功
現地紙は2024年6月6日、風力発電設備メーカー大手の東方電気集団が開発した世界初の18MWの半直接駆動方式の洋上風力発電設備について、広東省汕頭市に位置する風力臨海試験基地での設置に成功したと報じた。それによると、同18MW洋上風力タービンの風車の直径は260mであり、ブレードの掃引面積は5万3,000m2を超え、年間発電電力量は最大で7,200万kWhに達するとしている。
2024.06.06
米国:NYISO、クリーンエネルギーの導入遅れにより供給不足の可能性
ニューヨーク独立系統運用者(NYISO)は2024年6月6日、将来の送電網に関する問題と課題についてまとめた年次報告書「Power Trends 2024」を発表した。ニューヨーク州は2040年までに電力部門の脱炭素化を目指す中で、州内で閉鎖が予定される発電設備容量(5,207MW)が再エネなどクリーンエネルギーによる新規の発電設備容量(2,256MW)を上回っている。さらにデータセンターや半導体工場などの大規模な電力負荷プロジェクトが少なくとも10件は進行しており、州全体で電力の供給力に余裕がなくなることが予想されている。信頼性が低下するとピーク需要時の供給力が低下し、突発的な障害で大規模停電に見舞われるリスクが高まる。NYISOは2021年から信頼性の低下を警告しており、2025年夏には446MWの供給不足が見積もられていることから一部のピーカー発電所の稼働継続を発表した。一方で、2026年春に運開が見込まれているケベック州からニューヨークへの送電線「Champlain Hudson Power Express」が完成すれば、ニューヨークの信頼性は改善する見通しとなっている。
2024.06.04
米国:連邦議会上院、NRCのハンソン委員長の再任を承認
連邦議会上院は2024年6月4日、米国原子力規制委員会(NRC)のクリストファー・ハンソン委員長(民主党)の再任を81対17の賛成票で承認した。今回の再任により、同氏の任期は2029年6月30日までの5年間となる。同氏は、2020年に初めてNRC委員に任命され、2021年1月にバイデン大統領によって委員長に指名された。米国原子力学会(ANS)のピアシー会長は、「同氏のリーダーシップが原子力発電所の安全かつ効率的な運用や、新しい原子力技術のライセンス制度の強化に寄与することを期待する」と述べた。また、上院環境・公共事業委員会のカピト委員(WV州)は、既設炉維持のためのNRC審査・承認プロセスの適時・効率性の改善、先進型炉の許認可手続きの効率化、NRCの内部運営の合理化など、同氏が次の任期での取り組みとして約束した点を評価した。今後、NRCは、同氏のリーダーシップのもとでゼロカーボンエネルギーの推進、がん診断治療などの分野で安全な原子力技術利用を進める見通しである。
2024.06.03
ミャンマー・ロシア:ロシア政府、ミャンマーでの原子炉建設の協定案を承認
2024年6月3日付の報道によると、ロシア連邦政府はミャンマーにおける低出力原子力発電所の建設に関する協定案を承認した。同協定は今後両国政府間で締結され、建設はロシア国営原子力企業ロスアトムに委託されると考えられている。なお、建設が検討されているのはロシアの加圧水型原子炉(PWR)をベースにした低出力原子力発電所(ASMM:Atomnoi Stantsii Maloi Moshnosti)で発電能力は11万kWとなる見込みだが、ロシアで計画中の「RITM-200N」(5.5万kW×2)の明記はされていない。同案第2条の協力分野は、環境影響評価、ASMMの設計・建設・据付・調整、燃料供給、試運転、使用済燃料の取り扱いなどを規定。近年、ミャンマーとロシアの結びつきは強くなっており、2023年には原子力インフラの評価と強化に関する覚書(MOU)の締結や、原子力発電所の建設や運営を担う人材を育成するための原子力技術情報センターの開所を行っている。
2024.06.03
EU:欧州委員会、水素の需給マッチングのためのプラットフォーム開発へ
欧州委員会は2024年6月3日、水素の需給に関する情報を収集し、供給者とオフテイカー(引き取り手)をマッチングさせるためのITプラットフォームを開発すると発表した。これは脱炭素ガス・水素政策パッケージのもとに創設されるもので、2025年半ばの運用開始を目指す。なお、運営は欧州水素銀行のもとで行われる予定。現在、EUには254件の水素プロジェクト(170件が稼働中、84件が建設中)があり、設備容量は合計300万kWとなる。欧州水素銀行の入札で選定された7件も含めるとさらに容量800万kWの設備が稼働する見込みであるが、世界全体では2030年までに供給される水素生産量のうち、オフテイカーが特定されているものは12%に過ぎない。ITプラットフォームを通じて需給の可視性を向上させることで、最終投資決定が加速し、オフテイク契約の確保につながるとしている。
2024.06.01
ASEAN:APG促進でラオス・カンボジア・シンガポール3国が作業部会設立
2024年6月1日付報道によると、カンボジア鉱山エネルギー省(MME)、シンガポール貿易産業省(MTI)、ラオス人民民主共和国エネルギー鉱山省(MEM)は、ASEAN電力網構想(APG)を推進するため、国境を越えた電力取引を促進するための作業部会(WG)を設立した。同WGでは、第1段階としてラオス・カンボジア・シンガポール間の電力取引プロジェクトをベースにASEANにおける国境を越えた電力取引プロジェクトの開発促進のための枠組みの構築、第2段階では国境を越えた電力取引における円滑な発電・輸出入、海底調査や海底ケーブルの敷設などの許認可制度の構築、第3段階として発電・送電インフラの事業化に向けた調整を検討する。
2024.05.31
ドイツ・イタリア・オーストリア:水素パイプライン建設協力で合意
エネルギー情報誌は2024年5月31日、イタリア・ドイツ・オーストリアの3カ国が「SoutH2 Corridor」と呼ぶ水素パイプラインの建設協力に関する共同声明(Joint Declaration of Intent)に合意したと報じた。SoutH2 Corridorは、総延長約3,300kmのパイプラインで、北アフリカからイタリア、オーストリアを経てドイツへと続き、各国の水素ハブに水素を供給することになる。3,300kmのうち70%以上は既存インフラを活用する計画で、2026年までに年間400万tの水素を輸送することが可能となる。この事業はEUから共通利益プロジェクト(PCI)と認定されており、迅速な許認可手続きやEUの資金援助を受けることになる。本事業は北アフリカから水素を供給することを目指し、ドイツはアルジェリアとグリーン水素供給の検討を行っている。3カ国は、CO2の排出削減が困難な産業部門の気候変動対策を進めるには水素利用の必要があるとして事業の必要性を強調した。
2024.05.30
米国:バーモント州、化石燃料企業に気候変動費用の負担を求める法律を制定
バーモント州は2024年5月30日、気候変動の影響による損害を化石燃料企業に補償させる法律「Climate Superfund Act」を制定した。本法律は、1995~2024年に温室効果ガスの排出がもたらした損失を評価したうえで、同期間に10億t以上のCO2を排出した化石燃料の生産および精製企業を対象とし、州が費用を回収することを認めるものとなっている。回収した資金は、気候変動を起因とした災害の復興や、気候変動に適応するための州のプログラムに充てられる。なお、共和党のフィル・スコット州知事は、本法案に署名はしないものの、成立を認める形をとった。同氏は、将来的な石油大手との法廷闘争を見据え、短・長期的なコストおよび結果について懸念を示す一方、「気候変動の影響を緩和するための資金を求める意向は理解している」と述べている。
2024.05.29
中国:国務院、2025年までの省エネ・CO2排出量削減行動計画を発表
現地紙は2023年5月29日、国務院がCN達成に向けた2025年までの行動計画である「2024~2025年省エネ炭素削減行動計画」を発表したと報じた。それによると、習近平新時代の社会主義思想を指針とし、エネルギー消費の削減と炭素排出の管理を強化することを目的としており、2024年にGDP当たりのエネルギー消費を2.5%削減、二酸化炭素排出を3.9%削減し、2025年には非化石エネルギーの割合を約20%に引き上げることを目標にしている。具体的な行動計画として、非化石エネルギーやEVの拡大のほか、鉄鋼業、石油化学工業、建材工業など各産業に削減目標を設定している。
2024.05.29
ドイツ:連邦政府、CCS/CCU促進に向けて「CO2貯留法」改正案を閣議決定
連邦政府は2024年5月29日、CO2回収・貯留(CCS)/CO2回収・有効利用(CCU)の促進に向けて「CO2貯留法」改正案を閣議決定した。ドイツでは研究・実証目的以外でのCCSは禁止されてきたが、連邦政府は2045年カーボンニュートラル目標の達成に向けて、代替技術が少なく排出削減が困難な(hard-to-abate)セクターにおけるCCS/CCU利用が必須であることを認めた。法改正により、同国の排他的経済水域(EEZ)内(海洋保護区域およびその周辺8km以内を除く)での大規模貯留やCO2輸送のためのパイプライン建設が可能となる。また、連邦政府は他国へのCO2輸送・貯留を可能にするためのロンドン条約を批准する方針。「ガス状の燃料」を使用する発電所やバイオマス発電所におけるCCS/CCUも認められるが、政府支援の対象とならない。石炭火力(熱電併給を含む)に関しては「CO2パイプラインおよび貯留設備へのアクセスを除外する」と明記されており、政府は脱石炭を堅持する方針である。CO2貯留場所に関しては、連邦政府は当初はEEZや大陸棚に限定する意向を示していたが、州政府が許可すれば陸上での貯留を可能とする条項を盛り込んでいる。「CO2貯留法」とあわせて、連邦政府は水素インフラの拡大を加速するための「水素迅速化法案」を閣議決定している。連邦議会および連邦参議院では、今後これらの法案に関する審議が予定されている。
2024.05.29
米国:デューク社、大手IT企業と電力需要増加に対する新料金制度検討へ
電力大手デューク・エナジー社(本社:ノースカロライナ州シャーロット)は2024年5月29日、「国内原子力普及に関するホワイトハウスサミット」にて大手IT企業のAmazon、Google、Microsoft、Nucorと、原子力や長期エネルギー貯蔵を含むクリーンエネルギー技術の投資コストを下げるための新たな料金制度の検討に向け覚書(MOU)を締結したと公表した。デューク社は、大口需要家の将来的な電力需要に対して、革新的な資金調達やプロジェクトリスクに対応する資金拠出を通じて、炭素排出のない発電への投資を直接支援することなどを可能にする「クリーンエネルギー促進(ACE)料金」を提案している。同社のフーバー副社長は、規制当局や顧客と協力し、よりクリーンで、高まるエネルギー需要を満たす革新的で責任ある方法を見つけることに尽力するとコメントしている。
2024.05.28
中国:砂漠化対策として太陽光発電開発を強化
国家能源局は2024年5月28日、内モンゴル自治区、チベット自治区、陝西省、甘粛省、青海省、寧夏回族自治区、新疆ウェイグル自治区の砂漠化対策として、太陽光発電開発の強化を発表した。新疆生産建設兵団(屯田兵に相当)、国家電網有限公司、中国南方電網有限責任公司、内モンゴル電力公司など関連発電事業者宛の通知書によれば、太陽光発電は砂漠化抑制プロジェクトとして、生態系の保護を前提に、太陽光発電開発と従来の砂漠化抑制を組み合わせる。用地に関する関連規制を緩和し、未処理の砂漠化土地の利用を優先するなど政策支援を行う。
2024.05.27
EU:ネットゼロ産業法が成立
欧州委員会は2024年5月27日、ネットゼロ産業法がEU理事会で承認されたと発表した。同法では、太陽光発電、蓄電池、電力貯蔵をはじめとした、2030年の気候変動目標達成に必要な技術について、EUで発生する年間需要の40%以上を域内生産で賄うこと、および2030年までに年間5,000万tの二酸化炭素貯留能力を確保することを定めている。加えて、許認可手続きの短縮によるネットゼロ技術への投資環境改善や、3年以内に10万人の技術者を養成する「ネットゼロ産業アカデミー」の設立などが盛り込まれている。発効は6月末ないし7月初頭となる予定である。
2024.05.25
中国:CGNが2基目の華龍1号型となる防城港4号機の商業運転を開始
中国広核集団有限公司(CGN)は2024年5月25日、中国広西自治区の防城港原子力発電所4号機(華龍1号型PWR、118万kW)が商業運転を開始したと発表した。同号機は同日午前8時に168時間の試験運転を完了し、商業運転の条件を正式に満たした。また同号機は、同発電所におけるCGN設計の実証用華龍1号型の原子炉2基のうちの2基目となる。同発電所には、最終的に6基の原子炉が設置される予定であり、第1フェーズ(同1、2号機)は2016年に商業運転を開始しており、炉型にはCPR-1000(PWR、100万kW)が採用された。また同5、6号機は華龍1号の採用が予定されている。同発電所を運営する広西防城港核電有限公司の蔡振会長は、「同4号機の稼働開始により華龍1号の技術的安全性、成熟度、先進性が実証され、華龍1号の大規模展開に反映可能な貴重な経験が蓄積できた」と述べた。
2024.05.24
韓国:世界初のクリーン水素発電入札市場を開設
現地メディアは2024年5月24日、産業通商資源部がクリーン水素発電入札市場を開設し、コスト競争を通じて経済的な価格でクリーン水素を調達すると報じた。2024年の入札量は6,500GWhで、契約期間は15年である。同入札には、国内認証基準に基づき、水素1kg生産時に温室効果ガス排出量が4kgCO2e以下の発電機のみが参加できる。事業準備期間は3年で、2028年に発電を開始する必要がある。また、一般水素発電入札市場も今年開設され、その量は1,300GWh、契約期間は20年である。発電開始は2026年までとなっている。クリーン水素の等級別に評価過程で差を設け、よりクリーンな水素を優遇している。
2024.05.23
米国:CAISO、洋上風力の系統接続を含む61億ドル規模の送電計画を承認
カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)の理事会は2024年5月23日、同年4月1日にCAISOが提案した送電計画(2023~2024 Transmission Plan)を承認した。カリフォルニア州は、同州のクリーンエネルギー目標達成に向けて、2035年までに85GW以上の再エネを追加する必要があると予想している。本送電計画は、そのような急速な再エネ導入を推進するための26の送電プロジェクトが示されており、計画の費用は合計約61億ドルと試算されている。そのうち45億8,600億ドルは、州北部海岸のハンボルト郡沖に将来建設予定の洋上風力発電設備を州内の系統に接続するための送電線や発電所の建設によるものとなっている。残りの15億4,200万ドルについては、電力需要の増加や系統の状況の変化に対応するための系統設備の増強などに充てられる予定である。
2024.05.23
米国:2.6GWの洋上風力プロジェクトの基礎工事が開始
業界専門誌は2024年5月23日、2.6GWの発電設備容量を予定する洋上風力プロジェクトであるCVOW(Coastal Virginia Offshore Wind)の基礎工事が開始されたことを報道した。同プロジェクトはSiemens Gamesaの14MWタービンをバージニア州沖に176基設置するものであり、現在開発が予定されているプロジェクトを含めて米国最大となる予定。なお、クジラなど生態系に対する配慮のため冬季は建設を中止する計画であり、完工は2026年を予定している。同プロジェクトは米国の商業規模の洋上風力プロジェクトのうち、唯一規制事業のもとで行われている。バージニア州大手電力会社であるDominion Energyが開発から建設、電気の売電、設備のメンテナンスなど一貫して実施する。
2024.05.22
カンボジア:仏開発庁、カンボジアのエネルギー移行へ新技術による支援強化
2024年5月22日付報道によると、フランス開発庁代表団は21日、カンボジアの首都プノンペンでフン・マネ首相を表敬訪問し、カンボジアの社会経済発展のための投資誘致策に加え、エネルギー移行、上水道の整備、貿易手続きなどの優先プロジェクトにおける協力を強化・拡大する方策について協議した。代表団のMarie Hélène Loison仏開発庁副総裁は「強力な官民パートナーシップのもとで、新技術と科学的知見の活用、例えばAIとスマートテクノロジーと行動経済学を統合することで、投資や開発援助の効率を大幅に向上させることが可能である」と述べた。
2024.05.22
中国:関税率引き上げの影響は限定的との見方
地元メディアは2024年5月22日、中国の対米輸出の一部商品に米国政府が追加関税(301条関税)を課すことについて、「米国国内の大統領選挙に向けた支持を得るための措置で、関連製品の対米輸出の金額は小さいため、中国側への影響は限定的」との経済アナリスト達の見方を報じた。追加関税の内容は中国製の電気自動車(EV)に対する輸入関税を現行の25%から100%に引き上げるほか、半導体、太陽光パネルは25%から50%へ、その他の車載用電池、鉄鋼・アルミなどは25%にまで引き上げるというものである。2023年の輸出統計によれば、全輸出額のうち米国向けは、EVで1%未満(3億6,800万ドル)、太陽光パネルは0.1%(330万ドル)、蓄電池(リチウムイオン電池)は20.8%(135億4,900万ドル)などである。また今回の追加関税では、蓄電池類のうち非EV用、製造用原材料には2年間の免除期間が設けられている。
2024.05.22
英国:政府、ウェールズ北部アングルシー島ウィルファで大型炉の新設を計画
英国政府は2024年5月22日、ウェールズ北部のアングルシー島ウィルファを、同国で3番目となる大型炉を建設する第一候補地として選定したと発表した。サマーセット州のヒンクリーポイントCやサフォーク州のサイズウェルBに続く候補地となったウィルファは、冷却水源が近くにあるなど、原子力発電所の建設に理想的な場所だとしている。同政府はまた、同地での発電所建設を検討するため、複数の国際的なエネルギー企業(international energy companies)との協議を開始しているという。アングルシー島には原子力に関する歴史があるため、地域コミュニティは原子力を熟知しており、本プロジェクトは、同地域に雇用と投資をもたらし、地域経済を活性化させることが期待されるとしている。
2024.05.21
英国・ドイツ:世界最大の国際連系線NeuConnect、独側での主要工事開始
当該事業を手掛けるプロジェクト事業会社の発表によると2024年5月21日、独北西部ヴィルヘルムスハーフェンにて、英独間725kmを結ぶ1.4GW連系線NeuConnectの主要工事が開始された。独エネルギー会社シーメンス・エナジーが交直変換設備の建設を、伊ケーブルメーカーのプリズミアンが海底送電ケーブルの敷設を受注し、当初の計画どおり2028年に運転開始予定である。投資額は約28億ユーロで、仏インフラ投資会社メリディアン、独保険大手アリアンツの投資子会社であるアリアンツキャピタルパートナー、関西電力、東京電力パワーグリッドの4社が出資するほか、国際協力銀行(JBIC)をはじめ複数の本邦企業を含む20以上の金融機関から融資を受ける。本邦電力会社にとっては、初の国際連系線プロジェクトとなる。
2024.05.17
ドイツ:気候保護法改正案が可決、部門別の排出削減目標が廃止される
ドイツ連邦参議院(上院)は2024年5月17日、温室効果ガス(GHG)排出削減目標について定めた「気候保護法」(KSG)改正案を承認した。今般の改正により、エネルギー、産業、運輸などの部門別に定められていた排出削減目標が廃止された。改正前のKSGでは、部門ごとに年間のGHG排出許容量が規定されており、実際の排出量がこれを上回った場合、所管省は追加の削減策を盛り込んだ緊急プログラムを3カ月以内に提出することが義務付けられていた。野党や環境団体は、KSGの緩和により対策が進んでいない運輸部門や建物部門において排出削減が滞り、2030年目標(1990年比65%減)の達成が困難になると批判している。
2024.05.16
米国:コンステレーション社、TMI1号機の再稼働の可能性を示唆
2024年5月16日付の報道によれば、コンステレーション・エナジー社(本社:メリーランド州ボルチモア)は、パリセード原子力発電所の再稼働計画に注目が集まる中、ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原子力発電所(TMI)1号機の再稼働の可能性に言及した。同発言は2024年第1四半期の決算会見においてなされたもので、同社のドミンゲスCEOは「再稼働の可能性は検討しているが、具体的な計画はまだない」と述べ、再稼働の可能性を否定しなかったという。TMI1号機は2019年に閉鎖されたが、連邦政府からの支援を受けたパリセードの再稼働が実現すれば、同様の機会(早期廃止炉の再稼働)につながる可能性があるとしている。ただし、コンステレーション社は既存の原子力発電所の運転延長や出力増強を最優先とし、SMRのような先進型炉を既存炉に隣接して設置する可能性もあり、TMI1号機の再稼働は将来的な検討事項にとどまるという。
2024.05.15
インド:電源構成に占める石炭火力の比率が50%を下回る
2024年5月15日付の報道によると、インドで2024年3月末時点の総発電設備容量に占める石炭火力発電(褐炭を含む)の割合が50%を下回った。総発電設備容量は4億4,197万kWで、そのうち石炭火力発電は49.2%(2億1,759万kW)、ガス、ディーゼルを含む化石燃料発電比率は55%であった。米エネルギー経済・財務分析研究(IEEFA)の報告書によると、2024年第1四半期(1~3月)に新設された発電設備(1,366.9万kW)の71.5%が再生可能エネルギーであった。同国で石炭火力比率が50%を下回るのは1960年代以来初めてとなる。
2024.05.15
ドイツ:TSO、集中型容量市場の導入を推奨
ドイツの送電系統運用者(TSO)4社は2024年5月15日、連邦政府が2028年までに導入を計画している容量メカニズムの制度設計に関して、集中型容量市場を推奨する提言を発表した。TSOはまた、同市場においては地理的な要素を評価し、入札ゾーン内での十分な供給力確保のみならず南北ドイツ間の系統混雑緩和につながるような立地への投資インセンティブを付与すべきと主張している。連邦政府は2024年2月、太陽光・風力の出力が十分でない時に需給ひっ迫を防ぐための電源として、水素対応可能な天然ガス火力(合計1,000万kW)の開発を入札により支援することを表明した。しかし、欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)や連邦系統規制庁(BNetzA)による安定供給評価では、脱石炭にともない2,000万~2,500万kWの調整電源が必要になる見通しであり、十分な容量を確保するためには容量市場の導入が必須とされる。TSOはドイツの制度設計のモデルとして、既に欧州委員会の承認を受けているベルギーの集中型容量市場を参考にすることを推奨している。
2024.05.15
フランス:世界初の商用浮体式洋上風力プロジェクトの落札者が発表
フランス経済財務省は2024年5月15日、ベルギーの風力発電事業者Elicioとドイツの再エネ事業者BayWa r.e.のコンソーシアムがブルターニュ地方南部沖の浮体式洋上風力開発プロジェクト(25万kW)の落札者となったことを発表した。落札価格は上限価格より38%低い86.45ユーロ/MWhとなっており、浮体式の商用プロジェクトとしては世界初の落札事例となる。落札者のコンソーシアムは、風力発電部品のリサイクルや多様性保護基金への資金提供、発電所の建設・運転における中小企業の起用率といった環境・地域経済に関わる項目が評価された。ル・メール経済財務大臣は今回の落札価格について、浮体式洋上風力発電が価格競争力を持ったことおよびフランスがその導入において主導的地位にあることを示していると述べたが、業界関係者の間ではプロジェクトの実現性を疑問視する声も上がっている。
2024.05.14
米国:DOE、水素製造プラントへ最大16.6憶ドルの条件付き債務保証を発表
米国エネルギー省(DOE)は2024年5月14日、燃料電池製造や液化水素の供給などの事業者であるPlug Power社に対し、6地点のグリーン水素製造プラントの開発および建設に最大16.6億ドルの条件付き債務保証を行うことを発表した。同社は製造した水素は燃料電池自動車の動力源として、マテリアルハンドリング、輸送、産業部門の自社顧客に販売する計画であり、天然ガス由来のグレー水素と比較すると温室効果ガス(GHG)を84%削減することができるとしている。アンディ・マーシュ最高経営責任者によると「この融資は、同社のグリーン水素プラントネットワークだけでなく、米国のクリーン水素産業の成長と拡大にも役立つだろう」と述べた。
2024.05.10
中国:世界最大10MW級GFM型風力発電機がラインオフ
現地紙は2024年5月10日、上海電気集団公司の江蘇省塩城工場で、世界最大となる10MW級のGFM型(グリッドフォーミング)風力発電機が完成したことを報じた。同型は電力系統から変動を感知する際、瞬時に実際の同期発電機と同様に、系統の電圧と周波数を維持することが可能となっている。また、上海電気集団公司は同製品にハイエンド制御アルゴリズム、多次元デジタルセンサー、AIなどハイエンド技術を実装し、遠距離、運用の可視化などによる管理と効率的な設備運用を図ることができる設計により、従来のグリッド型風力タービンよりも安全で安定した送電能力を大幅に向上したとしている。
2024.05.10
タイ:電源開発計画の改訂版、クリーンエネルギーの利用を拡大へ
2024年5月10日付報道によると、エネルギー政策企画局(EPPO)は、現在策定を進めている電源開発計画の改訂版で、原子力や水素燃料といったクリーンエネルギーの利用拡大を重視する意向である。EPPOのVeerapat事務局長は、「原子力発電所は発電コストが低いため、クリーンエネルギーを増やすための解決策になる。2024~2037年に適用される電源開発計画の改訂版の中で、SMRは2036~2037年に開発されるべき」と述べている。また同事務局長によると、水素燃料で発電した電力が2035~2037年の間に総発電電力量の20%にまで増加する計画である。電源開発計画の改訂版は、2024年の第3四半期(7~9月)までに完成する予定である
2024.05.06
イタリア:メローニ政権、農地での太陽光発電開発を制限する法令を閣議決定
2024年5月6日付報道によると、イタリアのメローニ政権は、農林水産業保護政策の一環として、農地での太陽光発電の新増設を禁止する法令を閣議決定した。一方で、農地の上部空間へのパネル設置をはじめとした農業生産と両立可能な発電方式を採る場合や、欧州委員会で定めた復興・強靭化計画の枠組みのもと融資を受けている場合には適用されない。脱炭素政策に逆行する内容であるとして、複数の事業者団体から反対があったが、それらを押し切った形での決定となった。背景には、メローニ政権の主要な支持基盤である農業団体からの要求があったとも報じられている。法令は今後、議会での審議を経て成立する見込みである。
2024.05.02
フランス:初の浮体式風力発電プロジェクトが中断、価格競争が限界に
2024年5月2日のフランスの主要紙は、南ブルターニュ地区Belle-Ile-Groixの浮体式洋上風力発電プロジェクト(250MW)が中断していることを伝えた。プロジェクトの落札者を政府に推薦するエネルギー規制委員会(CRE)は上限価格140ユーロ/MWhに比べ異常に低い価格で複数の入札が行われたことから、プロジェクトの実現性に懸念があるとして調査を行ったものの、最終的には落札者を政府に推薦していた。ところが、CREが推薦した事業者は資材の高騰、借り入れコスト増などを理由に、落札に必要な保証金の支払いを期日までに行わず、結果的に推薦を辞退したことが明らかになった。関係者からは、プロジェクト応札の早い段階で価格を決定しなければならないこと、かつ運開までの期間が長いことなど入札制度の不備を指摘する声が上がっており、政府は入札手続きの簡略化や期間短縮を検討している。一方で、落札するために採算を度外視した低価格での入札が行われているとの批判も出ている。今回のプロジェクトに関しては、政府は入札を一旦不成立にするか、次点の入札者を繰り上げるか決めなければならない。ただ、現状では次点の候補者が落札を応じるかも不透明である。
2024.05.01
EU:初の水素製造補助入札、37~48ユーロ・セント/kgで7事業が落札
エネルギー情報誌は2024年5月1日、EUが実施した初となる水素製造補助事業に関する入札結果を報じ、7事業が37~48ユーロ・セント/kgで落札したと伝えた。グリーン水素市場の拡大を目指すEUは2030年の域内製造を1,000万t、輸入量を1,000万tとする計画で、加盟国が補助事業を実施する中、欧州水素銀行(EHB)を設置して水素市場の入札を実施した。米国のインフレ抑制法は最大3ドル/kgの税額控除が補助されるため、EUは4.5ユーロ/kgを上限として、補助予算上限8億ユーロとした競争入札で事業を選定した。選定された事業はスペイン3件、ポルトガル2件、ノルウェーとフィンランドがそれぞれ1件である。7件の水電解装置の合計容量は約1,500万kW、10年間の製造量が158万tで、2023年11月までにEUと契約を交わして2029年までに事業を開始することになる。入札の実施に当たり、EUは水素の市場価格とグリーン水素の製造コストの差額を支援するとしていたが、落札結果は想定を超えて大幅に安価となり、市場関係者から驚きの声があがった。この原因として、132の応札に対して落札したのは7事業で厳しい競争であったことに加えて、EUは2030年までに使用する水素の42.5%をグリーン水素とする規制を定め事業者に使用するインセンティブを付与したことなどが挙げられている。さらに落札した事業者の一人は、実際に水電解装置を購入するのは2年後でさらにコストダウンが期待できると説明するが、資金調達が進むかは不透明とも話している。EHBは上限価格を3.5ユーロ/kg、予算上限を22億ユーロとする2回目の入札を2024年内に開始する計画である。
2024.04.30
台湾:立法院、電気料金の値上げ凍結を決議
現地紙は2024年4月30日、議会である立法院が電気料金の値上げ凍結案を決議したと報じた。それによると、野党第一党の国民党が住民の生活を守るために電気料金の値上げ凍結と、行政院および関係省庁に対しエネルギー政策を即時見直し、住民生活および電力の安定供給、台湾電力公司の正常な経営に配慮した対策と支援策を求める案を提出し、民衆党が支持したことで議決された。行政院は、立法院の決議について遺憾の意を表明したうえで、電気料金の見直しは法律に基づき実施されていると表明した。
2024.04.30
中国:EV充電、データセンター関連の電力消費の伸びが高水準
電力専門紙は2024年4月30日、国家能源局が発表した第1四半期のエネルギー需給報告の第三産業のうち、EVに関する充電サービス用電力消費、モバイル通信、ビックデータなどデータセンター関連の電力消費の伸びが前年同期比でそれぞれ、70%、34%と高い水準となっていると報じた。全体の電力消費量は同期比9.8%の増加であるが、第三産業は14.3%であり、産業別の伸び率でトップとなっている。EVの普及、デジタル化によるICT関連機器(コンピュータ、ネットワーク関連機器、端末)などの電力消費量は増加傾向を継続している。
2024.04.19
中南米:中国企業のEV生産において中南米地域が重要拠点となる可能性
エネルギー情報サイトは2024年4月19日、中国投資家がブラジルにおいて、エネルギーやインフラなど従来から関係する分野だけでなく、EV関連など新たな分野にも関心を示していると報じた。世界的なエネルギー転換が進む中、EVの生産における米国企業と競争で、中国企業にとって中南米地域が重要な拠点になる可能性があるとした。中国・ブラジルビジネス評議会(CEBC)調査ディレクターのトゥーリオ・カリエロ氏は、「中国からの投資は、国家電網ブラジル法人や中国三峡集団などによる電力分野への投資は引き続き重要であるが、近年はその他の中国事業者が再エネへの事業展開などで活発になっている」とし、再エネ事業の中でも、風力や太陽光の機器の現地製造にも関心が高まっていると述べた。そして、「最近ではエネルギー移行分野で、EV関連産業への関心が高く、ブラジルだけなく、中南米地域への参入が見られる」とした。さらにEV車両の生産や販売だけでなく、バッテリー生産の原料となる鉱物リチウムの採掘にも関心が高いことを指摘した。EV最大手のBYDはブラジル北東部バイーア州に工場を建設したが、これはブラジルに限ったことではない。テスラ社に対抗する中国企業にとって、中南米地域はEV生産における世界的な競争の舞台となっている。CEBCのカリエロ氏は「特定分野で投資への関心が低下したという訳ではなく、近年は以前のような政府系よりも、民間企業による投資への関心が高まっていることが大きな特徴である」と指摘した。
2024.04.19
中国:国内初電力用OS「Electronic Honmeng」の実装運用開始
電力専門紙は2024年4月19日、南方電網有限責任公司傘下の広東省電力供給局管轄の500kV(Congmu Bingding)および110kV(Kejianjia Shiqian)系統に国内初のAI型オペレーティングシステム「Electronic Honmeng 」を実装したと報じた。同OSは南方電網傘下のデジタル関連会社と、政府が支援するオープンソースの開発・普及を推進する財団「Open Atom Foundation」と共同で開発したとされている。統合されたIoTプラットフォームとオブジェクトモデルベースとの組み合わせにより、様々な種類のブランド、IoT端末をカバーし、デバイス、インターフェイスとデータのプロトコルが標準化され、送電運用および機器管理の効率を大幅に向上させることができるとされている。
2024.04.17
中国:2024年第1四半期の電力需要実績、前年比9.8%の大幅増
国家能源局は2024年4月17日、3月の電力需要実績を発表した。それによると、2024年3月の消費電力量は7,942億kWhとなり、2023年同月比で7.4%の増加となった。分野別では、第1次産業は96億kWh(7.0%増)、第2次産業は5,421億kWh(4.9%増)、第3次産業は1,365億kWh(11.6%増)となった。家庭向けは前年比15.8%と大幅増の1,060億kWhだった。また、2024年第1四半期の電力需要は2兆3,373億kWhとなり前年比9.8%の大幅増となった。産業別の伸び率は第1次産業が9.7%、第2次産業が8%、第3次産業が14.3%、家庭向けが12%の増加となった。
2024.04.15
EU:PV域内市場の競争力強化に向けてEU23カ国が欧州太陽光憲章に署名
欧州委員会は2024年4月15日、エネルギー関係閣僚の非公式会議でEU加盟国27カ国のうち23カ国が欧州太陽光憲章に署名したことを報告した。同憲章には太陽光導入の促進に向けて、域内の競争力を確保するための複数の措置が列挙されている。この中で、バリューチェーンへの新規投資を支援するため、国家補助規制の緩和策である「暫定危機・移行枠組(TCTF)」の適用を含め、あらゆる資金調達方法を検討することが挙げられた。欧州委員会は、域内のパネル需要の大半が中国からの輸入品で賄われており、域内バリューチェーンのレジリエンスと、パネル価格の安定性に対するリスクが生じていることを指摘している。2023年のEU域内におけるPV新規設置導入量は5,600万kWであったが、このうち97%が中国製パネルによるものであった。また、2023年にパネルの国際価格は約0.20ユーロ/Wから0.12ユーロ/W未満まで下落している。
2024.04.12
中国:発改委、石炭生産能力の備蓄制度を発表
国家発展改革委員会は2024年4月12日、国家能源局と連名で石炭生産能力の備蓄制度の設立を発表した。それによると、同制度はエネルギー安全保障の向上を目標として、発電や熱供給で利用する石炭の安定供給を確保するため、新規または建設中の炭鉱の生産能力の20~30%を備蓄に割り当てる。発改委によると2027年までに石炭生産能力備蓄制度を整備し、2030年に年間約3億t分の生産能力を確保する。同制度で確保された生産能力は通常時は使用せず、極端な状況に対応するために利用される。
2024.04.12
EU:ACER、国際電力取引に更なる連系線活用が急務とEC・欧州議会に報告
欧州エネルギー規制者協力機関(ACER)は2024年4月12日、欧州域内の国際電力取引に必要となる連系線容量が十分に活用されていないとする報告を欧州議会と欧州委員会(EC)に対して行った。EUは2019年に加盟各国の送電事業者に対して連系線容量の70%を国際電力取引に利用できるよう確保することを義務付ける「70%ルール」を適用しており、2025年までに履行しなければならないと定められている。しかし2023年には、送電線がメッシュ状に整備されて電力融通に適した地域においても30~50%の利用可能率にとどまっており、EUの系統混雑への対策コストは40億ユーロに上るとの報告がなされていた。ACERは目標達成に向けて入札ゾーンの見直しに関する技術評価の完遂や対象を絞った系統開発、系統混雑の解消と運用最適化の徹底を実施するよう加盟国および送電事業者に呼び掛けている。
2024.04.12
EU:EU理事会、建物エネルギー性能指令改正案を採択
EU理事会は2024年4月12日、建物エネルギー性能指令改正案を採択した。同指令案では加盟国に対し、既存建物について、住宅用建物の一次エネルギー消費量を2030年までに16%、2035年までに20~22%削減すること、合わせて住宅用以外では2030年までにエネルギー効率が下位16%の建物、2033年までに下位26%の建物を改修することを義務付けている。また、新築建物について、公共用建物は2028年1月以降、その他のすべての建物は2030年1月以降、ゼロエミッションとする必要がある。加えて、2025年1月以降は、化石燃料を熱源としたボイラー設置に対する補助金禁止も加盟国に求めるなど、現在EUでのエネルギー消費量の約40%を占める建物分野において脱炭素化・エネルギー効率化を促進する内容となっている。同指令案は2024年3月12日に欧州議会で採択されており、今後EU官報に掲載後、発効する予定である。
2024.04.11
中国:300MW級の圧縮空気エネルギー貯蔵発電所が系統接続
現地紙は2024年4月11日、国家能源建設集団傘下の中国能建数科集団と国家電網傘下の国網湖北総合能源服務が共同出資し、湖北省応城市に建設した300MW級圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電所の実証プロジェクトが系統接続したと報じた。同プロジェクトへの投資額は19.5億元(約400億円)であり、廃塩鉱に圧縮空気を貯めることで蓄電し、出力は300MW、容量は1,500MWh、変換効率は70%となっている。報道によると、CAESの規模やコスト、寿命、効率は揚水発電所に匹敵する。
2024.04.06
韓国:新ハヌル2号機、営業運転を開始
2024年4月6日付報道によると、韓国水力原子力発電(KHNP)は、建設中の新ハヌル原子力発電所2号機(APR1400、140万kW)が営業運転を開始したことを発表した。同号機は2023年12月6日に連鎖反応が持続する初臨界を達成し、同月21日には電力系統に接続された後、段階的な出力上昇試験や原子炉とタービン発電機の性能試験を含む各種試験を行っていた。同号機の営業運転開始により、セウル原子力発電所1、2号機(旧名:新古里原子力発電所3、4号機)および新ハヌル原子力発電所1号機に次いで、韓国で4基目の運転中のAPR1400型炉となった。さらにAPR-1400型炉2基がセウル原子力発電所3、4号機として建設中の他、同型炉2基が新ハヌル原子力発電所3、4号機として計画されている。
2024.04.11
韓国:野党「共に民主党」が総選挙で単独過半数獲得
現地紙は2024年4月11日、4月10日の総選挙で野党「共に民主党」の過半数獲得が確実視されると報じた。それによると、小選挙区と比例代表の計300議席のうち、共に民主党は改選前(156議席)から議席を大幅に増やし170議席以上を獲得する見込み。一方で、尹錫悦大統領の与党「国民の力」は改選前(114議席)から議席を減らし105議席前後となり、少数与党のままとなる。共に民主党はエネルギー政策について、2035NDC(国別削減目標)でGHG排出量を2018年比52%削減する目標や2040年までの石炭火力全廃、韓国版IRA(米国のインフラ抑制法)の制定をエネルギー政策の公約としている。
2024.04.09
イタリア:イタリア北部の水力発電所で火災・爆発事故が発生
複数の現地報道によると2024年4月9日、現地時間午後に水力発電所の火災・爆発事故が発生した。事故により、少なくとも3名の死亡が確認され、ほかに複数の死傷者や不明者の存在が伝えられている。現場はイタリア北部のSuviana貯水池(ボローニャ市の南方、約70km)に位置するBargi水力発電所(出力:33万~34万kW、約50年運転)で、事故に伴う浸水の影響により救助作業が難航している様子が伝えられている。事故の原因は明らかにされていないが、事故当時はメンテナンス作業中であったことが報じられており、また、一部報道では、発電所のタービンに不具合が生じていた可能性が指摘されている。ダム自体は破損を免れている。発電所を管理するEnel Green Power(イタリア電力大手Enelの子会社)は、発電所の運転を停止する一方、地域や国内の電力の安定供給に支障は生じていないと発表している。
2024.04.03
台湾:台湾でM7.2の地震が発生、37万戸以上が停電
現地紙は2024年4月3日、同日7時58分に台湾東部の花蓮県沖でM7.2の地震が発生し、複数の発電所がトリップした他、広範囲で停電が発生したと報じた。それによると、火力発電機8基がトリップし一時的に約320万kWが失われたが、3基(和平2基、台中1基)以外は当日中に復旧しているほか、原子力発電所は正常な状態を維持している。また、宜蘭県や新北市、台北市などを中心に台湾全土で計37.1万戸以上が停電したが、当日中に99%以上が復旧している。
2024.04.03
スイス:スイス最古のベツナウ発電所、60年を超える運転延長を検討
2024年4月3日付の報道によれば、スイス最古のベツナウ原子力発電所1、2号機(PWR、各38万kW)で60年を超える運転延長について、技術的側面に焦点を当てた調査が開始された。同発電所を運転するAxpo社によると、60年を超える運転の可否は、原子炉圧力容器に代表される重要機器の健全性、人員、サプライチェーン、燃料の入手可能性などいくつかの要因に左右され、調査には1年程度を要する見込み。1号機は1969年に、2号機は1972年にそれぞれ運転を開始し、両号機は地域熱供給事業も実施している。スイスの原子力発電所に運転期間の制限はなく、スイス原子力安全検査局(ENSI)が安全と判断する限り運転を行うことが可能となっている。Axpo社は、同発電所2基の試運転以降、改修と改良工事に25億スイス・フラン(約4,200億円)以上を投資しているという。
2024.04.03
ドイツ:IEA-PVPSがPVモジュールのリサイクルインフラの強化を提言
2024年4月3日付の報道によると、国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEA-PVPS)は、PVモジュールの回収・リサイクルに関する報告書を発表した。報告書では、ドイツでは今後数年間で耐用年数を迎えるPVモジュールの廃棄量が増加し、2030年にはPV廃棄量が40万~100万tになると推定されており、リサイクルインフラの強化と処理プロセスの拡大の必要性が指摘されている。なお、国内では過去にいくつかのPVモジュールのリサイクルに関するイニシアティブが開発されてきたが、産業レベルでの実用化には至っていないという。
2024.04.01
中国: 国家発展改革委員会、農村での分布式風力発電開発に関する通知を発表
国家発展改革委員会は2024年4月1日、国家能源局と農業農村部と連名で農村部での分布式風力発電開発活動である「千郷万村馭風行動」に関する通知を発表した。それによると、農村部の各行政村単位で風力投資建設モデルと土地利用を整備し、20MW以下の風力発電所を建設することで村の経済成長とカーボンニュートラルを促進する。今後、各省のエネルギー部門は関係各所と協力し制度設計と実証試験を推進する。
2024.04.01
中国:内モンゴルに「水素アイランド」構想
大手メディアは2024年4月1日、3月26日に開催された2024年中国国際水素エネルギー・燃料電池産業展示会において、内モンゴル自治区オルドス市政府と大手国有企業国家能源集団公司が共同で世界クラスのグリーン水素生態イノベーションゾーン「水素アイランド」構想を発表したと報じた。同構想は日量700tのグリーン水素を生産できる産業基地を開発するほか、グリーン水素エネルギーの持続可能な開発に関するイノベーション技術の研究・実証を行うプラットフォームを提供する。これに対して、中国水素連盟(CHA:China Hydrogen Alliance)傘下の研究院、事業者などは支援を表明し、中国科学院(CAS)、国際水素エネルギー評議会など関連団体も注目しているという。
2024.04.01
米国:EIA、2023年に米国が世界最大のLNG輸出国となったことを発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2024年4月1日、2023年に米国が世界最大のLNG輸出国となったことを発表した。米国における2023年のLNG輸出量は平均119億立方フィート/日(11.9 Bcf/d)となり、2022年比で12%増加した。EIAはこの増加の理由として、(1)フリーポートLNG基地(テキサス州、2022年6月に発生した火災により操業を一時停止)が2023年2月に再稼働し、2023年4月までにフル生産に拡大したこと、(2)国際天然ガス価格の高騰を背景に、欧州でのLNG需要が比較的堅調であったことを挙げた。2023年の米国のLNG輸出先の内訳は、欧州(66%)、アジア(26%)、ラテンアメリカと中東(8%)であった。その中で国別上位はオランダ、フランス、英国であり、この三カ国の合計が全体の35%(4.2 Bcf/d)を占めた。
2024.04.01
米国:DOE、石炭から原子力への置換えに関する地域社会向け情報ガイドを発行
米国エネルギー省(DOE)は2024年4月1日、廃止または廃止予定の石炭火力発電所を原子力発電所に置き換えること(C2N:coal-to-nuclear)を検討している地域社会に向けて情報ガイド「Coal-to-Nuclear Transitions:An Information Guide」を発表した。同ガイドは、C2Nにより、地域の雇用機会が増加し、また、より高い賃金の雇用が創出され、地域社会の収益と経済活動が促進されることを示した調査結果に基づいて作成されている。また、研修のための計画と支援があれば、既存の石炭火力発電所の従業員の大半が、代替となる原子力発電所での仕事に移行できることも明らかにされている。同ガイドの目的は、C2Nに関心を持つ地域社会に対し、経済的影響、労働力の転換、政策・資金調達などの情報を提供することであり、電力会社に対しては、新たな原子力発電所の発電容量や建設場所、既存インフラの再利用可能性、運転停止期間の許容度など検討の際の留意点を示している。

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