2025 年度
海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。
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2025年度
- 2025.6.9
- 中国:中国とアゼルバイジャン、エネルギー協力協定を締結
- 現地メディアは2025年6月9日付で、現地時間6月4日にアゼルバイジャン政府エネルギー省が中国能源建設公司との間で、再生可能エネルギー、電力系統に加え関連人材育成を含む包括的エネルギー協力パートナーシップ協定を締結したと報じた。協定には、カスピ海域での200MW洋上風力発電プロジェクト、160MWのFuzuli太陽光発電所および水力発電の計画に加え、再生可能エネルギー輸送用のグリーンエネルギー回廊の推進が盛り込まれている。また、研究センターの設置、研修プログラムの策定を通じて、再生可能エネルギー分野の人材育成なども含まれている。今回の協定は、「バクー・エネルギー・フォーラム」の枠組み内で双方が共同署名したものであり、2025年4月の北京での両国の首脳会談で合意された枠組みに法的な裏付けを与えるものとなる。
- 2025.6.9
- 英国:政府、新築住宅への太陽光パネル設置義務化を示唆
- 政府は2025年6月6日、今秋に発表予定の建築基準Future Homes Standardに、新築住宅への太陽光発電設備設置義務を含めることを示唆した。同時に提示された試算によれば、現在の価格上限規制に基づく場合、一般的な家庭で年間530ポンド(約10万4,000円)の電気料金を節約できる。Future Homes Standardに関しては、前保守党政権時から議論されており、同政権下では、新築住宅の床面積40%相当の面積への太陽光発電設備設置を義務化する内容で意見公募も行われていた。現労働党政権は、この保守党案では多くの例外が生じ得るとし、より厳しい方式での導入を予定していると明らかにした。政府は同基準の詳細について産業界と協議中としているほか、太陽光発電だけでなくヒートポンプや地域熱供給などの低炭素熱源に関する規定の導入も示唆している。
- 2025.6.4
- 韓国:李在明大統領、再エネ移行を推進する方針
- 現地メディアは2025年6月4日、李在明大統領の就任により、エネルギー政策が大きく変化すると報じた。李大統領は再生可能エネルギーへの移行を加速し、原子力依存を段階的に削減する方針を示した。2040年までに石炭火力発電所を閉鎖し、太陽光・風力発電の拡大や再エネでエネルギー需要が賄われるRE100産業団地の建設などを推進する計画である。さらに、気候エネルギー省の新設を公約に掲げ、産業通商資源部と環境部の業務を統合し、気候エネルギー政策の総括的な管理体制を構築する方針を示した。温室効果ガス削減目標の設定やカーボンニュートラル基本法の改正を進め、排出権取引制度の有償割当比率を拡大するなどの政策を導入する予定である。また、鉄鋼・石油化学・セメントなどの高炭素排出業種における低炭素プロセスと技術革新を支援し、産業構造の脱炭素化を加速させる計画だが、現地メディアは予算の拡充や組織変更には時間を要するため、短期間での大きな変化は困難と指摘している。
- 2025.6.4
- 中国:清華大学、工業部門のCN達成の技術見通しを発表
- 専門紙は2025年6月4日、清華大学カーボンニュートラル(CN)研究院が、中国の工業部門の2060年カーボンニュートラル達成に向けた技術開発見通しについての報告書を発表したと報じた。主要な炭素削減手段として、原材料代替および廃棄物リサイクル、電化およびクリーン電力への代替、水素エネルギーへの代替、CCUS(炭素回収・利用・貯留技術)の4つの産業技術の発展により、排出削減ポテンシャルの約80%をカバーするとした。工業部門の炭素排出量は2060年に4億5,000万tに減少すると予測されており、2025年比で約95%減少となるモデルで試算されている。
- 2025.6.3
- 台湾:立法院、台中発電所の2028年までの脱石炭化を可決
- 現地紙は2025年6月3日、立法院が同日、台湾電力公司が運営する台中発電所(石炭火力55万kW×10基、ディーゼル7万kW×4基)に対して、2028年までの石炭使用全廃を目標とする決議案を可決したと報じた。国民党と民衆党の議員らが提案した決議案では、同社が進めている既存の石炭火力6基を緊急用に留めたまま新たに6基のガス火力を増設する計画に反対し、ガス火力への転換による2028年までの脱石炭を求めている。一方で、台湾電力は供給安定性の観点から目標年度を2034年としており、2028年への前倒しには慎重な立場を示している。同社は2025~2026年に130万kWのガス火力ユニット2基が完成するほか、2031年までにさらに2基のガス火力ユニットが追加される予定となっている
- 2025.6.3
- 米国:アラスカLNG、50社以上が計1,150億ドルの関心表明
- グレンファーン(Glenfarne)社は2025年6月3日、同社が主導するアラスカLNGプロジェクトの戦略的パートナー選定の第一段階が終了し、日本や韓国、EUなど50社以上から正式な関心表明を得たことを発表した。具体的な契約内容は明らかにされていないものの、これらの契約金額の合計は1,150億ドルを超える金額。ブレンダン・デュバルCEOは多くの関心表明があったことに対し、「アラスカLNGの優れた経済性、自治体の支援を市場が認識していることを裏付けている」と述べた。同社は2025年第4四半期に最終投資決定(FID)を行うとしている。
- 2025.6.3
- 米国:コンステレーション社、クリントン発電所からの電力供給でメタ社と契約
- 電力大手のコンステレーション社およびIT大手のメタ社は2025年6月3日、コンステレーション社がイリノイ州に保有するクリントン原子力発電所(BWR)で発電された電力112.1万kWを20年間にわたって供給する電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。契約は2027年6月より開始され、同州が原子力発電を支援するために確立したゼロエミッションクレジット(ZEC)制度(期限:2027年)の終了後も同発電所の運転継続を市場ベースで支援することとなる。また、コンステレーション社は、本契約によって発電所の出力を3万kW増強するとしているほか、20年間の稼働継続が保証されているため、敷地内に先進型炉または小型モジュール炉(SMR)を開発するための戦略も検討するという。なお、メタ社は以前に発表した原子力の提案依頼書(RFP)に関し、1~4GWの目標を達成する候補プロジェクトを絞り込み、最終協議を行っていると説明している。
- 2025.6.2
- フランス:洋上風力事業3件、ネガティブ価格下での発電停止が契約内容に反映
- フランス政府は2025年6月2日、商業運転中の洋上風力発電プロジェクト3件(Fécamp、Saint Nazaire、Saint Brieuc)に対し、ネガティブ価格の発生期間中に発電を停止するよう買取義務契約(日本のFIT制度に相当)の内容を修正したことを発表した。これまではネガティブ価格の発生期間中も事前に取り決められた買取価格でEDFが発電電力を全量購入し、卸電力市場へ供出しなければならず、EDFひいてはその負担を補填する国家財政に大きな負担が発生していた。仏エネルギー規制委員会(CRE)の報告によると、2024年上半期だけで関連する公的支出はおよそ8,000万ユーロに達したと分析されている。また今回の契約内容修正により、上記の3発電所は需給調整市場への調整力提供を義務付けられたほか、今後は2025年財政法に基づき同様の契約修正が買取義務契約を締結している陸上風力発電にも適用されると伝えられている。
- 2025.6.2
- 中国:製造分野の低炭素3カ年計画を採択
- 大手紙は2025年5月26日、23日の国務院常務会議で「製造分野のグリーン低炭素発展計画(2025~2027年)」が審議・採択されたと報じた。同計画は、中国政府の「2030年までのCO2排出ピークアウト」と「2060年までのカーボンニュートラル」達成に向けた製造業の変革と位置づけられ、製造業の構造転換を通じて環境と経済の両立を目指す重要な政策方針となっている。その中で、イノベーションと先進的なグリーン技術の推進と応用を加速し、新興産業の低炭素化、クリーンエネルギーとグリーン製品の普及強化、資源リサイクルの水準向上などに対して政策的支援を行うとしている。
- 2025.6.2
- 韓国:90MW級水素専焼タービン開発へ
- 現地メディアは2025年5月25日、斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)と韓国西部発電(KOWEPO)が、90MW級の韓国型水素専焼タービンの開発と実証に向けて業務提携覚書(MOU)を締結したと報じた。これにより、斗山エナビリティは技術開発と部品の量産技術の確保を担当し、西部発電は新設発電所での実証を担う。斗山エナビリティは2028年までに90MW級および400MW級の水素専焼タービンの開発を目標としている。
- 2025.6.2
- フィリピン:エネルギー規制委員会、2件の500kV送電線プロジェクトを承認
- 2025年5月23日付報道によると、エネルギー規制委員会(ERC)は、フィリピンの送電事業者NGCPの総額320億PHP(約826億円)となる2件の500kV送電線プロジェクトを承認した。承認されたプロジェクトは、188億PHP(約485億円)となる西ルソン500kV基幹送電線プロジェクトと132億PHP(約341億円)となるルソン島中部のナグセアッグ‐サンティアゴ500kV送電線プロジェクトとなる。ERCはNGCPに対し、西ルソンのプロジェクトを2027年10月まで、ルソン島中部のプロジェクトを2030年11月までに完了するように指示した。
- 2025.6.2
- EU:ネットゼロ戦略プロジェクト選定基準が公表
- 欧州委員会は2025年5月23日、前年に成立したネットゼロ産業法の細則(案)として、ネットゼロ戦略プロジェクトの選定基準ガイドラインを公表した。ネットゼロ戦略プロジェクトとは、ネットゼロ技術の製造プロジェクトのうち、プロジェクト主体からの申請に応じ加盟国が認定するもので、許認可手続期限の短縮により、加盟国に迅速なプロジェクト遂行が義務付けられる。ネットゼロ産業法では、選定基準として大きく(a)レジリエンス寄与効果、(b)サプライチェーン貢献、(c)EUの気候・エネルギー目標への貢献の3つが定められたが、今回の細則(案)では、加盟国間で上記基準の解釈を統一すべく、「『利用可能な最善の』技術(‘best available’ technology)」をはじめとした用語の定義や、定量的基準が提示された。これらは欧州委員会の実施決定(Implementing Decision)の形をとり、本細則の官報掲載から20日後に発効する。
- 2025.6.2
- EU:再エネ入札実施に伴う非価格条件の詳細が公表
- 欧州委員会は2025年5月23日、前年に成立したネットゼロ産業法の細則(案)として、再エネ入札における非価格条件の詳細を規定した。1カ国当たり年間入札量の3割または6GW以上が対象となる。まず、入札の「参加条件」として、(1)雇用面の考慮、(2)実現可能性の報告、(3)サイバーセキュリティ要件の3点が課された。さらに、加盟国裁量で「参加条件」から入札の「評価項目」に変更可能な(4)レジリエンス基準、(5)環境・持続可能性基準が規定された。(4)では、ある第三国に一定以上依存する技術について、別途規定の主要部品に対する当該国の関与を制限する(例えば陸上風力の場合、その第三国産タービンの禁止、同国産の主要部品は3つ以下)。(5)は環境影響評価に加え、新技術促進を目的としたイノベーション評価も含む。これらは欧州委員会の実施決定(Implementing Decision)の形をとり、本細則の官報掲載から20日後に発効する。
- 2025.6.2
- 米国:トランプ大統領、原子力発電を推進する4つの大統領令に署名
- トランプ大統領は2025年5月23日、規制緩和などで原子力発電設備容量を2024年の1億kWから2050年までに4億kWへ拡大する政策などを含む、4つの大統領令に署名した。同大統領令は、(1)原子力規制委員会(NRC)の改革、(2)国家安全保障のための先進型原子炉技術の配備、(3)エネルギー省(DOE)における原子炉試験の改革、(4)原子力産業基盤の再活性化、に関する4つ。(1)はNRCに対し、新設原子炉の建設・運転許認可および既設炉の運転延長認可の審査期限を、申請からそれぞれ18カ月および1年以内とするよう指示。NRCは、発令日から18カ月以内に最終規則と指針を発行する。(4)はDOE長官に対し、使用済燃料(SF)管理を支援する国家政策、SFの再処理・リサイクル評価、回収プルトニウムの効率的利用策などの報告、産業界と協働した2030年までの大型炉10基の着工、政府融資や債務保証の原子力支援への優先配分などを命じている。
- 2025.6.2
- 米国:連邦上院、下院に続きカリフォルニア州EV規制の撤回決議案を可決
- 米国連邦議会上院は2025年5月22日、議会審査法(CRA)に基づき、カリフォルニア州による3つのEV関連規制に対するEPAの承認を撤回する決議案を可決した。これにより、先に同様の決議案を可決していた下院とあわせて、上下両院での手続きが完了した。対象となったのは、商用トラックやバスのZEV販売を義務付ける「Advanced Clean Trucks」、大型ディーゼル車のNOx排出を制限する「Heavy-Duty Low NOx Omnibus」、および2035年までにガソリン車・ハイブリッド車の新車販売を段階的に禁止する「Advanced Clean Cars II」であり、いずれも大気浄化法に基づくEPAの免除措置として、バイデン政権下で承認されたものである。なお、上院での可決を受け、カリフォルニア州は本措置を違憲と主張し、連邦政府を提訴する方針を明言している。
- 2025.6.2
- デンマーク:洋上風力発電入札の新たな条件に与野党が合意、CfDを採用へ
- エネルギー情報誌は2025年5月19日、政府と野党7党が洋上風力発電入札に採用する新たな条件に合意したと報じた。2024年に実施した入札では、事業環境が悪化する中、政府による支援はなしとしたため応札する事業者が現れず、入札不調となり入札条件の変更が検討されていた。今回の記事によると、次回の入札は差額決済方式による固定価格買取制度(CfD)を採用し、一定価格での買取を保証して事業収益の予見性を確保する。次回の入札は3つの海域(発電出力はそれぞれ100万kW)を対象に2025年9月に開始され、2海域の事業は2032年、残る海域の事業は2033年に運転を開始する計画である。
- 2025.6.2
- 台湾:第3原子力発電所2号機が運転停止し、「非核家園」実現
- 現地紙は2025年5月17日、第3(馬鞍山)原子力発電所2号機(PWR、95万1,000kW)が運転を停止したと報じた。1985年5月に運転を開始した第3原子力発電所2号機は40年間の運転ライセンスの期限切れにともない、同日13時から出力を段階的に低下させ、22時に電力系統から解列、0時に運転停止した。これにより台湾は正式に「非核家園(脱原子力)」へ移行する。台電は、今年中に合計約500万kWの大型ガス火力発電設備および約350万kWの風力・太陽光発電が新たに稼働予定であり、安定した電力供給が可能であるとしている。なお、野党が多数派である立法院は原子炉規制の法改正を5月13日に可決し、運転ライセンスの期限切れ後も申請と審査により、原子炉の最長20年間の運転ライセンス更新が可能となった。
- 2025.6.2
- 米国:ムーディーズの格下げにより米国の財政不安拡大、債務対応が急務
- 米格付け会社ムーディーズは2025年5月16日、米国のソブリン格付けを最上位のAaaから、Aa1に1段階引き下げた。ムーディーズは米国の経済規模や金融政策は引き続き評価できるものの、2017年税制改革法(TCJA:the Tax Cuts and Jobs Act of 2017)の延長を前提とすると、今後10年間で4兆ドルの財政赤字が追加されるとし、債務利払い、社会保障など歳出の増加に対して低い歳入の伸びにより、財政の悪化が懸念されるとした。連邦議会下院予算委員会ではトランプ大統領が進めるTCJAの延長を含む大規模減税・支出法案を最終的に承認したが、財政赤字の拡大について党内外から批判の声が高まっている。米国の債務残高は既に36兆ドルに達していることから、将来的な債務負担への懸念が強まっており、8月には連邦政府の債務上限に達するとの見方も広がっている。
- 2025.6.2
- 中国:20兆円規模の国家ベンチャーキャピタルファンドを設立
- 地元メディアは2025年5月15日、中国人民銀行、国家発展改革委員会、科学技術部(日本の省に相当)などが1兆元(約20兆円)規模の国家ベンチャーキャピタルファンドを設立したと報じた。同ファンドは、AIや量子科学・技術、水素電池などの先端分野における創業初期段階の企業を対象に、画期的で独創的な技術力を持つ企業の技術開発に充てられ、戦略的新興産業や未来産業の育成に資金を活用することを目的としている。また、ファンドの存続期間は20年で、政府主導による比較的長期の投資期間を持つファンドであることが特徴となっている。
- 2025.6.2
- 英国:新設の公営企業Great British Energyを確立させる法案が成立
- エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2025年5月15日、現政権の公約のもとで設立された公営エネルギー企業Great British Energy(GBE)に法的根拠を与える法案が成立したと発表した。これにより、DESNZ大臣に対し、GBEに財政支援を提供する権限や、GBEの戦略的優先事項に関する声明を作成し議会に提出する義務が与えられる。GBEには今議会中(2029年まで)に83億ポンド(約1.6兆円)の予算が充てられる予定であり、英国内のクリーンエネルギープロジェクトに対する民間セクターとの連携を通じた投資により、化石燃料依存からの脱却と低廉なエネルギー料金の実現につながることが期待されている。DESNZは先行して4月に学校や病院に太陽光発電を設置する投資計画を発表しているほか、法案成立の前日(5月14日)にもスコットランドやウェールズのコミュニティ規模の再エネプロジェクト基金に対する支援を表明している。
- 2025.6.2
- イタリア:Enel、次世代原子力研究を担う新会社「Nuclitalia」の設立を発表
- イタリアのエネルギー大手Enelは2025年5月14日、同国のエンジニアリング大手Ansaldo Energiaおよび防衛産業大手Leonardoと共同で、次世代原子力技術の研究および市場機会の分析を行う新会社「Nuclitalia」の設立を発表した。出資比率はEnelが51%、Ansaldo Energiaが39%、Leonardoが10%である。Nuclitaliaは、まずは軽水冷却型小型モジュール炉(SMR)に焦点を当て、同国のエネルギーシステムに適した要件の定義や、技術・経済の両面からの分析を通じて最適な設計の選定を行う。また、産業パートナーシップの構築や共同設計の機会も模索するという。なお、取締役会は7名で構成され、元ミラノ工科大学学長のFerruccio Resta氏が会長に、Enelの原子力イノベーション部門責任者のLuca Mastrantonio氏がCEOに就任している。
- 2025.6.2
- 米国:NERC、2025年夏季信頼性評価を発表、IBR電源がリスクの可能性
- 北米電力信頼度協議会(NERC)は2025年5月14日、2025年夏季信頼性評価(2025 Summer Reliability Assessment)を発表した。電力需要は2024年夏以降、データセンターなどの需要により10GW増加し、前年増加量の2倍以上となった。供給力は7.4GW(化石燃料発電設備が4.6GW、原子力設備が1.2GW、その他1.6GW)が閉鎖される予想だが、太陽光や蓄電池などインバータベース電源(IBR:Inverter Based Resources)が35GW増加する見込み。NERCは全地域において夏季のピーク需要に対して十分な供給力があると予測しているが、MISO、ERCOT、SPP、ISOニューイングランドは火力発電所の閉鎖や再エネ依存による供給力不足の可能性や電源の変化が系統混雑時にオフラインになるリスクを指摘した。
- 2025.6.2
- 韓国:2024年エネルギー需給動向を発表
- 現地メディアは2025年5月13日、産業通商資源部が発表したエネルギー需給動向によると、2024年の発電量は595.6TWh(前年比1.3%増)であったと報じた。発電源別で見ると、原子力が188.8TWh(構成比31.7%)、ガスが167.2TWh(同28.1%)、石炭167.2TWh(同28.1%)、再生可能エネルギーが63.2TWh(同10.6%)であり、原子力が18年ぶりに最大電源となった。再エネ、ガスおよび原子力の発電量は前年実績を上回ったが、石炭は前年比9.6%の減となった。発電設備容量は153.1GWで、ガスが46.3GW(構成比30.3%)、石炭が40.2GW(同26.3%)、再エネが34.7GW(同22.7%)、原子力が26.1GW(同17.0%)であった。
- 2025.5.30
- 中国:コンピューティングとエネルギーの相互運用の行動計画を発表
- 工業・情報化部(MIIT)は2025年5月30日、「コンピューティングパワーの相互接続と相互運用性に関する行動計画」を発表した。コンピューティングパワー(算力)とエネルギーインターネット、産業インターネット、モバイルインターネットなどの相互接続・応用のため、一連の統合革新アプリケーションの開発を促進する。同計画では、2026年に相互接続・応用のための基準、標識、企画体制を整備し、2028年には全国規模の公共コンピューティングパワーの標準化された相互接続を基本的に実現し、インテリジェントな知覚(智能感知)、リアルタイム検知、ニーズに応じた取得を備えたコンピューティングパワー・インターネットの形成を目標としている。
- 2025.5.29
- 米国:連邦最高裁、NEPAの環境審査を限定することを全会一致で判決
- 連邦最高裁判所は2025年5月29日、ユタ州の鉄道建設計画をめぐる訴訟で、環境審査の範囲を対象プロジェクトに限定することが適正との判決を全会一致で下した。同判決は天然ガスパイプラインなどエネルギープロジェクトにも影響を与える可能性がある。2000年代から国家環境政策法(NEPA)に基づく環境審査の範囲が拡大解釈され、プロジェクトの実現に伴う化石燃料消費の増加、気候変動影響の評価を求めるなど、審査への過剰な要請が一部プロジェクトの障害となっていた。判決により、対象プロジェクトを超える事象について環境影響の評価が不要となり、訴訟によるプロジェクト遅延や妨害が制限されることとなる。米国石油協会(API)ライアン・マイヤーズ上級副会長兼法務顧問は「不完全な許可手続きが米石油・天然ガス生産の妨げとならないよう、NEPAを本来の趣旨に戻した」と判決を称賛した。
- 2025.5.28
- 米国:EIA、カリフォルニア州の太陽光・風力発電の出力抑制の増加を報告
- 米国エネルギー情報局(EIA)は2025年5月28日、カリフォルニア独立系統運用者(CAISO)が2024年に実施した太陽光・風力発電の出力抑制の対象となった発電電力量が前年比29%増の34億kWhに達したと報告した。そのうち太陽光が全体の93%を占め、特に気候が穏やかな春季の日中に供給過剰になり(空調などの電力需要が小さくなる一方、太陽光発電による供給が大きくなるため)、出力抑制が実施された。同州における太陽光と風力の発電設備容量は2014年の970万kWから2024年に2,820万kWに急増しており、電力系統の安定性確保が課題となっている。対策として、蓄電池の活用や電力市場取引の拡大、再エネを利用した水素製造による余剰電力の活用などが進められているが、EIAは送電容量の増強や長時間の電力貯蔵設備が無ければ出力抑制は避けられないと指摘している。
- 2025.5.27
- 韓国:韓国電力公社、「第11次長期送変電設備計画」を発表
- 現地紙は2025年5月27日、韓国電力公社が同日、「第11次長期送変電設備計画」を発表したと報じた。この計画では、72兆8,000億ウォン(約7兆2,800億円)を投じ、2038年までに送電線路を2023年比で72%増加することを目指している。再生可能エネルギー拡大への対応と電力需要の増加、供給の安全性を目標として掲げている。本計画の核心は、湖南地域と首都圏を結ぶ超々高圧直流送電(HVDC)システムの再構築と、龍仁市の半導体クラスターへの電力供給インフラの整備である。韓国電力経営研究院によると、本計画によって約134兆ウォン(約13.4兆円)の経済波及効果と約48万人の雇用創出が期待されている。
- 2025.5.27
- アイルランド:着床式洋上風力発電、最大1,800万kWの追加導入ポテンシャル
- アイルランド政府は2025年5月27日、同国沿岸部における洋上風力発電技術の導入ポテンシャルを評価した報告書を公表し、計画が進行中の約830万kWに加え、さらに350万~1,800万kWの着床式洋上風力発電を導入可能であることを伝えた。とりわけ東海岸と北海岸に導入の余地があるとされており、なかでも需要地に近く系統増強に係るコストが少ない東海岸が有望であるとされている。また報告書では浮体式洋上風力発電の実証サイトや大規模展開を対象とした評価も行われ、9,000万kW以上の導入ポテンシャルがあると評価されているが、2025年時点で技術的に開発可能ないずれの海域においても着床式の方がコスト効率に優れると結論付けられている。
- 2025.5.27
- 欧州:北欧5カ国の規制当局、原子力規制で連携強化へ新戦略策定
- 2025年5月27日付の報道によると、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの5カ国の放射線・原子力安全規制当局は、相互協力を強化するための包括的戦略「Nordic Strategy Group Report」を公表した。これは2023年8月、アイスランドのレイキャビクで開かれた年次会合において、各国の原子力安全当局の長官が地政学的状況や原子力への関心の高まりに対応する共通戦略の策定を決定し、発足した作業部会「Nordic Strategy Group」による成果だという。同戦略では、原子力施設および核物質の許認可や監督に関する知識の共有と共同研修、放射線防護分野での情報交換、事故発生時の対応体制の強化、国際支援活動への貢献、さらに国際協力フォーラムにおける北欧地域の発信力向上など、5分野13項目にわたる協力強化策が示されている。今後数カ月内に各国当局が勧告の具体化に向けた行動計画を策定する予定である。
- 2025.5.13
- 台湾:原子炉規制の法改正により運転許可の延長を最長20年まで可能に
- 台湾立法院では2025年5月13日、「核子反応器(原子炉)施設管制法」第6条の修正案が三読を通過した。これにより原子力発電所の運転許可に関する規定が改正される。改正前は、運転許可の有効期間は最長40年と定められていたが、今回の修正により、事業者が主管機関の規定する期限内に申請し、安全性の確認と審査を経て承認されれば、当該期間終了後もさらに最長20年間の許可更新が可能となった。修正条文では、更新後の許可期間は新たな許可の発効日から起算することが明記され、申請に必要な書類、審査手続き、その他の順守事項は主管機関が別途定めるとされた。また、許可の更新を申請せずに期限を迎えた場合は、運転継続は認められないとする規定も加えられている。修正案は、野党・国民党と民衆党が規定改正を主張して提出し、与党・民進党の反対を押し切って、賛成60票・反対51票で可決された。
- 2025.5.08
- 中国:最大送電容量の±800kV UHV直流送電系統が運用開始
- 中国最大の送配電事業者である国家電網有限公司は2025年5月8日、陝西省慶陽から山東省東平を結ぶ送電容量最大800kWの±800kV特高圧(UHV)直流送電プロジェクト「隴東—山東工程」が運用を開始したと発表した。同送電系統は風力、太陽光など再エネが豊富な地域である甘粛省の慶陽変換所から始まり、陝西省、山西省、河北省、山東省の5つの省を経由、延長915km、総投資額は202億元(約4,240億円)とされている。同社によれば、送電端に接続されている電源は1,450万kW(うち再エネ電源1,050万kW)、系統用蓄電システムが105万kWとなっている。なお、本系統は同社の39件目のUHV送電系統となっている。
- 2025.5.08
- ノルウェー:Statkraft、全市場でのグリーン水素事業の新規展開を断念
- ノルウェーの電力大手Statkraftは2025年5月8日、グリーン水素事業について、今後すべての市場において新規プロジェクトの展開を断念する方針を発表した。なお公的資金の注入を受けているものも含めた進行中の一部プロジェクトについては、今後も投資家の呼び込みに向けてプロジェクトの成熟度を向上させる意向が示されている。今回の決定に至った要因として、同社は高まり続ける水素市場の不確実性を挙げており、今後は短・中期的に高い収益性が期待できる別の技術や電力取引事業に優先して取り組むとしている。Statkraftは2024年度通期決算において減収減益を計上しており、競争力強化を目的とした事業・技術ポートフォリオの再編を今後の優先事項に掲げていた。
- 2025.5.07
- 米国:Google、3つの先進的原子力プロジェクトに初期段階の資金提供
- Googleと原子力プロジェクト開発企業Elementl Power(EP)社は2025年5月7日、米国での先進的原子力プロジェクトを目的とした建設候補地の事前確保に関する戦略的協定を締結したと発表した。Googleが初期段階の資金を提供し、EP社が3カ所の候補地を整備してそれぞれ60万kW以上の発電容量を目指すプロジェクトを準備するとしている。EP社によると、完成後は商業利用のオプションも付与されるという。2022年に設立された同社は自らを「技術にとらわれない」先進的原子力プロジェクト開発・独立系発電事業者(IPP)と称しており、公益事業会社や他のIPP、技術サプライヤーなどと協力し、2035年までに米国で1,000万kW以上の原子力を導入することを目標としている。今後、EP社は開発を加速させるために特定の場所を優先しながら、有望な技術、エンジニアリング、調達、建設、その他のプロジェクトパートナーの評価を継続するとしている。
- 2025.5.05
- 米国:CAISO、2025年夏季の電力需給の見通しを発表
- カリフォルニア独立系統運用者(CAISO)は2025年5月5日、2025年夏季の電力需給の見通しをまとめた「2025 Summer Loads and Resources Assessment」を発表した。報告書によると、同州の電力需給は夏季の需要に対して1,451MWの余力があり、10年に1度の需給ひっ迫水準に達しても十分な供給力があるとしている。これは継続的な電力系統への新規電源接続によるもので、2024年9月~2025年6月までの間に新たに5,535MWが追加される見込み。特に、4時間対応可能なリチウムイオン電池の蓄電容量が約1万1,000MWに拡大し、信頼度向上に寄与している。また、2025年6~9月にかけて米国西部地域全体で平年より高い気温になる可能性が高いが、CAISOと州政府は緊急時の対策を講じており、複数のプログラムを通じて3,379MWの追加的な支援を受けることができるとしている。
- 2025.5.01
- スペイン:イベリア半島(スペイン)大停電に関するその後の動き
- 欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)は2025年5月1日、イベリア半島での大停電に関し専門家パネルを設置、根本原因を調査し対策に関する勧告を最終報告書にまとめると発表した。なお、最終報告書に先立ち、事故の技術的な詳細報告書を発表するとしている。同月5日、欧州エネルギー規制者協調機関(ACER)は、同専門家パネルに参加し、事故の根本原因の特定を支援することを表明した。また、スペイン第三副大統領兼環境移行・人口問題担当大臣のアーゲセン氏は同日のインタビューで、これまでの政府の予備調査によると、同国南西部で起きた2件の太陽光発電所の大規模脱落に加え、大停電発生の19秒前にも太陽光発電所の脱落が1件、南部で発生し、この連続する3件の脱落の最後に大停電が発生したとの因果関係を示唆した。最後の2件の電源脱落については大停電当日に行われた送電系統運用者Red Eléctricaの記者会見でも停電との関連性が指摘されている。
- 2025.4.28
- ドイツ:卸売電力価格ゾーンの分割提案、独電力業界と産業界が反対を表明
- 欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)は、2025年4月28日に公表した報告書にて、ドイツ・ルクセンブルクで単一となっている卸売電力価格ゾーンを5分割する案を提示した。同報告書によると、分割により2025年に節約できる費用は2億5,100万~3億3,900万ユーロになるとし、系統混雑緩和や再給電コスト削減を利点に挙げた。他にも北欧やオランダ、フランスなどの分割もシミュレーションされたが、マイナスもしくはわずかなプラスであった。同提案に対し、ドイツ連邦エネルギー水道事業連合会(BDEW)やドイツ自動車工業会(VDA)は「製造企業が多い南部で電力価格が上昇し産業競争力の低下を招く。逆に北部では電力価格が下がり、再エネの収益が減ることとなる」と反対を表明。また、新政権も連立協定の中で分割に反対している。地元誌によると、6カ月以内にEU加盟国が全会一致で決定できない場合は、欧州委員会が判断することとなる。
- 2025.4.27
- 中国:国務院が5サイト原子炉10基(華龍1号、CAP1000)の新設を承認
- 国務院常務会議(日本の閣議に相当)は2025年4月27日、原子力発電所5サイトにおける10基の原子炉の新規建設計画を承認した。中国広核集団有限公司(CGN)は広東省の台山3、4号機(華龍1号、各120万kW)および広西チワン族自治区の防城港5、6号機(華龍1号、各120万8,000kW)を建設する。中国核工業集団有限公司(CNNC)は浙江省の三門5、6号機(華龍1号、各120万8,000kW)を建設する。さらにCNNCと華能集団公司の共同プロジェクトである福建省の霞浦1、2号機(華龍1号、各121万5,000kW)も建設承認を受けた。同サイトでは現在、2基のCFR-600ナトリウム冷却高速中性子炉が建設中である。さらに、国家電力投資集団(SPIC)が主導する山東省海陽5、6号機として、AP1000の中国版であるCAP1000の2基の建設も承認した。同サイトでは現在 AP1000が2基運転中、CAP1000が2基建設中となっている。
- 2025.4.21
- 米国:FERC、PJM容量オークションの新たな上限・下限価格の設定を承認
- 連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2025年4月21日、PJMが提案した容量オークションにおける新たな上限価格および下限価格の設定を承認した。上限価格は従来の約500ドル/MW/日から325ドル/MW/日へ引き下げられ、下限価格は新たに175ドル/MW/日が設定される。ただし、これらの上限・下限は、2026/2027年および2027/2028年受渡向けの2回の容量オークションに限定した時限措置となっている。なお、今回の見直しは、2024年7月に実施された2025/2026年受渡向けの容量オークションでの価格高騰を受け、ペンシルベニア州が上限価格の見直しをFERCに申し立てたことを発端として、PJMと同州が合意した和解案に基づくものである。
- 2025.4.18
- 中国:中国の南極調査活動、クリーンエネルギー利用転換スタート
- 大手紙は2025年4月18日、中国の南極観測ステーション「秦嶺」が3月に運用を開始した新エネルギーシステムにより、極地調査活動のクリーンエネルギー利用への転換がスタートしたと報じた。それによると、秦嶺観測ステーションには80kWの風力、60kWの太陽光発電、および蓄電池で構成された電力供給システムが備えられており、ステーションのエネルギー使用量全体の60%を賄っているとされている。さらに今後は水素の利用も計画しており、2030年までに中国の南極観測ステーションではクリーンエネルギー利用への構造転換と高度化を全面的に達成することを目標としている。
- 2025.4.18
- 中国:ドローンとロボットを活用したUHV系統の活線点検作業実施
- 電力専門紙は2025年4月18日、国家電網有限公司傘下の上海市電力公司が13日に、ドローンとロボットを用いて送電中の安徽省准南市―上海市間の超々高圧(UHV、交流100万V)系統の点検作業を実施したことを明らかにした。点検作業では、大型ドローンを飛ばし、X線非破壊検査用ロボットを約100mの高さにある活線状態のUHV送電線に正確に設置し、約20分間の巡回検査を行ったという。上海市電力公司によれば、ドローンなどの先進設備の運用により、日常の運用・保守作業の品質と効率が約2倍に向上したとしている。また、同社は59人の認定ドローン操縦士を擁し、133機のドローンを保有している。
- 2025.4.17
- ドイツ:Uniper、米国産LNGの大量購入を発表
- ドイツのエネルギー大手Uniperは2025年4月17日、豪州の石油・ガス大手Woodside Energyから年間200万tの液化天然ガス(LNG)を長期購入する契約を締結したと発表した。これはドイツにおける2024年のガス需要の約3%に相当する。契約量の半分に当たる100万tは、米国ルイジアナ州からFOB(本船渡し)ベースで供給され、最長13年間の長期契約となる。残る100万tはWoodside Energyの子会社Woodside Energy Trading SingaporeがDES(着渡し)ベースで供給する。供給産地は未定で、契約期間は2039年までを予定している。なお本契約の履行は、ルイジアナ州で計画中のLNG輸出ターミナルLouisiana LNGにおける、年間1,650万tの処理能力を有する3基のトレイン(液化設備)建設に関するWoodside Energyの最終投資決定(FID)を前提としている。
- 2025.4.17
- 米国:EIA、2024年の天然ガス生産量は横ばいと報告
- 米国エネルギー情報局(EIA)は2025年4月17日、米国における2024年の天然ガス生産量は日量113Bcf(10億立方フィート)で、前年のほぼ横ばい(0.4Bcf未満の増)だったと報告した。最大の生産地であるアパラチア盆地は、パイプラインの輸送能力の制約や天然ガス価格の低迷により、日量35.6Bcf(前年比0.5Bcf、0.1%増)と伸び悩んだ。パーミアン盆地は原油生産に伴う随伴ガスの増加により日量25.4Bcf(前年比2.7Bcf、12%増)となった。ヘインズビル盆地では天然ガス価格の低迷を背景に日量14.6Bcf(前年比1.8Bcf、11%減)となった。ヘインズビル盆地は、他の地域と比較して井戸が深く掘削コストが高いため、天然ガス価格の低迷が生産に大きく影響した。2024年のヘンリーハブ平均価格は過去最低の2.21ドル/MMBtuを記録していた。
- 2025.4.16
- 中国・ベトナム:中国・ベトナム共同声明に原子力発電協力
- 新華社は2025年4月16日、ベトナムを訪問中の習近平国家主席とルオン・クオン国家主席の共同声明の内容を発表した。共同声明には、人工知能、クリーンエネルギー、グリーン開発、デジタル経済などの新興分野における協力の強化、安全で安定した産業チェーンとサプライチェーンの共同構築に加え、原子力発電分野での協力が盛り込まれている。具体的には、原子力発電の研究開発協力を検討し、安全規制および原子力安全の標準化の分野における協力を強化するとされている。
- 2025.4.14
- 中国:政府、石炭火力発電アップグレード行動計画を発表
- 現地紙は2025年4月14日、国家発展改革委員会と国家能源局が「新世代石炭火力発電アップグレード特別行動実施方案(2025~2027年)」(以下、方案)を公表したと報じた。方案では電力現物市場、アンシラリーサービス市場、石炭火力容量価格メカニズムの整備を奨励するとともに、新型電力システムへの適応に向けて、石炭火力発電設備の効率的な調整力の強化と環境価値の合理的な評価を目指す。クリーン・低炭素、安全・信頼性、高効率な調整能力、智能運用の方向性に基づき、既存設備の改造や新設機の建設・運用、新世代石炭火力の試行を指導するものとなっている。技術要件としては、調整能力では最低出力を既存機では25~40%に、新設機では25%以下に、新世代機では20%以下とすることを求めている。このほか、周波数制御機能との両立も重視し、出力変化率やピーク対応能力が求められている。石炭消費の指標について、新世代機では超々臨界・水冷コンデンサ方式では標準炭換算で270g/kWh以下(注:熱効率45.5%以上)が目安とされている。
- 2025.4.11
- 中国:仮想発電所(VPP)の構築加速に指針発表
- 国家発展改革委員会および国家能源局は2025年4月11日、電力供給の安定化に役立つ仮想発電所(VPP)の構築加速に関する指針を発表した。同指針は、分散型電源を含む様々な分散型リソースを仮想発電所として集約し、電力系統の最適化や電力市場取引に協調する電力運用組織モデルと明確に定義・位置付け、その開発と導入の加速を求めている。具体的には、中長期電力市場、リアルタイム市場、アンシラリーサービス市場への参加メカニズムを改善・充実させ、デマンドレスポンスの機能を最適化することが提案されている。
- 2025.4.11
- ドイツ:EnBW、国内初の水素混焼ガス火力の試運転開始を発表
- ドイツのエネルギー大手EnBWは2025年4月11日、水素対応ガス火力への更新を進めていたStuttgart-Münster火力発電所(1908年運開、熱電併給)の試運転を開始したと発表した。今回の更新では、既存の石炭および重油焚きガスタービンに代わり、水素混焼可能なSiemens Energy製の天然ガスタービンが導入された。同社COOのPeter Heydecker氏は「2030年代半ばに予定している二度目の更新の後、十分な量の水素が供給されれば、同発電所は水素100%での専焼運転に移行する」との見通しを示した。他方、CEOのGeorg Stamatelopoulos氏はエネルギー転換に必要な発電所は市場原理だけでは成立困難と指摘。そのうえで、新連立政権に対し「発足後100日以内の政策パッケージの一環として、より多くの投資を促す制度設計が必要だ」と述べ、開発を後押しするインセンティブの強化を求めた。
- 2025.4.9
- 英国:UK Power Networks、ヒートポンプの電力系統安定化への利用を検証
- 英国の配電事業者UK Power Networksは2025年4月9日、ヒートポンプの活用により電力系統の安定化を目指すプロジェクトHeatNetの開始を発表した。本プロジェクトでは、AI技術を用いてヒートポンプの稼働を調整し、電力需要のピークを緩和する仕組みを構築する。英国政府は、ヒートポンプの設置台数を2028年までに年間60万台(現在3万5,000台)とする目標を掲げており、急速な普及に伴う電力系統への負担が懸念されている。本プロジェクトは現在、概念実証(PoC)段階にあり、こうした課題への対応策として期待されている。また、英国の規制機関であるガス・電力市場局(OFGEM)による戦略的イノベーション基金(SIF)の支援を受けて実施される。なお、同基金は低炭素社会の実現に向け、ガスおよび電力ネットワークの革新を促す取り組みに対して、2028年までに総額4億5,000万ポンド(約850億円)を支援する計画である。
- 2025.4.9
- 米国:トランプ政権、エネルギー規制の時限化を要請する大統領令に署名
- 現地紙は2025年3月24日、立法院経済委員会が同日、日本の電気事業法に相当する「電業法」の修正草案を初審通過させ、全条文を行政院案のまま可決したと報じた。これにより、台湾電力公司(台電)は発電・送配電・小売りを統合した現行の体制を維持し、2017年の電業法改正時に定められていた2025年末までの会社分割義務は撤回された。修正案は、2050年のカーボンニュートラル達成と電力市場の健全化に向け、再エネ取引の自由化、電力系統の柔軟性強化、取引市場の透明性向上を図っている。今回の修正には、再エネ販売事業者の取引先制限の撤廃、系統用蓄電設備・デマンドレスポンスの制度化、台電の経営体制維持、取引プラットフォームの中立性強化が含まれる。また、「特定電力供給業」として新たに定義された系統用蓄電設備やデマンドレスポンスの業者も制度の枠内に組み込まれた。さらに、台電の経営体制維持に伴い、送配電業務に対しては利益の部門別会計制度を義務付けている。
- 2025.4.8
- ドイツ:天然ガスから水素へ25kmのパイプラインが転換完了
- ドイツのガス輸送会社ONTRASは2025年4月8日、バート・ラウヒシュテット・エネルギーパークとフランスの石油メジャーTotalEnergiesのロイナ製油所を結ぶ全長25kmの水素パイプラインが完成したと発表した。このパイプラインは1980年代に敷設された天然ガス用パイプラインを水素輸送用に転換したもの。同エネルギーパークには8基、合計50MWの陸上風力発電が設置され、その電力を用いて30MWの水電解装置でグリーン水素を製造し、年間約2,700tの水素を輸送する。あわせて製造された水素を貯蔵するための塩洞窟の整備も進められており、2025年末までには水電解装置と製油所側の設備が完成し、水素輸送が始まる予定である。このパイプラインは、ドイツ国内で構築が進められている水素基幹ネットワークおよび欧州全体で計画されている水素バックボーンの一部となる。
- 2025.4.8
- 米国:トランプ大統領は石炭産業を支援するための大統領令を発布
- トランプ大統領は2025年4月8日、衰退しつつある石炭産業を支援するため、石炭掘削や石炭開発リースを優先するなど4つの大統領令を発布した。なお、AIやデータセンター需要への供給に石炭火力を使用することも推進する内容。米国のエネルギーシンクタンクGlobal Energy Monitor(GEM)によると、2000年以降、天然ガスや、再エネとの競争により、約770基の石炭火力が廃止されたとしており、今後5年でさらに多くの石炭火力が閉鎖する。トランプ大統領はDOEに対し、石炭が2020年エネルギー法に基づく重要物質および重要鉱物の定義を満たしているかについても判断するよう指示した。
- 2025.4.8
- 米国:DOE、原子力によるDCへの電力供給の利点と課題を発表
- 米国エネルギー省(DOE)原子力局は2025年4月8日、2028年の米国の総発電電力量の最大12%を消費する可能性があるとされるデータセンター(DC)に対し、原子力が電力を供給する6つの利点と5つの課題を発表した。利点は、(1)99.999%以上のエネルギー信頼性を求めるDCに高い稼働率で24時間365日稼働、(2)計画的で短い停止期間(18~24カ月間運転ごとに数週間)、(3)DCの多様な電力需要に合わせた柔軟性(多様かつ拡張可能な設計)、(4)燃料費の影響が小さく、80年の長期運転でDC長期事業計画に貢献、(5)コンパクトな先進型炉は隣地に設置して送電費節約、(6)安い電源確保の可能性を秘めた恒久停止炉の再稼働。一方、課題は、(1)新設に時間がかかる(先進型炉の普及は2030年代)、(2)初号機の費用が高い、(3)コロケーションによる費用分担問題、(4)原子燃料サプライチェーンが未構築、(5)使用済燃料の中間貯蔵または処分施設ができるまでの長期保管。
- 2025.4.7
- 中国:石炭火力のエネルギー効率下限を引き上げへ
- 国家市場監督管理総局(SAMR)は2025年4月7日、石炭火力を対象とするエネルギー効率の下限値の新基準を、4月1日から実施すると発表した。新基準は従来の石炭火力発電ユニットに加え、コ・ジェネレーション、循環流動床ユニットなどの超々臨界ユニットを対象として含み、稼働中ユニットの平均石炭消費量は1kWh当たり標準炭換算約302gを基準としている。新規建設ユニットはタイプ別にさらに1~10g引き下げるとされている。
- 2025.4.7
- 米国:米国の電力需要、2050年までに50%増加の見込み
- 米国電気工業会(NEMA)は2025年4月7日、米国の電力需要は毎年2%増加し、2050年までに50%増加する見込みであると発表した。電力需要の伸びは主にはデータセンターや、EVなどのe-モビリティが牽引しており、今後10年間でデータセンターの電力消費量は300%増、2050年までにe-モビリティの電力消費量は9,000%増と予測している。NEMAのデブラ・フィリップスCEOは「現在の米国の電力網は、驚異的な電力需要の伸びに対応できないため、技術導入や政策における創意工夫が必要である」と述べている。
- 2025.4.4
- 韓国:尹前大統領弾劾後のエネルギー政策の変化
- 現地メディアは2025年4月4日、尹錫悅前大統領の弾劾により、エネルギー政策に大きな変化が予想されると報じた。尹政権は、原子力を中心とした「CF100」政策を強調し、原子力発電の新規建設および運転期間の延長を積極的に推進していた。一方、野党共に民主党は「RE100」政策を支持し、再生可能エネルギーの生産基盤拡大を重視してきた。現地メディアは、次期政府では原子力と再生可能エネルギーの比率調整が行われる可能性があり、これは2035年の温室効果ガス削減目標(NDC)の設定にも影響を及ぼす可能性があると指摘している。
- 2025.4.3
- 英国・EU:米国の相互関税によるエネルギー価格高騰やサプライチェーンリスクが上昇
- 2025年4月3日付の英国のエネルギー情報誌は、米国トランプ大統領がEUに20%の相互関税を課すと発表したことで、欧州の主要な風力関連メーカーの株価が下落し、同分野が今後更なる混乱に直面するリスクがあると報じた。また、再エネ事業者団体RenewableUKは同日、Jane Cooper副代表のコメントを発表。同氏は「関税と貿易摩擦は消費者価格の上昇と産業への悪影響を招くため、英国政府によるエネルギー安全保障を強化する貿易戦略の策定が急務だ。関税と最近の米国政府による洋上風力開発の消極的な姿勢により、英米企業はクリーン技術分野での事業機会を失うおそれがある。また欧州に工場を持つ英国メーカーにとって、これらの措置がサプライチェーン全体に広範な影響を及ぼす懸念がある」と述べた。
- 2025.4.2
- 中国:中国石化と寧徳時代、1万カ所の蓄電池交換ステーション構築で協力強化
- 現地紙は2025年4月2日、石油大手の中国石油化工(Sinopec)が同日、蓄電池製造最大手の寧徳時代(CATL)と北京で産業・資本両面における協力枠組み協定を締結し、全国で1万カ所の蓄電池交換ステーションを共同で建設する計画を発表した。2025年中に少なくとも500カ所の建設を予定している。今回の協業では、寧徳時代が開発した「板チョコ電池」規格の導入が示されており、これにより蓄電池の標準化と異車種間での互換性確保を図る。中国石化は既に3万カ所の複合エネルギー補給ステーションを有し、寧徳時代は世界最大の動力電池サプライヤーとして多くの自動車メーカーと連携している。さらに3月には、寧徳時代はEV専業メーカーの蔚来(NIO)とも協定を結び、世界最大級の同規格の蓄電池交換ステーションネットワーク構築を進めている。2024年末時点で中国の新エネ車保有台数は3,140万台に達し、充電設備も前年比49.1%増の1,345万基に拡大している。
- 2025.4.2
- ドイツ:50Hertz、無効電力の市場調達を先行実施
- ドイツ北東部を管轄する送電系統運用者50Hertzは2025年4月2日、同月1日から無効電力の市場ベースでの調達入札を開始した。連邦系統規制庁は高圧および超高圧ネットワーク事業者に対して、2025年6月末までに、従来の化石燃料発電所との相対契約に代わる市場ベースでの無効電力の調達を義務付けているが、50Hertzは前倒しでの実施に至った。同社は同年1月末に試験的な入札を開始し、ザクセン州のWitznitz太陽光発電所(600MW)やブランデンブルク州の風力発電所で実証を行った。インバータを使用して夜間や無風時にも無効電力の供給が可能なことが確認されたため、正式な導入に至った。調達は管轄エリアを5つの区域に分割して行う。提供者には供給量に応じた単価に加え、継続的な供給能力を備えた場合には待機報酬も支払われる。
- 2025.4.2
- EU:ECA、現状の系統投資規模ではエネルギー移行達成に不十分との認識
- 欧州会計検査院(ECA)は2025年4月2日、電力系統の近代化に関する調査を実施し、現状の投資ペースを継続した場合の2024~2050年の総投資額が1兆8,710億ユーロに上ることを報告した。一方で欧州委員会は、同期間中に合計で1兆9,940億~2兆2,940億ユーロの投資額が必要になると推計しており、現状の投資ペースでは不十分であるとの認識をECAは示している。同時にECAは、投資ペースの加速に向けてEU加盟国間での系統開発計画の調整や許認可プロセスの簡素化、設備および人材不足の解消といった取り組みのほか、蓄電池やデマンドレスポンスといったフレキシビリティの拡充による系統増強費用の軽減が重要であると主張している。
- 2025.4.1
- 中国:南シナ海で推定埋蔵量億t級超の油田を発見
- 現地メディアの2025年4月1日付報道によると、中国海洋石油総公司(CNOOC)は3月31日、深圳から約170km平均水深100mの海域で推定埋蔵量1億t以上の油田を発見したと発表した。同社は南シナ海東部恵州19-6油田における深海・超深海探査中に確認されたとしている。初歩的な評価では、1日当たり平均413バレルの原油と6万8,000m3の天然ガスの生産が可能とされている。
- 2025.3.26
- 中国:鉄鋼、セメント、アルミを排出権市場の対象業種に追加
- 生態環境部は2025年3月26日、全国排出権取引市場に温室効果ガスの排出量が多い鉄鋼、セメント、アルミ精錬の3業種を追加する案を発表した。取引対象となる温室効果ガスには、CO2以外に四フッ化炭素(CF4)、六フッ化エタン(C2F6)が含まれる。追加後の市場参加者は、既に参加している電力業界約2,200社と合わせて約3,700社となり、中国全体のCO2排出量の6割(80億t)を占める。生態環境部は、参加業種の範囲を広げることで企業の排出削減コストを抑え、排出量削減に向けた取り組みを促すことが期待できるとしている。また、同案では、生産活動への影響を考慮し、ルール周知、排出量の査定、規則整備などのため、2026年までの移行期間を設けている。
- 2025.3.25
- EU:戦略的重要原材料供給プロジェクト47件を選定
- 欧州委員会は2025年3月25日、2024年5月に発効した重要原材料法に定めた戦略的原材料の採掘、加工、リサイクルまたは代用品生産を行う47のプロジェクトを、戦略的プロジェクト(Strategic Projects)として選定した。戦略的原材料とは、再エネ、防衛、デジタル、航空宇宙などの分野で特に重要であるとともに、将来の供給リスクが懸念されると指定された17の原材料であり、再エネ分野では銅やリチウムなどが含まれる。今回選定された戦略的プロジェクトはこのうち14種をカバーしており、資金調達やオフテイカーとのマッチングで支援を受けられる。加えて、通常では5~10年を要する許認可プロセスにも、採掘には27カ月、他プロジェクトには15カ月の期限が設けられ、手続の早期完了を目指す。欧州委員会は47の戦略的プロジェクトすべての稼働に要する投資額を225億ユーロと見積もっている。
- 2025.3.25
- 欧州:2024年の蓄電池設置容量は家庭用、系統接続用合計で1,190万kW
- エネルギー情報誌は2025年3月25日、欧州蓄電池協会(EASE)が公表したデータについて報じ、2024年の欧州の新設容量が家庭用、系統接続用の合計で1,190万kWに達したと報じた。このうち家庭用(Behind the meter)は前年より17%低下して690万kW、系統接続用(Front of the meter)は前年比60%増加の490万kWとなった。家庭用蓄電池の設置理由として、家庭用太陽光発電の普及が挙げられている。EASEが想定する将来の蓄電池市場は、最も普及するケースで、現在の3,500万kWから2030年には1億6,300万kWに達する。
- 2025.3.25
- 米国:シュナイダーエレクトリック、米国で7億ドル超の投資を計画
- フランスの大手電気・産業機器メーカーであるシュナイダーエレクトリックは2025年3月25日、2027年までに同社の米国事業に7億ドル以上を投資する計画を発表した。この投資は、データセンター、電気事業、製造業、エネルギーインフラ分野における製品・サービスの需要の高まりに対応するもので、同社の米国での投資としては過去最大となる。資金は、製造施設の拡張や研究施設の新設に充てられ、1,000人以上の雇用創出が見込まれている。なお、シュナイダーエレクトリックは、各地域で販売する製品の約90%を現地で調達・生産する目標を掲げており、今回の発表は北米におけるサプライチェーン強化戦略の一環と位置付けられている。
- 2025.3.24
- 台湾:電業法修正案が初審通過、台湾電力の分割は撤回
- 現地紙は2025年3月24日、立法院経済委員会が同日、日本の電気事業法に相当する「電業法」の修正草案を初審通過させ、全条文を行政院案のまま可決したと報じた。これにより、台湾電力公司(台電)は発電・送配電・小売りを統合した現行の体制を維持し、2017年の電業法改正時に定められていた2025年末までの会社分割義務は撤回された。修正案は、2050年のカーボンニュートラル達成と電力市場の健全化に向け、再エネ取引の自由化、電力系統の柔軟性強化、取引市場の透明性向上を図っている。今回の修正には、再エネ販売事業者の取引先制限の撤廃、系統用蓄電設備・デマンドレスポンスの制度化、台電の経営体制維持、取引プラットフォームの中立性強化が含まれる。また、「特定電力供給業」として新たに定義された系統用蓄電設備やデマンドレスポンスの業者も制度の枠内に組み込まれた。さらに、台電の経営体制維持に伴い、送配電業務に対しては利益の部門別会計制度を義務付けている。
- 2025.3.24
- ドイツ:ドイツ復興金融公庫、水素コアネットワーク支援で初の資金拠出
- ドイツ復興金融公庫(KfW)は2025年3月24日、水素コアネットワーク整備支援として、約1億7,200万ユーロを専用の償却口座へ拠出したと発表した。ドイツでは2032年までに全長9,040kmの水素コアネットワーク整備が計画されており、その利用料は水素需要家が負担する。ただし初期段階では利用者が限られるため、連邦ネットワーク庁は料金上限を設けて需要拡大を促す。この上限と実際に必要な運営コストとの差額は償却口座から補填される。これによりネットワーク運営事業者は初期から安定収入を確保でき、投資リスクが軽減される。将来的に利用者と収入が増えれば追加収入が償却口座に返還され、2055年までにKfWの資金と相殺される予定。償却勘定が均衡しない場合、残額の76%を連邦政府、24%をネットワーク事業者が負担する。水素コアネットワークの建設は2025年から始まり、KfWはこの取り組みに向けて240億ユーロの融資枠を確保している。
- 2025.3.24
- 米国:DOE、軽水炉型SMR導入に向けた9億ドルの資金援助の申請受付を再開
- 米国エネルギー省(DOE)は2025年3月24日、第3世代プラス(軽水炉型)小型モジュール炉(SMR)の商業展開を支援するための総額9億ドルの資金援助について、新たなガイドラインのもと改めて申請の受付を行うことを発表した。同支援は第1段階(最大8億ドル)でファースト・ムーバーを最大2チームまで支援してSMRの受注を促進し、第2段階(最大1億ドル)で設計、許認可、立地などの課題に対処してファースト・フォロワーによる追加導入を支援するという2段階で構成され、2024年10月に申請受付が開始された後2025年1月に期限を迎えていた。DOEは受賞者の選定は技術的な優秀性のみに基づいて行われると説明しており、新たなガイダンスではコミュニティの利益に関する要件がなくなった。申請期限は2025年4月23日で、既に応募していた申請者も新たなガイダンスにしたがって再申請する必要があるほか、新規の申請も受け付けるという。
- 2025.3.21
- 中国:政府、CO2ピークアウトパイロットエリア第2弾18件を発表
- 国家発展改革委員会は2025年3月21日、二酸化炭素(CO2)排出ピークアウトパイロットエリア第2弾のリストを発表した。新疆ウイグル自治区、甘粛省など西北部地域を含む都市、産業パークなど18カ所のパイロットエリアとなっている。2023年12月に発表した第1弾の30カ所と合わせ、他の地域に先駆けてCO2排出ピークアウトを実現する目標を掲げている。国家発展改革委員会は、これらの地域のエネルギー消費の低炭素化転換や製造業のハイエンド化・スマート化・グリーン化などの具体的なプランの作成に協力、支援を行う。
- 2025.3.20
- ミャンマー・ロシア:ロスアトム、ミャンマー首都近郊に原子力発電所を建設へ
- 2025年3月20日付の報道によると、ロシア国営原子力企業ロスアトムのAlexei Likhachev 総裁は、同月4日に署名したミャンマーでの小型モジュール炉(SMR)建設協力に関して、原子力発電所は同国首都のNaypyidaw近郊に建設される、と述べた。建設を予定されているのは110MWのSMRで、将来的には330MWまで容量を拡大する可能性がある。また、同総裁は、2000年時点で当時のミャンマー政権が、同国における10MWの原子力研究炉の建設と運用についてロシアに協力を検討するよう要請していたことから、両国の原子力発電プロジェクトは数十年前に合意されたものだと述べた。
- 2025.3.20
- 中国:農村部での分散型太陽光導入促進行動案、管理強化と課題洗い出し
- 国家能源局は2025年3月20日、農村地域の分散型太陽光発電の導入促進に関する行動案を発表した。それによると、該当地域の分散型太陽光導入は住民である農民の意見を全面的に尊重したうえで、市場化し、法に基づく事業環境を構築しなければならないとしている。能源局は56カ所の地域をモデル地区として指定し、管理監督の強化を実施するとともに、所在地の電力会社の協力を得て、導入に関連する課題を洗い出す。
- 2025.3.20
- 英国:規制機関、送電事業者による系統増強用資材の先行確保のため新制度導入
- 規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2025年3月20日、送電事業者(TO)が系統開発・増強に必要となる資材などの先行確保を可能にする制度(APM:Advanced Procurement Mechanism)を導入すると発表した。今回の発表では、国内3者のTOに対し計40億ポンド(約7,785億円)の限定予算を割り当てるとした。収入規制下にあるTOは、通常はプロジェクトが特定のマイルストーンに到達した後に資材調達のための資金アクセスをOFGEMに求めるが、APMではOFGEMの承認無しで資材の事前確保のための保証金の前払いが定められた上限内で可能となり、将来の資材価格高騰などのリスクを軽減する。なおプロジェクトの行き詰まりリスクに対応し、APMの対象は仕様変更や他のプロジェクトへの転用が可能な資材に限られる。また、プロジェクトやサプライチェーンの状況に応じて支出上限の変更が可能となる条項なども設けられている。
- 2025.3.20
- 米国:FERC、2024年の電力と天然ガス市場に関する報告書を公表
- 連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2025年3月20日、米国の2024年の電力と天然ガス市場に関する報告書「2024 State of the Market」を公表した。報告書では、米国全土の電力需要が前年比で2.8%増加するとし、主な要因として、カリフォルニア州、テキサス州および中大西洋地域における気温上昇を挙げた。また、電力のピーク需要について、2029年までに夏季は1億3,200万kW、冬季は1億4,900万kW増加すると予測している。主な要因は産業用需要の増加であり、データセンターについては1,300万~5,500万kWの需要増加が見込まれるとした。発電電力量は前年比で石炭火力が3.3%減少した一方、太陽光が32%増加、風力が7.7%増加した。2024年末時点の発電設備容量の内訳は、天然ガス火力が44%、石炭火力が14%、風力が12%、太陽光が9%、原子力が8%、水力が7%、石油が2%、蓄電池が2%などとなっている。
- 2025.3.18
- 中国:2024年電力関連企業55社、海外市場で672億ドル分の契約を締結
- 電力専門紙は2025年3月18日、中国機電産品輸出入商会(CCCME)の集計によると、国内の電力関連企業55社は、2024年に海外市場で前年比31%増となる約672億ドルを超える契約を結んだと報じた。そのうちバイオマス関連は402.9%の大幅増となる23億ドルに達し、バイオマスエネルギー分野における中国の技術革新が国際市場で大きなシェアを占めていると専門紙は評価している。
- 2025.3.17
- 中国・英国:中英エネルギー対話、送電網、再エネなどで協力へ
- 国家能源局は2025年3月17日、北京で王宏志国家能源局長と英国のミリバンドエネルギー安全保障・ネットゼロ担当大臣が共同議長を務めて「第8回中英エネルギー対話」が開催されたと発表した。両国は、クリーンエネルギー技術、エネルギー転換のロードマップ、エネルギー安全保障、国際エネルギーガバナンスなどのテーマで意見交換を行い、「中国と英国のクリーンエネルギー協力に関する覚書」に署名した。覚書では、電力市場改革と送電網、バッテリーエネルギー貯蔵、洋上風力発電、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)、クリーンな低炭素化、再生可能水素が協力の主要分野として記載されている。
- 2025.3.17
- 英国:RWE、大手データセンター事業者と10年間の再エネPPAを締結
- ドイツの電力大手RWEは2025年3月17日、データセンター事業者のTelehouse International Corporation of Europeと10年間(2035年末まで)の電力売買契約(PPA)を締結したと発表した。本契約により、ロンドン・ドックランズキャンパスにある5つのデータセンター(このうち、最も新しいTelehouse Southは容量18MW)で使用する電力の大部分を同社のロンドン・アレイ洋上風力発電所の電力で賄うこととなる。同発電所は175基、総出力630MWのタービンを備え、2013年の稼働開始時から2018年まで世界最大の洋上風力発電所であった。なお、TelehouseはKDDIの子会社であり、世界10カ国以上で事業を展開し、使用する電力の100%を再エネで賄う方針である。
- 2025.3.17
- 米国:DOE、パリセード発電所支援の債務保証枠での2回目融資の実施を承認
- 米国エネルギー省(DOE)のクリス・ライト長官は2025年3月17日、ホルテック社によるパリセード原子力発電所(PWR、85万7,000kW)の再稼働プロジェクトに対し第2回目となる約5,679万ドルの融資の実施を承認すると発表した。2024年9月にDOEが同プロジェクトに最大15億2,000万ドルの債務保証を行うことを発表しており、2025年1月には初回として3,800万ドルの融資が行われている。同発電所は2022年に運転を停止したが、同発電所を保有するホルテック社は2025年第4四半期に再稼働するための準備を進めており、予定通り進めば恒久停止した商業用原子炉が再稼働する初の事例となる。ライト長官は「国内のエネルギー生産の増加、安全保障の強化および米国民のコスト低減というトランプ大統領の公約を推進するための新たな一歩である」とコメントしている。
- 2025.3.15
- ドイツ:RWEとE.ONがエネルギー転換の見直しを求め共同声明
- ドイツの電力大手RWEのCEOマルクス・クレバー氏とE.ONのCEOレオンハルト・ビルンバウム氏は2025年3月15日、「エネルギー転換2.0」政策の実行を提案する共同文書を発表した。両氏は従来の計画目標に固執せず、需要に即した低コストのエネルギー転換を求めた。現行の再エネおよび系統拡大目標は過剰であり、計画見直しにより今後10年間で数千億ユーロのコスト削減が可能とする。2030年の電力需要は750TWhに増加すると想定されているが、現状は急激な伸びを示していない。したがって当面は南北連系線や洋上風力開発の必要性は薄く、従来計画より7~8年プロジェクトを遅らせることで経済的負担が分散され、社会にとって大きな利益になるという。また、系統接続の優先順位の設定や、個人宅の屋根置き太陽光パネルに対する補助金の廃止、発電所安定法案における特定の転換時期を指定するH2-ready(天然ガスから水素へ転換)要件の撤廃などを求めた。
- 2025.3.12
- 米国:EPA、大規模な環境規制の見直しでGHG危険認定の撤回に言及
- 米国環境保護庁(EPA)は2025年3月12日、トランプ政権のエネルギー政策推進に向けた大規模な環境規制の見直しを行うことを発表した。影響が大きいとみられているのが、オバマ政権下のEPAがマサチューセッツ州対EPAの最高裁判決(2007年)に基づいて温室効果ガス(GHG)を健康と福祉に有害とした2009年の危険認定(Endangerment Finding)を撤回するという内容。リー・ゼルディン長官は、法律の厳格な解釈に基づき進めると強調し、撤回によりエネルギーコストの低減と自動車産業の復活を促すと発言した。撤回された場合、EPAによるGHG排出規制の法的根拠が失われることになるため、民主党や環境団体は強く反発しており、今後法的措置を取ることを表明している。
- 2025.3.11
- 英国:国内初のグリッドフォーミング蓄電池が系統接続
- 系統運用機関NESOは2025年3月11日、国内初のグリッドフォーミング蓄電池がスコットランドで系統に接続し、稼働を開始したと発表した。グリッドフォーミング蓄電池(Grid Forming Battery)とは、その高度な制御機能により、同期電源と同様に短絡容量と慣性力を調達する蓄電池で、系統安定性の向上に寄与できる。今回稼働したのは、NESOによるシステム安定性向上を図るイニシアティブ「Stability Pathfinder」のフェーズ2に織り込まれているプロジェクトのひとつである。スコットランドに注力したフェーズ2では、こうしたグリッドフォーミング蓄電池と同期コンデンサ5つずつから成る10のプロジェクトで10年間の契約が締結されており、その規模は合計で3億2,300万ポンド(約627億円)に達する。この日は、フェーズ2の最初の2プロジェクトが稼働した。
- 2025.3.11
- 英国:規制機関、長期エネルギー貯蔵に対する支援制度の技術要件を公表
- 規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2025年3月11日、長期エネルギー貯蔵設備(LDES)を対象とする支援制度(キャップ&フロア:プロジェクト収益に下限と上限を設け過不足を決済)の最終的な技術要件を公表した。最大出力で連続8時間以上電力供給が可能な設備が支援対象となり、連続6時間以上というこれまでの案から引き上げられた。支援対象とするか不透明であったリチウムイオン電池は上記要件を満たす場合に対象となる。設備容量の下限は、実証済み技術(揚水発電やリチウムイオン電池)が対象の「ストリーム1」では100MW、発展途上技術(液体空気電力貯蔵、圧縮空気電力貯蔵、フロー電池など、1MW以上の規模で実証例のある技術)が対象の「ストリーム2」では50MWに設定された。今後、初回枠については2025年春にも申請受付を開始し、プロジェクト収益の下限・上限設定プロセスなどを経たのち2029年頃に支援を開始する。
- 2025.3.11
- 英国:政府、重要インフラ開発の促進に向けた法案を提出
- 英国政府は2025年3月11日、住宅建設やインフラ開発を加速させる法案を提出した。法案の主旨は、重要プロジェクトの審査の合理化や訴訟制限、自然保護区域内の開発緩和に伴う環境復元基金の設置、公正な価格での公益目的の土地確保など。電力関連は、系統接続改革のサポート(同法公布から3年以内に限り、必要な場合のみ、国務大臣や規制機関に優先接続の順位付け権限を付与)、スコットランドの電力インフラ計画規則の変更(申請要件の厳格化による審査遅延件数の削減)、長期エネルギー貯蔵設備(LDES)に対する支援制度の導入、新設の送電鉄塔から500m以内の住民の電気料金割引、洋上風力の試運転時の海底送電線運用を認める特例措置の期間延長、森林地への適切な電力設備設置のための1967年森林法の改正、電気自動車(EV)用公共充電器運営事業者(CPO)に付与する道路工事認可の簡素化(ライセンス制から許可証制への切り替え)などとなっている。
- 2025.3.11
- 米国:SEIA、2024年の太陽光発電導入量は5,000万kWと報告
- 太陽光エネルギー産業協会(SEIA)は2025年3月11日、米国の2024年における太陽光発電の導入状況に関する報告書「US Solar Market Insight」を発表した。同報告書によれば、2024年に過去最高となる5,000万kW(2023年比21%増)の太陽光が導入され、これは同年に新規導入されたすべての発電設備容量の66%を占めた。SEIAはこの増加の理由としてインフレ抑制法(IRA)に基づくタックスクレジットなどを挙げた。また、SEIAは2035年までに太陽光の総発電設備容量が7億3,900万kWに達すると予測する一方で、同産業は連邦政府の政策変更による不確実性に直面しているとの認識を示した。
- 2025.3.10
- マレーシア:マレーシア国会、CCUS法案を可決、施行急ぐ
- 2025年3月10日付報道によると、マレーシア国会に提出されていた炭素回収・利用・貯留(CCUS)法案が同月6日に可決され、政府は連邦と州間の法律の整合化を急いでいる。Datuk Seri Rafizi Ramli経済大臣は、長期的な投資機会確保のため、本法案を同月末までに策定・施行することが必要だと述べた。本法案では、CCUSに関するライセンス発行、コンプライアンス、産業発展を監視するためにマレーシア炭素回収・利用・貯留庁を設立することや、炭素回収設備の登録が必要となること、海上・陸上両方の炭素貯留施設の許可取得が義務付けられることが定められている。なお、CCUS事業を行う有力候補とされていたサラワク州・サバ州は本法案の対象から除外されており、今後は州が独自の規制を用意するとみられている。