2023 年度
海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。
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2023年度
- 2023.05.05
- ドイツ:経済・気候保護省、電力多消費産業に対する支援策を提案
- 連邦経済・気候保護省(BMWK)は2023年5月5日、電力多消費産業の国際競争力維持に向けた支援策を提案した。2030年までの期間限定で、消費電力量の80%に対して卸電力市場の年間平均価格が6ユーロ・セント/kWhを超えた差分を補填する。支援対象の業種は化学、製鉄、金属などのほか、バッテリー、太陽光パネル、半導体といった重要産業も想定されている。支援に要する費用は総額250億~300億ユーロにのぼる見通しで、BMWKは「経済安定化基金」からの支出を計画している。同基金は国債を財源とし、2023年3月1日から2024年4月30日まで実施されている電気・ガス料金負担軽減策に要する費用を賄っている。長期的には再エネ導入と系統拡張を進め、電力多消費企業が電力売買契約(PPA)や差額決済契約(CfD)を活用することにより、電気料金を抑制できるようにする。支援案に関する合意は政権内で未だ成立しておらず、リントナー連邦財務相(自由民主党・FDP)は産業需要家を支援するための費用を経済安定化基金から支出することに反対している。なお連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、卸電力市場の価格形成シグナルを阻害するような介入は避けるべきだと批判している。
- 2023.05.04
- ポーランド:水素製造とサプライチェーンの開発について日本と協力協定を締結
- ポーランドのモスクワ気候環境相と日本の西村経済産業相は2023年5月4日、水素製造とエネルギー、運輸、暖房、産業における水素のサプライチェーンの開発における協力協定を締結した。モスクワ気候環境相は、同協定が日本企業によるポーランドおよび欧州地域での水素投資への関心を高めることを期待し、水素が欧州経済の公平な変革に重要な役割を果たし、CO2排出量の大幅な削減に寄与することを確信しているとコメントした。同相によれば、ポーランドの2022年の年間水素生産量は約130万tで世界第5位、EU全体では第3位である。また、協定の署名式では、ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー市場に与える影響、ウクライナの復興、脱炭素化と再エネ開発における現在の課題や、ポーランド国立原子力研究センターが日本原子力研究開発機構と共同で実施する高温ガス炉開発プロジェクトについて議論が交わされた他、ポーランド側からは、日本の炭素回収・貯留(CCS)技術の開発について関心を寄せていることについても言及された。
- 2023.05.03
- エジプト・ロシア:エルダバ原子力発電所3号機着工
- ロシア国営企業ロスアトムは2023年5月3日、エジプトのエルダバ原子力発電所3号機(VVER、120万kW)の建設着工を記念した「技術式典」を開催したと発表した。同着工は、2023年3月29日にエジプト原子力・放射線規制庁(ENRRA)による建設許可発行を受けて実施された。
- 2023.05.03
- 米国:NY州再エネ公共事業化を目指す法案成立、ピーク火力閉鎖へ
- ニューヨーク(NY)州のホークル知事(民主党)は2023年5月3日、2024年度会計予算(2023年4月1日~2024年3月31日)の州議会での承認を受け、ニューヨーク州電力公社(NYPA)が再エネ電源開発を担う「公共再エネ電源開発法(Build Public Renewables Act)」の成立を進める考えを示した。同法案はNYPAが再エネ、蓄電池、送電プロジェクトを建設、運営、所有し、2030年までに再エネ電源のみを供給することを義務付けるもの。また、NYPAが保有するピーク需要対応のガスタービン発電所については、当初予定を前倒しし、2030年までに閉鎖するとしている。また、知事は州の温室効果ガス排出量の30%以上を占める建物部門に対して、新築および既存建物で化石燃料を使用する暖房機器の段階的廃止を実施する「オール電化ビルディング法(All-Electric Buildings Act)」を制定し、2025年12月末までに大規模な商業・工業用ビルを除く7階建て以下の新築ビル、2028年12月末までにその他のすべての新築ビルでゼロエミッション建設を進めることも明らかにした。なお、知事によれば、これらの法案は2019年に成立した気候変動関連法(CLCPA)で2050年までに1990年比経済全体で85%の排出削減を達成するための土台となるものである。
- 2023.04.29
- 韓国・米国:米国との間で、エネルギー分野などで多数のMOUを締結
- 現地紙は2023年4月29日、尹(ユン)大統領一行が訪米中に米国側とエネルギー分野などで多数の協力覚書(MOU)を締結したと報じた。韓国大統領室の崔(チェ)経済首席は4月27日、韓米間で今回、バイオ分野23件、小型モジュール炉(SMR)を含むカーボンニュートラルに向けた技術開発などエネルギー分野13件、電池などその他産業分野で13件、コンテンツ分野1件の合計50件のMOUが締結されたことを明らかにした。
- 2023.04.25
- 米国:ギャラップ世論調査、米国の原子力支持率が過去10年間で最高を記録
- 世論調査会社ギャラップ社は2023年4月25日、米国での原子力発電に対する支持率が2012年以降最も高い55%に達したとの調査結果を発表した。反対は44%であった。同調査は2023年3月1~23日、全米に住む成人1,009人を対象に固定・携帯電話を通じて実施。支持するとした55%のうち、「強く支持」が25%、「やや支持」は30%であった。「強く反対」と「やや反対」はそれぞれ22%ずつであった。2016年の調査では支持が44%であったことから、支持が大幅に上昇している一方、同社が過去30年間に行った調査での最高値(2010年の62%)は下回っている。また、党派別では、支持は共和党支持者62%、民主党支持者46%、無党派層56%であった。同社によると、民主党支持者で支持するとした人は増加傾向にあり、バイデン政権が気候変動に対処するためのクリーンエネルギー戦略の一環として原子力を推進していることと関連している可能性があるという。
- 2023.04.21
- 中国:欧州炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応を迫られる中国企業
- 現地エネルギー大手紙は2023年4月21日、欧州議会で18日に通過した炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対するEU向けの中国輸出企業の懸念を伝えた。CBAMは対象となる製品をEU域外から輸入する際、域内で製造した場合に欧州排出量取引(EU-ETS)に基づき賦課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるもので、2026年10月から本格運用される予定となっている。CBAMの第1段階の対象は、セメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素等があるが、EUは中国の貿易相手国・地域として2位(2022年、1位はASEAN)であるため、多くの製品が対象とされることが見込まれている。これに対して、中国の学識経験者は、対象に関連する産業チェーン全体での対応が迫られることとなるとの見方をしている。
- 2023.04.21
- ロシア:ロスアトム、ロシア初の陸上用SMRによる発電所の設置許可を取得
- ロシア国営原子力企業ロスアトムは2023年4月21日、同社傘下のロスエネルゴアトムが、連邦環境・技術・原子力管理監督局(Rostekhnadzor)から、サハ共和国(ヤクート)のウスチ・ヤンスク地区の小規模原子力発電所(ASMF)の設置許可を取得した、と発表した。同発電所は、海上用小型モジュール炉(SMR)をベースとして陸上用に適合させたRITM-200Nを採用している。同SMRは、同国の砕氷船において過酷な北極圏で試験され、最新の原子力安全要件を満たし、コンパクトにモジュール化され、建設期間が短縮されているという。「建設が許可されたウスチ・クイガ村周辺では、既に2,000t以上の資材、約80人の作業員、38台の機器などにより、準備作業が本格化しており、2028年には、RITM-200Nによる世界初の陸上ASMFの試運転が予定されている」と、ロスアトムのリハチェフ総裁は述べている。
- 2023.04.21
- 欧州:シーメンス・ガメサ、排出量を低減した風力発電機タワーを発表
- 風力発電機メーカーのシーメンス・ガメサ社は2023年4月21日、CO2排出量を低減した鋼材を使用する新モデルの風力発電機タワー「GreenerTower」を発表した。電気炉に洋上風力発電プロジェクトからのグリーン電力を供給することなどにより、鋼材の製造工程でのCO2排出量を削減する。従来のタワーの標準的な鋼材は、鉄1t当たり平均1.91tのCO2を排出しているが、GreenerTowerの鋼材は同社基準の同0.7tを満たすものとする。GreenerTowerは、2024年以降に設置する陸上または洋上風力発電機のオプションとして提供される。既にRWE社は、デンマークで計画しているトール(Thor)洋上風力発電プロジェクトにおいて36基導入することを決定した。なお、タワー製造におけるCO2排出量は、風力発電機に関連する全排出量の3分の1以上を占めるという。
- 2023.04.19
- 中国:AIアルゴリズムにより送電系統の主要欠陥の検出率が3倍に
- 現地専門メディアは2023年4月19日、国有送配電大手である国家電網公司傘下の中国電力科学研究院が、人工知能(AI)アルゴリズムにより送電系統の42種類の主要な欠陥に対しての検出率が85.7%に達し、一方で誤検出率は1.8%に減少したことを明らかにしたと報じた。加えて同報告では、ピン抜けや電線内異物など18種の一般的障害に関しては、検出率はさらに上昇して90%を超えたとしている。本研究が開始された時期である2018年のデータと比べると、検出率は3倍近く増加したが、誤検出率は80%減少した。同院では、2023年には年間でドローン(UAV)による送電鉄塔(竿)500万基(本)の飛行巡視を行って1億枚近くの画像による検証で精度をさらに上げ、人が行う保守点検・運用に代わる新しい運用保守モデルの確立を目指している。
- 2023.04.18
- EU:欧州議会、EU-ETS改革やCBAM導入などに関する法案を承認
- 欧州議会は2023年4月18日、欧州排出量取引制度(EU-ETS)の改革や炭素国境調整メカニズム(CBAM)の創設など、2022年末にEU理事会と暫定的に合意していた法案を正式に承認した。今回承認された一連の法案は、2030年までの温室効果ガス排出削減に向けたEUの政策パッケージ「Fit for 55」の一環であり、EU-ETSの改革に関しては、対象部門のGHG排出量削減目標の引き上げ(2030年までに2005年比62%削減。現行目標は43%)、海運業のEU-ETSへの組み込み(2024年から)、航空業の排出枠無償割当の廃止(2026年まで)、一部の産業を対象とした無償割当の段階的な廃止(2026~2034年)、自動車燃料や建物の暖房設備の燃料を対象にしたETSⅡの新設(2027年)などが含まれている。なお、ETSⅡの収入などを原資に、エネルギー貧困層や零細企業の支援などを目的とした社会気候基金(SCF)の創設(2026年)も今回承認された。また、排出規制の緩いEU域外製品に対してEU-ETSの炭素価格に応じた支払いを輸入業者に義務付けるCBAMについては、2023年10月から3年間は移行期間として、対象事業者に対して輸入製品の炭素含有量などの報告が義務付けられ、2026年10月からは実際に炭素価格の支払いを義務付ける本格運用が開始される。一連の法案は今後EU理事会で承認された後、施行される予定である。
- 2023.04.18
- 米国:石油・ガス会社のDevon Energy社、地熱ベンチャーのFervo社に出資
- テキサス州の地熱発電ベンチャーであるFervo Energy(Fervo)社は2023年4月18日、米国を拠点とする石油・ガス会社Devon Energy(Devon)社から1,000万ドルの戦略的出資を受けたことを発表した。Fervo社は、「この投資により、50年以上にわたり蓄積されたDevon社の石油・ガスの専門知識と、Fervo社の高度な地熱技術を組み合わせたパートナーシップが始まる」とした。またFervo社は、Devon社が石油・ガス生産のために開拓した技術やプロセスなどを活用して、地熱の商業生産用の水平井戸の掘削を行うとしている。Devon社は、「今回の投資はDevon社の新エネルギーベンチャー戦略に合致するものである」と説明している。
- 2023.04.18
- 米国:DOE、電気式ヒートポンプの国内製造拡大などに2.5億ドルの資金提供
- 米国エネルギー省(DOE)は2023年4月18日、電気式ヒートポンプの国内製造施設の新設・増強などを対象に、インフレ抑制法(IRA)に基づき2億5,000万ドルの資金提供を行うと発表した。バイデン政権は2022年6月、クリーンエネルギー関連製品の国内生産の強化や、部品調達の容易化などを目的とする施策(国防生産法の適用を含む)を発表し、今回が同施策に関する最初の資金提供となる。なおDOEは、「米国の全エネルギー消費の40%以上をビル、住宅、オフィス、学校、病院、軍事基地、その他の重要施設の冷暖房が占めている」とした。
- 2023.04.17
- バングラデシュ・ロシア:ルプール発電所の建設融資を中国人民元で返済へ
- 2023年4月17日付の報道によると、バングラデシュで建設中のルプール原子力発電所(VVER、120万kW×2基)への融資に関し、同国からロシアへの1億1,000万ドル相当の返済を中国人民元で行うことが合意された。両国は、ドル主導の国際銀行決済システムSWIFTに代えて人民元主導の決済システムCIPSを通じて資金を返済する予定。ロシアによるウクライナ侵攻に対する経済制裁として、欧米はロシアの一部銀行のSWIFTへのアクセスを遮断したため、SWIFTを利用したドル返済ができなくなり、ルーブルでの返済を求めるロシアと現実的な解決策を模索していたという。ロシアは、2015年に締結した同発電所の初期契約金額である約127億ドルの90%を、金利上限4%、返済期間28年、猶予期間10年で融資しているとされる。
- 2023.04.15
- ブラジル:ルーラ大統領の訪中、新たなエネルギー協力協定に調印
- エネルギー情報サイトは2023年4月15日、ブラジル・ルーラ大統領が中国・習近平国家主席との会談で中国を訪問し、政府間および企業レベルでのいくつかのエネルギー協力協定を締結したことと報じた。同年3月末にもエネルギー関連だけで20案件が締結されており、今回の締結はそれに続くもので、両国間での投資や貿易が促進されるものと見られている。関係筋によると、中国政府は国家電網などの大手事業者を通じて電力投資を今後も継続するだけでなく、ブラジル産原油にも関心を寄せているとした。ブラジルのエネルギー専門家は、ブラジルは太陽光発電や電気自動車などで技術ノウハウを交換する機会を必要とし、ブラジルからはエタノールやバイオ燃料の技術を輸出することができるとしている。協定には、ブラジル鉱山・エネルギー省(MME)と国家電力投資集団有限公司(SPIC)の間でアマゾン地域での小規模再エネ開発の協力、北東部セアラー州とSPICとの間で洋上風力やグリーン水素の開発に関わる実現可能性調整などが含まれる。なお、ブラジル経済社会開発銀行(BNDED)と中国の国家開発銀行(CDB)は同日、石油・ガス、エネルギー分野などを対象としたプロジェクトへの資金提供を目的とした、最大13億ドル(長期8億ドル、短期5億ドル)規模の与信枠の設定を調印した。
- 2023.04.15
- ドイツ:ドイツが脱原子力を完了
- ドイツ最後の原子炉3基(ネッカーヴェストハイム2号機:140万kW、イザール2号機:148万5,000kW、エムスラント:140万6,000kW、炉型は3基ともPWR)が2023年4月15日、恒久停止した。3基を所有する原子力発電事業者のEnBW、PreussenElektraおよびRWEは、今後州政府から廃止措置許可を取得するなどし、10~15年かけて原子炉の解体作業を進める予定。なお、ネッカーヴェストハイム2号機を所有するEnBWは、2023年4月5日に廃止措置に必要な許認可をすべて取得済みである。欧州がエネルギー危機の影響から脱しきれていない中での脱原子力完遂に対して、国内外から批判の声が上がっている。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、原子力に反対するEU加盟国は「ウクライナ戦争が終結したら(自国のエネルギー政策について)真剣に自己批判すべきだ」と語った。
- 2023.04.12
- 中国:国家電網、デジタル人民元による取引運用を開始
- 現地専門紙は2023年4月12日、国有送配電大手の国家電網有限公司傘下の江蘇省電力公司がデジタル人民元取引を実施したと報じた。同社は資材のリサイクル業者から販売代金約380万デジタル人民元(e-CNY)(約7,600万円)の受け取りを専用の口座で確認し、これが国家電網初のデジタル貨幣の運用事例となった。同社は、銀行でデジタル人民元の口座を開設するだけで、手数料なしでリアルタイムでの入送金が可能となるうえ、暗号化技術活用により資金の流れの安全性も確保されると指摘、今後の取引運用の拡大を期待している。
- 2023.04.12
- 米国:Sunrun、家庭用電気料金低減に向けた蓄電池サービスを開始
- 住宅用太陽光発電メーカーのSunrun社は2023年4月12日、新しい蓄電池サービス「Shift」を開始した。これは2023年4月15日からカリフォルニア州のネットメータリング料金制度が改定されることに伴うものである。同改定では、需要家の電気料金が既存の季節別時間帯別から1時間ごとの変動型に変更されるとともに、電力会社による太陽光発電の買取価格が大幅に引き下げられる。Shiftは、太陽光発電による余剰電力を蓄電池に蓄え、電気料金が高くなる時間帯に自家消費する一方、買取価格が高い時間帯に電力網へ供給することにより電気料金の低減を図る。なお、今回のネットメータリング制度改定は、増加を続ける住宅用太陽光を補助する州のコストが、太陽光非設置者への電気料金により回収されている現状を正すことを目的とするものである。
- 2023.04.03
- 米国:石炭火力の発電容量、2026年までにピーク時から半減の見通し
- 米国エネルギー経済財政研究所(IEEFA)は2023年4月3日、石炭火力の発電容量がピーク時(2011年、約3億2,000万kW)から2026年までに半減する見通し(約1億6,000万kW)を公表した。一部の石炭火力発電所は、パンデミックによるサプライチェーンの混乱(新たな発電設備の開発遅れ)により廃止時期は延期されたものの、その他の発電所は廃止時期を前倒しした。各電力会社の発表によれば、同発電容量は2030年末までに、約1億2,000万kWに減少する見通しである。また、廃止時期を表明していない5万kW以上の大型石炭火力発電所は200基以下であり、そのうち118基は運転開始から40年以上経過している。電力会社の統合資源計画(IRP)や投資計画などによれば、ほとんどの計画において、石炭火力を大幅に削減、あるいは完全に廃止し、風力、太陽光、蓄電池を大幅に増強し、既存のガス火力発電所に依存する計画となっている。
- 2023.04.06
- ポーランド:グダニスク湾のFSRU計画、近隣諸国からの需要が高まる
- ポーランド国営のガス導管事業者Gaz-system社は2023年4月6日、グダニスクで計画されている浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)の建設について市場調査を行った結果、年間61億m3の想定輸出量に加えて、年間45億m3の追加需要が明らかになったと発表した。同社は2023年3月6~20日にかけて実施した市場調査の結果、近隣諸国のスロバキア、チェコ、ウクライナなどから長期容量確保に関心が寄せられたことを明らかにしている。報道では、政府関係者の話として、FSRUは2027~2028年に操業を開始する予定だが前倒しになる可能性もあるとしている。Gaz-systemのChludzinski社長は、ロシアからの天然ガス供給停止により、LNGに対する需要が高まっているとし、東欧地域のエネルギー安全保障を重要視したガス供給源の多様化は最優先事項だとコメントした。なお、ポーランドのLNG輸入量は2022年に過去最高を記録し、2021年比57%増の440万tとなった(シフィノノウイシチェLNG基地の稼働率は94%)。
- 2023.04.06
- フランス:議会の調査委員会がエネルギー主権回復について報告
- 下院国民議会の経済委員会内に設置されている「フランスがエネルギー主権・独立性を失った理由を調べる調査委員会(2022年10月設置)」が2023年4月6日、最終報告書を公表した。報告書は6つのエネルギー政策の過ち、そこからの6つの学び、そして今後の推進するべき6つの分野と30の提案で構成されている。政策の過ちでは、温暖化対策を考慮せず電力需要見通しを過小評価したこと、再エネと原子力を無理にバランスさせたこと、原子力発電所の寿命延長・新設を計画的に進めなかったこと、化石燃料に代わる再エネ産業の育成を怠ったこと、欧州電力市場の仕組みに適合させるあまりフランスのエネルギー供給体制の脆弱化を招いたこと、高速増殖炉計画と第4世代炉開発を放棄し研究開発での優位性を維持しなかったことを挙げている。また学びでは、温暖化対策・産業政策・エネルギー政策を長期的に調和させることの重要性、電力はコモディティーとしては扱えないこと、省エネ推進の必要性などを挙げている。そして今後推進するべき分野として、今後30年の環境・産業政策を含めたエネルギー計画の策定、欧州エネルギー市場の改善、省エネ・効率改善を含めたエネルギーミックの脱炭素化、独立したサプライチェーンを再構築してエネルギー主権を取り戻すこと、原子力分野の立て直し、再エネ導入政策の再構築などをあげ、今後30年に向けた具体的な30項目の提案を挙げている。
- 2023.04.06
- 米国:2,000GWを超える発電・蓄電設備が系統接続待ち
- ローレンス・バークレー国立研究所は2023年4月6日、2022年の米国における発電・蓄電設備の送電網への接続待ちが2,000GW以上であったと発表した。接続待ちは米国の中でもCAISOを含む西部地域、MISO、ERCOTの管内で急増しており、CAISOとPJMでは新規申請の受付を停止している。接続待ちの設備容量の95%を太陽光(947GW)、風力(300GW)、蓄電池(670GW)が占めた。発電設備には蓄電池を組み合わせたハイブリッド発電が含まれ、太陽光発電の48%(456GW)、風力発電の8%(24GW)がハイブリッド発電となっている。同研究所は過去の統計から接続待ちのプロジェクトの21%(容量で14%)が運開すると予想している。
- 2023.04.05
- 英国:Centrica、Redditch地点に水素燃焼火力を建設へ
- 英国エネルギー大手Centricaは2023年4月5日、グループ会社であるCentrica Business Solutionsが、同国ウスターシャー州の旧Redditch火力発電所の跡地に、設備容量2万kWの水素燃焼火力を建設すると発表した。同発電所は天然ガスと水素を燃料とし、需要ピーク時や再エネ発電量が少ない時に稼働するように設計される。8個のコンテナ型エンジン発電機が設置される計画であり、同年中に建設が完了する見込み。同社は、2022年10月にも、Brigg火力発電所(設備容量4.9万kW)にて水素混焼を開始すると発表している。
- 2023.04.04
- 中国:国内初、フライホイール併用の蓄電施設が稼働開始
- 現地大手紙は2023年4月4日、大手電力である華電国際電力公司によるフライホイールユニット併設のリチウム電池蓄電施設が稼働を開始したと報じた。山西省朔州市の同社コージェネレーション施設内に建設されたこの設備はフライホイールユニット4基(500kW×4)とリチウム電池設備で構成されており、商業運転を開始した同種の施設は国内初であるため注目を集めている。同社はフライホイールユニットを併用することでリチウム電池単体の場合と比べ、耐久性が大幅に改善されるためコスト削減が期待できるとしている。
- 2023.04.03
- インド:政府、国営水力3社の経営統合を検討
- 2023年4月3日付の報道によると、電力省は国営水力発電事業者3社の統合を検討している。具体的には、国営発電公社(NTPC)の水力子会社のTHDC IndiaとNEEPCOの2社を、国営水力発電会社(NHPC)に統合し、コスト削減と経営効率化を目指す。統合後のNHPCの発電設備容量は約2,000万kWになるとみられる。
- 2023.04.03
- 米国:ペンシルベニア州最大の石炭火力発電所の廃止を発表
- 米国北東部ペンシルベニア州の西部で石炭火力発電所を運営するHomer City Generation社は2023年4月3日、同州最大のHomer City石炭火力発電所(191万5,000kW)を今後3カ月の間に廃止すると発表した。その理由について同社は、競合する天然ガス火力発電の燃料価格の低下や、石炭供給コストの高騰、環境規制の強化などを挙げた。また事業を継続する投資判断にあたり、地域温室効果ガスイニシアティブ(RGGI)の先行きが不透明であることも要因の一つに挙げている。RGGIは、米国北東部12州が加盟している電力セクターを対象としたCO2排出量取引制度。ペンシルベニア州は2022年7月にRGGIに加盟したが、反対する同州共和党議員や一部企業からの訴えを受け、同州控訴裁判所がオークションへの参加などの活動を一時的に禁止する命令を出している。
- 2023.04.01
- ベトナム:ベトナム初となるグリーン水素工場が着工
- 2023年4月1日付報道によると、The Green Solutions GroupのメンバーであるTGS Tra Vinh Green Hydrogen Companyは、総額8兆ドン(約456億円)を投資し、ベトナムで初となるグリーン水素工場の建設を開始した。水素工場は、2年後に操業を開始する予定で、21ヘクタールの敷地に年間2万4,000tのグリーン水素と19万5,000tの酸素を生産する計画である。また、300~500人の地元住民を雇用する。ベトナム政府は、2050年までのカーボンニュートラルを宣言しており、石炭火力からクリーンエネルギーへの移行に取り組んでいる。