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2021 年度

海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。

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2021年度

2022.03.30
中国:政府、エネルギーの電化推進に関する新指針を発表
現地紙は2022年3月30日、国家発展改革委員会・国家能源局など10省庁が「エネルギーの電化の更なる推進に関する指導意見(指針)」(第353号)を発表したと報じた。エネルギーの電化推進に関しては、2016年5月に指針(旧版)が発出されており、今回は6年ぶりの改定となった。新版では、最終エネルギー消費の電化率を2025年に約30%とする目標に向けた諸方策が提示されており、エネルギー多消費型を中心とした産業部門や電気自動車(EV)など運輸部門に重点が置かれ、様々な電力貯蔵技術に言及している。また、エネルギーの電化により発生する送配電系統の費用は送配電料金での回収を認めるという方針も示された。
2022.03.30
ポーランド:政府、ロシアから石炭輸入を禁止する法案を承認へ
ポーランド政府は2022年3月30日、ロシアからの石炭輸入を禁止する法案を承認する方針を明らかにした。ポーランドでは、2020年の石炭輸入量1,280万tのうち、960万tをロシアから輸入し、2021年は約800万tを輸入している。ポーランドはEU最大の無煙炭生産国であるものの採掘される無煙炭は発電用ではなく、一部暖房設備もロシア炭を活用している。モラヴィエツキ首相は、国内炭を活用する他、ロシアに代わる輸入先としてオーストラリアからの購入を検討していることを明らかにしている。また、ポーランドは石炭だけでなく、2023年までにロシアの化石燃料(石油、天然ガス)から完全な独立を目指すとし、国家エネルギー戦略2040の更新版を発表した。「エネルギー主権」を新たな柱として追加し、ロシアから輸入される化石燃料から国内経済を迅速に独立させることを明記している。具体的には2040年までに電源構成に占める再エネの割合を5割に引き上げ、石炭火力とCHPプラントを天然ガスに変換する従来通りの投資を継続する。一方で、中期的には石炭火力の利用が増える可能性があることも示唆している。
2022.03.30
英国:英国送電会社(NGET)が北海沖に400万kWの海底直流送電線計画
英国ガス・電力市場局(OFGEM)は2022年3月30日、スコットランドとイングランドを合計容量400万kWの高圧直流海底ケーブルで連系する英国送電会社(NGET)の計画について公表した。OFGEMは今後、これに対する意見聴取を行う。高圧直流海底ケーブルは英国東部の北海沖に2ルートで敷設され、一方は、スコットランドのTornessとイングランドのHawthorn Pit間を長さ約176km、容量200万kWのケーブルで連系する、もう一方はスコットランドのPeterheadとイングランドのDrax間を長さ約440km、容量200万kWのケーブルで連系するものである。この計画はそれぞれNGETとSP Energy Network、NGETとSSEN Transmissionが共同で実施し、予定どおり進捗した場合、Torness-Hawthorn Pit間は2027年、Peterhead-Drax間は2029年の運開を計画している。このスコットランドとイングランド間の送電線増強は、英国政府が掲げる2030年までに4,000万kWの洋上風力を開発する目標の実現に寄与するものと考えられている。
2022.03.30
米国:EIA、2021年の干ばつが米国西部の水力発電量に与えた影響を分析
米国エネルギー情報局(EIA)は2022年3月30日、2021年に米国西部を襲った記録的な干ばつにより、カリフォルニア(CA)州や同国北西部において水の供給量が減少し、2021年の水力発電量が例年と比較して低レベルであったとの分析を発表した。EIAの分析によると、CA州における2021年の水力発電量は、10カ年平均(2011~2020年)を48%下回った。また、ワシントン州やオレゴン州などの北西部でも、2021年の水力発電量が10カ年平均を14%下回った。こうした地域では、冬季から春先に掛けての山脈への降水量や積雪量がその年の貯水量に大きな影響を与える。CA州では、同州シエラネバダ山脈への積雪量が降雪ピーク時に41%下回っていたことなどを背景に、州内貯水量第1位のShasta水力発電所の2021年発電量が10カ年平均から48%減少し、州内貯水量第2位のHyatt水力発電所が1967年の運転開始以降初めて貯水レベル低下を理由に休止するなど、州内の水力発電量が大きく減少することとなった。
2022.03.29
中国:国家能源局、2022年度のエネルギー業務指針発表
国家能源局は2022年3月29日、「2022年度のエネルギー工作指導意見(業務指針)」(第31号)を発表した。それによると、2022年度において、エネルギー生産を標準炭換算で44億1,000万tとし、そのうち原油2億t、天然ガス2,140億m3とする生産目標を立てている。電力分野では、発電設備容量26億kW、発電電力量9兆700万kWhが目標とされているほか、ピーク対応電源8,000万kWの新規増設、西部地域からの送電能力の2億9,000万kWへの引き上げなどの目標も設定されている。同指針ではさらに、石油・天然ガス資源の探査の加速化、パイプライン整備などインフラ整備強化、さらにはエネルギー市場の変動リスクや自然災害などへの対応用の備蓄設備整備計画の前倒しも示されている。
2022.03.28
中国:政府、「一帯一路」構想のグリーン発展に関する指針を発表
国家発展改革委員会など4省庁は2022年3月28日、「一帯一路構想のグリーン発展に関する指導意見(指針)」(第408号)を発表した。この指針は、2013年に政府が提唱した「一帯一路」構想の対象国に対して、インフラ、エネルギー、金融などの分野におけるグリーン発展の理念の共有を求めたもので、2025年までにモデルプロジェクト建設を促進し、それをベースとして2030年までに事業者の開発能力を大幅に向上させるという目標が打ち出されている。特に、石炭火力に関しては、新規建設は停止し、既に建設中の案件についても高効率化、高性能の脱硫・脱硝設備の採用、CCSの導入を推奨する内容となっている。
2022.03.28
フランス:石炭火力発電所運用見直しに関する検討状況
2022年3月28日付の現地報道によれば、環境移行省は廃止予定のÉmile-Huchet石炭火力発電所(60万kW)について、来冬に運転する可能性があると発表した。チェコのエネルギー事業者EPHのフランス子会社GazelEnergieが運営する同発電所はフランス政府の脱石炭廃止方針に従い、同年3月31日に廃止が予定されていた。しかし、国内原子炉の応力腐食割れ問題やロシアのウクライナ侵攻の影響への懸念から、政府は今冬に導入した石炭火力発電所の運転上限の緩和(年間上限700時間から、1~2月には1,000時間その後の期間には600時間に変更するもの)を来冬も導入するとし、事業者に対しこの事態に備えるよう要請した模様である。運転に際しては、「ロシアからの石炭供給を受けないこと」、「発電所の運転により排出される温室効果ガスをオフセットすること」が条件となる。現地紙のインタビューに対しGazelEnergieは「エネルギーセキュリティのためであれば、当然、設備を稼働させる。そのためには政府の正式決定が必要である」と述べている。一方、フランス国内に残るもう一つのCordemais石炭火力発電所(60万kW×2)については、フランス西部の安定供給確保のため、需給ひっ迫時の緊急用電源として運転を継続し2024~2026年に廃止予定とされているが、その後の同地点の転用計画が不透明となっている。2月16日、環境移行省は同発電向けの木質系ペレットを製造するプロジェクトに対する関心表明書の募集を発表した。EDFが保有する同発電所では2015年よりバイオマス転換プロジェクト(Ecocombust)が進められてきたが、2021年夏に採算性を理由にプロジェクト中止が発表されていたことから、今回の政府発表は驚きをもって受け取られている。また、政府系造船会社で小型モジュール炉(SMR)の開発を進めるNaval Groupが、同発電所地点においてSMRを建設する計画も浮上している。同発電所が位置するペイドラロワール地域圏のMorançais議長は「産業の維持、エネルギー自律の確保等が優先される。おそらくバイオマス転換、SMR、水素製造の組み合わせが選択肢になるだろう」と述べている。
2022.03.28
米国:バイデン政権、2023会計年度の予算教書を公表
バイデン政権は2022年3月28日、2023会計年度(2022年10月1日~2023年9月30日)の5.8兆ドルの予算教書を発表した。エネルギー分野としてはエネルギー省(DOE)の予算を2022年度の450億ドルから7.1%増の482億ドルに引き上げることが盛り込まれている。これには国家核安全保障局(NNSA)に最大となる214億ドル、科学局に78億ドル、エネルギー効率・再エネ局に40億ドルの他、米全土で大容量送電線の新設・更新を計画・支援することを目的とした送電線開発局(Grid Deployment Office)を新設するための9,000万ドルが含まれている。また、2021年11月に成立した超党派のインフラ投資・雇用法が要求する支出を一部反映し、クリーンエネルギー・イノベーション120億ドル、クリーンエネルギー関連インフラ整備に30億ドル、輸入部品に頼らず太陽光発電事業を促進するためのプログラムに2億ドルが充てられる。また、環境保護庁(EPA)の予算を14億5,000万ドルとし、石炭、天然ガス、石油などの化石燃料コミュニティにおける経済活性化と雇用創出を支援する連邦政府全体のプログラムやイニシアティブに90億ドル超の予算を充てることが示されている。予算教書は大統領の連邦議会に対する予算要求であり、予算決定権は連邦議会にある。連邦議会は今後、予算教書をもとに予算案を作成し審議する。
2022.03.25
米国:EIA、大規模蓄電池の持続時間に関する分析を公表
米国エネルギー情報局(EIA)は2022年3月25日、大規模(Utility-Scale)蓄電池の持続時間はその用途次第で異なるとの分析を発表した。蓄電池の持続時間とは、蓄電池の蓄電容量(kWh)を出力容量(kW)で割ったもので、蓄電池がフル充電状態から最大出力を持続可能な時間を表している。EIAの分析によると、稼働時間が数秒から数分の系統サービスを提供する蓄電池の平均持続時間は1.15時間と短かった。一方で、ピークシフト用途の蓄電池の平均持続時間は4.15時間と長くなった。太陽光発電が多い地域では、日中の太陽光発電の出力を充電し、太陽光発電が減少する夕方の需要ピーク時に放電するために、この持続時間が長い蓄電池が導入されている。EIAは、2023年までの蓄電池の導入予測量1,000万kWのうち、60%以上は太陽光発電と持続時間が長い蓄電池を組み合わせたハイブリッド型になると予測している。
2022.03.25
英国:運輸省、EV用充電インフラの拡充に向けた政策文書を発表
英国運輸省は2022年3月25日、電気自動車(EV)用充電設備の拡充に向けた政策文書「EVインフラ戦略(Electric Vehicle Infrastructure Strategy)」を発表した。同文書は、英国政府が掲げる2030年以降のガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止目標(ハイブリッド車などは2035年以降)に向けた、それまでのEV用インフラ整備の行動計画を示すものとなっている。現状の課題としては、充電設備(特に低圧のローカル向け)の設置導入ペースが遅れていること、公共充電設備のサービス品質に問題(不透明な請求や複雑な利用形態など)が多いこと、配電系統の容量制限で充電設備の新規接続に時間やコストがかかること、などを指摘している。今後の行動計画としては、幹線道路における急速充電設備および住宅街などローカル公共充電設備の拡充に向けた追加的な投資基金の設立、利用サービス向上のための利用データの共有化に向けた規則整備、スマート充電の普及に向けた規則整備などを挙げている。
2022.03.25
中国:福清6号機、営業運転開始
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2022年3月25日、福建省の福清原子力発電所6号機(華龍1号型PWR、115万kW)が営業運転を開始したと発表した。同号機は2021年1月に営業運転を開始した5号機に次ぐ同発電所で2基目の華龍1号型PWRで、2021年12月11日に初臨界を達成し、2022年1月1日に電力系統に接続され、同年2月19日に定格出力に達していた。CNNCによれば、同発電所5号機および6号機の年間発電量は合計約200億kWhであり、二酸化炭素の排出量を1,632万t削減するという。
2022.03.24
米国:NY州など北東部4州、地域の電力、大学などと地域水素ハブ構築を計画
米国ニューヨーク(NY)州のホークル知事(民主党)は2022年3月24日、同州と隣接する3州(コネティカット州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州)や地域の電力会社、大学等と協力して、地域のクリーン水素ハブ構築計画を策定すると発表した。洋上風力や太陽光からグリーン水素を製造し、地域内で大型車や重工業、発電等に利用することを模索する。米国エネルギー省(DOE)は、地域のクリーン水素ハブ構築に対して80億ドルの資金支援を予定しており、公募は2022年5月に開始する。NY州など4州は協力して提案書を作成し、この資金の獲得を狙う。本協定には、4州のほか、Con Edison社やナショナルグリッド社、ニューヨーク電力公社(NYPA)などの電力会社のほか、プラグパワー社などの水素関連の会社、コロンビア大学、コーネル大学など37社・団体が参加している。
2022.03.24
アラブ首長国連邦:バラカ2号機、営業運転開始
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力公社(ENEC)は2022年3月24日、UAEで2基目の原子力プラントとして、バラカ原子力発電所2号機(韓国製APR-1400型PWR、140万kW)が営業運転を開始したと発表した。同号機は2021年8月に初臨界を達成し、同年9月14日に電力系統に接続されていた。UAEの原子力規制庁(FANR)は、同号機の運転者であるNawah Energy Companyがすべての規制要求を満たしていることを確認した。ENECによれば、同発電所の3号機は建設工程が完了して運転準備中であり、4号機は建設の最終段階にある。同発電所の総合建設進捗率は96%であり、全4基が定格運転を行うと、UAEの25%の電力を供給し、年間2,240万tの炭素排出が削減されるという。
2022.03.23
中国:2035年までの水素エネルギー中長期発展計画が公表される
国家発展改革委員会と国家能源局は2022年3月23日、「水素エネルギー産業の中長期発展計画(2021~2035)」を公表した。中国は現在でも年間3,300万tを生産する世界最大の水素生産国だが、同計画ではサプライチェーンはいまだ発展の初期段階と指摘しており、イノベーション強化とともに、産業システムや制度を早急に整備し、国際的な技術開発や協力への参加を促す必要があるとしている。計画では、目標を3段階に分けており、2025年までに再エネによる水素生産や、水素電池自動車(FCV)などの利用モデル構築を促進させ(2025年のFCV保有台数目標=5万台)、2030年までに、クリーンエネルギーによる水素製造および供給システムなどを形成し、さらに2035年までに、輸送・エネルギー貯蔵・産業などの分野をカバーする水素エネルギーに対応する多様な産業体制の構築を目指すとしている。
2022.03.22
欧州:ウクライナ危機に関連して電気事業者団体が政府に書簡を送付
欧州の電気事業者団体Eurelectericは2022年3月22日、ウクライナ危機への対応に関するEU首脳会議の開催に先立ち、欧州委員会および政府首脳に宛てた書簡を公表した。エネルギー価格高騰が大きな社会問題となる中、需要家の保護や再エネを対象とする新たな税制の導入が検討されており、事業者として見解を明らかにしたもの。書簡では化石燃料からクリーンエネルギーへの転換が急務となっているため、事業者としてカーボンニュートラル達成を改めて約束、クリーンエネルギーへの投資を支持することを述べた。政府が対策を検討する上では、根本的な問題である化石燃料の使用を削減するための政策を進めるため、暖房や運輸部門で使用される石油やガスを電気で代替する電化の推進が有効であると主張して、電気を選択できる政策を訴えている。欧州委員会が2021年10月に発表したエネルギー価格高騰対策で低所得者の支援や税制改正について触れており、Eurelectericはこれらについて一定の支持を表明しているが、一方で、「緊急対策」とはいえ事業環境に悪影響を及ぼし、長期のクリーンエネルギーへの投資が滞る可能性があるため、一時的にその場限りの政策を繰り返すことは避ける必要があるとした。さらに、緊急避難的な政策であっても、EU全体で調整されるべきで、特定の技術(再エネ)を狙い撃ちするようなものは避けるべきと主張した。また、欧州委員会がクリーンエネルギー事業のための許認可手続き簡素化のためのガイドラインを作成することについて歓迎した。
2022.03.22
中国:政府、エネルギー体系高度化に向けた5カ年計画を発表
国家発展改革委員会と国家能源局は2022年3月22日、エネルギー分野における第14次五か年計画(2021~2025年)を発表した。「エネルギー体系現代化(高度化)に向けた第14次五か年計画」(第210号)と題された今回の計画では、2025年までに、エネルギー供給の保障能力を向上しつつ、低炭素・安全・効率的なエネルギーシステムを建設し、革新的なエネルギーの開発を推進することなどを方針として掲げている。特に電力分野では、非化石エネルギー開発への注力、デジタル化され強靭性を持つ新型電力システムの構築、発電および消費における効率化・排出削減促進に向け、技術面におけるイノベーションや市場の活用などを政策措置として取り込むことが示されている。
2022.03.21
米国:AEP、世界最大級のトラバース風力発電所(約100万kW)の運転を開始
電力大手アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP、本社:オハイオ州コロンバス)は2022年3月21日、一度に建設された規模としては北米最大となるトラバース風力発電所(オクラホマ州、99万8,000kW)の運転を開始したと発表した。風力タービン数は356基である。同発電所はアーカンソー州、ルイジアナ州、オクラホマ州の同社顧客に電力供給する。同発電所は同社の「ノースセントラル・エネルギー施設」を構成する3つの風力発電所のうち最終プロジェクトである。先にサンダンス風力発電所(19万9,000kW、2021年4月運転開始)、マーベリック風力発電所(28万7,000kW、2021年9月運転開始)が商業運転を開始している。合計出力は148万4,000kWとなり、同社は同施設により「今後30年間で約30億ドルの電力コスト削減が可能」とした。
2022.03.21
ドイツ・カタール:ドイツ、LNG長期契約合意のためにカタールを訪問
2022年3月21日付のエネルギー情報誌によると、ドイツのハーベック連邦経済・気候保護相は、20日にカタールを訪問し、LNG取引の長期的なパートナーシップへの合意に至った。LNG長期契約の詳細については、両国の企業間にて今後協議される模様。ロシアからの天然ガス輸入依存脱却のため、ドイツにとってカタールは重要な天然ガス輸入先候補である。カタールのLNG年間輸出量は1,070億m3であり、ロシアからドイツへのガスパイプラインによる年間輸入量約700億m3を超えるものの、足元でカタールが供給できる量は同国輸出能力の10~15%と言われている。カタールは2026年までにLNG供給量を約60%拡張する予定であり、ドイツが十分な輸入量を確保できる時期は少なくとも同年以降と見込まれる。なお、ハーベック連邦経済・気候保護相は21日にアラブ首長国連邦(UAE)も訪問しており、同日付でUAEからドイツへの水素輸入等に関連する4プロジェクト、および持続可能なエネルギーや水素技術に関する共同研究実施の合意に至った。
2022.03.21
ロシア:経済制裁により火力発電設備の運転・保守に支障を来す懸念
2022年3月21日付のロシア国内業界誌は、経済制裁を受けるロシアで今後、想定される電気事業運営上のリスクについて、事業者の懸念の声を報じている。ロシア国内の発電事業者団体(SPE)は既に計20項目のリストを準備し、対応策についてエネルギー省と議論・検討を行っているとも伝えられる。最も大きな問題として挙げられているのは、国外メーカー(GEやシーメンス等)により供給を受ける電力設備、とりわけ、コンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)に係るスペアパーツの不足やメンテナンスへの支障である。同誌によれば、ロシア国内のCCGTは約3,500万kWあり、全国の火力発電設備容量に占める割合は20%に上る。SPEは、これら設備の一部について、スケジュールを前倒しして閉鎖、ないし運転を停止しなければならない可能性があるとしている。その他のリスクとして、燃料価格の上昇、国内電力消費量の激減による卸電力価格の下落なども挙げられている。これらリスクの対応策として、エネルギー省は、政府との協議を経ていない現時点で、詳細についてコメントできないとしている。
2022.03.21
中国:政府、揚水以外の電力貯蔵に関する中期計画を発表
国家発展改革委員会と国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は2022年3月21日、「新型電力貯蔵(JEPIC注:新型電力貯蔵設備とは、揚水発電を除く蓄電池などの電力貯蔵設備を指す)に関する第14次五か年計画(2021~2025年)」(第209号)を発表した。今回の計画では、2025年までにコストの30%削減を目指して電気化学式電力貯蔵技術を改善するとともに、10万kW級の圧縮空気型電力貯蔵技術を実用化するなどして、電力貯蔵の大規模商業化に向けた準備を整えることを目標としている。そして、2030年までには、電力貯蔵を市場化して発展させ、世界を主導する位置を確保するとの長期目標も提示した。
2022.03.19
インド:岸田首相が訪印、クリーンエネルギー分野での協力を確認
日本の外務省によると、岸田首相は2022年3月19日、インドを訪問し、モディ首相と首脳会談を行った。会談後に発表された共同声明によると、岸田首相は、今後5年間で官民あわせてインドに5兆円投資するという目標を掲げると表明した。エネルギー・気候変動対策関係では、新たに「日印クリーン・エネルギー・パートナーシップ」(CEP)を立ち上げ、日印協力を進めていくことを確認した。CEPでは、電気自動車(EV)、蓄電池を含むエネルギー貯蔵システム、EV充電インフラ、太陽光エネルギー、グリーンを含むクリーン水素/アンモニア、風力エネルギー、両国のエネルギー・トランジション計画に関する意見交換、エネルギー効率性、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)、カーボンリサイクルといった分野における、持続的な経済成長を達成し、気候変動に対処し、エネルギー安全保障を確保することに向けた協力が行われる。
2022.03.18
米国:インディアナ州でSMR建設を可能にする法案が成立
インディアナ州のホルコム知事(共和党)は2022年3月18日、同州公益事業規制委員会(IURC)に対し小型モジュール炉(SMR)による電力供給を可能とするための規則を2023年7月1日までに採択することを指示する法案に署名し、同法は成立した。規則が採択されれば、州内でSMR(同法では35万kW以下の原子炉と定義)を建設するための法制面での環境が整うことになる。同法はまた、電力会社がSMRの建設を検討する場合、自社の廃止する石炭または天然ガス火力発電施設を代替するものかどうか、廃止する発電施設の敷地内または近くに建設可能かどうかを検討することも求める。さらに同法は、2023年6月30日以降に建設されるSMRを州の財政的インセンティブの対象となるクリーンエネルギー事業のリストに追加する。同州は全米50州のうち稼働中の商業用原子炉を持たない21州の一つ。
2022.03.18
ベルギー:政府、2025年までの脱原子力政策を10年先送り
ベルギー政府は2022年3月18日、2025年までにすべての原子炉(7基)を段階的に閉鎖する脱原子力政策を10年先送りとし、ともに運開が1985年で最新のチアンジュ原子力発電所3号機(PWR、約109万kW)とドール原子力発電所4号機(PWR、109万kW)を2035年まで運転するために必要な措置を講じると発表した。同決定について政府は、「激動する地政学的状況において、同国の化石燃料からの依存脱却を強化するもの」としている。同発表を受け、フランスエネルギー大手Engie子会社で両発電所を運転するElectrabelは翌19日、実現可能性や実施条件を政府と共に検討するとしつつ、運転期間延長に向けた作業には安全性、規制等の制約があり、民間事業者の通常の事業範囲を超えるリスクが存在するため、ステークホルダー間の利害を一致させ、リスクと機会を適切に共有できるスキームでなければならない、とコメントしている。
2022.03.17
フランス:マクロン大統領、4月の大統領選に向けた公約を発表
2022年3月17日付現地報道によると、マクロン大統領は2022年4月に行われる大統領選に向けた公約を発表した。このうちエネルギー関連の政策については、同年2月発表のエネルギー政策に沿って、2050年までに6基のEPR2の新設、50カ所の洋上風力発電施設の設置、太陽光発電の導入量を2050年までに現在の10倍超へ引き上げ(2021年3月時点で約1,150万kW)等を掲げるとともに、グリーン水素製造分野でのリーダーを目指した投資継続や、EV普及拡大に向けた一般家庭向けのEVリース制度の導入、EV関連部品のサプライチェーンを100%国産化するための経済的インセンティブ付与等を掲げた。また、エネルギー消費量の削減に向けて、国民全員を対象に年間70万戸の住宅の断熱改修工事も進めるとした。マクロン大統領は公約の実現にかかる費用を年間500億ユーロ(約6兆5,000億円)と見込んでいる。
2022.03.14
中国:2022年度経済計画、エネルギー備蓄引き上げへ
中国政府は2022年3月14日、2022年度の「国民経済・社会発展計画」を公表した。同計画は3月11日に中国の立法機関である全国人民代表大会(全人代)を通過したもので、全人代で採択された政府工作報告に付随する重要文書である。2022年度の同計画は、エネルギー安全保障が強調されており、それに向けて石油・ガス・石炭の備蓄量の引き上げが明示され、石炭備蓄施設の建設支援を行って各地域における消費量の5%をめどとする備蓄能力の形成などを図るとされている。さらに、建設中の石油やガスの備蓄施設の早急な稼働開始を促すほか、緊急対応用の電力貯蔵施設を積極的に構築するとともに、自家発やバックアップ電源の配置を進めることも示された。
2022.02.27
ウクライナ:送電系統運用者、欧州系統との緊急の連系を要請
欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)は2022年2月27日、ウクライナの送電系統運用者Ukrenergoより緊急の要請を受けたことを明らかにした。これは、ウクライナの電力系統を大陸欧州の電力系統と緊急に同期連系することを、Ukrenergoが求めたものである。ENTSO-Eは同様の要請が、ウクライナ南部に隣接し系統連系されているモルドバの送電系統運用者からも寄せられたことを伝えている。これらの動きに先立つ2月24日、ウクライナはロシア、ベラルーシの電力系統から自国の系統を分離する試験を始めていたことが、複数の報道で伝えられていた。今回の要請を受けて、ENTSO-EはUkrenergoらの立場を理解し支援を継続していく考えを明らかにするとともに、優先課題として、緊急の同期連系に必要な条件の特定を進めることとしている。なお、ウクライナ系統は旧ソ連圏の統合電力系統の一部を構成してきたが、最西部のドブロトゥボルスカヤ火力発電所、同じくブルシティン火力発電所から国境を超える送電線を介してポーランド、またスロバキア、ルーマニア、ハンガリーとの間で一部、電力輸出も行われていた。ウクライナ国家統計局のデータによると、2020年におけるウクライナの年間電力輸入量は約21億kWh、同輸出量は約51億kWhとされている(ただし上述の数値はロシアの系統運用者のデータ等と不整合が認められる)。
2022.02.25
中国:中国核工業集団(CNNC)、田湾8号機を着工
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2022年2月25日、江蘇省田湾原子力発電所8号機(ロシア製VVER-1200、120万kW)の建設に関し、原子炉建屋ベースマットにコンクリートを注入(着工)した。CNNCは2018年6月にロシア国営原子力企業ロスアトムと、田湾7、8号機および遼寧省徐大堡原子力発電所3、4号機にVVER-1200原子炉を建設する協定に署名した。田湾7号機は2021年5月に着工しており、両号機は2026~27年にかけて完成予定としている。
2022.02.24
中国:国家能源局、発電専用の石炭火力は当面原則新設しない方針を表明
国家能源局は2022年2月24日、発電専用の石炭火力設備は当面、原則新設しない方針を明らかにした。これは、野党なども参画する諮問会議である政治協商会議の委員が提出した電力産業の高度化に向けた提案に対する回答の中で示されたもので、第14次五か年計画(2021~2025年)期間中は発電のみを目的とした石炭火力発電設備は原則、新規設置を認めない方針であると回答した。なお、電力供給の安定化や、再エネ電源の拡大利用を目的とする調整電源としての整備は維持すると見られる。
2022.02.24
ドイツ:今後のエネルギー政策方針についての経済大臣発言
連邦経済・気候保護省(BMWK)のハーベック大臣(緑の党)は2022年2月24日、2022/2023年冬季に向けてガス・石炭の戦略的備蓄制度を整備すると明らかにした。2021年下期にはロシアのGazpromが欧州向けのガス供給量を例年より減らしたため、2022年2月には欧州各国でガス貯蔵設備の充填率が前年より大幅に低下した。BMWKは今後こうした事態を避けるため、暖房シーズンの開始前にガス事業者に貯蔵設備を一定以上充填するよう義務付ける方針である。足元の見通しとしては、仮に今ロシアからのガス供給が途絶したとしても、今冬~夏季にかけては国内備蓄で需要を賄うことができると述べた。大臣はまた、ロシア産天然ガスへの依存から脱却し、中長期的にガスの安定供給を実現するためには、需要削減も重要であることを示唆した。さらに、ガス調達先の多角化に向けて、沿岸部の2都市(ヴィルヘルムスハーフェン、ブルンスビュッテル)におけるLNGターミナル建設を支援する方針も明らかにした。今後の天然ガス火力利用の見通しが不透明になったことにより、関係者(産炭州首相や産業界、研究者等)からは安定供給維持のため原子力や石炭火力発電所の稼働延長を求める声が上がっている。ハーベック大臣はドイツ公共放送(ARD)とのインタビューで、「それ(石炭火力の稼働延長)が必要であるということを完全に否定はしない」と述べたが、「稼働延長は石炭輸入先への依存をそれだけ強めることになる」と否定的な見方を示した。原子力発電所の稼働延長については、2022/2023年冬季に原子力発電所を利用する可能性を明確に否定した。大臣は、「エネルギー依存脱却のための真の道は再エネだ」と語っており、再エネと水素大量導入のため大規模な投資を行う意向を示している。
2022.02.24
EU:2021年の風力発電新設量は1,100万kW、2030年目標には不足
欧州の風力発電事業者団体のWindEuropeは2022年2月24日、欧州における2021年の風力発電建設状況と事業開発の課題を発表した。これによるとEU加盟国内で2021年に追加された設備量は1,100万kW、英国などを含め欧州全体では1,740万kWであった。欧州全体では陸上風力が81%で、残りは洋上風力である。新設量が多かった国は英国、スウェーデン、ドイツ、トルコ、オランダの順番である。2022~2026年の導入見通しについて、WindEuropeの試算ではEU域内で1,800万kWまで増加する可能性があるが、EUが目標とする2030年の再生可能エネルギー導入比率40%の達成に必要な年間3,000万kWには達しないと指摘する。この原因として、各国が掲げる再エネ導入目標は十分野心的であるものの、許認可手続きが煩雑で事業開発のボトルネックとなっていることを挙げている。事業開発の遅れはサプライチェーン全体へも悪影響を及ぼし、一部に工場の閉鎖や解雇などが行われており、欧州の風力発電タービンメーカー5社のうち4社が2021年決算で赤字に陥っているとWindEuropeは指摘している。
2022.02.24
米国:AEP、競争市場の再エネ資産を売却し規制市場へ投資シフト
米国電力大手AEP(本社:オハイオ州)は2022年2月24日、子会社AEP Renewablesが保有する競争市場下の再エネ発電設備160万kW(風力144万kW、太陽光16万kW)を売却する方針を明らかにした。AEPのエイキンズ会長兼CEOは2021年第4四半期の決算説明会でこれらの資産売却によって事業をスリム化し、リスクを軽減する一方で、規制事業に資本を再配分することが可能になると説明した。同社は今後5年間で380億ドル(約4兆円)の資本計画のうち15億ドル(約1,700億円)を送電事業にシフトし、競争市場における再エネ事業を縮小する計画である。また、同社は規制市場での再エネ開発は継続する予定で、2022~2030年にかけて風力860万kW、太陽光660万kWの追加を目標としている。
2022.02.24
米国:米国西部の4州、地域水素ハブを共同開発する意向を示す
米国ニューメキシコ州、コロラド州、ユタ州、ワイオミング州の知事らは2022年2月24日、西部地域のこの4州の間を結ぶ水素ハブ(Western Inter-States Hydrogen Hub)を共同開発するために連携すると発表した。2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法が定めるとおり、米国エネルギー省(DOE)は、地域のクリーン水素ハブ構築に向けて少なくとも4案件に対し総額80億ドルの支援を行う。DOEは2022年5月に支援希望者からの提案(RFP)を求める予定である。4州の作業チームは、水素の製造から消費までを実証する提案書を共同で作成し、補助金の獲得を目指す。ロッキー山脈に沿って並ぶこの4州には、グリーン水素の製造に必要な風力や太陽光の再エネ資源が豊富にあるほか、ブルー水素の製造に必要な天然ガス資源と炭素の貯蔵に適した地層が存在し、天然ガスパイプライン網が消費地までを結んでいる。
2022.02.23
米国:PSEG、火力発電設備売却完了、クリーンエネルギー投資促進へ
ニュージャージー州に本社を置く大手電力パブリック・サービス・エンタープライズ・グループ(PSEG)社は2022年2月23日、火力発電設備(675万kW、主にガス火力)の売却が完了したことを発表した(売却先は投資会社ArcLight Capital Partners)。2021年度第4四半期決算報告では、同社はクリーンエネルギーとインフラへの投資に注力し、規制事業での成長を促進するというビジョンを示している。同社のイッツォCEOは、洋上風力の開発に加えて原子力も重要視しており、安定的な収益をもたらす原子力は同社が2030年までにネット・ゼロを達成するという目標を支えていると述べた。現在、保有するホープクリーク発電所(117万kW)とセーラム発電所(229万kW)は、2018年に制定された州法に基づき、「ゼロエミッション証書(ZEC)」制度のもとで補助金を受け取っている。ニュージャージー州公益事業委員会(NJBPU)は2021年4月、ZECを3年間延長(2025年5月末まで)とすることを承認した。PSEGはZECの更なる延長等、原子力発電所の経済性を担保するための継続した枠組みが必要であるという認識を示している。
2022.02.17
世界:世界の2021年の新設量は1,500万kW超、累計で4,800万kWに達す
事業者団体の世界洋上風力発電フォーラム(WFO)は2022年2月17日、2021年に新設された設備量に関するデータを公表し、単年では世界全体で1,567万kWとなり、累積設備量が4,818万kWに達したと発表した。単年の新設規模は過去最大であった2020年(520万kW)の3倍である。最も多かったのは中国の1,269万kWで、これにより累積量でも世界最大(1,975万kW)の市場となった(中国政府が2022年1月に発表した2021年の洋上風力発電の新設量1,690万kWに対し、WFOは完成したすべてのタービンが設置され発電を開始した発電所のデータを整理しているため、数値は小さくなっている)。これまで最大の市場であった英国は累積量が1,228万kWで2位、ドイツは770万kWで3位である。2021年末時点で建設中の事業は、やはり中国が多く799万kW、2位は英国の299万kW、3位は台湾の251万kW、オランダ(223万kW)、フランス(98万kW)、日本(14万kW)、ノルウェー(9万kW)、イタリア(3万kW)と続いており、中国の市場拡大が顕著である。
2022.02.16
中国:林業5カ年計画発表、木質バイオマス発電500万kWを新規整備へ
現地紙は2022年2月16日、自然資源部・国家林業草原局(日本の林野庁に相当)がこのほど、2025年までの林業草原産業開発計画を発表したと報じた。同計画では、森林、草原などの資源の持続的な充実を図る中で、適切な地域ではエネルギー用途の樹種の育成を展開することとし、さらに木質バイオマス発電(熱併給含む)設備500万kWの新規整備、木材質加工燃料(チップ・ペレットなど)の利用量3,000万tという目標も掲げられている。なお、政府の国家温室ガス削減目標(NDC)では、森林蓄積量の2005年比60億m3増がコミットメントされている。
2022.02.16
英国:規制機関、小売市場の安定化に向けた一時的な介入策を発表
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2022年2月16日、小売市場の安定化に向けた2つの一時的な市場介入策を発表した。一つは、新規および既存の需要家にすべての料金メニューの提示を義務付けるものであり、今後安価な料金体系が復活しスイッチングが再び活発になった際に、持続不可能な価格競争に歯止めをかけ、市場を安定化させることを目的としている。もう一つの介入策では、卸価格が大幅に急落した際に市場安定化料金(Market Stabilisation Charge)と呼ばれるメカニズムを発動する。このメカニズムでは、需要家がスイッチングを行った際、新たな契約先となる事業者は、契約移行元の事業者がヘッジしていた分の費用を負担・補償する。これにより、価格ヘッジなど適切な経営戦略をとる小売事業者を保護するとしている。OFGEMは2021年12月時点の発表において、標準料金など一部料金メニューの解約に解約料を設ける案を検討していたが、今回の発表では、これを設けることは見送るとしている。これら2つの介入策は2022年4月14日から導入され、9月30日に失効する予定となっている。失効タイミングは、OFGEMの判断により、2023年3月末まで延長される場合もある。
2022.02.15
イタリア:第一四半期のエネルギー価格は大幅上昇
イタリアのネットワークエネルギー・環境規制機関(ARERA)は2021年2月15日の公聴会において、2022年1月からの第1四半期のエネルギー料金について、前年同期比で一般家庭向け電気料金が131%、ガス料金が94%上昇する見込みであると公表した。同国政府によるシステムコスト(再エネ電力支援、原子力発電所廃炉費用等に充当されるもの)の一時停止策や付加価値税の減税策等の介入にもかかわらずエネルギー料金の大幅上昇が止まらない状況であるという。主な原因は世界的な天然ガス価格高騰であり、2021年1月から12月までの月間平均卸売価格は電気が400%、天然ガスが500%上昇したという。ARERAは「もはや一過性の介入ではなく構造的な対策を講じる必要がある」と述べている。
2022.02.14
米国:ERCOT、前年に引き続き寒波到来も今年は供給力を維持
米国エネルギー情報局(EIA)は2022年2月14日、同年2月初旬にテキサス州に到来した寒波によりテキサス電力信頼度協議会(ERCOT)管内の電力需要が高まったものの、供給力の維持により停電が回避されたとの分析を発表した。2021年2月の寒波では、発電設備の凍結やガス火力発電の燃料不足等による供給力低下で、同管内において2,000万kWもの輪番停電が発生し、ERCOTの卸電力価格も価格上限である9ドル/kWhに達した。今回の寒波は2021年ほどの規模ではないものの、冬季需要ピークは2月4日10時に6,886.2万kWに達し、過去最高に迫っていた。EIAによると、今回の寒波ではテキサス州内の天然ガス生産量は大きく減少することなく、ガス火力発電への燃料供給は維持された。また、再エネ(主に風力発電)も高水準の出力を保った。このように高い供給力が維持されたことで、ERCOTの卸電力価格は0.1ドル/kWhを下回る水準に抑えられた。
2022.02.12
米国:ドミニオン、排出削減目標の対象を顧客の排出量にも拡大
エネルギー情報誌は2022年2月12日、エネルギー大手のドミニオン・エナジー(本社:バージニア州)が2050年のネット・ゼロ目標の対象範囲を拡大すると報じた。米国事業者の多くがネット・ゼロ目標を掲げているが、その多くは自社発電所からのCO2排出量(スコープ1)を対象としている。一方で今回、同社が発表したのはスコープ2、3と呼ばれる間接的な排出量で、スコープ2は電力購入した分の他社排出量、スコープ3は燃料として購入する天然ガスの上流側の排出量や、ガス販売に伴い顧客が排出するCO2を対象とする。同社のRobert Blue CEOは2021年第4四半期決算の発表に際して、「自社事業に伴うCO2排出量を幅広くできるだけ早く削減するため直ちに行動する必要があり、スコープ3の排出量削減のため行動する」と説明している。
2022.02.10
中国:政府、グリーン・低炭素化促進に向けた指針を発表
国家発展改革委員会と国家能源局は2022年2月10日、「エネルギーのグリーン・低炭素化に向けたエネルギー転換のための体制・政策改善に関する意見(指針)」(第206号)を発表した。この指針は、「2030年カーボンピークアウト・2060年カーボンニュートラル目標」達成向けて2021年に発表された「カーボンピークアウト・カーボンニュートラル業務に関する意見(指針)」と「2030年カーボンピークアウト行動計画」を推進するための政策文書と説明されており、各省のエネルギー計画中におけるグリーン・低炭素化目標を設定し、かつ地域間の連携協力を図ること、省エネを最重要課題の一つとして、エネルギー総量規制の柔軟な運用を図りつつエネルギー消費原単位規制は強化すること、工業・運輸・民生分野におけるグリーンエネルギー利用に対する支援強化、電力系統調整能力の拡大や運用最適化を企図した市場取引活性化など35項目の方針で構成されている。
2022.02.10
ドイツ:2030年目標達成に向けて太陽光の補助対象拡大
連邦経済・気候保護省、環境省と食料・農業省は2022年2月10日、太陽光発電拡大に向けた農地の利用促進について合意し、農地や湿地に設置される太陽光発電設備を今後改正が計画されている再エネ法の補助(FIP等)の対象とする。特に営農型太陽光発電を促進する方針であり、太陽光発電による農業利用への影響を最大15%までに抑えるという条件のもと、EUの共通農業政策(CAP)の補助を継続して受けることができるとしている。なお、自然保護と気候保護の観点から、保護地域、草地、自然保護に関わる耕作地や湿地は補助の対象から除外される。ハーベック連邦経済・気候保護大臣は、この太陽光設備の補助対象拡大により、2030年目標の太陽光累積導入量2億kW(現在の累積導入量は約6,000万kW)を達成したいとしている。
2022.02.09
英国:エネルギー料金の上昇により企業が操業時間を減らす動き
現地報道は2022年2月9日、エネルギー料金の上昇により、スコットランドの企業の5分の1が操業時間を減らす動きを取ると報じた。Addleshaw Goddard Scottish Business Monitorによるスコットランド経済圏の400社以上を対象とした企業の意識調査の最新結果として、多くの企業が電気・ガス料金の上昇や持続可能なサプライチェーンの構築への課題に直面していることが明らかになった。エネルギー料金を含むインフレ圧力により商品やサービスの値上げが予想されると回答した企業は80%、今後1年間のビジネスにおける懸念事項としてエネルギー料金の上昇を挙げた企業も82%に上るという。同調査によりエネルギー料金上昇が企業活動へも悪影響を及ぼし始めていることが明確となったと分析されている。
2022.02.06
中国:非化石エネルギー電源、2022年には全電源の50%に迫る見通し
現地紙は2022年2月8日、非化石エネルギー発電設備容量のシェアが2022年には50%を超えるとの見通しを報じた。同紙は中国電力企業聯合会(日本の電事連に相当)が公表した電力需給分析報告をもとに、2022年の全発電設備容量は26億kWとなる一方、非化石エネルギー電源の設備量は13億kWに達し、割合は2021年の47%から3ポイント増加して、初めて半分を占めると明らかにした。
2022.02.04
インドネシア:G20サミットでネット・ゼロ達成のためのシナリオを発表
インドネシア政府は2022年2月4日付のプレスリリースで、議長国を務める2022年10月開催のG20サミットで世界に向けて、2060年までのネット・ゼロ達成に向けたシナリオを発信することを明らかにした。化石燃料から再エネへの転換計画を含むシナリオが「総合国家エネルギー戦略」の中で示される予定である。インドネシアでは2060年に再エネによる発電100%(5億8,700万kW)を達成する目標を掲げており、その内訳は太陽光が3億6,100万kW、水力が8,300万kW、風力が3,900万kW、バイオマスが3,700万kW、地熱が1,800万kWなどとなっており、電力システム安定のため原子力発電についても2049年頃に導入予定という。
2022.02.02
EU:欧州委員会、天然ガスと原子力のタクソノミー技術基準案を承認
欧州委員会は2022年2月2日、2022年1月に施行された、持続可能な事業分類(タクソノミー)に関する技術基準に、2050年カーボンニュートラル達成のための過渡的な活動として、天然ガス火力発電と原子力発電を含める補完的委任法案(CDA)を承認した。天然ガス発電に関しては(1)ライフサイクルの温室効果ガス(GHG)排出量が100gCO2/kWh未満、または(2)2030年末までに建設許可を取得したものに限り、石炭等のGHG排出量の多い発電設備の代替設備であること、直接GHG排出量270gCO2/kWh未満(あるいは設備容量当たりの年間平均GHG排出量550kgCO2/kW以下)、2035年末までに再エネ起源のガスあるいは低炭素排出ガスへ100%切り替えること等を条件にタクソノミー適合を認めるとした。原子力発電については、核燃料サイクルからの廃棄物を最小限に抑えた新型炉の研究開発・実証・実用化、水素製造を含む電力または熱供給のための原子力施設の新設と運転、既存炉の運転期間延長に係る設備改造が対象となった。ただし、放射性廃棄物最終処分および廃炉に必要な費用を賄うための基金の設置、低・中レベル廃棄物最終処分場の稼働、2050年までに高レベル廃棄物最終処分場を稼働するための詳細な計画等が共通して条件となっている。さらに、原子力施設の新設と運転、既存炉の運転期間延長に係る設備改造に関しては、それぞれ2045年までに建設許可、2040年までに運転期間延長に関する許認可を取得したものに限られており、加えて2025年から事故耐性燃料(ATF)を採用すること等が条件となっているが、原子力産業界からは高レベル廃棄物処分場の稼働期限や2025年までのATF採用について、達成が困難との意見も出ている。CDAは今後、欧州議会と閣僚理事会によって4カ月(必要に応じて6カ月)にわたる審議が実施される。同期間に異議申し立てが行われ、欧州議会の過半数の反対あるいは閣僚理事会でEU域内人口の65%以上に相当する20カ国以上の反対があった場合否決される。異議申し立てがない、あるいは、否決されなかった場合には、2023年1月1日に施行される。
2022.02.01
アルゼンチン・中国:アルゼンチン、華龍1号導入でCNNCと契約締結
アルゼンチン原子力発電会社(NA-SA)は2022年2月1日、「華龍1号」(120万KW)1基をアトーチャⅢプロジェクトとして建設する設計エンジニアリング、調達、建設(EPC)契約を中国核工業集団有限公司(CNNC)と締結した。建設費用は80億ドル以上で建設期間は約8年半、運転期間は60年とされる。中国の国外での華龍1号の導入は、パキスタンのカラチ原子力発電所に次いで2例目となる。NA-SAは、工業生産・開発省が79%、国家原子力委員会が20%、国営エネルギー会社IEASAが1%を出資する国営企業で、現在3基の原子力発電所を運転している。同プロジェクトは、2015年2月に締結された「加圧水型原子炉建設プロジェクトにおける協力に関する協定」に基づくものだが、当時合意されたNA-SAとCNNCが共同で作業を進める方式は放棄され、同EPC契約作業完了後にNA-SAが原子炉を運転、保有した上で売電収益から建設費用全額を融資する中国側へ返済するという。
2022.02.01
ベルギー:政府、エネルギー価格高騰に伴う消費者救済策を決定
2022年2月1日付の各種報道によると、ベルギー政府はエネルギー価格高騰に伴う消費者救済策を決定した。その内容は、「電気料金にかかる付加価値税(VAT)率を4カ月間(3月1日~7月1日)に限り通常の21%から6%に下げること」「電気料金支払い用の小切手100ユーロ(約1万3,000円)を各家庭へ配布すること」「低所得者層(全世帯の約20%)への優遇料金の期限を3月末から6月末へ延長すること」である。これらの救済措置に要する費用は11億ユーロ(約1,430億円)と見積もられる。これに対し、同国の電気・ガス事業連合会(FEBEG)は、税率変更に伴い、電力小売事業者側に請求システムの変更を始めとした様々な対応期間として2カ月が必要だと表明した。同年2月4日付の政府プレスリリースでは、「VAT引き下げは家庭向け電気料金に対して同年3月1日から開始するが、実務面の理由により、4月以降に発行される請求より適用される予定」と発表された。
2022.02.01
イタリア:許認可手続きが進まず、再エネ落札量は募集量を大幅に下回る
欧州の風力発電事業者団体のWindEuropeは2022年2月1日、イタリアで実施された再エネ入札について、許認可手続きがボトルネックとなり落札量が募集量を大幅に下回っているという見解を明らかにした。イタリア政府が募集したのは前回入札の不足分を含めて330万kWであったが、このうち落札に至ったのは97万5,000kWのみである。この原因としてWindEuropeのジャイルズ=ディクソンCEOは、イタリアの複雑な許認可手続きが原因で事業開始に結び付かないことを示しており、手続きを修正しなければEUとイタリアの再エネ導入目標が達成できないと警告する。イタリア政府はEUに提出した国家エネルギー・気候計画(NECP)で2030年に1,930万kWの陸上風力発電設備量導入を目指すが、その達成には毎年100万kWを追加する必要がある。イタリアで陸上風力発電の認可を得るには平均5年かかっており、EUが加盟国に求める2年より大幅に長い。事業の許認可の問題はイタリアにとどまらず、EUは今夏までに許認可手続きに関するガイダンスを作成する方針である。
2022.01.28
中国:洋上風力設備の累積導入量が世界首位に
国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は2022年1月28日、オンラインで記者会見を開催し、中国の2021年における洋上風力の新増設量は1,690万kWで、この結果、2021年末時点での累計設備容量は2,639万kWとなり、世界首位に立ったと発表した。会見では併せて大規模水力、バイオマスなど含めた再エネ電源設備が2021年末には10億6,300万kWに達し、国内の総発電設備量に占める割合は44.8%、総消費電力量に占める割合は29.8%になったと述べた。国家能源局は、2020年下半期に示された気候変動目標「2030年カーボンピークアウト、2060年カーボンニュートラル」実現に向けて、2021年は良いスタートを切ったと評価しつつ、引き続きエネルギー安全保障を前提としながらクリーン電力の供給を増加させていく方針を示した。
2022.01.25
中国:国家能源投資集団、石炭火力でのアンモニア混焼技術開発に成功と発表
現地紙は2022年1月25日、国有発電大手の国家能源投資集団公司が石炭火力発電設備でのアンモニア混焼技術開発に成功したと報じた。国家能源投資が1月24日、北京で行った石炭ボイラーにおけるアンモニア混焼技術に関する発表によると、同社が開発したアンモニア供給システムと、微粉炭の混合燃焼措置を利用し、出力4万kWのボイラーで最大35%のアンモニア混合発電に成功した。当該技術は中国電機工程学会(CSEE)と中国石油・化学工業連合会(CPCIF)による技術成果審査に合格している。
2022.01.24
中国:2025年までにEV2,000万台普及へ向け充電インフラの整備加速へ
国家発展改革委員会および関連10省庁は2022年1月24日、「電気自動車(EV)用充電インフラ整備強化に関する実施意見(指針)」を公表した。この指針によると、現行の第14次五か年計画の最終年である2025年末までに、2,000万台のEVを普及させるため、充電インフラ整備を加速化させる方針が示されている。具体的な方策として、集合住宅における充電インフラの建設・設置や、農村地域の充電型・交換型充電ステーション整備を推進する一方、EVとAI、5Gなど先端技術との連系によるIoV(Internet of Vehicle)に関する研究開発・応用も強化する内容となっている。同指針では、充電インフラ整備加速化を踏まえた政府の監督管理体制の構築とともに、送配電事業者の協力も求められている。
2022.01.24
中国:国務院、省エネ・排出削減五カ年計画を発表
国務院(日本の内閣に相当)は2022年1月24日、「第14次五カ年(2021~2025年)省エネ・排出削減総合工作方案(事業計画)」を発表した。同計画では2025年までに、エネルギー消費原単位を2020年比13.5%削減、また化学的酸素要求量(COD)とアンモニア性窒素の排出量を8%、窒素酸化物、揮発性有機化合物(VOC)の排出量を10%以上削減することを全体目標としている。目標達成に向けて、主要産業における省エネ・排出削減強化、石炭の利用効率化など10項目の重点プロセスが提示されており、あわせて、地域ごとのエネルギー利用総量・原単位規制の管理強化、エネルギー多消費産業に対する規制強化、需要側管理の強化、省エネ排出削減の計量・監視体系などの整備に向けた政策的措置を行う方針も示されている。
2022.01.24
英国:波力発電メーカーBomboraが商船三井との協業で技術開発
英国の波力発電設備メーカーであるBombora Wave Powerは2022年1月24日、日本の海運会社である商船三井から354万ポンド(約5億円)の出資を受けることを発表した。両社は2020年から技術検討を進めてきた。Bomboraは、膜型波力エネルギー変換装置mWaveを用いた波力発電の開発を進めており、同社は商船三井からの出資金を、今後数カ月以内に英国ウェールズのペンブルックシャー沖で実施する1,500kW級の発電実証試験や、mWave技術の更なる開発および運用能力の向上に活用する予定としている。同社は、洋上風力発電設備に波力発電設備を組み合わせた技術InSPIREの開発も進めており、1万kWの洋上風力発電に4,000kWの波力発電を組み合わせた実証機の開発も進めている。
2022.01.21
ドイツ:政府、欧州委員会へタクソノミー基準案に対する意見書を提出
エネルギー情報誌によると、ドイツ政府は2022年1月21日、持続可能な事業分類(タクソノミー)の技術基準案に対する意見書を欧州委員会へ提出した。原子力については、人類や環境への越境的・長期的に危険を及ぼすリスクや廃棄物の最終処分といった問題を踏まえ、持続可能でないと主張している。また、ガス火力発電は長期的には持続可能でないものの、再生可能エネルギーが主力電源となるまでの移行期については、石炭火力発電を廃止しながら、短期的にCO2排出量を削減するためのつなぎの役割になるという見解を示している。一方、ガス火力発電新設の一条件案である「一定量(2026年1月1日時点で30%以上、2030年1月1日時点で55%以上、2035年12月31日以降は100%)は再エネ起源のガスあるいは低炭素排出ガス(水素やバイオマスガスなど)を使用する」については、項目を削除し、現実的な再エネ・低炭素排出ガスの入手可能量を考慮のうえ、ガイドラインにて別途定めるべきとした。さらに、石炭火力をガス火力へ転換する際の一条件案である「従前の設備と比較して温室効果ガス排出量を発電量kWh当たり55%削減する」についても、現実的でないとして値の見直しを求めた。
2022.01.21
英国:BEIS大臣、国際連系線Aquindの建設計画を否認
英国の主要紙や専門誌は2022年1月21日、フランスとの新たな国際連系線Aquindの建設計画ついてエネルギー・産業戦略省(BEIS)のクワーテング大臣が開発許可を否認したと報じた。同連系線は、総工費12億ポンド(約1,841億円)をかけ、送電設備容量200万kWのHVDC海底ケーブルでポーツマス(英)とディエップ(仏)を結ぶ計画として、2016年に発表されていた。否認理由として、同連系線の上陸地点がポーツマス市内の幹線道路に干渉し、地域住民の生活に影響を及ぼす懸念があったことが挙げられている。一方、報道ではその他の背景として、事業主体Aquind社による保守党への献金疑惑や、Aquind社の代表者2名のロシア政府とのつながりを示唆するリーク文書の存在など、同事業が抱える複数の問題が指摘されている。
2022.01.21
EU:EUの2020年再エネ目標を達成、国別ではフランスのみ目標未達
エネルギー情報誌は2022年1月21日、EUが2020年の再生可能エネルギー導入目標を達成したと報じた。EUは2020年の最終消費エネルギーに対する再エネ比率を20%とする目標を設定しており、実績22.1%で達成が確認されたもの。国別ではスウェーデンが最も高く60.1%で、フィンランド(43.8%)、ラトビア(42.1%)、オーストリア(36.5%)と続く。これらの国々とは逆に再エネ比率が低かったのはマルタ(10.7%)、ルクセンブルク(11.7%)、ベルギー(13%)、ハンガリー(13.9%)である。EUは国ごとに目標を割り振っており、23%の目標に対して実績は19.1%であったフランスを除き、すべての国が目標を達成したと報じられた。
2022.01.20
カナダ:オンタリオ州、州北部での新たな水力発電所の開発を探る
カナダのオンタリオ州が示した2022年1月20日付のプレスリリースによれば、同州は、州が所有する発電事業者Ontario Power Generation社に対して、同州北部における新たな水力発電所の開発を検討するよう要請した。温室効果ガス削減目標の達成を目指す中、将来の供給力不足に対応する狙いがある。同州は温室効果ガスの削減目標について、2030年までに2005年比で30%の削減を目指しているが、同州環境省の予測によれば、現状の政策だけでは目標に届かない可能性があるという。また将来の供給力不足について、同州の独立系統運用機関IESOは、電化の進展で需要が増加する一方で、ピッカリング原子力発電所の閉鎖で供給力が減少するため、電源が不足すると指摘する。オンタリオ州は、カナダの中東部に位置し同国人口の約4割が居住する政治経済の中心である。2020年の同州の発電量に占める原子力発電の割合は60%と高く、次に水力発電が25%を占める。
2022.01.19
米国:米国の3分の2の州は炭素排出量削減のため原子力活用を志向
2022年1月19日付の報道によると、AP通信が全米50州およびワシントンDCのエネルギー政策を調査した結果、米国の約3分の2の州は、炭素排出量削減のため化石燃料の使用を劇的に削減する必要がある中、太陽光や風力等の再生可能エネルギーのみで電力の安定供給の確保は難しいとの認識から、原子力の活用を志向しているという。一方、残る約3分の1の州では、グリーンエネルギーの目標に原子力を活用する予定はなく、再生可能エネルギーの活用拡大を志向し、安定供給に向けた対応として、蓄電池等のエネルギー貯蔵技術の開発、州間の高圧送電線建設への投資、水力発電の需給調整機能の活用等が示されているとしている。
2022.01.18
中国:国務院、「交通運輸分野の第14次五か年計画」を公表
国務院(日本の内閣府に相当)は2022年1月18日、第14次五カ年計画期間(2021~2025年)を対象とした交通運輸分野の中期計画である「第14次五カ年現代交通運輸体系発展計画」(第27号)を公表した。同計画では、2025年までに高速鉄道(時速250km以上)による50万人以上の都市のカバー率を95%以上とするほか、高速道路、空港、港湾施設など基幹インフラの拡充を図ることに加え、運営効率や質的向上も目標とされている。これとあわせて低炭素化・排出削減を推進し、高速道路における充電施設のカバー率を地域ごとに60~80%以上とすること、人口100万以上の都市における公共用車両のEV化率を80%以上とすること等の目標も提示されている。さらに国際分野では、一帯一路関係国とのインフラ連携を積極的に促進する観点から、ロシア・モンゴル・東南アジア・南アジア・中央アジア地域諸国との陸上輸送ルート構築推進も挙げている。
2022.01.17
ブラジル:連邦政府、新規原子力発電所の建設に向けた立地調査の準備に入る
原子力情報サイトは2022年1月17日、ブラジル鉱山エネルギー省(MME)が2050年の稼働を目指して、新規原子力発電所の立地選定に向けた準備を開始したと報じた。立地調査に先立って、MMEは同年1月13日に連邦電力持株会社エレトロブラスの子会社Cepelとの間で、調査に関する協力協定(3年間)に調印している。Cepelは、原子力発電公社Eletronuclearが2009~2010年に実施した調査をレビューし、必要に応じて補完する調査を実施するとしている。ブラジルは発電電力量の約65%を水力発電で賄っているが、2020~2021年には記録的な干ばつにより、電力需給がひっ迫する事態も発生している。原子力発電は2基が稼働中で全体の3%程度を占めているが、国内3基目となるアングラ3号(PWR、約140万kW)は工事が遅れている。2021年のCOP26において、MMEのアルブケルケ大臣は「ブラジルのエネルギー転換にとって原子力は不可欠であり、今後30年間に新規原子力を1,000万kW増強する計画で、これは国家エネルギー計画に盛り込まれたものである」と述べている。
2022.01.17
中国:政府、2021年度消費電力量の速報値を発表
国家能源局は2022年1月17日、2021年の消費電力量の速報値を発表した。2021年における国全体の消費電力量は、2020年比10.3%増の8兆3,128億kWhとなった。新型コロナ感染症拡大前の2019年と比較すると14.7%の増加となり、2年平均では年間7.1%増と説明している。分野別に2020年度と比較すると、第1次、第2次、第3次産業、家庭用はそれぞれ16.4%、9.1%、17.8%、7.3%の増加となっている。
2022.01.13
中国:2021年の新エネ車販売台数が350万台を突破
現地紙は2022年1月13日、中国汽車(自動車)工業協会(CAAM)が新エネ車(NEV)について、2021年の販売台数が352万1,000台となり、全自動車販売台数の13.4%を占めたと発表したと報じた。中国における新エネ車は、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)が含まれるが、現地紙は、EVが273万4,000台、FCVが1,586台と推計している。全自動車の販売台数も2,628万台となり、2017年以来の対前年比増(3.8%)となった。一方、今後の懸念として、NEV向けの補助金は2022年から30%削減され、2023年からは撤廃される方針であることに加えて、世界的な半導体不足の制約が挙げられている。
2022.01.13
ドイツ:国土の2%を風力発電用地に指定する目標は現状では実現困難
2022年1月13日付の報道によると、連邦政府が掲げる「国土の2%を陸上風力発電用地に指定する」という目標は実現が困難な見通しで、立地規制を担う州政府に対して、風力導入を促す仕組みが必要との声が与党SPDから挙がっている。SPD会派副院内総務のMatthias Miersch氏は13日開催の連邦議会本会議で、「風力拡大に本気で取り組もうとしている州が支援を受けられるよう、連邦は州間の競争を促す必要がある」と発言した。同氏はまた、「連邦、州、地方自治体が一団とならなければ再エネ比率の引き上げは達成できない」と述べ、連邦と州の協力強化を訴えた。上述の2%目標についてはRobert Habeck経済・気候保護相も、16州のうち2%近い利用率を達成しているのは2州(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州とヘッセン州)のみで、全国大では利用率は0.5%程度にとどまることを指摘している。同氏は今後、「陸上風力法」の制定や州政府・地域住民との対話により、風力導入プロセスの迅速化を図ることを表明している。
2022.01.13
フランス:EDF、政府発表の電気料金抑制措置を確認
フランスエネルギー大手EDFは2022年1月13日、フランス政府発表の電気料金抑制措置について確認するプレスリリースを行った。1点目は、2022年分の原子力発電電力量切り出し制度Arenhの年間上限を200億kWh上乗せすること(同制度の上限は本来であれば1,000億kWh)。2点目は、2022年2月の電力規制料金の上昇幅を4%に抑制すること。これらの措置により同社は、2022年のEBITDAへの影響は約77億~84億ユーロに及ぶと推定している(1ユーロは約125円)。フランス政府の発表によれば、EDFの追加コストを相殺するため、Arenhによる販売価格は通常の42ユーロ/MWhから46.5ユーロ/MWhへと引き上げられることとなる。
2022.01.13
中国:デジタル経済発展五カ年計画、エネルギー分野デジタル化加速へ
中国政府は2022年1月12日、「デジタル経済発展第14次五カ年計画(2021~2025年)」(第29号)を発表した。同計画では、国内のデジタル経済の水準を世界最先端に引き上げることを企図しており、GDPに占めるデジタル経済の規模を2020年の7.8%から2025年には10%前後に引き上げること等を目標として設定している。同計画では、基幹産業のデジタルトランスフォーメーションについて、目標達成に向けた重点課題の一つとして位置付け、エネルギー分野についても生産・輸送・消費というエネルギーサプライチェーン全体におけるデジタル化を推進するとしている。同計画ではさらに、デジタル化を主眼とした国際協力として「デジタル・シルクロード」促進にも言及しており、ASEANとのスマートシティ協力や中東欧諸国とのデジタル経済協力の推進強化などがその例として挙げられている。
2022.01.10
米国:EIA、全米で2022年に新規導入される発電容量の約半分は太陽光と発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2022年1月10日、全米で2022年に新規導入される事業規模(utility-scale)の発電容量の約半分は太陽光になると発表した。2022年の新規発電容量は計4,610万kW(計画値)であり、内訳は太陽光(2,150万kW、全体に占める割合46%)、天然ガス(960万kW、21%)、風力(760万kW、17%)、蓄電池(510万kW、11%)、原子力(220万kW、5%)である。太陽光の導入量が多い州は、テキサス州(610万kW)とカリフォルニア州(400万kW)である。前年(2021年)に新規導入された太陽光発電容量は計1,550万kW(推定値)であった。風力については、全体の51%がテキサス州に導入される計画である。
2022.01.07
チェコ:新政権が2033年までの石炭停止を発表
チェコ新政権は2022年1月7日、2033年までに石炭火力を段階的に停止し、原子力および再エネの割合を増やす新たな政策方針を明らかにした。2020年の時点でチェコの石炭火力発電設備容量は42%、また発電電力量は37%を占めている。2019年に発足した政府の石炭委員会は石炭火力の停止について2033年、2038年、2043年を期限とする案を検討、このうち、2020年12月時点では2038年の停止が望ましいとしていた。しかし、2021年5月時点でEU-ETS価格の高騰を考慮した結果、同委員会は当初案よりも早い撤退案を検討し、国内のエネルギー市場への影響を評価する必要があるという方針を示していた。石炭火力を停止するための具体的な戦略はこれから検討することになるが、原子力と再エネ設備の導入を進めることになる。チェコでは2021年10月に総選挙が行われた結果、市民民主党(ODS)を中心とする5党連立政権が発足し、ODS党首のフィアラ氏が首相を務めている。同氏はバビシュ前政権と比べて親EU派とみられている。
2022.01.05
米国:ニューヨーク州知事、グリーン水素ハブの構築を目指す方針を表明
ニューヨーク(NY)州のホーチュル知事(民主党)は2022年1月5日、年始に知事の方針を州議会に説明する演説(State of the State Address)を行い、同州をグリーン水素ハブにすることを同州のエネルギー研究開発機構(NYSERDA)や電力公社(NYPA)等に対して指示した。2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法(IIJA)には、連邦が4地域の“クリーン”水素ハブを指定し合計80億ドルを支援することが含まれており、同州はこの支援の獲得を狙う。同州内に電力やガスの供給エリアをもつナショナルグリッド社は、既に同州ロングアイランドに水素ハブを構築する考えを表明している。また同州では、沖合の洋上風力や、州北部やカナダ・ケベック州の陸上風力や水力の利用など、再エネ電源の供給を拡大する計画が進む。グリーン水素は“Made in New York”であることを強調し、その供給拡大を目指す。
2022.01.01
EU:欧州委員会が原子力と天然ガスをタクソノミーに含めることを提案
エネルギー情報誌は2022年1月1日、欧州委員会(EC)が持続可能な事業分類(タクソノミー)に関する技術基準に原子力発電と天然ガス発電を含めることを提案したと報じた。ECは持続可能な事業への資金供給を目的に、事業内容が持続可能か否かを判断するための基準を数年間にわたって議論し、2021年6月に技術基準を採択したが、原子力と天然ガスの扱いについては先送りになっていたもの。ECは、2050年のカーボンニュートラル達成を目指す中で、加盟国のおかれた状況は様々で原子力と天然ガスに一定の役割があることを認識して、再生可能エネルギーを主体とした社会への移行を促進するため、厳しい条件のもとでタクソノミーに含めることを認めたとしている。原子力発電の新設は、2045年までに加盟国が建設を許可すること、放射性廃棄物の最終処分および発電設備の解体に必要な費用が準備できること、低・中レベル廃棄物の最終処分場が稼働していること、高レベル廃棄物の最終処分場を2050年までに稼働するための詳細計画を有していることが条件である。天然ガス発電に関しては二つの基準が示され、一つはライフサイクルの温室効果ガス(GHG)排出量が100gCO2/kWh以下となることである。もう一つは、加盟国による建設の認可が2030年12月31日までに行われ、発電時のGHG排出量が270gCO2/kWh以下(あるいは年間のGHG排出量が550kgCO2/kW以下)となり、GHG排出量の多い既存設備を置き換え、設備容量は置き換える設備量の15%を超えず、一定量(2026年1月1日時点で30%以上、2030年1月1日時点で55%以上、2035年12月31日以降は100%)は再エネ起源のガスあるいは低炭素排出ガスを使用することである。ECは1月21日まで加盟国の専門家への意見照会を行い、その後、欧州議会と閣僚理事会に最終案を提示、4カ月(必要に応じて6カ月)にわたって審議を行うことになる。原子力と天然ガスの扱いについては加盟国間でも大きく意見が異なり、賛成、反対の立場からそれぞれ意見表明が行われてきたが、EC案を否決するためには、人口の65%以上を有する20カ国以上の反対あるいは欧州議会の過半数の反対が必要で、EC案が否決される可能性は低いとみられている。
2022.01.01
インドネシア:インドネシア政府、国内の石炭供給不足で輸出禁止を発表
インドネシアエネルギー鉱物資源省(MEMR)は、2022年1月1日付のプレスリリースで、鉱業事業許可(IUP)と特別鉱業事業許可(IUPK)を受けている事業者に対し、2022年1月1~31日の間の石炭輸出を禁止すると発表した。インドネシアでは、石炭採掘事業者に対し生産量の25%を国有電力会社PLNに供給することを義務づける「国内市場義務(DMO)」が定められているが、供給量がDMOの基準を大きく下回り、国内の石炭火力発電所(出力計1,085万kW)が停止して1,000万人以上の顧客に影響を及ぼす可能性がある。大規模停電を避けるには1月中に追加で510万tの石炭が必要としているが、同日時点で3万5,000tしか確保できていない。政府は輸出禁止に関し1月5日以降、再検討するとしている。
2021.12.30
中国:CGN、浙江省で三澳2号機(華龍1号)を着工
中国広核集団有限公司(CGN)は2021年12月30日、浙江省三澳(San'ao)原子力発電所2号機(華龍1号、121万kW)が着工を迎えたと発表した。三澳原子力発電所は、中国初の民間資本が参加する原子力発電プロジェクトで、中国独自の第3世代炉「華龍1号」を6基建設する計画となっており、すでに2020年12月には1号機が着工している。同発電所2号機の建設開始によりCGNは、建設中の原子力発電所7基(設備容量830万kW)、運転中の原子力発電所25基(同2,826万kW)を保有することになる。
2021.12.28
中国:海南省で昌江4号機(華龍1号)、着工
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2021年12月28日、海南省昌江(Changjiang)原子力発電所4号機(華龍1号、120万kW)が着工を迎えたと発表した。華能集団有限公司(CHNG)は同発電所Ⅱ期工事にあたる3、4号機として華龍1号を建設する計画を進めており、3号機は2021年3月に着工済みで、両機とも2026年の商業運転開始を目指している。同工事の総投資額約400億元(約7,230億円)とのこと。
2021.12.24
中国:国家エネルギー局、2022年のエネルギー分野の基本方針を確定
国家エネルギー局は2021年12月24日、エネルギー関連の年次会議である全国エネルギー業務会議を開催し、2022年のエネルギー分野における基本方針を発表した。会議では、エネルギー安全保障強化、グリーン・低炭素化の加速、イノベーション技術開発の加速、制度改革の推進、監督管理の強化、国際協力の拡大および組織(共産党)の運営強化という7項目の方向性が示されている。同会議には国家エネルギー局の幹部に加え、各地方政府のエネルギー部門、および企業や産業団体の主要幹部が出席している。
2021.12.21
インド:クダンクラム6号機が建設開始
2021年12月21日付報道によれば、インドのクダンクラム原子力発電所6号機(VVER、105万kW)の建設が同月20日に開始された。これに先立ち、同発電所5号機(VVER、105万kW)は2021年6月に建設が開始されている。両機とも、ロシアのギドロプレス社の設計で、完成後はインド原子力発電公社(NPCIL)が所有・運転する。クダンクラム原子力発電所の開発は、インドとロシアの長期戦略プロジェクトであり、5、6号機の建設は、この第3段階に当たる。3、4号機の建設進捗率は約50%であり、1、2号機はそれぞれ2014年、2017年に運転を開始している。
2021.12.21
フィンランド:オルキルオト3号機、欧州初のEPRとして臨界に到達
フィンランドの電気事業者TVOのオルキルオト原子力発電所3号機(EPR、172万kW)は2021年12月21日、初臨界に到達した。同国5番目の原子炉として40年ぶりに新規起動する同機は運開後、同国における電力需要の約14%相当を発電する予定である。TVOは2003年にフランスのアレバNP社およびドイツのシーメンス社と32億ユーロ(約4,160億円)のターンキー契約を締結し、2005年に建設を開始した。当初は2009年の商業運転開始を予定していたが、様々な理由で遅延していた。今後、出力を徐々に上げながら起動試験を行い、2022年1月末に出力30%で発電を開始し、同年6月には定常運転に入る予定で、同機は欧州におけるEPR初号機となる。欧州では現在、フランスと英国においてEPRが建設中で、それぞれ2024年と26年に運開を予定している。
2021.12.20
中国:石島湾高温ガス実証炉HTR-PMが系統接続
中国華能集団有限公司(CHNG)は2021年12月20日、山東省石島湾で建設中の高温ガス炉・パワーモジュール実証炉(HTR-PM)が送電系統に接続されたと発表した。HTR-PMは2022年半ばに商業運転を開始する予定としている。熱出力25万kWtの原子炉2基で1台の電気出力21万kWeのタービン発電機を駆動するHTR-PMは、2012年12月に着工し、2021年8月に国家核安全局(NNSA)の運転許可を受けて燃料装荷が開始され、同年9月と11月にそれぞれ臨界を達成していた。CHNGはHTR-PM建設プロジェクトを行う華能山東石島湾核電有限公司の47.5%株式を所有する会社で、中国核工業集団有限公司(CNNC)の子会社である中国核工業建設集団(CNEC)が32.5%を所有し建設を担当、20%を所有する清華大学核能新能源技術研究院(INET)がR&Dを担う。
2021.12.18
台湾:公民投票で第4原子力建設再開とLNG第3受入基地移転要求は不成立
現地紙は2021年12月18日に実施された公民投票の結果、「第4原子力発電所建設再開」と「LNG第3受入基地移転」を求める提案がいずれも反対多数で不成立となったと報じた。「第4原子力発電所建設再開」は賛成380万4,755票/反対426万2,451票で、「LNG第3受入基地移転」は賛成390万1,171票/反対416万3,464票でいずれも成立しなかった。現在の民進党政権は何れにも「反対」の立場であり、蔡英文総統は18日夜に記者会見を行い、「台湾の人々は、エネルギー転換と電力の安定供給および経済成長の維持を求め、経済と環境保護の両立を重視している、というメッセージが伝えられた」との談話を発表した。
2021.12.17
中国:全国大の炭素排出権取引市場における成約量累計が1億tを突破
現地紙は2021年12月17日、全国大の炭素排出権取引市場である上海環境エネルギー取引所において、7月16日の取引開始から102日目となる12月15日に、排出権取引量が累計1億トンを突破したと報じた。10月までは1日あたりの取引量は約25万トンにとどまっていたが、各事業者への割当作業の進展とともに取引が活発化し、政府の生態環境部(日本の「省」に相当)が2021年10月23日に、12月15日17時までに対象となる排出事業者の95%が排出枠に関する義務履行を終えるよう各地方政府に求める通達を出したこともあり、12月14日の取引量は1,488万トンと単日最大を記録した。
2021.12.16
米国:冬の嵐がカリフォルニア州北部に襲来し、35万軒以上が停電
2021年12月16日付の現地報道等によると、12月12~13日にかけてカリフォルニア州北部に冬の嵐が襲来し、カリフォルニア州3大私営電気事業者の一つであるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社の供給区域内で数多くの停電が発生した。同社の供給区域の大部分が強風と豪雨に見舞われ、エルドラド郡では50cm以上の積雪が、また10の郡で風速秒間約31m、3つの郡で同45mを超える突風が観測された。15日時点で35万軒以上の復旧が完了しており、停電軒数は1万5,000軒である。なお、15日から再度嵐が襲来しており、1万5,000軒のうち、約1万1,000軒は2回目の嵐の影響によるものである。PG&E社は早期復旧のため過去30年分の暴風雨データを用いた暴風雨停電予測モデルを活用し、暴風雨の影響が最も深刻となる場所と時間を予測し、復旧要員や資機材を事前に配備している。現地報道によると停電した顧客のうち、91%以上に対して6時間以内の送電再開を完了している。
2021.12.15
米国:EIA、稼働中の石炭火力発電設備の28%が2035年までに廃止予定と発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年12月15日、現在米国で稼働している石炭火力発電設備の28%(5,900万kW)が2035年までに廃止予定と発表した。2021年9月現在、米国の石炭火力発電設備容量は2億1,200万kWであり、平均経年数は45年である。CO2削減のためのクリーンエネルギー基準を設けている多くの州では、経済的に存続可能な石炭火力発電設備に対しても、その削減または完全な廃止を要求している。なお2021年9月現在、同局に報告されている石炭火力発電設備の新設計画はない。
2021.12.15
英国:規制機関、小売市場の財務基盤強化に向けた新たな規制枠組みを発表
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2021年12月15日、小売市場の財務基盤を強化し、需要家に転嫁され得るリスクを低減するための新たな規制枠組みを発表した。OFGEMによると、小売事業者の財務基盤をチェックするストレステストを2022年1月から実施するほか、小売各社が自社の経営・リスク管理に関して自己評定を作成する枠組みも2022年初頭に導入する。財務基盤のストレスチェックに関しては、複数のシナリオの下で対象の小売会社が事業を継続することが可能かをOFGEMがテストし、問題があった場合には是正を求めていくとしているが、具体的な実施の流れについては業界団体のEnergy UKと連携を取りながら決定していくとしている。また、小売事業者が財務健全性を証明できるまで一定数以上の需要家(5万軒以上や20万軒以上など)を獲得・保有することを制限する案や、需要家による標準料金など一部料金メニューの解約に解約料を設ける案などについて、1月中旬まで意見公募を実施している。さらにOFGEMは2021年10月、小売事業者の倒産や市場撤退の増加に対する緊急措置として、小売市場への新規参入を希望する事業者を評定する期間を6カ月間と設定し、一時的に新規参入受け入れを「停止」する措置を取っているが、今回の規制枠組みでは、まずは市場を整備し安定させる必要があるとしてこれを9カ月間に拡大すること、さらに、事業実績のない事業者に付与されている小売ライセンスの取り消しを行っていくことを決定している。このほか、料金の前払い制による需要家からの預かり金を保護する方策や、事業者が倒産した際の再エネ証書制度(RO)の未納金再分配時における負担低減策などについて意見公募を実施している。なお英国では、2021年8月から12月15日までにかけ、エネルギー価格の高騰を背景に26社が小売事業から撤退し需要家400万軒以上に影響が及んでいる。
2021.12.15
オランダ:議会、4党連立に関する協定書を公表
オランダ議会は2021年12月15日、自由民主国民党(VVD)、民主66(D66)、キリスト教民主アピール(CDA)、キリスト教連合(CU)の4党連立に関する協定書を公表した。「お互いを思いやり、未来を見据える」と題した同書によると、気候変動政策関連では2050年カーボンニュートラル達成のために、気候法で定める2030年GHG排出量49%削減目標(1990年比)を少なくとも55%に引き上げるとし、2030年以降も2035年に70%、2040年に80%削減を目指すとしている。また、この目標を達成するためのエネルギー分野の施策として、「洋上風力、屋上太陽光、地熱、グリーンガス(バイオガスを精製したもの)、水熱(河川、排水、上水等からの熱エネルギーを抽出し、家庭向けの暖房や温水に利用する技術)などの再エネ開発強化」、「水素製造・輸入規模の拡大」、「ボルセラ原子力発電所の運転期間延長および原子炉2基新設」、「可能な限り早い段階でのバイオマス発電の廃止」、「CCS設置場所の確保」等を掲げている。新連立政権は2022年初めに発足予定である。
2021.12.15
中国:広東省、2025年までに1,800万kWの洋上風力建設を計画
現地紙は2021年12月15日、広東省政府がこのほど、大規模風力発電計画を発表したと報じた。広東省政府は2021年12月14日に発表した同省内の海洋経済発展第14次五カ年計画(2021~2025年)において、漁業や観光産業の振興と並んで、洋上風力開発を重点的に行うとし、同省の東部・西部海域における洋上風力発電建設計画が謳われている。同計画では2025年末までに累計1,800万kWの洋上風力発電設備を建設するとともに、省内2カ所で生産工場や研究センターなどで構成される風力設備産業基地を造成するとしており、省内で年間900台の風力発電機生産が目標とされている。
2021.08.17
英国:政府、水素戦略を発表
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2021年8月17日、水素戦略(Hydrogen Strategy)を発表した。英国は2020年11月発表の「10ポイント計画」において2030年までに500万kWの水素製造能力を確保する目標を立てている。今回発表の水素戦略では、2030年までの水素経済ビジョンとして、市場からの40億ポンド(約6 ,000億円)規模の投資や9,000人分の雇用創出などの見通しを立てている。そして、これに向けた水素開発の支援手段として、洋上風力開発促進で中心的な役割を果たした差額決済型固定価格買取制度(FIT-CfD)を採用することを政府案として提示している。FIT-CfDを通じて相対的に水素を優遇することで、水素活用を促しながら投資を呼び込み、開発を加速させることとなるが、具体的な枠組みの検討については別途意見公募を開始している。このほか、政府はグリーン水素(再エネ電力による水素生成)とブルー水素(天然ガスとCCSによる水素生成)の両方を推進することも発表しているが、詳細については2022年に発表を先送りした。また、水素製造時のGHG排出量把握に向け水素製造業界と協力を図ることや、水素の貯蔵や流通設備の開発に向けたレビューの実施、既存のガス供給網への水素の20%混入についての安全性・実現可能性の分析、商業用水素製造設備の導入促進に向けたファンド「Net Zero Hydrogen Fund」(資金規模2億4,000万ポンド、約360億円)の設計検討なども盛り込まれた。
2021.08.15
インド:首相、2047年までに「エネルギーの自立」を目指すと発表
2021年8月15日付の報道によると、インドのモディ首相は同日、独立記念日の記念演説を行い、独立100周年の2047年までに「エネルギーの自立」を実現するという目標を新たに示した。インドは毎年エネルギー資源の輸入に12兆ルピー(約18兆円)費やしており、輸入資源依存からの脱却を目指す。このほか、エネルギー政策関連では、同国の水素エネルギー政策となる「国家水素計画(National Hydrogen Mission)」の策定を正式に発表し、インドをグリーン水素の生産と輸出のグローバルハブとすること、2030年までに鉄道の電化100%を達成し、鉄道のCO2排出ネット・ゼロを目指すこと、2030年までに再生可能エネルギー発電設備容量を4億5,000万kWとすること等の方針が示された。
2021.08.10
中国:政府、再エネ発電事業者によるエネルギー貯蔵設備設置を奨励へ
国家発展改革委員会と国家能源局は2021年8月10日、再エネ発電事業者によるピーク調整能力増強に関する通知(通達)(1138号)を発表し、近年急増している再エネ発電からの発電電力を有効に活用するために、再エネ発電事業者に対しエネルギー貯蔵設備(揚水、蓄電池、その他新エネ貯蔵を含む)の設置を求める方針が示された。同時に電力市場関係部門には、ピーク調整力の確保に向けた市場設計を求めた。
2021.08.10
米国:連邦議会上院、1兆ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決
連邦議会上院は2021年8月10日、超党派のインフラ投資法案(H.R.3684:INVEST in America Act)を賛成多数(賛成69、反対30)で可決した。同法案では、既に予算配分済みの支出に加えて、5年間で約5,500億ドルの新規支出を含む計1兆ドル規模(約110兆円)のインフラ投資が計画されている。これに新規支出分として、(1)道路・橋梁:1,100億ドル、(2)旅客・貨物鉄道:660億ドル、(3)電力系統・電力インフラ:650億ドル、(4)高速通信網:650億ドル、(5)水道:550億ドル、(6)公共交通整備:392億ドル、(7)環境修復プロジェクト:210億ドル、(8)港湾・水路:166億ドル、(9)EV充電設備:75億ドルなどが加わる。電力関連では、送電網整備支援、電力系統の信頼度・回復力の構築、クリーンエネルギー技術のための重要鉱物サプライチェーンの確保、クリーンエネルギー技術として、炭素回収・貯蔵(CCS)、直接空気回収(DAC)、水素、原子力(小型モジュール炉や新型炉など)などに資金を投じる。今後、同法案は下院で審議が行われる。
2021.08.09
チェコ:チェコ大手EPH、2030年までに発電所での石炭使用を停止へ
チェコに拠点を置く大手電力事業者EPHは2021年8月9日、2030年までに欧州各国内に保有する電力および熱併給プラントで、石炭の使用を停止することを発表した。ただし、法律で規定された石炭の段階的廃止スケジュール(2038年)を実施するドイツは対象外としている。EPHは既に英国Eggborough石炭火力発電所(設備容量:200万kW)を閉鎖し、Lynemouth石炭火力ではバイオマス燃料への転換を完了した。2021年中にはドイツのDeubenを閉鎖し、2021年から2022年にかけてフランスのEmile HuchetとProvence石炭火力を閉鎖する予定である。2023年には石炭と石油を燃料とする北アイルランドKilroot発電所を閉鎖し、発電所跡地は「Kilroot Energy Park」として太陽光発電、水素燃料、天然ガスによるバックアップ、バッテリー貯蔵システムを導入したプロジェクトの実施拠点となる。また、チェコ共和国の褐炭火力発電所は、2028~2029年までに、より低排出の燃料への変換を図るとしている。
2021.08.06
中国:国家電網、陝西省の送配電系統全般を運営へ
現地紙は2021年8月6日、国有送配電企業である国家電網有限公司が、陝西省政府(地方政府)管理下の国有企業である陝西省地方電力有限公司を傘下に置いたと報じた。通常、各省の送配電事業は省政府所有の電網企業が単独で行うが、陝西省における送配電系統は、歴史的経緯から陝西省地方電力有限公司と国家電網系の陝西省子会社による「1省2会社」の状態が続いており、計画の不整合などの問題点が指摘されていた。今回、国家電網と陝西省政府は、国家電網71.7%、陝西省国有資産監督管理委員会28.3%の持分比率での新会社「国網陝西省電力有限公司」の設立に合意し、国家電網の管理下で陝西省における送配電系統の統合が図られることとなった。
2021.08.05
米国:バイデン政権、2030年に新車販売の50%を電動車とする大統領に署名
バイデン大統領は2021年8月5日、2030年に新車販売における電動車(電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV))の比率を50%とする目標を盛り込んだ大統領令(EO)に署名した。EOには、自動車の燃費基準に関する指示も含まれ、環境保護局(EPA)と運輸省(DOT)は、トランプ前政権が実施した燃費基準の規制緩和を見直す。今後、短期的には、カリフォルニア州の規制を基にした、2026年モデルの車に適用される連邦政府の燃費・排ガス基準を策定する。長期的には、早ければ2027年から中型車および大型車、少なくとも2030年までに乗用車などの小型車向けに、より厳しい規制を課す新たな燃費・排ガス基準を策定する。本取り組みは、バイデン政権が進める公約「より良い復興(Build Back Better)」の一環。地元報道によると、EOによる電動車の新車販売比率目標に強制力はなく、電動車の普及促進を奨励する政権の姿勢を示したものとしている。自動車業界団体等は、政権の方針に支持を示す一方、電動車の普及促進には、充電インフラへの投資、電動車への移行に向けた広範なインセンティブ(奨励金など)などが不可欠とし、連邦政府・議会等による政策支援の拡充・立法化を求めている。
2021.07.29
ドイツ:国家水素戦略に基づく最初の資金提供を決定
連邦経済エネルギー省は2021年7月29日、国家水素戦略に基づく最初の資金提供を決定し、水素プロジェクトTrailblazerが1億900万ユーロ(約140億4,800万円)を得ることになった。同プロジェクトではフランスの産業ガス事業者Air Liquide Deutschlandとエネルギー事業者Siemens Energyがパートナーシップの一環として、2023年までにPEM型水電解装置(2万kW)を、その後の第2段階で3万kWを建設する計画である。
2021.07.29
フランス:EDF再編計画、現政権下での実施は困難な見通し
2021年7月29日付の現地紙によると、フランスの電力大手企業EDFの再編計画に関するフランス政府と欧州委員会との協議は未だ合意に至らず、2022年までとなるマクロン大統領の任期中にEDF再編の実現は困難な見通しである。再編計画をめぐるフランス政府と欧州委員会との交渉において、政府は、子会社間での資金の融通に制限をかけず、グループ全体が統合された状態を維持すると主張する一方で、欧州委員会は、EU域内の市場競争を歪めるとして、各子会社間に一定の独立性を要求しており、交渉が難航している。
2021.07.29
英国:Drax、2012年比でCO2排出原単位を90%以上低減
英国の発電大手Draxは、2021年7月29日、2012年比で同社のCO2排出原単位が90%以上の削減を達成したと発表した。かつて西欧最大の石炭火力発電事業者であった同社は、現在は石炭火力の商業運転を停止し、バイオマス発電および水力発電に注力しており、英国全体の再生可能エネルギーの12%を発電している。今後は、バイオマス発電とCCS技術を組み合わせた「BECCS」の開発を計画しており、2027年の1号機運転開始の目標に向けて、技術パートナーとして三菱重工を選定した。同プロジェクトでは年間800万tのCO2排出を削減することが可能であり、同社は2030年までにネット・ゼロを達成すると表明している。
2021.07.27
米国:CAISO、自主的な節電を促すフレックスアラートを発令(今年6回目)
独立系統運用事業者であるカリフォルニアISO(CAISO)は2021年7月27日、平年以上の高い気温と主にエアコンの使用による電力需要の増加により需給逼迫が予想されることから7月28日午後4~9時の間で自主的な節電を需要家に求めるフレックスアラート(Flex Alerts)を発令した。フレックスアラートの発令は今年に入り6回目となり、以前と同様にCAISOは空調温度の高めの設定(華氏78度≒摂氏約25.6度)や、主要な電化製品の使用を控えるなどの協力を要請した。その後、フレックスアラートは計画どおり7月28日午後9時に解除されている。
2021.07.27
英国:浮体式実証事業3件が技術審査を通過
エネルギー情報誌は2021年7月27日、英国で検討されている浮体式洋上風力発電事業3件の状況について報じた。英国の海域を管理するCrown Estateが2021年3月に募集した浮体式の実証事業が技術的な審査を終了し、環境審査に進むことが発表されている。3件の発電出力の合計は30万kWで、これらの事業は欧州、米国のデベロッパーやエンジニアリング会社が実施するもので、新しい浮体構造や係留方法、建設方法などが試される。環境審査を通過すれば、海域のリース契約を締結することになる。着床式の洋上風力発電では世界最大の規模をもつ英国は浮体式事業でも世界に先駆けて市場を構築する考えで、2030年に100万kWの設備導入を目指している。英国では浮体式事業2件(合計出力:8万kW)が既に稼働しており、今回の3件(30万kW)の他にも2件(約13万kW)が検討されている。さらに北部のスコットランドで実施中の海域入札でも浮体式事業が実施される見通しである。
2021.07.26
中国:政府、時間帯別電気料金の見直しに着手
国家発展改革委員会(NDRC)は2021年7月26日、時間帯別電気料金の改善に関する通達(第1093号)を発表し、新エネの成長や電力市場規模の拡大などという現状を踏まえながら、時間帯別料金の見直しに着手することを地方政府や送配電会社に指示した。NDRCは各地域の需給状況や新エネ電源設備の状況および負荷特性を考慮して、ピーク・オフピーク時間帯の設定を適切に行いつつ一定幅以上の価格差を設定し、さらにその適用対象も第三次産業(商業・サービス業)にまで拡張させる方針である。NDRCは、その狙いについて、料金メニューの多様化により選択肢が増えることで、需要家側の負荷調整による料金負担の軽減をもたらすほか、電力会社のコスト削減にもつながると説明している。
2021.07.26
米国:2020年エネルギー起源のCO2排出量は過去約40年間で最低水準
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年7月26日、2020年の米国におけるエネルギー起源のCO2排出量は、新型コロナの影響により2019年比11%減少の46億tとなり、1983年以来の最低水準であったことを発表した。エネルギー源別では、石油20億t(45%)、天然ガス17億t(36%)、石炭9億t(19%)であり、部門別では、運輸16億t(36%)、工業13億t(29%)、家庭9億t(20%)、商業7億t(16%)であった。EIAの予想では、新型コロナの収束に伴い、2021年のCO2排出量は2020年比で7%(3億t)増加すると見られる。
2021.07.22
英国:NGESO、2021年度冬季需給想定を発表
英国の系統運用者ナショナル・グリッドESO(NGESO)は2021年7月22日、2021年度の冬季需給想定(Winter Outlook Report)を発表した。2020年度の冬季ピーク需要想定では、新型コロナ禍による外出規制等により平年比3~4%低めの需要を予測していたが、2021年度は外出規制等が緩和される見通しから平年水準のピーク需要予測(5,950万kW)となった。供給側に関しては、ダンジネスB原子力発電所(燃料取り出し中)およびハンターストンB原子力発電所(2022年1月までに燃料取り出しに移行予定)が今冬は稼働せず、2カ所のCCGTガス火力発電所の運休も続く見通しが示された。一方、容量市場契約を有する石炭火力発電所の運転や、2021年10月からのノルウェーとの新たな連系線NSLの運開などが供給力として盛り込まれた。これらの需給予測から、2021年度の冬季予備率は7.3%と予想され、英国における系統信頼度基準の指標である予想電力不足発生時間(LOLE:Loss of Load Expectation)に換算して0.1時間とされた。
2021.07.22
オランダ:洋上グリーン水素プロジェクトPosHYdon、補助金承認される
2021年7月22日付のプレスリリースによると、オランダ沖北海の洋上にてグリーン水素製造を行うパイロットプロジェクトPosHYdonが、オランダ政府によるエネルギーと気候変動対策のための技術開発支援制度DEI+の補助金対象として承認された。エネルギー情報誌によると、補助金額は360万ユーロ(約4億6,800万円)の見込み。PosHYdonプロジェクトでは、洋上に水電解装置を設置し、海水から塩分を取り除いて真水へ変化させたうえ、洋上風力からの電力を利用した水電解によりグリーン水素を製造する。製造された水素は、既存のガス導管に混流のうえ沿岸へ供給される予定である。本プロジェクトの目的は、洋上での水素製造の大規模開発のために必要な知見を深めることであり、オランダ沖の北海は、洋上と地上を連結する既存のインフラ設備を強みに、新たなエネルギーハブとして大規模グリーン水素製造において主導的な役割を果たすことが期待されている。PosHYdonプロジェクトには、Q13a-Aを操業する石油・天然ガス開発企業Neptune Energyの他、13社が参加している。
2021.07.22
コロンビア:国際エネルギー機関、コロンビアの正式加盟を受け入れ
2021年7月22日付報道によると、国際エネルギー機関(IEA)は、コロンビアの正式加盟の申請を受け入れた。コロンビアのMesa鉱山エネルギー大臣は「IEAは、エネルギー転換について世界で最も重要な議論の場となっており、世界中の経験や取組みが共有され、エネルギー全体における最適な政策が設計されている」と述べ、「この加盟により、コロンビアのエネルギー転換の推進はIEAによって認められ、支援を受けることになる」と力説した。一方、IEAのBirol事務局長も「コロンビアがCO2実質ゼロ排出の達成に向けて、エネルギー転換を目指すエネルギー生産国として貴重な視点を提供する」と述べた。
2021.07.21
インドネシア・シンガポール:インドネシアに世界最大級の浮体式太陽光建設
2021年7月21日付の現地紙によると、シンガポールの太陽光発電事業者Sunseapは、インドネシア・バタム島自由貿易地域の開発・運営を行うバタムフリーゾーン監督庁(BP Batam)と、同島Duriangkang貯水池での浮体式太陽光発電所の建設に関する覚書を締結した。発電容量は220万kWで、4,000MWhの電力貯蔵システムを併設する。同貯水池は島内の淡水供給の50%以上を占め、1,600ヘクタールを占める浮体式太陽光発電設備は、貯水池からの水の蒸発を防ぐことにも役立つとされている。同社によると、本設備は現時点で世界最大級の浮体式太陽光発電設備になるとコメントしている。
2021.07.20
中国・ブラジル:国家電網の現地出資配電会社がブラジルの送電会社株式を取得
中国の国有送配電企業である国家電網有限公司は2021年7月20日、同社が株式の83.71%を保有しているブラジル配電会社のCPFL Energia(本社:サンパウロ州)が、送電会社CEEE-Tの66.06%の株式を取得したことを明らかにした。CEEE-Tの株式は数社による価格競争の結果、最終的にCPFLが26億7,000万レアル(約575億円)で落札した。CEEE-Tはブラジル南部リオグランデ・ド・スール州で送電線6,000km、変電所72カ所を所有し、その規模はブラジルの送電資産の4%を占めている。一方、CPFLの配電事業は、リオグランデ・ド・スール州の人口の77%をカバーしている。
2021.07.19
フランス:EDF、再エネクラウドファンディングのポータル開設
フランスEDFは2021年7月19日、同社がフランス国内で進める太陽光・風力発電プロジェクトへの出資者を募集するためのクラウドファンディングポータルサイトの開設を発表した。同社は、2015年から同様の資金調達手段を採用しており、これまでに30以上の再エネプロジェクトに対し約3,700の個人から約700万ユーロ(約9億円)を調達している。これらは住民参加型の取り組みであり、プロジェクト地点およびその周辺地域の住民のみが出資することができる。1人当たりの平均出資額は約1,500ユーロ(約19万円)、多くの人がプロジェクトの建設中に出資を行い、出資参画期間中(約4年間)は定期的にプロジェクトの進捗状況について報告を受ける。今回発表の新しいポータルサイトでは、各プロジェクトのクラウドファンディング運営会社のサイトを経由して、EDFグループ全体の再エネプロジェクトに関するプロジェクト概要や、資金調達に関する詳細な情報も閲覧可能となっている。現在は、太陽光、風力プロジェクトのみが対象だが、今後はE-mobility関連や顧客サービス関連などエネルギー移行に関するプロジェクトも紹介予定としている。EDFのコンシューマー市場担当役員のFabrice Gourdellier氏は今回の発表に際し、今回のクラウドファンディング用ポータルを活用することで、同分野をリードしていくと述べている。
2021.07.16
中国:政府、グリーン産業分野の国外投資ガイドラインを発表
商務部と生態環境部(双方とも日本の「省」に相当)は2021年7月16日、「国外のグリーン分野への進出、投資に関するガイドライン」(第309号)を発表した。同ガイドラインでは、持続可能な開発のためにはグリーン産業分野の開発が必要条件となるとの観点から、地方政府や企業が国外において、グリーン産業を念頭に置いた建設・運営・イノベーションを実施し、さらにはグリーン産業分野への投資を奨励するとしている。エネルギー分野では、太陽光、風力、原子力、バイオマスなどクリーンエネルギー分野における対外投資を支援するとともに、グリーン・低炭素型の工業団地の建設などを奨励している。さらに、これらを実現するために、政府が関係国のグリーン産業発展戦略との連携をとると共に、政策面でのコミュニケーション強化に努めることにも言及されている。
2021.07.16
中国:全国大での炭素排出権取引が開始される
現地紙は2021年7月16日、全国大での炭素排出権取引が開始されたと報じた。最初の取引は合計16万トンについて、1トンあたり52.78元(約897.3円)の価格で成立した。報道では初日の取引には、国有発電大手企業である華能集団、華電集団、大唐集団などが参加したと伝えられているが、正式には公表されていない。全国大での炭素排出権取引の参加対象者は、当面は発電事業者に限定されるが、これら企業の炭素排出量は40億トンを超えると推定されている。
2021.07.15
ドイツ:太陽光競争入札の結果
連邦系統規制庁(BNetzA)は2021年7月15日、太陽光発電設備(地上設置型)の競争入札の結果を報告した。応募は242件、113万kWと前回に引き続き募集容量51万kWを大きく上回り、そのうち95件、51万3,250kWが落札された。最低落札額は4.69ユーロセント/kWh(1ユーロセントは約1.3円)、最高落札額は5.09ユーロセント/kWh、落札加重平均額は5.00ユーロセント/kWhであった。また、ルーフトップPVの初回入札も同時に行われ、これも募集容量15万kWに対して168件、21万3,000kWの応募があり、そのうち114件、15万2,000kWが落札された。最低落札額は5.35ユーロセント/kWh、最高落札額は7.89ユーロセント/kWh、落札加重平均額は6.88ユーロセント/kWhであった。
2021.07.15
米国:FERC、送電線計画に関する規制の改革に向けた手続きに着手
連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2021年7月15日、将来に向けた地域送電計画とコスト配分および電源連系プロセスの改善を目的とし、一般からのコメントを募るため規則案事前通知(ANOPR:Advanced Notice of Proposed Rulemaking)を発出することを承認した。同ANOPRでは、将来予想される電源の拡大を考慮したより長期的な地域送電計画および費用配分プロセスの改革、地域内および地域間の送電設備の増強に対する費用責任の再検討、新規送電設備の決定過程およびその費用負担方法に対する監視強化の3点を主な分野としている。FERCのリッチ・グリック委員長は会議の中で、送電線増強の必要性を強調し、米国の接続検討待ちリストには、現在約7億5,000万kWの新規電源があり、このうち再生可能エネルギー電源が93%を占めていることを指摘し、将来建設される発電資源をより考慮した送電計画プロセスが必要だと述べた。本件コメントの提出期限は連邦官報での公表後75日となっている。
2021.07.14
EU:2050年、2030年EU目標達成に向けた政策案「Fit for 55」を提出
欧州委員会は2021年7月14日、EUの2050年カーボンニュートラル目標実現に向け、GHG排出量を2030年までに1990年比で少なくとも55%削減するという中間目標達成に向けた包括的な政策案「Fit for 55」を採択した。政策案には、この先10年のGHG排出削減に重要となる(1)欧州排出量取引制度(EU-ETS)の強化と排出量取引の新産業分野への適用、(2)再エネの利用拡大、(3)エネルギー効率化、(4)低排出モビリティやこれを支えるインフラ整備、(5)欧州グリーンディールと課税政策の整合、(6)炭素国境調整メカニズム(CBAM)の創設および自然の炭素吸収源の保全・拡大といった施策が盛り込まれている。(1)では、年間排出枠を引き下げるとともに対象部門に新たに海運を加え、別枠で交通輸送・建物部門の取引制度を設立する。(2)では、再生エネルギー指令を改正し、EUの2030年エネルギーミックスにおける再エネ割合目標を従来の32%から40%に引き上げる。(3)では、エネルギー効率化指令を改正し、EUの2030年のエネルギー効率化目標を従来の32.5%から36~39%に引き上げる。(4)では、2035年からガソリン車の新規販売を禁止し、低排出モビリティへの移行を加速するため、欧州内の主要高速道路上に充電ステーションを60kmごと、水素ステーションを150kmごとの一定間隔で設けることを求める。(5)では、エネルギー課税指令を改正し、化石燃料の使用を促す現行の税控除・軽減税率を排除することや、新たに航空燃料税を導入する。(6)では、炭素リーケージ防止のため、CBAMにてEUへの製品輸入(鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料)に炭素税を課す。また、EU全体のLULUCF(土地活用、土地利用の変更、および林業)による炭素吸収量の目標として、2030年までに二酸化炭素3億1,000万t相当を設定。同政策案が成立するためには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。2035年からガソリン車販売を事実上禁止するという大胆な措置に自動車ロビー団体は即座に反発している。また、その他産業にも多大な影響を及ぼすことが予想されることから、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は同政策案の今後の検証が重要だと指摘している。
2021.07.14
米国:エネルギー省、長時間電力貯蔵設備のコストを9割低減する目標を発表
米国エネルギー省(DOE)は2021年7月14日、大規模電力貯蔵設備のコスト削減目標を新たに発表した。“Long Duration Storage Shot”と呼ばれる本計画では、事業用の大規模かつ10時間以上の貯蔵が可能な設備のコストを、今後10年以内に2020年の価格レベル(162ドル/kWh)から90%低下させることを目指す。バイデン大統領は2050年までに炭素排出をネット・ゼロとする目標を掲げており、電力貯蔵は目標達成に向け低炭素技術の導入拡大に不可欠となっている。
2021.07.13
中国:CNNC、小型モジュール炉ACP100を昌江原子力発電所敷地内で着工
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2021年7月13日、海南省昌江原子力発電所の敷地内で、小型モジュール炉(SMR)「ACP100」(中国名:玲瓏一号/電気出力12万5,000kW)を着工したと発表した。ACP100は発電、海水淡水化、地域暖房、産業用熱供給など多目的に利用可能で、低コストかつ工期が短いなどの特徴を持つとされている。CNNCが2010年に開発に着手したACP100は、100万kW級大型炉「ACP1000」を改良した第3世代の小型炉で、国際原子力機関(IAEA)の包括的原子炉安全レビュー(GRSR)を2016年に受けている。
2021.07.09
韓国:韓国規制当局、新ハヌル原子力1号機の条件付運転を承認
韓国原子力安全委員会(NSSC)は2021年7月9日、韓国水力・原子力発電会社(KHNP)の新韓蔚(新ハヌル)原子力発電所1号機(APR1400、140万kW)に対し、運転を承認するとともに追加の安全対策を指示した。同号機は2012年7月に着工後、2014年12月に運転認可申請手続きを開始していた。今回の運転承認により同号機は、同年7月14日に原子燃料の装荷を開始しており、今後試運転を経て、2022年3月の商業運転開始を計画している。
2021.07.13
米国:CAISO、山火事・熱波の影響等により緊急事態(ステージ2)を発出
2021年7月13日の現地報道等によると、米国西部は今年に入り3度目となる熱波に見舞われている。気温が各地で華氏100度(摂氏約37.8度)を超え、過去の最高気温を更新した地点も複数見られる。独立系統運用事業者であるカリフォルニアISO(CAISO)は7月8日、自主的な節電を需要家に呼びかけるフレックスアラート(Flex Alerts)を7月9日16~21時の間で発出した。フレックスアラートが開始され電力需要が減少し始めたものの、オレゴン州南部で発生した山火事Bootleg Fire(7月6日に落雷により発生)が燃え広がったことで付近に施設されていたカリフォルニア州とオレゴン州の連系線(COI:California Oregon Intertie、送電容量:約480万kW)の運用が制限(上限42万8,000kW)されたこと等により電力需給が逼迫した(CAISOは当初、ピーク時の需要を4,000万kW強、利用可能なリソースを4,600万kWと予測)。CAISOは、その後7月9日18時48分、ステージ2の緊急事態を発出した(さらにステージ3に移行した場合、CAISOは小売事業者へ輪番停電を含む負荷の強制遮断を実施する可能性を通知する)。取り得る対策により、緊急事態は、需要が落ち着いた同日21時に解除されたが、山火事や熱波の脅威が続いており、その後もフレックスアラートが7月10日16~21時、7月12日16~21時の間で発出された。CAISOは7月13日現在、気温の低下が予測されることからフレックスアラートを発出する予定はないとしている。
2021.07.08
ドイツ:政府、EV購入者を対象とした補助金付与制度を2025年まで継続
連邦経済エネルギー省は2021年7月8日、電気自動車(EV)を購入した者に対する補助金付与制度を2025年まで延長することを発表した。当該制度では正味価格4万ユーロ(約520万円、1ユーロ=約130円、以下同)未満のEVの購入者は最大9,000ユーロ、ハイブリッド車の購入者は6,750ユーロの補助金を、4万ユーロ以上のEV・ハイブリッド車の購入者は、それぞれ7,500ユーロ、5,625ユーロの補助金が申請可能である。当該制度は2016年に開始され、2021年7月1日までに合計69万3,601台に対する申請が行われた。申請数は近年増加傾向にあり、2021年上半期には2020年全体の申請数を上回り約27万3,000件となり、補助金の総額は約12億5,000万ユーロ(約1,635億9,800万円)であった。
2021.07.07
中国:政府、循環経済発展5カ年計画を発表
国家発展改革委員会は2021年7月7日、現行の中期計画である第十四次5カ年計画(2021〜2025年)における循環経済発展5カ年計画を発表した。資源の節約および環境保護という国家政策のもと、資源循環型産業体系の構築を企図した内容となっている。具体的には、廃棄物リサイクル利用体系構築の加速、資源の利用効率およびリサイクル率の向上、循環型農業経済生産方式の確立という3点の重点方針を掲げ、エネルギー分野ではコージェネレーションや分散型再エネ電源を活用した循環型資源有効利用産業団地の展開などによりクリーン低炭素型の経済発展体系確立を目指している。また、同計画では2025年までに主要資源の生産能力を2020年比で2割引き上げを図るとともに、リサイクルの数値目標として古紙(6,000万t)、鉄鋼廃材(3億2,000万t)などが明示され、資源リサイクル産業の規模を5兆元(約85兆円)とする目標も打ち出されている。
2021.07.07
米国:米国の主要企業約80社、連邦議会にクリーン電力基準の制定を要請
2021年7月7日付の現地報道によると、米国の主要企業約80社(Apple、Google、GM、Teslaなど。電力大手ではExelon)が、連邦議会に対し連邦政府によるクリーン電力基準(CES)の制定を求める書簡に署名した。書簡では、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量の80%を削減し(2005年比)、2035年までに電力分野でのカーボンニュートラルを実現するという目標達成に向けてCESの制定を強く求めている。CESをめぐっては、エネルギー省(DOE)のグランホルム長官が2021年7月8日のCNNの番組で、米国での昨今の記録的な熱波、干ばつ、ハリケーンなどの異常気象とも結び付けながら、「(GHG排出量削減等の目標達成に向けて)CESは最も重要な要素」と述べるなど、連邦議会によるCESの法制化に強い期待感を示した。
2021.07.05
オランダ:Vattenfall、洋上風力Hollandse Kust Zuidの建設工事を開始
スウェーデンのエネルギー大手Vattenfallは2021年7月5日、オランダ沖で開発中の洋上風力発電プロジェクトHollandse Kust Zuidの建設工事作業を開始したと発表した。建設工事はモノパイル基礎の設置から始まり、その基礎を設置するための第1船が同日運航を開始した。最大の基礎は、重量が955t、長さが75mであり、最小の物でも、重量が735t、長さが62mある。設置船は基礎を沖合に運び、船に搭載されたクレーンにより基礎を17~28mの深さの海底に打設させる。今後数カ月で、数十の基礎を設置する予定であり、悪天候の多い冬季の休工期間を経て、ケーブル敷設やタービン設置が予定されている。最初のタービンの試運転は2022年春を予定しており、2023年夏にはすべてのタービンが運転を開始する。140基のタービンの合計設備容量は150万kWであり、世界最大規模の洋上風力発電所となる見込みである。
2021.07.02
中国:当局、各省別の2020年度RPSの評価報告を公表
国家能源局は2021年7月2日、各省別の2020年度における再エネ発電電力割合(RPS)の評価報告を公開した。今回の報告では、「再エネ発電全体」(水力を含む)と「水力以外の再エネ発電」の2種の項目について評価が行われているが、異常気象による渇水の影響を受けた福建省が、「再エネ発電全体」の項目でRPSを達成できなかったことを除き、全土30の省(チベットを除く)は、すべて「再エネ発電全体」と「水力以外の再エネ発電」双方をクリアしたとされている(福建省は、2021年度分に2020年度不足分上乗せが認められた)。なお、河南省および浙江省は広域電力市場の取引で、目標値を上回る実績を残した青海省と寧夏回族自治区から、再エネ発電電力をそれぞれ12億kWh、12億5,500万kWhを取得したことで目標値を達成した。省別RPS制度は2020年度から本格運用が開始されている。
2021.07.02
EU:ドイツなど5カ国が原子力をタクソノミーに認定しないよう要望
エネルギー情報誌は2021年7月2日、EUが検討している持続可能な事業分類(タクソノミー)での原子力の扱いについて、ドイツなど5カ国が認定に反対との共同書簡を欧州委員会に送ったと報じた。タクソノミーの気候変動に係る技術基準は2021年4月に公表されたが、天然ガスと原子力は加盟国間の意見の隔たりが大きく、欧州委員会が扱いを検討中である。原子力についてはEUの機関であるJoint Research Centre(JRC)が「原子力が、風力や太陽光などの発電方式よりも健康や環境問題について悪影響が大きいことを示す指標はない」とした報告書をまとめ、欧州委員会は専門家による評価を実施中で、最終評価が近々まとまるとされる。5カ国(ドイツ、オーストリア、デンマーク、ルクセンブルク、スペイン)の環境分野を所轄する大臣は共同書簡を提出し、この中で、JRCの評価は通常の環境での原子力の評価を行ったもので、原子力災害が発生した場合の危険性やコストを評価していないこと、使用済み燃料の最終処分場は世界で1件も実績がないことを挙げて、JRCの評価は適切ではないとしている。このため原子力をタクソノミーに加えた場合、タクソノミー全体の信頼性に傷をつけることになり、結果として有効性を損なうことになると主張している。
2021.07.01
台湾:台湾電力公司、第2(国聖)原子力発電所1号機の運転終了を発表
台湾電力公司(TPC)は2021年7月1日、台湾北部の新北市萬里区にある第2(国聖)原子力発電所1号機(BWR、102万7,000kW)の運転終了を発表した。同号機は2017年4月に原子能委員会(AEC)の許可を得て使用済燃料(SF)貯蔵プールを拡張して運転してきたが、プール逼迫のため、2020年定期検査時の新燃料の取替体数が制限され、2021年2月までフルパワー運転できる量しか装荷できなかった。TPCは同号機の出力レベルを80%に抑えることで6月中旬までの運転を達成した。同号機の運転許可は2021年12月27日まで有効でTPCは当該許可失効後に廃止措置に移行するとしている。2018年にAECに提出され、2020年10月に承認された同号機の廃止措置計画に含まれるSF乾式貯蔵施設の新設工事は、TPCと新北市との紛争で着手が遅れている。
2021.06.30
インド:政府は4兆5,000億円相当の配電改革スキームを認可
2021年6月30日付の報道によると、インド内閣経済委員会(CCEA)は、3兆300万ルピー(約4兆5,000億円)の配電会社改革スキームを認可した。うち9,763億ルピー(約1兆4,500億円)を中央政府が負担する。同スキームは、2021年現在実施中の2つの配電改革スキーム(IPDS、DDUGJY)を統合する形で、2025年度(2026年3月末)まで実施される。同スキームは2021年現在で21.4%の総合損失を2024年度(2025年3月末)までに12~15%に低減することを目的に、私営を除く配電会社を対象として、配電会社の系統や設備の強化、運用効率や経済性の改善、2億5,000万軒へのスマートメーター設置等が実施される予定である。
2021.06.30
フランス:Engieが新組織の設立を発表、分離組織をEquansと命名
エネルギー大手Engieは2021年6月30日、4つのグローバルビジネスユニット(GBU)と地域プラットフォームで構成される新組織の設立を発表した。本件は同年5月に公表された戦略ロードマップに基づくものであり、グループ管理の簡素化、コア事業への集中による業績の向上、支援機能の集約による業務の効率化を目的とする。4つのGBUは、再生可能エネルギー、エネルギーソリューション、インフラ、火力・小売で構成され、それらの支援とGBU間の連携を目的とした部門として地域プラットフォームが設立される。また、分離が予定されている顧客サービス関連の事業についてはEngie内に独立組織が設立され、新たに「Equans」と命名された。また、同日付の現地経済紙はこのEquansの今後についてスケジュールは明らかではないものの、上場、同業企業への売却(フランスのBouyguesやSpieが関心を示している模様)、もしくは投資ファンドへの売却といった可能性があり、2022年初めには最終判断がなされる見通しとし、Equansの推定評価額は約50億ユーロ(約6,300億円)に上ると報じている。また、Equansの売却に関しては従業員からの反発も強く、同紙によればEngieは一定期間、株式の一部を保有し続ける可能性もあるとしている。
2021.06.30
英国:政府、GHG排出削減対策なしの石炭火力を2024年10月までに廃止
英国政府は2021年6月30日、従来の脱石炭期限である2025年から1年前倒しの2024年10月までに、GHG排出削減対策なしの石炭火力発電を廃止すると発表した。英国政府はこれまで2025年10月までに石炭火力発電を段階的に廃止することを目指してきたが、1年前倒ししても国内炭鉱業に大きな影響はないとの判断に至った。また、2021年11月にCOP26を控え、議長国として気温上昇を1.5℃以下に抑えることに貢献し、CO2排出削減で他国をけん制する狙いがある。英国では2020年、発電電力量の43.1%を再エネが占め、内訳は風力が24.2%、バイオマスが12.6%、太陽光が4.2%、水力が2.2%であった。一方で石炭火力のシェアは1.8%に過ぎず、2012年の約40%から大きく低下している。今回の廃止期限前倒しは発電用に限られたもので、製鉄での石炭使用などへの影響はない。
2021.06.29
カナダ:連邦政府、新車販売の100%ゼロエミッション車化を2035年に前倒し
カナダ政府は2021年6月29日、国内で新車販売される乗用車と小型トラックを2035年までに100%ゼロエミッション車(ZEV)とする計画を発表した。従来のZEVの新車販売目標(2025年:10%、2030年:30%、2040年:100%)から期限を前倒しするとともに、目標を義務化する。アルガブラ運輸相は、国際エネルギー機関(IEA)の報告書『Net Zero by 2050』(2021年5月発表)を挙げ、「IEAの示す内燃機関車(ガソリン車やディーゼル車)の新車販売禁止目標と一致する野心的な目標。今後、ZEVの導入促進に向けて、既に実施している電気自動車(EV)への補助金6億加ドル(約540億円)の拡大のほか、充電インフラへの投資、規制変更、新規インセンティブの導入などを検討したい」と述べた。カナダの州政府レベルでは、2019年5月にブリティッシュ・コロンビア州が2040年までに内燃機関車の段階的廃止を、2020年11月にはケベック州が2035年に内燃機関車の新車販売禁止を決めている。
2021.06.28
中国:世界2位の規模の白鶴灘水力発電所が部分的に運開
水力最大手の中国長江三峡集団公司は2021年6月28日、白鶴灘水力発電所(総設備容量1,600万kW)の一部が運開したと発表した。白鶴灘水力発電所は、四川省と雲南省の境にある長江上流の金沙江に位置し、100万kWという単機容量としては世界最大の水力発電設備を16基備え、全て運開すると三峡発電所に次ぐ世界第2位の規模となる。今回、このうち1号機と14号機が試運転を終えて商業運転を開始したが、これに対して習近平国家主席も、「白鶴灘発電所は、国家的な重要案件であり、関係者は団結・協力して困難を克服した。カーボンニュートラル目標の達成へ向け、関係者が今後も活動を計画的に推進して、更なる貢献をすることを期待する」との祝辞を寄せた。全面運開は2022年7月に予定されている。
2021.06.27
スウェーデン:世論調査で77%が原子力支持、過去最高の46%が新設にも賛成
スウェーデンの原子力調査機関Analysgruppenは2021年6月27日、Novus社に依頼した世論調査で原子力発電を同国民の77%が支持し、57%が気候変動目標を達成するためのツールになり得ると考えているとの結果を発表した。同調査は2021年5月に実施され、無作為に選ばれた18~79歳の1,025人から回答があったもの。新設に賛成する割合は2006年の調査開始以来最高の46%となり、既存炉は利用するが新設に反対する31%との計77%が原子力発電を支持すると回答した。残りの内訳は、段階的に廃止が14%、未定が10%である。
2021.06.26
米国:オレゴン州法案、2040年までに電力部門のGHG排出量をゼロに
オレゴン州の上院議会は2021年6月26日、州内の小売電気事業者に対して2040年までにGHG排出量をゼロにすることを義務付けるクリーンエネルギー法案「100%Clean Energy for All」を可決した。同法案は前日に下院でも可決されており、法案の成立にはケイト・ブラウン知事(民主党)の署名を待つのみとなる。本法案では州の環境品質局が設定する基準値に照らして、GHG排出量を2030年に80%、2035年に90%削減する暫定要件を設定している。これらを達成するために、火力発電所の新増設の認定禁止や、電気事業者の供給電力量の10%を再エネやバイオマスが占めるよう義務付ける措置等が盛り込まれている。また、山火事を防止するための計画停電への対応として、非常時に稼働するバッテリーやマイクログリッドに5,000万ドルを投資するとしている。
2021.06.24
中国・米国:新疆で操業するシリコン製造5社が米の規制リスト入り
現地紙は2021年6月24日、米国の商務省・産業安全保障局(BIS)の規制対象エンティティー・リスト(EL)に、新疆ウイグル自治区で太陽光パネルの原料となるシリコンを生産している合盛硅業、大全新エネルギー、東方希望有色金属、協鑫新能源材料科技および新疆生産建設兵団(XPCC)の5社が新たに追加されたと報じた。今後、これら5社からの米国向け輸出分は事前許可が必要となり、実質的な輸入禁止措置となる。ELへの追加理由に関してBISは、新疆での生産における強制労働への関与としているが、中国政府の外交部(日本の外務省に相当)は、これは完全な虚偽に基づくもので、世界的に大きなシェアを占める新疆の太陽光関連産業を念頭に置いたELの悪用で、国際貿易規則および市場経済の原則に反すると批判した。
2021.06.24
英国:気候変動委員会、2020年の排出削減状況を報告
英国政府の諮問機関である気候変動委員会(CCC)は2021年6月24日、2020年における英国の気候変動対策と、今後取り組むべき対策をまとめた報告書をそれぞれ発表した。CCCによると、2020年は新型コロナ禍の影響により航空を中心に運輸部門からの排出量が大幅に減少し、英国の総排出量は前年比13%減、1990年比では48%減となった。しかし、2021年以降は排出量のリバウンドが予想されていることから、特に建物、運輸、産業、農業の脱炭素化を早急に進めるべきとしている。電力需要も新型コロナ禍により前年から約1%減少した。一方、発電量に占める再エネの割合は29%(前年は27%)と過去最高を記録、化石燃料使用の発電量が減少したことから、2020年における電力の排出原単位は前年比10%減の182gCO2/kWhとなった。CCCは、今後電力の排出原単位を2030年までに50gCO2/kWh以下、2035年までに10gCO2/kWh程度まで引き下げる必要があるとしている。
2021.06.24
米国:バイデン大統領、インフラ投資計画で超党派上院議員団と合意
バイデン大統領は2021年6月24日、妥協点の模索を続けていたインフラ投資計画について、超党派上院議員団(民主・共和両党から各5名で構成)と合意したと発表した。今回の合意により、2021年3月発表の「米国雇用計画」での2兆ドル超の支出規模を縮小し、道路や橋梁などのインフラ整備への支出を5年間で9,730億ドル、8年間で1兆2,090億ドル(うち新規支出は5,790億ドル)とした。新規支出のうちエネルギー関連の投資では、送電設備などの電力インフラに730億ドル、環境修復に210億ドル、電気自動車(EV)の充電インフラに75億ドル、スクールバスなど車両の電動化に75億ドルなどが計画されている。財源には、失業保険給付金や新型コロナ救済策の未使用分、戦略石油備蓄(SPR)の売却益などを充てる。今回の合意には、大統領が提案したクリーンエネルギーや気候変動対策、教育・福祉などへの投資を行う「米国家族計画」を含む経済対策の大部分が含まれていないが、民主党はこれらの部分について、財政調整措置と呼ばれる手続き(上院で単純過半数での可決が可能)での成立を目論んでいる。
2021.06.23
フランス:Engie、顧客ソリューション部門の分社化を従業員代表と協議
2021年6月23日付の現地経済紙は、エネルギー大手Engieが進める顧客ソリューション部門の分社化計画に関する、同社経営陣と従業員代表との協議状況について報じた。同社顧客ソリューション部門は、空調・電気設備関連工事、建物改修、ファシリテーションマネージメント事業等が分社され新会社(仮称「Bright」)を新設する計画であり、新会社の売上高は120億~130億ユーロ(約1兆5,000億~1兆6,000億円)、従業員数はフランス国内の約2万6,500人を含む約7万4,000人とされる。経営陣は本件に関する従業員代表との協議において「事業の収益性に大幅な影響を与える外部環境の変化を除き、売却契約締結から最低 2年間は欧州内において人員削減を行わないよう新株主に求めること」、「Bright売却前にいかなる強制的人員削減も行わないこと」を書面にて約束したとされる。これに対し欧州の従業員代表は不満の意を示し、2年でなく3年間の雇用保証と少なくとも5年間は本社をフランスに置くことを要求するとともに、経営陣が示す新株主に対する要求には法的拘束力がない可能性を指摘している。
2021.06.22
中国:上海排出権取引所、全国大の炭素排出権取引規則を公告
上海環境エネルギー(排出権)取引所(SEEE)は2021年6月22日、全国大の炭素排出権取引に関する規則の一部を公表した。上海環境能源取引所は、全国大の専門取引所設立までの間、暫定的にその取引業務を代行している。今回、公表されたのは(1)初期段階の炭素排出権の取引は、一回当たりの取引量で区分され10万t-CO2未満の取引所取引と10万t-CO2以上の相対取引の2種で行われること、(2)値幅制限は、前日終値を基準として取引所取引の場合±10%、相対取引の場合±30%とすること、(3)取引への中間業者や機関投資家など参画は当面認めないことなど。また、政府からの有償排出権の公募などついては、別途定められる。
2021.06.21
中国:国家原子力機構、HLW処分に係る北山地下調査研究所の建設開始を発表
中国国家原子力機構(CAEA)は2021年6月21日、甘粛省酒泉市近郊で高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分技術に係る研究施設として、北山地下調査研究所の建設を開始したと発表した。同年6月17日に同地で起工式が開催され、CAEAや中国生態環境部、地元自治体に加え、当該プロジェクトを遂行する中国核工業集団有限公司(CNNC)、および傘下の核工業北京地質研究院(BRIUG)などの代表者が参加した。同研究所はゴビ砂漠の地下560mの花こう岩層に総構造容積51万4,200m3の巨大地下施設として建設され、同じ目的の施設としては世界最大とされる。建設工期は7年間で、竣工後は同地域のHLW処分場適正調査などでおよそ50年間にわたって活用される。同地域が処分場の適地と確認されれば、同研究所の近辺にHLWの最終処分場を2050年までに建設するとしている。
2021.06.18
米国:メイン州、2030年までに40万kWのエネルギー貯蔵導入目標法が成立
メイン州のジャネット・ミルズ知事(民主党)は2021年6月21日、同州におけるエネルギー貯蔵設備の導入目標を設定する法案(LD 528:An Act To Advance Energy Storage in Maine)に署名、承認した。同法では、(1)エネルギー貯蔵設備の導入目標として、2025年末までに30万kW、2030年末までに40万kWを設定、(2)2031年以降は、2年ごとに州のエネルギー局がエネルギー貯蔵設備の導入目標を設定し議会に報告、(3)州のエネルギー効率化・排出削減を推進する独立行政法人であるEfficiency Maine Trustに対し、エネルギー貯蔵への支援手段、ピーク需要の削減・シフト方法の検討などを求めている。米国エネルギー貯蔵協会(ESA)によると、エネルギー貯蔵設備の導入目標を制定した州は、メイン州で9州目となる。直近では、コネチカット州で2021年6月17日に州法(SB 952)が成立(導入目標:2030年までに100万kW)した。
2021.06.18
スペイン・韓国:Iberdrolaがアジアの再エネ開発を進めるため韓国企業と提携
エネルギー情報誌は2021年6月18日、再エネ事業の拡大を進めるIberdrolaが韓国の総合エネルギー企業GS Energyと再エネ事業開発を目的にJVを設立することで覚書を締結したと報じた。この合意により陸上/洋上風力や太陽光発電などの再エネ事業を韓国およびアジア諸国で進めるための基盤を整備することになる。GS Energyは韓国最大のIPP事業者で580万kWの発電設備を所有している。Iberdrolaは既に日本やオーストラリアで企業買収などにより再エネ事業を進めているが、今回の合意によりアジア市場への参入を強化する。
2021.06.16
米国:CAISO、猛暑により自主的な節電を促すフレックスアラートを発令
独立系統運用事業者であるカリフォルニアISO(CAISO)は2021年6月16日、カリフォルニア州広域で猛暑(摂氏約37.8度以上)となり供給力が約30万kW不足すると予想されたことから、6月17日午後5~10時の間でフレックスアラート(Flex Alerts)を発令した。フレックスアラートは電力系統への負荷を軽減し、輪番停電を回避するために自主的な節電を需要家に呼びかけるものである。CAISOは空調温度の高め設定(摂氏約25.6度)や、主要な電化製品の使用を控えるなどの協力を要請した。また、CAISOは6月17日、フレックスアラートを6月18日午後6~9時の間でも実施すると発表した。結果、節電等の効果により輪番停電は回避されている。
2021.06.16
米国:連邦議会下院、企業にESG等の情報開示を義務付ける法案を可決
連邦議会下院は2021年6月16日、上場企業に対し、米国証券取引委員会(SEC)にESG(環境・社会・ガバナンス)などに関する事項の情報開示を義務付ける法案(H.R.1187)を僅差で可決(賛成215、反対214)した。同法案は、投資家が十分に投資判断を行えるよう、(1)ESG指標が長期的な事業戦略に与える影響、(2)気候変動に関する財務リスク、(3)政治活動への支出、(4)従業員の昇給率、(5)外国で支払った税金、などを定期的に開示することを上場企業に義務付ける。なお同法案への共和党からの賛成者はおらず、民主党からは4名が反対した。今後、同法案は上院で審議される。企業のESG等の情報開示をめぐっては、2021年3月15日にSECが開示基準見直しのパブリックコメントを募集、同年6月11日にはGoogleの親会社Alphabetなど米国大手テック7社が、SECに企業の気候変動対策に関する情報開示への働きかけを要望している。
2021.06.15
ドイツ:BNetzA、陸上風力発電の入札結果を発表
連邦系統規制庁(BNetzA)は2021年6月15日、陸上風力発電の入札結果を発表した。今年の5月1日までに、募集容量124万3,000kWを若干下回る116万1,000kW(プロジェクト137件)が応札し、合計111万kW(同127件)が落札され、平均保証価格は59.1ユーロ/MWh(約7.4円/kWh)となった。連邦州レベルでの建設許認可の規制緩和が進んでいないことが影響し、陸上風力発電の入札は前回に引き続き不振であり、募集容量に対し応札容量が満たない状況が続いている。また、平均保証価格は前回入札の60ユーロ/MWh(約7.5円/kWh)から若干低下しており、BNetzAによるとこれは改正再エネ法(EEG2021)に基づき募集容量を150万kWから124万3,000kWに減らしたことによる影響としている。
2021.06.14
中国:政府の政策投資銀行、脱炭素関連事業に特別融資枠を設定
現地専門紙は2021年6月14日、中国国家開発銀行(CDB)が現行の第14次五カ年計画期間中(2021~2025年)におけるカーボンニュートラル関連事業に対し、巨額の特別融資枠を設定したと報じた。今回の特別融資枠は主に、水力発電(揚水を含む)、原子力、風力(洋上を含む)、太陽光、水素などのクリーンエネルギーの開発のほか、広域送電系統、天然ガスサプライチェーン、各種電源と電力貯蔵との相互補完運用案件および炭層ガス(CBM)開発なども対象としている。2021年度は約1,000億元(約1兆7,000億円)が投じられる予定である。
2021.06.14
フランス:Saint-Brieuc洋上風力発電プロジェクトで作業油の漏洩事故が発生
2021年6月14日付の現地報道によると、フランス西部のブルターニュ沖で建設中のSaint-Brieuc洋上風力発電プロジェクトにおいて、同日朝、掘削用船舶から作動油100リットルが漏洩し、約40km2に及ぶ海洋に放出された。翌15日には、漏洩の痕跡が消滅したことから、土壌汚染のリスクの後退および状況の良好な経過が確認された。16日には、Saint-Brieuc湾から約8km地点で漏洩の痕跡が確認されたものの、14日の事故との関連性は正式には確認されていない。17日以降は新たな漏洩の痕跡は確認されていないが、政府は、事態の経過を観察するための警戒態勢を継続している。同プロジェクトは、スペイン大手Iberdrolaの子会社であるAiles Marine社の主導により、2023年の運転開始に向けて、2021年5月から掘削作業が行われていた。この事故を受け、環境保護団体や漁業団体はAiles Marine社を起訴する意向を示している。
2021.06.14
英国:産業団体、政府に対し具体的な脱炭素化プランの策定を求める声明を発表
英国産業連盟(CBI)は2021年6月14日、政府に対し、熱供給と運輸部門の具体的な脱炭素化プランを策定するよう求める声明書を発表した。この中でCBIは、英国内の企業が具体的に求めていることとして、(1)家庭用ボイラーの新設について2025年以降はすべて水素利用可能な設備の導入を義務付けること、(2)政府主導の電気自動車(EV)の新たな導入プラン策定、および国内に新たに7カ所のEV製造工場「ギガファクトリー」を設けること、(3)さらに、洋上風力の次期開発地点の決定や水素製造および炭素回収・貯留(CCS)技術のビジネスモデルの在り方の策定等、グリーンテクノロジーの発展を促すこと、などを挙げた。
2021.06.13
スイス:国民投票でCO2削減法を僅差で否決
地元紙などによると2021年6月13日に行われた国民投票の結果、CO2削減法が僅差で否決され、今後の気候変動政策の実施が困難となった。報道によると投票率は約60%で、反対が51.6%、賛成が48.4%である。政府の提案では2050年のカーボンニュートラルを達成するため、2030年までに年間のCO2排出量を1990年比で50%を削減する計画で、3/4は国内で削減し、残る1/4は海外の削減活動を通じて実施する計画となっていた。CO2削減法では様々な削減方策が含まれ、航空券(1回の搭乗当たり30~120フラン(約3,700~約1万5,000円))や自動車燃料(ガソリンへの課税を1リットル当たり0.12フラン(約15円)へ引き上げ)への課税強化などが含まれ、反対派は燃料価格の高騰を訴えていた。投票結果は地域によって異なり、バーゼル、チューリッヒやジュネーブの都市部で賛成が上回ったが、その他の地域では反対が多数を占めた。
2021.06.11
中国:発改委、太陽光・陸上風力発電案件を国家補助対象から除外
国家発展改革委員会は2021年6月11日、「再エネ国家補助政策に関する通知(通達)」を発表した。それによると、2021年以降における太陽光(一部例外を除く)、陸上風力発電の新規申請案件は、中央政府補助の対象外となり、各所在地における石炭火力の基準売電価格に基づいた卸売か市場取引が求められる。一方、新規の洋上風力、太陽熱発電案件の売電価格は、地方政府によって設定される価格水準か競争入札により決定される。また、中央政府は今後、太陽光・太陽熱、陸上・洋上風力発電などの再エネ産業の発展支援に向けて対象を絞った支援政策を導入するよう地方自治体に奨励するとの見通しを示している。
2021.06.10
米国:エネルギー省長官がユッカマウンテンは最終処分場にならないと明言
米国エネルギー省(DOE)のグランホルム長官は2021年6月10日、訪問先のネバタ州で、同州のユッカマウンテン(YM)が使用済燃料の最終処分場になることはないと明言した。同氏はまた、YMに代わる適地を探すのは、放射性廃棄物に関する政策を抜本的に検討する目的でオバマ政権時に設置された委員会の責務であるとも語った。YMを最終処分場とすることは、2002年に当時のW・ブッシュ政権(共和党)によって一度決定されたが、その後のオバマ政権(民主党)が、同決定はネバダ州や自治体および住民の同意を軽視したプロセスで進められたとして非難し、2011会計年度以降にYM関連に予算を付けなかったことで事実上白紙撤回された。その後のトランプ政権(共和党)は関連予算を計上したこともあったが計画を前進させることはできず、現在のバイデン大統領(民主党)は就任前から一貫して同計画に反対の立場を示している。
2021.06.09
中国:国家能源局と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)覚書締結
国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は2021年6月9日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)とのオンライン会議で、エネルギー転換分野における協力覚書(MOU)を締結したと発表した。国家能源局長である張建華氏は今回のMOUについて、双方のエネルギー転換分野での協力をさらに強化していく上でのマイルストーンであり、世界のエネルギー転換に多くの知恵と力をもたらすとのコメントを発表した。一方、IRENAのカメラ事務局長も、中国はエネルギー転換促進における主要なプレーヤーであり、中国のカーボンニュートラル目標達成に向けてIRENAとして支援を行うとともに、他の国々に対して中国の経験を共有することは意義があると語った。
2021.06.09
カナダ・米国:TCエナジー社、キーストンXLパイプラインの建設を断念
カナダのTCエナジー社は2021年6月9日、カナダ・アルバータ州の油田と米国中西部経由でメキシコ湾岸の製油所を結ぶ「キーストンXLパイプライン(KXL)」プロジェクトについて、「選択肢を総合的に検討した結果、パートナーであるアルバータ州政府と協議の上、KXLプロジェクトを断念した」と発表した。同社は、規制当局、利害関係者および先住民族グループとの協議を継続し、KXLプロジェクトからの安全な撤退を確保するとした。KXLについては、バイデン大統領が気候変動などの環境面の懸念から就任初日(2021年1月20日)に、トランプ前大統領が承認した建設認可を撤回し、建設活動が中断するなど、計画提案から13年にわたって建設の是非をめぐる論争が続いていた。また、同社は2021年5月に、KXLプロジェクトのとん挫を理由に22億ドルの減損処理を行うと発表していた。
2021.06.08
フランス:送電事業者、2050年電源構成に関するパブコメ結果を発表
フランスの送電事業者RTEは2021年6月8日、2050年長期需給見通しにおける電源構成シナリオに関するパブコメの結果をまとめた報告書を発表した。今回のパブコメでは、「2050年カーボンニュートラル」を前提とした「100%再エネ(原子力新設なし)」および「再エネ+原子力新設」のシナリオが4件ずつ提示され、2021年1~3月にかけて4,000件近くの意見が寄せられた。これを受け、今回の報告書で提示された新しいシナリオは、(1)2050年に再エネ100%達成、(2)分散型電源強化(特に太陽光)、(3)陸上・洋上風力強化、(4)2050年に原子力と再エネ50%ずつ、(5)再エネ+原子力(EPR8基新設)、(6)再エネ+原子力(EPR14基新設)の計6件となった。これらのシナリオは今後、「技術」、「経済」、「環境」および「市民生活への影響」という4つの観点からの検討がさらに進められ、シナリオ確定版を含む2050年長期需給見通しは、2021年秋頃に発表の見込みである。
2021.06.07
インドネシア:政府、2060年ネット・ゼロに向けた取り組み概要を発表
2021年6月8日付の現地紙によると、インドネシア・エネルギー鉱物資源省のArifin Tasrif大臣は6月7日に開催されたウェビナーで、2060年までにエネルギー分野における温室効果ガス排出ネット・ゼロを実現するための長期目標を明らかにした。それによると、老朽火力発電所について2058年までに石炭火力を、2054年までにコンバインドサイクル発電所を廃止するとしたほか、送配電設備の整備、EV、電動バイクの導入にも引き続き取り組むとしている。
2021.06.03
ドイツ:緊急気候保護プログラムで再エネ拡大目標を引き上げる方針
2021年6月3日付の報道によると、ドイツ政府は「緊急気候保護プログラム2022」の草案を発表し、今後3週間以内に2030年までの再エネ拡大目標の引き上げを決定する方針である。2030年までの再エネ拡大目標について現行法では、陸上風力は7,100万kW、太陽光が1億kWと設定されているが、それぞれ9,500万kWと1億5,000万kWに増加させると見られる。また、当該プログラムには建物のエネルギー効率化や電気自動車を購入した者を対象としたプレミアム付与等の施策も含まれ、約80億ユーロ(約1億700万円)が支出される計画である。
2021.06.02
中国:田湾原子力発電所6号機、商業運転開始
中国核工業集団有限公司(CNNC)の子会社である中国核能電力股份有限公司(CNNP)は2021年6月2日、江蘇省連雲港市の田湾原子力発電所6号機(CNP1000、出力約112万kW)が商業運転を開始したと発表した。6号機は既に運開している5号機と同様、第2世代のCNP1000を採用している。運転中の同発電所1~4号機はロシアのVVER1000(106~112万kW)、また建設・計画中の同7~8号機はVVER1200(120万kW)で、7号機は2021年5月に着工している。CNNPは併せて、海南省昌江の小型モジュール炉(SMR)「玲龍一号」実証炉(ACP100、12万5,000kW)プロジェクトが当局から批准されたことも明らかにしている。
2021.06.02
米国:PJM電力市場、3年ぶりの容量市場オークションで価格が64%低下
PJM電力市場で2018年以来3年ぶりに容量市場オークションが実施され、PJMは2021年6月2日に落札結果を公表した。2022~2023年の容量市場の落札価格は50ドル/MW日となり、前回2018年の140ドル/MW日と比較して64%低下した。低下の主な原因は、需要予測の低迷と見られる。PJMではこれまで、最低入札価格制度(MOPR)の適用拡大に関するFERCとの議論が長引き、今回のオークションが3年ぶりの実施となった。電源別では、原子力:446万kW増加、天然ガス火力:341万kW増加、太陽光:94万kW風力、風力: 31万kW増加、石炭火力:818万kW減少となった。今回のオークションにおいて、州から支援を受けた電源に対するMOPRが初めて適用された。PJMは「MOPRが今回の落札結果に与えた影響については若干程度あるものの、具体的な電源に対する影響については議論できない」とコメントしている。
2021.06.02
米国:元FERC委員、脱炭素化へ向け組織的電力市場の全国拡大を要請
9名の元FERC委員(元委員長を含む)は2021年6月2日、国内すべての地域で卸電力市場が運用されるよう求める書簡をFERCに送付した。米国では現在、北東部、中部大西洋岸、中西部、テキサス州、カリフォルニア州において、独立系統運用事業者(RTO/ISO)が卸電力市場を運営しているが、西部や南東部の地域では垂直統合型の電力供給体制が維持されている。書簡の中で元FERC委員は、組織的市場はすべての市場参加者に対し系統アクセス等の公平な競争条件を提供し、再エネの出力変動にも地域大での対応を可能にする点において重要な役割を果たしており、電力部門の脱炭素化を進めるためには不可欠であると述べている。
2021.06.01
ドイツ:脱石炭入札で落札した廃止予定の発電所を予備力等として活用
ドイツの連邦系統規制庁(BNetzA)は2021年6月1日、同国の脱石炭入札により廃止が予定されるWestfalen発電所ユニットE(石炭火力、約76万kW)およびHeyden発電所4号機(同約88万kW)について、系統安定のための回転形位相調整機および予備力として今後も活用することを発表した。両発電所は2020年廃止分として落札しており、Westfalen発電所ユニットEは当初から回転形位相調整機へ転換される一方、Heyden発電所4号機は2022年9月までの間は系統への予備力を供給するためのリザーブ電源として活用され、その後、回転形位相調整機へ転換される予定。回転形位相調整機として活用する際には石炭の燃焼を伴わないことから、同国が目指すGHG削減目標の達成に貢献できるとしている。同国では遅くとも2038年末までの脱石炭が法制化され、この実現のため、廃止に対する補償を受ける発電所を選定する入札が実施されているが、落札した発電所について、TSOの要請に基づきBnetzAが安定供給のために必要と判断した場合、リザーブ電源として確保されることとなっている。
2021.05.31
中国:電力分野で過去最大規模となるIPO公募を実施
水力発電最大手の中国三峡集団公司の傘下にある中国三峡新エネ集団公司は2021年5月31日、上海証券取引所においてIPO(新規株式公開)公募を実施した。市況公告によれば227億元(約3,850億円)で、中国の電力分野において過去最大規模のIPOであり、購入申請は1兆3,000億元(約22兆1,000億円)に達したとみられている。三峡新エネ集団は、風力・太陽光発電を中心に国内30の省・地域で事業展開しており、2020年末時点での設備容量は1,500万kWを超えるとされている。同社は、今回の調達資金のうち約180億元(約3,060億円)を洋上風力プロジェクト7件の開発費用に充てる予定である。
2021.05.31
フランス:政府、第1四半期の風力および太陽光発電の累積設備容量を発表
フランスの環境移行省は2021年5月31日、2021年第1四半期の風力および太陽光発電に関する報告書を発表した。風力発電は、同期間に系統連系された設備容量が21万kW(前年同期比19%減)となり、2021年3月末時点の累積設備容量は1,793万3,000kW(前年末比1%増)に達した。2020年4月21日に公表されたエネルギー多年度計画(PPE)に関する政令では、2023年末の導入目標が2,410万kWと定められている。一方の太陽光発電は、系統連系された大型太陽光発電設備の比率が高かったことなどにより、新規設備容量は54万6,000kW(前年同期比177%増)、2021年3月末時点の累積設備容量は1,152万6,000kW(前年末比5%増)に達した。PPEに関する政令では、2023年末の導入目標が2,010万kWと定められている。また、2021年第1四半期の発電電力量については、風力発電は国内電力消費量の8.4%に相当する118億kWh、太陽光発電は同消費量の1.4%に相当する20億kWhとなった。
2021.05.29
韓国:新古里4号機、火災発生で稼働停止
2021年5月29日付の現地紙によると、同日午前9時28分頃、蔚山市蔚州郡の新古里原子力発電所4号機(140万kW)のタービンで火災が発生し、自動停止した。1時間後の午前10時29分頃には火が消し止められ、火災による放射能の漏出は回避されたと見られる。原子力安全委員会は、タービンが停止した原因について「発電機に付属する機器(励磁機)の火災」と推定しているが、調査団を現地へ派遣して正確な火災原因を調査し、再発防止策を運転者の韓国水力原子力発電に確認するとしている。同号機は2019年8月に運開し、UAEに輸出したAPR1400と同じ炉型である。
2021.05.28
ノルウェー・ドイツ:ノルウェーとドイツを結ぶ国際連系線が運用開始
エネルギー情報誌は2021年5月28日、ノルウェーとドイツを結ぶ国際連系線の運用開始に伴うセレモニーが、両国首相が参加してオンラインで開催されたと報じた。NordLinkと呼ばれる送電線は長さ623km、送電容量140万kWの直流送電線で、交流変換後にノルウェー、ドイツの電力系統と接続する。本事業はノルウェーのTSOであるStatnett SFが50%出資し、残りの50%はドイツとオランダで送電事業を行うTenneTとドイツの開発銀行KfWのJVが出資している。NordLinkの運用開始により、水力が豊富なノルウェーと風力発電が多いドイツ北部を連系することになり、再生可能エネルギーの活用が促進されることになる。ノルウェーはオランダと70万kWの連系線と、デンマークとは4本の連系線(合計容量170万kW)と接続しており、2021年後半には英国とも接続する予定である。StatnettのHilde Tonne CEOは、今回の送電線接続により、我々は欧州における再エネのハブとなり、さらに洋上風力の活用が可能になると話している。
2021.05.26
フランス:Total、水素モビリティ事業会社Hysetcoの株式20%を取得
フランスの石油大手Totalは2021年5月26日、トヨタ自動車、パリの電気タクシー会社STEP、産業ガス製造会社Air Liquide、投資会社Kourosが出資するフランスの水素モビリティ事業会社Hysetcoの株式20%を取得したことを発表した。取得金額は明らかにされていない。同社は2015年に設立され、フランスのパリを含むイル・ド・フランス地域圏において「Hype」というブランドの水素タクシーや水素ステーション等を運営している。同社はパリ市内で約700台のタクシーを保有しており、現時点ではその多くはディーゼル車であるが、これらをパリ五輪が開催される2024年までにすべて水素自動車へ入れ替えることを計画している。Totalは今回の出資を通じて水素モビリティを加速していくとしており、具体的には、自社が保有するサービスステーション内にHysetcoの水素ステーションを設置するなどして水素供給インフラの拡充を図るとしている。
2021.05.26
米国:NERC、2021年夏季は一部の地域で電力不足のリスクがあると警告
北米電力信頼度協議会(NERC)は2021年5月26日、2021年夏季信頼度評価(2021 Summer Reliability Assessment)を発表した。本レポートにてNERCは今夏(6~9月)、米国西部、テキサス州、ニューイングランド地域、および中西部の一部地域において、電力不足が発生するリスクが高まっていると警告している。中でもカリフォルニア州は、ピーク需要発生時や太陽光発電の出力が低下する夕方の時間帯は電力不足のリスクが高いとしている。また、風力発電設備が大量に導入されているテキサス州では、風力出力が低下する時間帯の供給力確保が必要であると指摘している。このほかニューイングランド地域およびMISO管轄エリア(米中西部)は、ピーク需要に対して十分な予備力を確保しているが、異常気象が発生した場合は、周辺地域からの電力融通が必要になる可能性があるとしている。
2021.05.24
米国:天然ガス火力の発電電力量が減少
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年5月24日、2021年1~4月の天然ガス火力による発電電力量を公表し、2020年の同時期と比較して7%の減少となった。冬場が低気温であったことから同時期の米国全体の発電電力量は6.6%の増加となったものの、天然ガス価格の上昇と再エネとの価格競争激化により、天然ガス火力の発電電力量は2017年以来の減少となった。一方、2020年春からの天然ガス生産量減少と冬場の低気温により、この期間の天然ガス価格は2.83ドル/MMBtu(ヘンリーハブ価格)と上昇したため、相対的に石炭火力の競争力が高まったことで、石炭火力は同時期で前年比40%の増加となった。EIAは天然ガス火力による発電電力量の減少は2022年まで続くとし、2021年全体では対前年比9.1%の減少、2022年はさらに0.7%の減少を予測している。
2021.05.21
パキスタン:カラチ原子力発電所2号機、商業運転を開始
パキスタンのイムラン・カーン首相は2021年5月21日、カラチ原子力発電所2号機(110万kW)の商業運転開始を公式に発表した。同号機は中国が開発した「華龍1号」型(HPR1000)原子炉で中国国外向けの初号機であり、中国核工業集団有限公司(CNNC)が建設にあたってきた。発表はパキスタンと中国を通信回線で結んで開催された両国の外交関係樹立70周年式典で行われ、カーン首相は中国との関係強化にも言及した。同発電所では同型の3号機(110万kW)が建設中であり、パキスタン原子力委員会は2022年初め頃には発電を開始できるとの見方を示している。
2021.05.21
中国:各省別の2021年のRPS目標を発表
国家発展改革委員会(NDRC)と国家能源局は2021年5月21日、同年における各省別の年間消費電力に占める再エネ発電電力の消費義務比率(再エネ消費割合基準=RPSに相当)を公表した。消費義務比率は「再エネ発電全体」、「水力以外の再エネ発電」の2項目に分けられ、それぞれ「最低値」、「奨励値」という数値目標が提示されている。これは、水力資源の賦存が乏しい地域に対する配慮とともに、水力資源が豊富な地域に対しては、水力以外の再エネ電力の普及を促す目的があるものとみられている。各省は電力市場取引による目標達成も可能で、最低値を達成した省にはインセンティブが与えられる。
2021.05.20
中国:全国大の炭素排出権取引開始に向け詳細規定を発表
現地紙は2021年5月20日、生態環境部(日本の環境省に相当)が全国大の炭素排出権取引に関する詳細規定を発表したと報じた。中国政府は2021年から全国大での炭素排出権取引を開始する予定であり、同年2月にはそのベースとなる「全国炭素排出権取引管理規則(試行版)」が施行されている。今回、制定された詳細規則は、「登録管理規則(試行)」、「取引管理規則(試行)」、「決済管理規則(試行)」の3規則である。生態環境部は3規則の発表とあわせて、取引機関および登録機関が設立されるまでの当面の期間、取引は上海環境エネルギー取引所が、登録は湖北炭素排出権取引センターが代行することも示した。これら詳細規定の完成を踏まえて、生態環境部は2021年5月26日、全国大の排出権取引を6月末までに開始する意向を明らかにしたと現地有力紙は報じている。
2021.05.20
米国:カリフォルニア州、ライドシェア事業者にEV導入を義務付ける規則を承認
カリフォルニア州大気資源局(CARB)は2021年5月20日、UberやLyftなどのライドシェア事業者に対し、電気自動車(EV)の導入を義務付ける米国初の規則「クリーンマイル基準(Clean Miles Standard)」を承認した。規則は、交通機関からの二酸化炭素の排出量を減らすための施策の実施を定めた州法(SB1014、2018年制定)に基づき導入された。ライドシェア事業者は総走行距離に占めるEV走行分の割合を、実施初年度の2023年に2%、2030年には90%と段階的に引き上げていく必要がある。すでにUberやLyftは将来、米国内のすべての車両をEVに切り替えることを表明している。
2021.05.19
中国・ロシア:VVER-1200の2サイト同時着工セレモニーに中ロ首脳が参加
中国政府は2021年5月19日、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領がロシア型VVER-1200型原子炉(120万kW)を採用する田湾原子力発電所(江蘇省、連雲港市)7、8号機と徐大堡原子力発電所(遼寧省、葫蘆島市)3、4号機のオンライン着工セレモニーに参加したと明らかにした。習氏は、品質の高い原子力発電開発を継続する前提条件は安全第一との方針を強調した上で、技術革新やデジタル化と融合した原子力利用は、環境保護、気候変動などの分野で期待され、ロシアとの戦略的協力の下、両国による低炭素プロジェクトの推進は、グローバルな持続可能開発目標達成の上で建設的役割を果たすとコメントした。プーチン大統領は、両国の善隣友好協力条約調印20周年を迎え、原子力の平和利用はカーボンニュートラルという気候変動目標の対応策でもあり、中国と協力してプロジェクトの建設を円滑かつ安全に進めることに自信を持つと強調した。
2021.05.18
フランス:Engie、2045年カーボンニュートラル他中長期目標を発表
エネルギー大手Engieは2021年5月18日、同年2月に示された予定通りに同社の中長期的な戦略ロードマップならびに今後3年間(2021~2023年)の経営目標・活動計画について発表した。まず、大きな方向性として2045年までのカーボンニュートラル達成や、シンプルかつ効率的な組織を目指し現在25ある事業部門を4つに集約すること、顧客ソリューション部門を分社しマルチテクニカルサービス分野(空調・電気設備関連工事、建物改修、ファシリテーションマネージメント等)のリーディングカンパニーBrightを新設すること、再エネの年間導入目標を現在の平均300万kWから2022~2025年には400万kW、2026~2030年には600万kWと大幅に引き上げること等の目標が掲げられるとともに、今後3年間の具体的な目標としては、90億~100億ユーロ(1ユーロ=約130円)の資産売却、150億~160億ユーロの設備投資(再エネとネットワークが約70~80%を占める)、業務の効率化による6億ユーロのEBIT増等が示された。さらに、同社は未来のエネルギーのフロントランナーを目指すとして、2030年までに400万kWのグリーン水素製造設備導入をはじめ、ネットワークからモビリティまで広範囲の水素関連の事業開発も進める構えである。
2021.05.18
米国:気候変動担当補佐官、再エネ拡大には既設原子力運転継続が不可欠と説明
米国マッカーシー気候変動担当大統領補佐官は2021年5月18日、コロンビア大学主催の会議において、「再エネを今後さらに拡大するための現実的な方向性を見定めるには時間が必要であり、環境・安全性能が認められている限り、重要なベースロード電源である既設原子力発電所を継続して活用していくことが必要不可欠である」と述べた。気候変動担当の大統領補佐官と大統領特使は、2021年1月のバイデン政権発足で新たにホワイトハウスに設けられたポストである。気候変動対策の諸課題について、マッカーシー補佐官が国内担当、元国務長官のケリー特使が外交担当として主導している。同補佐官の上記発言は、2021年5月6日にエネルギー省(DOE)のグランホルム長官が、既設原子力発電所に対する連邦政府による支援策検討を表明したことに関する質問への回答としてなされたものである。
2021.05.17
フィンランド:TVO、オルキルオト3号機の完工条件でアレバ側と合意
フィンランド電力大手TVOは2021年5月17日、オルキルオト原子力発電所3号機(EPR、172万kW)建設プロジェクトの完工条件について、アレバ・シーメンスのコンソーシアムと合意に達したと発表した。同号機は2021年3月に燃料装荷を完了しており、2021年10月に送電網に接続、2022年2月に商業運転を開始する予定である。今回の合意では「アレバが(建設費用として)約6億ユーロ(約800億円)を補填する」、「2021年7月から2022年2月末までに生じた費用はそれぞれが自己負担する」、「2022年2月末までに完工しない場合は、コンソーシアが遅延日数に応じた遅延補償金をTVOに支払う」としている。TVOによると、2021年5月末までに最終合意書が締結される予定で、その後、合意書の発効には一定の条件が満たされる必要があるとしている。同号機の建設は2005年より固定価格でのターンキー契約に基づき進められているが、建設遅延とコスト超過に関してTVOとコンソーシアム間で訴訟に発展し、2018年に「コンソーシアムが建設の遅延補償金として4億5,000万ユーロ(約600億円)をTVOに支払う」等の和解が成立していた。
2021.05.14
台湾:経済部、輪番停電のきっかけはヒューマンエラーと発表
現地紙は、電気事業を管轄する経済部が2021年5月14日午後に記者会見を開催し、13日の輪番停電の原因となった台湾電力の変電所トラブルは、同社職員のヒューマンエラーであると発表したと報じた。記者会見の席上で経済部の王部長は今回のトラブルについて、南部・高雄市の変電所で台湾電力の職員がスイッチを間違えたために発生したとの初期調査結果を明らかにした。また、台湾電力は停電の影響を受けた需要家への補償金について、その総額が当初の予想である2億台湾ドル(約7億円)から4億7,000万台湾ドル(約16億5,000万円)に膨らむとの見通しを明らかにした。補償金支払いは、需要家の電気料金請求額から差し引く形で行われる予定である。
2021.05.14
アジア:アジア開発銀行、原子力発電開発には融資しないとの政策文書案発表
2021年5月14日付の報道によると、アジア開発銀行(ADB)は、原子力発電には融資しないとする政策文書のドラフトを発表した。「アジア太平洋における低炭素移行支援に関するエネルギー政策」と題するドラフト文書では、「原子力発電は、低炭素ベースロード電力を供給できるが、社会的受容性、核拡散リスク、廃棄物管理、安全性の問題、高い投資コスト、長期にわたる準備・建設期間など、多くの障壁に直面している」とし、「同障壁の結果、ADBがこの技術を支援することを途上国の加盟諸国から強く求められていない」と結んでいる。
2021.05.14
ポーランド:エネルギー法改正、需要家保護、スマートメーター導入促進へ
気候省は2021年5月14日、上院でエネルギー法改正案が可決されたことを明らかにした。同改正法では、電力、ガス、熱供給における需要家保護が優先されることが明記された他、エネルギー貯蔵の開発、分散型エネルギーと再生可能エネルギー源の開発のための包括的な解決策をもたらすことを目的としている。また、配電事業者に対して、2028年末までに最終需要家の80%にスマートメーターを設置するという目標も記載された。クルティカ気候相は、1,300万人の最終需要家に対してスマートメーターを設置する場合の経済的利益は、15年間で約113億ズロチ(約3,400億円)に達するという試算があり、導入コストよりもメリットが高いことを説明している。今後、ポーランドでは再エネ導入量を増やすため、最終需要家(プロシューマ)の役割に期待が寄せられており、EU内でも遅れてきたスマートメーター導入が必須とされている。
2021.05.14
ドイツ:Uniper、石炭火力発電所Datteln4号機の廃止前倒し検討を公表
2021年5月14日付のエネルギー情報誌によると、ドイツのエネルギー事業者Uniperは連邦政府が脱石炭期限に設定している2038年よりも前倒しで同社の石炭火力発電所Datteln 4号機(発電設備容量110万kW)の廃止を検討することを公表した。同機は地域の反対等で着工・建設が遅れ、当初の運開予定から約10年遅れで2020年5月に運開したばかりの石炭火力発電所であり、同国最後の石炭火力発電所と称される。同社CEOのMaubach氏によると、「新政権が脱石炭加速を望む場合、利害関係の公平なバランス模索に向け、我々はいつでも議論に応じる準備がある」と、緑の党の政権入りが濃厚であることなどを受け、廃止前倒し検討に応じる姿勢を示している。ドイツ政府は2021年5月12日、気候保護法を改正し、カーボンニュートラル達成期限を5年前倒して2045年とすること、また、2030年の1990年比GHG削減目標を55%から65%に引き上げ、さらに2040年のGHG削減目標を88%に新たに設定することを閣議決定した。気候関連のシンクタンクE3Gによると、この2030年目標(65%)達成に脱石炭は不可避であり、事実上、脱石炭期限を2038年から2030年に前倒すことに相当する。
2021.05.13
英国:政府、エネルギー関連の世論調査結果を公開
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2021年5月13日、同省が四半期ごとに実施している世論調査の結果を公開した。今回の調査は、英国のエネルギー問題に関して国内の16歳以上、4,029人を対象に2021年3月、初となる完全オンライン形式で実施された。調査結果によると、気候変動問題に関しては80%が危機意識を持っていると回答した。エネルギー価格の高騰など、エネルギーセキュリティーについて懸念していると答えたのは82%であった。再エネ開発に関しては79%が支持すると回答、太陽光が84%と最も高く、続いて洋上風力76%、潮力・波力75%、陸上風力70%、バイオマス67%となった。原子力については38%が支持、17%が反対を示した。シェールガス開発に関しては23%が賛成、反対は36%であった。炭素回収・貯留技術(CCS)について65%が知っていると答え、知っていると答えた人のうち65%が開発を支持すると答えた。エネルギー小売のスイッチングについては71%(1年以内:26%、1年以上前45%)が行ったことがあると答えた一方、23%は一度も行ったことがないと回答した。
2021.05.12
米国:バイデン氏、サイバーセキュリティ強化の大統領令に署名
バイデン大統領は2021年5月12日、大手石油パイプライン(Colonial Pipeline)がサイバー攻撃を受けたことに鑑み、サイバーセキュリティ向上と連邦政府のネットワーク保護を目的とした大統領令に署名した。同大統領令は、サイバーセキュリティ対策の近代化、米国政府と民間企業間の情報共有の改善、およびサイバー事象発生時の対応能力の強化を目的とするもので、政府と民間企業が共同で議長を務める「サイバーセキュリティ安全審査委員会」(Cybersecurity Safety Review Board)を設置し、重大なサイバー事象が発生した場合には、事象の分析とサイバーセキュリティ向上のための提言を行うこととした。私営電気事業者の業界組織であるエジソン電気協会(EEI)は同日、同大統領令を支持する声明を発表した。
2021.05.12
米国:米国初の大規模洋上風力発電事業を連邦政府が承認
エネルギー情報誌は2021年5月12日、連邦政府が米国で初となる大規模洋上風力発電事業「Vineyard 1(発電出力:80万kW)」の実施計画を承認したと報じた。デンマークのCopenhagen Infrastructure PartnersとスペインのIberdrolaの米国子会社が共同で開発を進めてきた同事業は、マサチューセッツ州の入札で事業選定を受け、連邦政府の環境影響審査が進んでいた。しかし、トランプ前政権下で2019年8月、補完資料の提出を要請され、審査手続きが遅れていた。バイデン政権は2030年までに洋上風力3,000万kWの導入を目標とすることを明らかにし、連邦政府の審査手続きを迅速化することを約束している。一方で、漁業者団体は今回の事業承認を受けて声明を発表し、これまでヒアリングなどで要望してきた環境への影響を抑制するための方策がほとんど反映されていないとして、環境審査を実施した海洋エネルギー監督局(BOEM)を批判している。
2021.05.11
ベトナム:出力抑制により民間再エネ発電事業者の経営が悪化
2021年5月11日付の現地紙によると、ベトナムで系統安定を理由とする電源の出力抑制により、民間の再エネ発電事業者の経営が悪化しており、今後もその傾向が継続する見通しである。一例としてシンガポール系企業のSinergy社は、総出力の20%減で運用していると述べている。2021年1~4月に出力抑制された再エネ(太陽光・風力)電力量は計4億7,000万kWhにのぼり、年末までに計17億kWhに膨らむ見通しである。ベトナム国内における太陽光発電の導入量は2021年5月時点で総発電設備の30%(約1,700万kW)を占め、正午の総発電電力量の40~60%に相当する。
2021.05.08
中国:電力スポット取引市場の第2次パイロット実施省を選定
現地紙は2021年5月8日、政府当局が電力スポット取引市場の第2次パイロット実施省を選定したと報じた。それによると、国家発展改革委員会と国家能源局は2021年4月26日付で「電力スポット市場パイロットの更なる取組みに関する通知」(第336号)を発行、その中で上海、江蘇、安徽、遼寧、河南、湖北の各市・省をスポット市場の第2次パイロット実施省(直轄市)とすることを示した。中国政府は2017年8月に第1次パイロット実施省として広東省、山東省など8省を指定している。今回の通知では、上海市、江蘇省、安徽省に対して、長江デルタ地域としての連携強化を求めるなど、広範な市場形成も視野に置かれている。
2021.05.06
フランス:EDF、新型EPR建設に係るFS報告書を政府に提出
2021年5月6日付の報道によると、大手エネルギー企業EDFのレヴィ会長がフランス政府に対し、新型EPR原子炉(EPR2)6基の建設に係るFS報告書を提出した。同報告書は、政府が原子炉新設要否の判断材料の一つとしてEDFに提出を求めたものである。政府は2023年に予定されているフラマンビル原子力発電所3号機(EPR、約163万kW)の運転開始以降に新設要否の判断を下すとしている。EPR2は、EDFが開発を進めているEPRの改良版であり、設計の簡素化、建設工法の改善、設備の標準化等を図っている。
2021.05.05
ドイツ:連邦政府、温室効果ガス排出削減目標を引き上げる方針
2021年5月5日付の報道によると、連邦政府は気候保護法を修正し、温室効果ガス削減目標を引き上げる方針である。2030年の温室効果ガス排出削減目標を現在定められている1990年比55%から65%に引き上げ、2040年までに88%とした上で、さらにカーボンニュートラル達成を2050年から2045年に前倒しするとしている。2021年3月24日に連邦憲法裁判所は、現行法は不十分であり、2030年以降の温室効果ガス排出削減目標について詳細を明らかにする必要があるとの判断を下していた。
2021.04.29
米国:イリノイ州知事、原子力発電所への支援法案を発表
イリノイ州のプリツカー知事(民主党)は2021年4月29日、エクセロン社が同州内で運営し、2021年中に早期閉鎖する方針を示しているバイロン、ドレスデン両原子力発電所に対し、期間を区切り補助金を支払うことを含む法案「Consumers and Climate First Act」を発表した。本法案は2050年までに州内のエネルギーを100%クリーンなものとすることを目標としており、原子力をそのための手段として位置付けている。法案に「(補助金の支払いは)短期間で、かつ必要性が明確に証明されたものに対してでなければならない」と明記し、発電所の財務状況を確認するための独立監査を毎年受けることを条件に、2021年から2025年の間、バイロン発電所には1kWh当たり0.001ドル(年間換算で約1,900万ドル)、ドレスデン発電所には同0.0035ドル(同5,200万ドル)の補助金をエクセロン社に支払う内容となっている。
2021.04.27
中国:南方電網、2025年までにEV用充電インフラに4000億円の投資を予定
国有大手送配電事業者である南方電網有限責任公司は2021年4月27日、2025年までに電気自動車(EV)用充電インフラ向けに、M&Aを含めて251億元(約4,016億円)を投じる計画を発表した。同社はすでに充電スタンドは2020年度に1万3,000基を新設し、年度末時点で4万2,000基を所有しているが、今回の計画では2025年度末までに10倍近くに及ぶ38万基の新設を謳っている。
2021.04.27
韓国:政府、中長期天然ガス需給計画を改定
産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)は2021年4月27日、天然ガスの中長期計画である「第14次長期天然ガス需給計画(2021~2034年)」を発表した。同計画は、都市ガス事業法に基づき2年ごとに策定が求められているが、同計画の更新は2018年4月以来で、電力需給計画と同様に2034年までを対象としている。今回の計画では、総天然ガス需要は基準ケースで2021年の4,559万tから2034年に5,253万tに達し、そのうち、発電用ガス需要は2,001万tから2,088万t(期間は同上)と総需要よりやや低い伸びが予想されている。需要増を踏まえて、西部の忠清南道・タンジン市に2025年の運開を目指して新規LNG受入基地の建設が計画されているが、その貯蔵容量の50%は競争促進の観点から、韓国ガス公社を通さない直接取引への優先的な割り当てについても触れられている。
2021.04.27
米国:ニュージャージー州、原子力発電所への支援策を3年間延長
ニュージャージー州の公益事業委員会(NJBPU)は2021年4月27日、州内で運転中のすべての原子力発電プラントに対して2022年まで適用することにしている「ゼロエミッション証書(ZEC)」を3年間延長することを承認したと発表した。ゼロエミッション電源としての対価を電気料金の中から受け取るこの制度は、セーラム1、2号機(PWR)とホープクリーク(BWR)の3基を対象に、2019年4月18日から2022年5月末まで適用されることとなっていた。今回承認された期間は2022年6月1日から2025年5月末であり、補助内容は現在と同じく、発電電力1kWh当たり0.004ドルで1基当たり年間最大約1億ドルの補助金が支払われる。3基を運営するPSEG社は同日、自社のホームページ上で、「NJBPUが全会一致で州最大のカーボンフリー電源を支援することを決定したことに満足している」とのコメントを発表した。
2021.04.23
中国:2大送配電事業者間の新規連系プロジェクトを着工
中国の2大送配電事業者である国家電網有限公司と南方電網責任有限公司は2021年4月23日、福建省と広東省における両社500kV基幹系統のBack To Back連系設備の着工式を開催した。この連系プロジェクトは新規500kV交流2回線(延長303km)と福建省に建設される交直変換所などで構成され、総投資額は32億元(約510億円)であり、2022年度中の運開を目標としている。プロジェクトの送電容量は200万kWであり、完成後の両社系統間の連系容量は、既存部分を含め500万kWに増加する。
2021.04.22
中国:習主席、気候変動サミットで環境政策について演説
中国政府は2021年4月22日、気候変動サミット(Leaders’ Summit on Climate、米国でオンライン開催)における習近平国家主席の演説内容を公表した。習氏は地球環境問題への対応が前例のない困難に直面しているとして、国際的に積極的な行動を取り、責任を持って人間と自然の共同体を構築するための協力が必要であると呼びかけた。さらに、自らが2020年に宣言した気候変動目標達成に向けて中国政府が現在、行動計画を策定中であり、地方政府や企業による目標の前倒し達成向けて支援を行っていく方針であることを明らかにするとともに、現行の5カ年計画(第14次五カ年計画:2021~2025年)期間中に石炭火力発電量の伸びに厳しい制約をかけ、次期5カ年計画(第15次五カ年計画:2026~2030年)にはそれを減少に転じさせるという新たな目標を示した。
2021.04.22
米国: 2030年までにGHG排出量半減の目標を発表
バイデン大統領は2021年4月22日、米国主催のオンラインで開いた「気候変動サミット」の中で、2030年までに米国の温室効果ガス(GHG)排出量を50~52%削減(2005年比)する目標を発表した。同目標は2050年のGHG排出実質ゼロを実現するための中間目標であり、米国のパリ協定復帰後の新たな国別削減目標(NDC)として、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ正式に提出する。パリ協定離脱前のオバマ政権下では、2025年までに26~28%削減(2005年比)としていた。私営電気事業者の業界団体であるエジソン電気協会(EEI)は「EEIの会員企業は、顧客が重視する信頼性や電気料金を損なうことなく、より多くのクリーンエネルギーをできる限り早く提供することに取り組んでいる。バイデン政権や議会と協力することで、クリーンなエネルギーへの転換とそれを取り入れた経済社会の実現に向け、最も効率的、安価、かつ信頼性の高い道筋をつけることできると期待する」との声明を出した。
2021.04.21
EU:2030年GHG排出量を55%減とすることで非公式合意
欧州議会およびEU理事会は2021年4月21日、EUの気候変動対策目標等を定めるEU気候法案について代表者間で合意に達したと発表した。同法案は、EUが2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)を目指すこと、および2030年のGHG排出量を1990年に比べて少なくとも55%削減すること等を規定している。現在のEUの2030年GHG排出削減目標は1990年比40%削減であり、この目標値引き上げが合意された。2030年のGHG削減目標に関しては森林等によるCO2吸収量も算入されるが、排出量自体の削減を促すため算入量に上限が設定される一方で、CO2吸収量拡大に向けた施策は推進するため、実質的には1990年比57%の削減が実現される見通しとなる。この他、GHG削減状況を監督するための独立科学諮問委員会を設置することや、2050年カーボンニュートラル達成に向けた産業別のロードマップ策定を推進すること、2023年に予定されるパリ協定に基づく全世界の実施状況確認後にEUの2040年目標を提案すること、2050年以降はカーボンネガティブ(CO2排出実質マイナス)に取り組むことなども合意された。同法案は今後、欧州議会、EU理事会の採択を経て成立する見通しである。
2021.04.21
米国:全米12州知事、バイデン大統領に2035年までのガソリン車販売禁止を要請
カリフォルニア州をはじめとする米12州知事は2021年4月21日、2035年までに温室効果ガスを排出する新車販売の禁止を求める書簡をバイデン大統領に提出した。知事らは書簡で、2035年までにすべての乗用車と小型トラックの新車をゼロエミッション車にするための基準設定、および進捗状況を監視するための中間目標の設定を要請している。また、2045年までにすべての中型車および大型車の新車販売をゼロエミッション車にするための基準設定とインセンティブの付与を求めた。この書簡に対して、民主党から11知事(メイン州、ロードアイランド州、コネチカット州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ノースカロライナ州、ニューメキシコ州、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州、ハワイ州)、共和党から1知事(マサチューセッツ州)が署名した。
2021.04.20
韓国:2021年10月からRPS義務供給比率が25%に上方修正
産業通商資源部(MOTIE、日本の経済産業省に相当)は2021年4月20日、再エネ利用基準(RPS)を上方修正した「新エネルギーと再生可能エネルギーの開発・利用・普及促進法」の一部改正法を公布した。同法改正により、RPSは現行の10%から25%に引き上げられるが、RPSの変更は、2012年の設定以来9年ぶりである。同法改正は、10月21日から施行される。
2021.04.20
オランダ:Uniper、オランダ政府の石炭火力段階的廃止法に対し提訴を示唆
2021年4月20日付のエネルギー情報誌によると、ドイツのエネルギー企業Uniperは、オランダ政府の2030年石炭発電廃止政策が企業に対して十分な補償を手当していないとして、エネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)に基づく国際仲裁手続きを行うことを示唆した。手続きが実行されれば、ドイツのエネルギー企業RWEがオランダ政府に対して行った同年2月の提訴に続き2例目となる。廃止政策の対象となるUniperの設備は2016年に運転開始したMaasvlakte3であり、40年間の稼働期間を前提としていた。廃止政策が可決された2019年12月当時、Uniperは「円満な解決策」を求めて政府へ書簡を送り、合意に至らなければ国際仲裁手続きの手段もあり得るとコメントしていた。
2021.04.20
英国:政府、第6期カーボン・バジェットの草案発表、2035年78%削減目標
英国政府は2021年4月20日、第6期カーボン・バジェット(2033~2037年)における温室効果ガス(GHG)排出削減量の草案を発表した。これによると、政府は諮問機関である気候変動委員会(CCC)の2020年12月の提案に沿い、2035年までに1990年比78%の排出削減を目標として定める方針で、2033~2037年における総排出量を9億6,500万トン(CO2換算)に抑える。政府は発表翌日(4月21日)にこの削減目標を法案として国会に提出しており、2021年6月までの成立を目指すとしている。
2021.04.19
スペイン:2050年カーボンニュートラル目標を含む気候変動法が成立
地元紙は2021年4月19日、気候変動法が下院を通過し、成立する見通しとなったと報じた。今後上院で審議されるが、成立はほぼ確実である。主な内容は2050年にカーボンニュートラルの達成、および達成のための中間目標などである。これらの目標は達成状況などにより5年ごとに見直すことになる。具体的には、2030年の温室効果ガス排出削減目標は23%、最終エネルギー消費に対する再生可能エネルギーの比率は最低42%(現状は20%)、電力供給における再エネ比率は現状の約40%を少なくとも74%まで拡大すると謳っている。また、2040年にはガソリンエンジンなど内燃機関による自動車の販売を禁止し、一定の人口を持つ自治体にはEV充電装置の整備など持続可能な運輸計画の策定を義務付けている。
2021.04.14
中国:2021年第1四半期の電力消費は前年比で大幅増加
国家能源局(NEA)は2021年4月14日、同年1~3月期の電力消費データを発表した。電力消費量は1兆9,219億kWh(うち3月は6,631億kW)で、2020年同期比で21.2%増(うち3月は19.4%増)となった。2020年1~3月期は新型コロナの影響で前年同期比マイナス6.5%と落ち込んでおり、今回は経済活動の本格回復によるものと見られる。分野別では、第1次産業、第2次産業、第3次産業および民生分野における電力消費量は2020年同期比でそれぞれ、26.4%、24.1%、28.2%、4.7%といずれも増加した。
2021.04.14
米国:テキサス州、2021年2月に続き電力需給が逼迫
テキサス州の独立系統運用事業者であるERCOTは2021年4月14日午後、同日夕方から夜にかけて需要が供給を上回ると予測されたため、需要家に対し節電を呼び掛けた。前日13日にも需給が逼迫し、電力価格は午後5時時点で一時的に2ドル(約220円)/kWh近くまで高騰した。しかし、14日は約4時間にわたる節電要請に需要家が応えたこともあり、電力価格は0.8ドル(約90円)/kWh程度に留まった上、同日午後9時に節電要請は解除された。翌15日も予備力低下が見込まれたが、節電の呼び掛けは見送られている。テキサス州は2021年2月にも寒波の影響で電力価格が高騰し、輪番停電が実施された。
2021.04.13
中国・ラオス:南方電網系企業、国際鉄道のラオス側区域への電力供給で契約
中国の送配電事業者大手である南方電網有限責任公司は2021年4月13日、同社傘下の南方電網雲南国際公司とラオス電力公社(EDL)との合弁企業であるラオス中国電力投資公司が、ラオス政府との間で中国・ラオス鉄道(China-Laos Railway)のラオス側区域への電力供給における特定事業権契約を9日付で締結したと発表した。南方電網は、両国の外交関係樹立60周年にあたって、両国の電力分野における相互協力を促進する一歩であると述べている。
2021.04.13
米国:DOE長官、クリーンエネルギー基準にインセンティブの組み込みを検討
エネルギー省(DOE)のグランホルム長官は2021年4月13日、バイデン政権が電気事業者に脱炭素電源を促すために連邦大で導入を検討しているクリーンエネルギー基準(CES:Clean Energy Standard)に、各州の目標達成を促すインセンティブを盛り込むことも考えられると述べた。バイデン大統領は2兆ドル規模のインフラ計画「米国雇用計画(American Jobs Plan)」の中でCESを提案しており、2022会計年度の予算案で、CESを支援するためにDOEの取り組みに19億ドルを要求した。民主党は、上院においてフィリバスター(法案に反対する議員から議事妨害)を受けることなく単純過半数(100議席中51議席以上)で可決できる財政調整措置をインフラ計画法案に適用することも検討している。同長官は「(上院で)CESが通過できるか、まだ分からない」としたうえで、同様のインセンティブの例として、オバマ政権が導入した教育改革プログラム(連邦政府が掲げる教育政策に対して最善の実施計画を提案した州にインセンティブが付与される)を挙げた。
2021.04.21
中国・サウジアラビア:国家電網、サウジでスマートメーター大量設置完了
現地専門メディアは2021年4月12日、国有送配電大手の国家電網有限公司がサウジアラビア国内で行うスマートメーター500万台と関連システムの設置工事が3月30日までに完了したと報じた。このスマートメータープロジェクトは、サウジアラビアの経済改革長期計画である「ビジョン2030」においてスマートグリッドとスマートシティの構築を実現するための重要な項目と位置付けられており、国家電網有限公司傘下の中国電力技術装備有限公司がこれを請け負った。また、通信関係は中国の通信大手である中興通訊(ZTE)が技術協力を行っている。当該プロジェクトは、設備の約3割を現地生産調達という条件のもとで2019年12月に契約(金額約11億ドル)が締結され、2020年2月に着工していた。
2021.04.21
ロシア:政府、気候変動対策に向けた戦略プログラムの策定へ
ロシア連邦政府のノバク副首相は2021年4月12日、連邦エネルギー省との年次総括会合で、政府が「新たなエネルギー」と呼ばれる戦略プログラムの策定を準備していることを伝えた。同プログラムは、ロシアの燃料エネルギー部門における気候変動問題への対応を示すものとなる。ノバク副首相は、「我々は今日、温室効果ガス排出の問題、またCO2排出の観点から燃料エネルギー部門の効率向上という問題を抱えていることを理解しており、我々はこれに真剣に取り組み、戦略プログラム『新たなエネルギー』の中で複合的なアプローチをもってこれを検討しなければならない」と述べた。
2021.04.12
コロンビア:2050年に向けてカーボンニュートラルを目指す
エネルギー情報サイトは2021年4月12日、コロンビアの環境・持続可能な開発省(Minambiente)が2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、公的および民間部門、市民社会における温室効果ガス(GHG)削減への取り組みを開始したと報じた。その中にはスペイン資本の石油・ガス大手レプソルや公社系の送電会社ISAなどが含まれる。同国は2020年11月に国別削減目標(NDC)を更新し、2030年までにGHG排出量をBAU シナリオと比較して51%削減する目標を設定した。これは同国が掲げる2050年までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標に則ったものである。当初のNDCでは2030年までに少なくとも20%削減という目標が掲げられていたが、国際社会からの協力や支援もあり、目標引き上げが可能になったとされる。また、2050年の長期目標の達成については、隣国パナマと協力して取り組むとしている。
2021.04.09
アイルランド:2025年に石炭火力を停止し、洋上風力発電製造拠点に転換
エネルギー情報誌は2021年4月9日、アイルランドの大手電力事業者ESBが最後の石炭火力発電所を2025年に停止し、跡地を洋上風力発電の設備建設に活用、グリーン水素製造も検討すると発表したことを報じた。アイルランドで最大のMoneypoint石炭火力発電所(発電出力合計:91万5,000kW)は1985~1987年に運転を開始し、ピーク時には同国の25%の電力を供給したが、アイルランド政府は2025年までにすべての石炭火力を停止する方針を明らかにしている。ESBは政府の方針に沿って石炭火力を停止するが、Moneypoint石炭火力発電所は石炭受け入れのため水深の深い港湾を有していることから、発電所跡地を浮体式洋上風力発電の建設拠点として整備する計画で、ノルウェーの石油メジャーEquinorと共同で140万kWの洋上風力を設置する予定である。また、グリーン水素製造の拠点として運輸部門や産業部門への水素供給も検討する。アイルランドではESBの他にもEDF、Iberdrola、Shell、Totalなど多くの事業者が洋上風力発電事業を検討中である。
2021.04.08
英国:ナショナル・グリッド、2021年夏季需要想定を発表
英国の系統運用者であるナショナル・グリッドESO(NGESO)は2021年4月8日、2021年夏季の電力需要想定を発表した。これによると、送電線への負荷想定から見積られる今夏の電力需要は、最大電力が3,210万kW、最小需要は1,720万kW(夜間)であり、2020年夏季の実観測値(最大:3,150万kW、最小:1,620万kW)よりは高めの見通しとなった。NGESOは、新型コロナ感染蔓延による影響は続くとしながらも、ロックダウン時においても経済活動が続けられる状況にあることから、2020年3~6月のロックダウン時のような急激な需要減少はほぼ発生しないとみている。
2021.04.07
米国:財務省、再エネ税制優遇等を含む税制改革案を発表
米国財務省は2021年4月7日、バイデン大統領が発表したインフラ投資計画「米国雇用計画(American Jobs Plan)」の財源を説明する「メイド・イン・アメリカ税制(Made in America Tax Plan)」報告書を発表した。現行の法人税制度について、企業が生産や利益を海外移転させてしまうインセンティブが含まれており、また法人税収の減少が、インフラ、技術開発、およびグリーンエネルギーへの投資を妨げていると指摘している。この対策として、法人税率の引き上げ(現行21%から28%)、大企業の利益への課税強化などのほか、化石燃料への補助金を廃止し、クリーンエネルギーへの税制優遇措置の拡大を挙げている。同省の試算では、同補助金の廃止により今後10年間で税収が350億ドル以上増加するとの予想が示されている。
2021.04.06
アラブ首長国連邦:バラカ1号機、営業運転を開始
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力公社(ENEC)は2021年4月6日、バラカ原子力発電所1号機(韓国製APR1400、140万kW)が営業運転を開始したと発表した。同発電所の建設は2012年7月に開始され、同号機は2020年8月の起動と系統接続を経て同年12月に定格出力に達していた。
2021.04.06
米国:ERCOT、大寒波下で相次いだ発電機停止の原因を報告
テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)は2021年4月6日、同年2月にテキサス州で大寒波の下での広域停電を招いた、最大5,000万kW超に及ぶ発電機の停止について、州規制当局へ報告した。報告によると停止の原因は、気象条件:54%、気象条件以外を原因とする設備障害:14%、燃料供給支障:12%、送電設備の喪失と系統周波数の低下:それぞれ2%、計画内停止:15%であった。気象条件による停止は、火力発電所の制御系ラインや水配管の凍結、風力発電のブレードへの着氷、および太陽光パネルへの積雪等が原因として挙げられているほか、その他の設備障害として、タービン振動や制御システムの不具合も発生している。燃料供給支障は、天然ガス供給圧力の低下、石炭の凍結によるものであった。
2021.04.05
米国:EIA、2020年の年間エネルギー消費量が前年比7%減少と発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年4月5日、米国の2020年の年間エネルギー消費量が前年比で7%減少したと発表した。主に新型コロナの影響を受けたものであり、同局が1949年にデータ収集を開始して以来、過去最大の前年比下落率となる。部門別では、商業用:7%、工業用:5%、家庭用1%と軒並みの下落であった。また、暖冬の影響で暖房用エネルギー消費が減少したため、燃料はバイオマス:16%、石油:11%、天然ガス:7%の低下となった他、旅行規制が強化されたことによって運輸部門の石油使用量も減少し、この分野でもジェット燃料:38%、自動車用ガソリン:13%、ディーゼル:7%の下落を記録した。

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