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2020 年度

海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。

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2020年度

2021.03.31
韓国:政府、「カーボンニュートラル技術革新推進戦略」発表
韓国の科学技術情報通信部(日本の「省」に相当)は2021年3月31日、政府による「カーボンニュートラル技術革新推進戦略」を発表した。この中でカーボンニュートラル達成に向け推進すべき中核技術として10項目が示されたが、電力関連では、太陽光・風力、水素、バイオエネルギー、CCUSのほかデジタル化などが含まれた。各項目の技術開発にあたっては、2050年までに太陽光発電の効率を40%に高めるほか、風力は2万kW級発電機を開発するという目標が掲げられた。また、水素については2040年までに水素小売価格を3,000ウォン(約270円)/kg、水素発電単価を131ウォン(約11.8円)/kWhにまで引き下げる目標が設定された。
2021.03.31
中国:昌江原子力発電所3、4号機、建設許可を受け着工へ
中国発電大手の華能集団公司は2021年3月31日、同社が初めて所有する原子力発電所の昌江(海南省、第2期プロジェクト)3、4号機が国家核安全局の建設許可を受け、正式に着工に至ったと発表した。同プロジェクトは華能集団公司傘下の華能核電開発有限公司(HNNP)など2社(出資比率49%)と原子力発電大手の中国核工業集団公司(CNNC、出資比率51%)と共同で建設が進められてきた。このうち、第1期プロジェクトの1、2号機はCNNCが開発した第2世代PWRの「CNP600」を採用し、2015年12月と2016年8月にCNNCが主導で営業運転を開始している。第2期プロジェクトは、中国産第3世代炉である120万kW級PWR型炉「華龍一号」が採用されており、投資総額は約400億元(約6,500億円)で、2026年に商業運転を開始する予定となっている。
2021.03.31
オランダ・ベルギー:北海周辺産業地域へ100万kWの水電解装置を新設計画
デンマークの電力会社エルステッド、およびオランダ・ベルギー間にまたがる北海周辺産業集積地の大手企業(Yara, ArcelorMittal, Dow Benelux, Zeeland Refinery, North Sea Port, Smart Delta Resources)、Zeeland州および東Flanders州は2021年3月31日、世界最大級となる100万kWの水電解装置を新設し、当該産業集積地のCO2排出量を削減するプロジェクト「SeaH2Land」を発表した。当プロジェクトでは、北海のオランダ領域に新設する200万kWの洋上風力発電設備を水電解装置へ直接連系する。また、生成されたグリーン水素を供給するため、オランダのVlissingen-OostからベルギーのGentまでの北海港エリアをつなぐ全長45kmの新規ガスパイプラインの開発も計画されている。北海周辺産業地域は現在、欧州最大規模の化石燃料由来の水素生成・消費地となっており、その量は年間58万tに及ぶ。脱炭素化の流れで2050年には水素需要が100万tまで増えると予想され、同規模のグリーン水素生成に必要な水電解装置の規模は約1,000万kWと見られる。
2021.03.31
米国:バイデン大統領、8年間で2兆ドル投入のインフラ計画を発表
バイデン大統領は2021年3月31日、8年間で2兆ドル超となるインフラ投資計画「米国雇用計画(American Jobs Plan)」を発表した。同計画は、気候変動対策や中国による国家安全保障上の脅威に対抗するため、送電系統や交通分野の刷新、住宅の建設・改修、クリーンエネルギーの拡大、国内産業の育成等に必要な財政出動の承認を議会に求めている。エネルギー・電力分野では、8年間で1,000億ドル規模の投資を計画しており、特に電力関連では、(1)再エネ等への投資税額控除(ITC)や発電税額控除(PTC)を10年間延長、(2)高圧送電線の新設促進(累計容量2,000万kW)のため送電ITCを導入、(3)連邦大でのエネルギー効率・クリーン電力基準(EECES)を策定(既設の大型水力や原子力を含む)、(4)送電系統設備の許認可権を統合し、送電線建設支援等を目的にエネルギー省(DOE)に送電系統配備局(Grid Deployment Authority)を設置、(5)連邦政府庁舎のクリーン電力利用、(6)クリーンエネルギーの導入促進のため州や地方政府に200億ドルの包括的補助金を交付、(7)2030年までにEVの充電設備を50万カ所に設置、(8)大規模蓄電池、CCS、水素関連、先進型原子炉、浮体式洋上風力などの気候変動関連研究開発の実証プログラムへ投資することなどが盛り込まれている。
2021.03.30
中国:スマホ大手がEV市場に参入
現地専門紙は2021年3月30日、大手スマートフォンメーカーである小米集団(XIAOMI)が子会社を設立して電気自動車(EV)市場に本格的に参入すると報じた。XIAOMIは2019年にAIoT(人工知能AIとモノのインターネットIoTとの組み合わせ)開発に向けた戦略委員会を社内で立ち上げて積極的な展開を図っており、自社のAIoTプラットフォームと連携する家電製品などの機器(スマートフォン・PCは除く)は2019年末で2億1,000万台に達しているほか、新興EVメーカーである小鵬汽車(Xpeng Motors)、蔚来汽車(NIO)へ2015年から出資を行っている。今回示された計画では、今後10年で100億ドルという投資を予定しており、新会社のトップは、XIAOMI会長の雷軍氏が兼任する。
2021.03.24
フランス:送電事業者RTE、2030年までの電力需給見通しを発表
送電事業者RTEは2021年3月24日、2021~2030年までの電力需給見通しを発表した。同見通しは大きく3つの時期に分類されており、2021~2024年にかけては、新型コロナの影響による原子炉定期点検の遅延を受けた原子力稼働率の低下、フラマンビル原子力発電所3号機(FL3)の運開遅延、再エネ開発の遅れ等のために需給逼迫の可能性があるとしている。2024~2026年にかけては、FL3の運開や再エネ開発、デマンドレスポンス技術や国際連系強化等により余剰電力が発生するようになり、2026~2030年にかけて需給は大幅に改善されると予測している。RTEは安定供給確保のために、再エネ開発の加速や原子力稼働率引き上げのための努力に加え、バイオマス発電へ転換され2024年まで運転予定のコルドメ石炭火力発電所の運転を2026年まで延長することを勧告している。
2021.03.23
ポーランド:太陽光発電の最大出力更新、政府の支援制度によりさらに増加へ
2021年3月23日付専門誌によれば、太陽光発電の最大電力が初めて200万kWを超えて225万kWとなったことが明らかになった。太陽光発電の設備容量(累積)は2020年2月時点で130万kW程度であったが、2020年に260万kW(単年)導入されたことで、2021年2月時点の設備容量(累積)は390万kWとなり、一年で約3倍となった。気候省によれば、ルーフトップ型の小規模太陽光設備は支援制度の下で年々増加しており、太陽光パネルを設置した世帯数は、2015年の4,000世帯から大幅に増加し、2020年12月末時点で45万世帯を超えている。また、2020年12月に実施された再エネオークションでは総設備容量170万kW(内、太陽光80万kW)を対象に総額94億ズロチ(約2,700億円)の支出が決定されており、今後も設備容量は増える見込みである。ポーランドは国家エネルギー戦略(PEP2040)において石炭火力から低炭素電源(再エネ、原子力)への移行を目指しており、太陽光発電設備については2040年までに最大1,600万kW導入する計画を示している。
2021.03.23
米国:大手ガスSoCalGas社、2045年までのGHG排出量の実質ゼロを発表
米国大手ガスのサザン・カリフォルニア・ガス社(SoCalGas、顧客数2,200万軒)は2021年3月23日、2045年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにする計画を発表した。削減目標には自社での直接排出のみならず、同社の供給するガスの燃焼に伴う顧客の排出も含める。同社は今後5年間で、事業の脱炭素化、多角化、およびデジタル化への投資を進め、2025年までに(1)同社の新築および1万平方フィート(929m2)以上の建物をZEB化(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)すること、(2)業務車両50%を電動化すること、(3)州全体の水素混合基準を設定し、5件の水素実証事業を完了することとしている。他に、再生可能天然ガス(RNG)、水素、炭素回収などの技術も活用していく。同社が拠点とするカリフォルニア州は、2045年までの脱炭素化を進めている。
2021.03.22
米国:2020年の大規模山火事、PG&E社配電線と松の接触が原因と公表
カリフォルニア州森林保護防火局(CAL FIRE)は2021年3月22日、2020年9月に発生し延焼面積約230km2、建物倒壊204軒、死者4名の被害をもたらした大規模山火事Zogg Fireの原因を発表した。調査の結果、カリフォルニア州3大私営電気事業者の一つであるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社が所有する配電線に松の木が接触したことが原因であった。CAL FIREの発表を受け、同日にPG&E社は声明を発表し、現段階でCAL FIREの報告書や収集した証拠品の確認はできていないが、許可された際には両方を確認し対応を考えたいとした。また、山火事リスクを軽減するための山火事緩和計画(WMP:Wildfire Mitigation Plan)の実施に引き続き注力していくと述べている。
2021.03.19
中国:国家電網、中期計画期間中に揚水発電を2,000万kW以上追加へ
中国最大の送配電事業者である国家電網有限公司は2021年3月19日、中国政府の「30・60目標」(二酸化炭素排出量の2030年ピークアウト、炭素排出の2060年実質ゼロ化)の呼びかけに応じ、揚水発電開発を積極化させる方針を明らかにした。それによると、国家電網は第14次五カ年計画(2021~2025年)期間中における揚水発電の新規着工を2,000万kW以上とする。国家電網はこの目標について、政府の中期目標である新エネを主体とする電力システムの構築方針に合わせ、それに対応した調整電源の開発目標を上乗せする措置を取ったとしている。国家電網が所有する揚水発電所は2020年末時点で、建設中を含めて22カ所、6,229万kWとなっている。また、揚水発電には日系企業の機材供給事例もあり、最近では2021年2月に東芝エネルギーシステムの中国法人が国家電網の子会社である国網新網から、浙江省に建設予定の寧海揚水発電所向けに水力発電設備を受注している。
2021.03.19
パキスタン・中国:カラチ原子力発電所2号機、系統接続し送電開始
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2021年3月19日、建設中であるパキスタンのカラチ原子力発電所2-3号機の内、2号機(110万kW)が18日に送電系統に接続し送電を開始したと発表した。同機は中国が開発した「華龍1号」型(HPR1000)原子炉で、燃料集合体は177本、18カ月連続運転の仕様となっており、安全面では動的と静的両方のシステムを備え、稼働年数は60年とされている。CNNCは同機を5月末までに商業運転する予定で、並行して建設している3号機は年内の稼働開始を目標に工事が進められている。同型炉は中国国内で1基がすでに商業運転を開始している他、8基が建設中である。
2021.03.19
ドイツ:緑の党、選挙綱領案で現行制度を上回る目標を掲げる
緑の党は2021年3月19日、同年9月26日に実施される連邦議会(下院)選挙の選挙綱領案を発表した。主な内容、目標は次の通りである。運輸・熱部門のCO2価格を現在の25ユーロ/tから2023年までに60ユーロ/tへ引き上げる。なお、現政府の計画では2025年までに55ユーロ/tまで引き上げることとなっている。さらに現制度において脱石炭の目標年度は2038年となっているが、前倒しして2030年を目指すとしている。再エネについては、PPAを促進させ導入拡大を図る。陸上風力の年間導入量を500万~600万kWまで増加させ、2035年までに洋上風力の累積導入量3,500万kWを目指すとしている。ドイツ風力エネルギー協会(BWE)によると、2020年の陸上風力の新規導入量は143万1,000kWであった。現行法である洋上風力法では2030年までに累積導入量を2,000万kW、2040年までに4,000万kWに増加させると目標設定している。
2021.03.19
米国:テキサス州のLNG会社、LNG液化輸出基地に全米最大規模のCCSを計画
2021年3月19日付の業界紙によると、LNG会社NextDecade社は、テキサス州に建設を計画しているRio Grande LNG液化輸出基地に、全米最大規模のCCS施設を設置する計画を発表した。同基地からの輸出に関しては2020年11月に、フランスのEngie社が温室効果ガス排出の増加を懸念し、LNG輸入契約(70億ドル)の交渉を撤回した経緯がある。基地とCCS施設を同時に建設することで、CCSを追設する場合と比較して、投資額を60~80%削減することが可能となる。CO2の回収・貯留コストは63~74ドル/CO2tであり、税制優遇を適用することで実質13~24ドル/CO2tとなる。主に基地のガスタービンから発生するCO2を90%以上に相当する500万CO2t/年を回収し、地中に貯留する。NextDecade社は、「LNG会社からクリーンエネルギー会社へと変化し、ネット・ゼロ排出実現を目指していく」と述べている。
2021.03.18
米国:2020年の発電電力量、原子力がはじめて石炭を上回る
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年3月18日、2020年の発電電力量について、原子力(7,900億kWh)が石炭火力(7,740億kWh)をはじめて上回ったと発表した。2008年時点の石炭火力の発電電力量は2兆kWh程度あったが、その後に閉鎖や燃料転換により設備容量、設備利用率が共に低迷した。一方で原子力発電は、閉鎖はあったもののこれを補う出力増強や高い設備利用率が寄与し、2008年以降の発電量は8,000億kWh程度で安定している。EIAの予測では2021年と2022年の発電電力量は、天然ガス価格の高騰により石炭火力の競争力が相対的に増す一方、原子力は数基の閉鎖もあり、その結果、石炭火力が再び原子力を上回るとしている。
2021.03.16
ラオス・中国:ラオス政府が送電事業者EDL-Tに25年間の事業権を付与
2021年3月16日付報道等によるとラオス政府は11日、ラオス電力公社(EDL)と中国の南方電網有限責任公司が共同出資する送電事業会社EDL-T(EDL Transmission)に25年間の事業権を付与することで合意した。EDL-Tはラオス政府による管掌の下、送電オペレーターとして230kV以上の送電線の投資・建設・運用と国際連系線の整備を担う。ラオス鉱業エネルギー省(MEM)関係者によれば、25年後に同社の事業はラオス政府に譲渡されるという。
2021.03.16
デンマーク:Ørsted、政府補助終了後の洋上風力発電所に関するPPAを締結
デンマークのエネルギー事業者Ørstedは2021年3月16日、同国のHorns Rev 2洋上風力発電所に関する10年間のPPA(電力販売契約)を締結したと発表した。同発電所の発電設備容量20万9,000kWのうち2万7,000kW分の発電電力を同国の機械メーカーDanfossに固定価格で販売する。2009年運開の同発電所の発電電力に対する政府補助は2020年10月に終了していた。Ørsted役員のErrboe氏は、「本件は、政府補助の終了した洋上風力発電所に関する当社初のPPAである。運転期間の後半段階に発電所において同様のPPAを締結することは当社収益の安定化に貢献し、さらに2019~2025年の間に2,000億デンマーククローネ(約3兆5,500億円)をグリーンエネルギーに投資する当社の新規プロジェクトにおいて、より大きなリスクを取ることを可能とする」とコメントしている。
2021.03.15
中国:太陽光パネルの新ガイドライン、技術革新を伴わない投資を抑制
工業情報化部(日本の「省」に相当)はこのほど、2021年3月15日施行の太陽光(PV)パネル生産に関するガイドライン「太陽光発電業界の規範管理暫定法(2021年版)」を公表した。それによると、低コスト・高効率PV製品の基準改定といった内容に加えて、生産能力の単純な拡張のような投資を抑制する観点から、新規工場建設に対して一定の基準を設定したことが明らかとなった。具体的には、年間売上高の3%以上の技術開発投資や、新規製品(技術改良品を含む)の生産量を前年度生産量の5割以上とするなどの条件が義務づけられた。
2021.03.15
中国:習国家主席、新エネを主体とする電力システムの構築を明示
大手メディアは2021年3月15日、習近平国家主席が自ら主宰する中央財政経済委員会の席上で、カーボンニュートラル達成へ向けた構想を示したと報じた。それによると、今回示された構想ではカーボンニュートラル実現のために、化石エネルギーの利用総量規制と利用効率向上に焦点を合わせ、再生可能エネルギー代替と電力体制改革の推進による新エネルギー主体の新型電力システム構築が目標として示されている。また同委員会では、二酸化炭素排出量の2030年ピークアウト、2060年のカーボンニュートラル目標達成のためには社会システムの変革推進に向けた、支援政策の必要性も話題に上ったとされている。
2021.03.15
オランダ:2020年のオランダGHG排出量は1990年比24.5%減の見込み
オランダ統計局の2021年3月15日付の発表によると、IPCCガイドラインに基づく2020年のGHG排出量推定値は、前年比8%減の1億6,600万t-CO2となった。1990年と比較して24.5%減となり、ウルヘンダ目標25%をわずかに下回るものの、当該推定値は今後新たに得られる各種情報に基づき更新されて23~26%の間に収まる見込みである(最終的に2022年2月に確定値となる)。ウルヘンダ目標とは、環境団体ウルヘンダ財団の提訴に対するオランダ最高裁の判決により定められた値であり、政府は2020年のGHG排出量を1990年比で少なくとも25%削減する義務がある。部門別の前年比GHG削減率が高い分野は運輸部門11%および電力部門21%で、その要因としては、運輸部門は新型コロナ対策のロックダウンにより交通量が減少したこと、電力部門は新型コロナの影響による需要減少、石炭価格の高騰によるガス火力発電シフト等、複数要因により石炭火力発電量が減少したことが挙げられる。
2021.03.11
フランス:Total、脱炭素化とデジタル化の加速に向けMicrosoftと提携
エネルギー大手Totalは2021年3月11日、脱炭素化とデジタル化を加速させることを目的に、Microsoftと戦略的パートナーシップを締結すると発表した。Microsoftは2025年までに消費電力の100%を再エネ由来の電力で賄い、2030年までには化石燃料の使用を止めるとともにカーボンネガティブを達成するという目標を掲げており、今回のパートナーシップのもと、TotalはMicrosoftのデータセンター向けに再エネPPAを締結し、データセンターのバックアップ電源(現在はディーゼル発電機を使用)やUPS(無停電電源装置)として子会社Saftのバッテリーの導入などを通じて、Microsoftの脱炭素化の加速を支援する。一方、Microsoftは自社のクラウドサービスの提供などを通じて、Totalが2020年にデジタルソリューションの開発拠点として開設した「Total Digital Factory」での研究・開発や事業運営の効率化・自動化を支援する。また、両社はデジタル化や脱炭素化に寄与する新技術の開発にも共同で取り組む。欧州の石油メジャーではBPやRoyal Dutch Shellも2020年にそれぞれMicrosoftとのパートナーシップを締結している。
2021.03.11
EU:タクソノミーをめぐる議論の中でガス火力の扱いを再検討
エネルギー情報誌は2021年3月11日、欧州委員会が検討を進める持続可能な事業分類(タクソノミー)において、ガス火力の扱いを再検討していると報じた。タクソノミーは数年間にわたって持続可能な事業の分類を議論してきたもので、欧州委員会は専門家グループの議論など幅広い意見を聴いた上で2020年、分類のための技術基準を公表した。検討においてはガス火力の扱いが焦点となり、欧州委員会が公表した基準ではCCSを実施しないガス火力は持続可能な事業とは認められないという厳しい排出基準を採用した。その後、中東欧諸国から一定の条件でガス火力をタクソノミー基準に含めるべきとの意見が出され、欧州議会でも多くの議員から同様の意見が出されていた。今回の記事によると、「系統運用の安定化」あるいは「石炭火力を代替する」ガス火力は年間2,000時間以内の運転であることを条件に「移行のための技術」としてタクソノミー基準に含めることが検討されていると見られる。欧州委員会はこれまでガス火力の扱いについて、2050年のカーボンニュートラル達成のためガス火力を排除する方針を示す一方で、石炭火力を代替する場合は排出削減に有効であり、さらに水素利用でもガスインフラの活用が有効とするなど、相反する意見を述べてきた。今回の検討案についてオーストリア、デンマーク、アイルランド、ルクセンブルク、スペインは共同で書簡を提出して懸念を表明し、化石燃料をタクソノミーに含めるべきではないと訴えた。
2021.03.11
米国:EPA長官に前NC州環境品質局長のマイケル・リーガン氏が就任
2021年3月11日、第16代環境保護局(EPA)長官に、前ノースカロライナ州環境品質局長のマイケル・リーガン氏が就任した。リーガン長官は重要課題として、発電所の新しいCO2排出規則の制定、自動車と小型トラックの排ガス規制の強化、および石油とガス部門からのメタン排出規制などを挙げている。これは、トランプ政権下でEPAが策定した、火力発電所のCO2排出量に関する規則「アフォーダブル・クリーン・エネルギー(ACE)」が、2021年1月に連邦裁判所から無効と判断されたことを受けたものである。同氏は就任にあたり、「EPAの職員と緊密に協力し、科学と透明性の確保、気候変動への対処、環境正義を優先することを約束する。私たちは、環境保護と経済的繁栄が両立することを証明し、すべての人々にとってより健全で公正な未来をつくる」と述べた。
2021.03.10
中国:政府、国連会議で途上国の未電化地域の解消に協力を表明
中国国家能源局はこのほど、章建華局長が2021年3月10日に参加した国連エネルギー・ハイレベル対話会議(オンライン)で、中国が世界的なエネルギーアクセスの普及(未電化地域の解消)において、自国での経験を踏まえて貢献する用意がある旨のスピーチを行ったと明らかにした。国連エネルギー・ハイレベル対話は、エネルギーアクセス、エネルギー転換など5つのテーマを取り扱うが、今回、エネルギーアクセス分野のグローバルリーダーとして参加した中国を代表して章局長は、政府が実施した貧困対策としての太陽光発電の導入促進政策の経験を紹介し、国連の持続可能な開発におけるエネルギー関連目標の実現の呼びかけに積極的に協力する姿勢を明らかにした。この他、政府が積極的なイニシアティブと行動で他国と協力し、共通の繁栄、開放性、包摂性、クリーンで美しい世界の構築に努力する方針も示した。
2021.03.09
アラブ首長国連邦:バラカ2号機、運転許可が発給され燃料装荷を開始
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力規制庁(FANR)は2021年3月9日、バラカ原子力発電所2号機の運転許可を原子力公社(ENEC)の子会社Nawah Energy Company(Nawah)に発給した。Nawahは、同発電所(韓国製APR1400、140万kW×4基)の運転・保守を担い、許可の有効期間は60年とされる。これを受けて同社は2021年3月15日、2号機への燃料装荷を開始したと発表した。Nawahは241体の燃料装荷完了後、一連の試験を経て起動し、約1年後の商業運転開始に向けて徐々に出力を上げながら試運転を行う計画である。先行する1号機は2020年12月に定格出力100%に達するなど試運転の最終段階にあり、2021年第1四半期の商業運転開始が見込まれる。残る2基の建設進捗率は、3号機94%、4号機88%となっている。
2021.03.09
英国:政府、次世代グリーンエネルギー技術の開発推進に資金を拠出
英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は2021年3月9日、グリーン技術の開発推進を目的として9,000万ポンド(約135億円)の資金を拠出すると発表した。このうち6,800万ポンドはエネルギー貯蔵技術に、2,000万ポンドは浮体式洋上風力に、400万ポンドはバイオマス燃料の生産・製造に充てられる。今回の資金は、ジョンソン首相が2020年11月に発表した「10ポイント計画」の一環として2021年3月3日に示された、10億ポンドにのぼる「ネット・ゼロ・イノベーション・ポートフォリオ」から調達される。
2021.03.08
米国:米国大手電力会社ら、2035年までのネット・ゼロ目標に対して懐疑的
2021年3月8日付の業界紙は、大手電力会社が2035年までのCO2排出ゼロ目標達成に対して懐疑的であると報じた。エクセル・エナジー社は、「80%削減までは現状技術で達成可能である。しかし、残り20%については、負荷変動対応可能なガス火力が必要である」としている。デューク・エナジー社は、「バイデン政権の目標達成に向けた電源開発に不安がある」とした。また同社は、「新型原子炉、長時間蓄電池、水素の技術開発を行っている。地域や顧客にとっては、安定供給が重要であるということを踏まえて、電源開発を行う必要がある」とコメントしている。アメリカン・エレクトリック・パワー社は2021年2月25日に、「2030年までに80%削減、2050年までにゼロ排出」と従来の目標を上方修正したが、「現状ではゼロ排出を達成するための技術はないため、政権の目指す2035年目標の達成は難しい」としている。
2021.03.05
中国:全人代が開幕、2021年GDP成長を6%以上とし環境改善を重視
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が2021年3月5日、北京で開幕した。今回の全人代では、政府から、マクロ政策の継続性、安定性、持続可能性を保ちつつ経済が合理的範囲内で動くことを重点政策とし、2021年のGDP成長率について6%以上を目標とする政府活動報告書が審議に向けて提出された。この報告書においてエネルギー分野では、単位GDPあたりエネルギー消費の3%前後削減を明示するとともに、石炭のクリーンな高効率利用推進、新エネルギー開発への注力、安全確保を前提とした秩序をもった積極的な原子力開発などが政策の柱として盛り込まれた。加えて、気候変動対策については温室効果ガス排出権取引などの市場構築を急ぎ、2030年のカーボンピークアウトに向けた行動計画を策定する内容も示された。
2021.03.05
ドイツ:連邦政府、原子力発電所の段階的廃止の補償額で電力4社と合意
ドイツ連邦政府は2021年3月5日、第13次原子力法改正(2011年8月)に規定された原子力発電所を2022年末までに段階的に廃止することで生じる損害について、電気事業者4社(RWE、E.ON、EnBW、Vattenfall)に総額で凡そ24億ユーロ(約3,100億円)を補償することに合意したと発表した。この合意により4社が政府に対して起こしている訴訟は、Vattenfallによる国際仲裁裁判所への提訴を含め、すべて取り下げられる。補償額は稼働中の原子力発電所を2022年末までに停止することで4社が失う稼働寿命に至るまでの販売電力量と、2011年8月までに4社が行った稼働寿命延長のための投資額が算定されており、RWEは8億8,000万ユーロ、E.ONは4,250万ユーロ、EnBWは8,000万ユーロ、Vattenfallは14億2,500万ユーロを受け取る。連邦政府は2018年、電気事業者からの提訴に係る2016年12月の連邦憲法裁判所判決に従い、原子力法改正案を策定して最大で10億ユーロ(1,290億円、1ユーロ:129円)を補償するとしていたが、同裁判所は2020年9月に同法案の補償内容が不十分であるとして連邦政府に改訂を求めていた。
2021.03.02
韓国:環境部が「2021年版カーボンニュートラル移行計画」を発表
環境部(日本の環境省に相当)は2021年3月2日、「2021年版カーボンニュートラル移行計画」を発表した。この計画は、2020年10月に文大統領が打ち出した「2050年までのカーボンニュートラル」の実現に向けた方向性と今後のスケジュールを内容としている。今回の計画では、エネルギー転換、未来型車両、炭素中立型建築物、循環型経済への転換などを課題として対応を図ることとしており、2021年上半期にカーボンニュートラル達成に向けたシナリオ案を提示した後、関係省庁と共同で部門別の主要戦略を纏めた「2050カーボンニュートラル推進戦略」を策定する方針が示されている。また、2021年度下半期には、輸送や循環型経済に関しては、個別にロードマップを策定することが求められている。また、具体的施策例として、電力分野では2030年までに全土のダム19カ所において水上太陽光設備合計210万kWを設置することが示されている。
2021.03.02
英国:CCS開発事業会社に三井物産が出資
三井物産は2021年3月2日、英国でCCS開発事業者Storegga Geotechnologies Limitedに出資することを発表した。同社は子会社を通じて英国および周辺諸国から排出されるCO2の回収、輸送、貯蔵を行うAcornプロジェクトを検討しており、三井物産は15.4%の株式を取得する。Acornプロジェクトは北海沖合で生産が減退した油田やガス田を利用し、既存のパイプラインを転用することでコスト競争力を実現する計画である。Storeggaのクーパー CEOは、Acorn事業の最終投資判断を2022年に行い、CO2の貯留を2024~2025年に開始する計画であると話す。三井物産とStoreggaはAcorn事業以外にも、欧州やアジア太平洋地域におけるCCS開発事業で協力することを確認した。
2021.03.02
米国:テキサス州の電力小売事業者、寒波による需給ひっ迫で経営破たん
2021年3月2日付の業界紙によれば、テキサス州最大の電力協同組合であるBrazos Electric Power Cooperativeは、連邦破産法11条(日本の民事再生手続に相当)の適用申請を行った。2021年2月中旬の大寒波時に電力需給がひっ迫した際、電気料金が一時的に急騰し、テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)から18億ドルの支払いを数日以内に行うよう求められていた。同組合は電力供給を継続しつつ、裁判所の監督下で経営再建を行う。寒波前の同組合の信用格付は「安定(A~A+)」であった。
2021.03.02
米国:民主党下院、2050年までのCO2排出量実質ゼロ法案を発表
連邦下院議会エネルギー商業委員会のフランク・パローン委員長(民主党、ニュージャージー州)らは2021年3月2日、2050年までにCO2排出量実質ゼロを達成することを目指す気候法案(CLEAN Future Act)を発表した。981ページに及ぶ法案は2020年の同名法案の改訂版で、バイデン大統領の公約「Build Back Better」の一環でもある。同法案は、連邦のクリーン電力基準(CES、2030年までにクリーン電力80%、2035年までに同100%)の導入を求めている。またCESを達成するため、電力会社のクレジット制度(排出削減量認証制度)を創設する。電力会社は、2030年までに発電設備からの年間炭素排出量が0.82 CO2換算t/MWh以下となれば、部分的なクレジットを得ることができるが、その閾値は2035年までに0.4 CO2換算t/MWhまで低下する。このため法案が成立すると、天然ガス火力は2030年代半ばまでに炭素回収・隔離技術を導入しなければ、部分的なクレジットを取得できないことになる。
2021.02.26
ドイツ:政府が3度目となる洋上風力入札を実施
連邦系統規制庁(BNetzA)は2021年2月26日、通算3度目となる洋上風力の入札を行うと発表した。2026年までにバルト海と北海内の3つのエリアにおいて建設完了予定の洋上風力発電所が入札の対象となる。募集容量はバルト海エリアで30万kW、北海エリアで65万8,000kWとしている。入札の選定では入札額や系統接続に加え、海洋環境や土壌、風況・海洋条件が考慮される。3つのうち2つのエリアでは、元より洋上風力プロジェクトを計画していた企業に入札への参加権が与えられる。入札の申込期限は2021年9月1日である。
2021.02.26
フランス:Engie、7月までに顧客サービス事業の分社を目指す
2021年2月26日付の業界誌は、2020年より検討が進むエネルギー大手Engieの組織再編の現況について報じた。同社は戦略的レビューの結果に基づき、同社顧客ソリューション部門の3分の2を占める事業を分社する計画を有する。空調・電気設備関連工事、建物改修、ファシリテーションマネージメント等を担う分社予定の事業体(仮称「Bright」)の売上高は、グループ全体の20%超に相当する120億~130億ユーロ(約1兆5,000億~1兆6,250億円)、営業利益は3億5,000万~4億5,000万ユーロ(約440億~560億円)に上り、競合のVinci Energies、Spie、Eiffage Energie Systèmes等に匹敵する規模となる。同事業体には約7万4,000人の従業員が所属し、うち2万7,000人がフランス国内で従事する。新経営陣はBrightを顧客サービスに特化した企業として、重点市場の欧州(フランス、ベルギー、オランダ、英国等)に加え、今後は北米市場の強化も目論む。同社によれば、同年7月1日までの同事業体の分社化、そして翌年の売却完了を目指し現在、従業員説明が進められている。また、原子力部門も別事業体に移される見通しであり、この結果、Engieグループは再エネ部門、(Bright分社後の)顧客ソリューション部門、ネットワーク部門、火力・小売部門の4つのコア部門に再編されることとなる。今回の再編に対し、EDFの組織再編にも反対の姿勢を示す労働組合CGTは、この取り組みを同社の「解体」であるとして断固拒否の姿勢を示すとともに、競合他社に比べて極端に低い利益率から、仮に分社となる場合には債務の配分が懸念事項であると主張する一方、他の労働組合は今回の再編について支持を表明している。
2021.02.25
米国:元ミシガン州知事グランホルム氏、エネルギー省長官に就任
元ミシガン州知事のジェニファー・グランホルム氏は2021年2月25日、上院での人事承認後、第16代エネルギー省(DOE)長官に就任した。DOE長官の女性の就任は2人目。同氏は就任にあたり「私は米国の気候危機に対処するために、全米で高賃金のクリーンエネルギー雇用を創出してゆく」とツイートした。また、地元報道機関とのインタビューでは「クリーンエネルギーを牽引しているのは政治ではなく、市場である。世界中の企業や国は、気候変動問題の顕在化に危機感を抱いている。DOEは問題解決の場であり、所管の国立研究所は化石燃料の脱炭素化に取り組んでいる」と述べた。エジソン電気協会(EEI)は、「グランホルム氏、DOE、バイデン政権とともに、クリーンエネルギーへの移行や送電網の安全保障を含む様々な重要課題について取り組むことを楽しみにしている」との声明を出した。
2021.02.24
米国:エクセロン社、原子力等の競争事業を分離する計画を発表
米国の大手電力エクセロン社は2021年2月24日、競争市場にある発電事業等を分離して新会社を設立し、規制下にある送配電事業を同社に残す形で、同社を分割する計画を発表した。実現時には、3,100万kW以上の原子力や再エネ電源等を有する米国最大級のクリーンエネルギー会社と、1,000万人以上の顧客を有する米国最大の送配電会社が誕生することになる。関係当局の承認を条件に、2022年第1四半期に実行することを目指す。分割にあたりエクセロン社は、分離する発電事業等の新会社の株式を保有せずにエクセロン社の既存株主に比例で配分する。その結果、分割される2社は資本関係がなく独立した会社となる。エネルギー情報誌によれば、投資家は競争事業と規制事業の両方から収益を得る会社よりも、競争事業または規制事業だけのシンプルな会社を求めているという。同社も本分割の狙いについて、こうした投資家ニーズに対応するとともに、各事業が独立して顧客ニーズに対応することで株主価値がさらに向上すると説明している。
2021.02.23
中国:政府、公共施設でのエネルギーなど資源消費を削減する基準を導入
中国政府は2021年2月23日、政府機関、学校、病院などの公共施設におけるエネルギーを含む資源の年間消費量を前年比2~4%削減する基準の導入を発表した。今回の発表は、公共施設の建築面積、職員人数を単位としたエネルギー(電気、ガス)、水道など各種資源に関する消費基準(前年度消費水準の2~4%減)を設定するという内容で、2021年2月1日からの実施となっている。職員一人当たりの水、電力消費、建築面積単位での電力消費についての2019年の数値は、2010年比でそれぞれ10.76%、14.04%、24.82%が削減されている。
2021.02.23
フランス:ASN、90万kW級原子炉の50年運転を認める決定を発表
フランス原子力安全局ASNは2021年2月23日、運転開始から40年を迎える90万kW級原子炉について、電力会社EDFが計画している安全性向上策とASNが要求する追加措置の実施を条件に50年運転を認める決定を発表した。EDFは安全性向上策として、火災、洪水等のハザードに対するリスク管理、炉心溶融の事故対策、使用済燃料貯蔵プールの事故対策等を計画している。対象は、いずれも1978~1987年に商業運転開始した原子炉で、ビュジェイ2~5号機、ブレイエ1~4号機、シノンB1~B4号機、サンローランB1~B2号機、グラブリーヌ1~6号機、クリュアス1~4号機、トリカスタン1~4号機、ダンピエール1~4号機の合計32基である。同国では規制による運転年数制限は特に設けられておらず、10年ごとに実施される各原子炉の定期安全レビュー(PSR)において合格した場合に、その後の10年間の運転許可が付与される形となっている。PSRは2段階で行われ、まず原子炉共通事項がレビューされ(全般的評価フェーズ)、その後、個別原子炉ごとにレビューされる。ASNは、90万kW級原子炉では4回目のPSRを迎え、設計寿命の40年を超えることになるため、これまでの10年検査とは別に技術的な調査、検討を加えてレビューするとしていた。今回の決定により90万kW級原子炉の全般的評価フェーズが完了し、今後、順次個別レビューが行われ、2031年までにはすべてのPSRが完了する予定である。
2021.02.22
中国:一次利用済リチウム電池が20万tを超え、再利用が大きな課題
現地専門紙は2021年2月22日、中国において電気自動車などで利用された一次利用済のリチウム電池が2020年末で累計20万tを超え、二次利用に向けた課題解決が無視できない状況にあると報じた。二次利用する場合、電池の生産年および規格がバラバラであるため、品質面からその再利用の用途は限定的となる。また、リサイクルは技術開発、処理費用が膨大であるため、事業に参加する有力企業は少ないとみられている。中国自動車動力電池産業創新連盟の統計によると、2020年の動力用電池の販売量は6億5,900万kWhで、今後さらに増加する見込みであるとしており、2025年には一次利用済蓄電池の累計は73万tに達すると予測されている。
2021.02.20
中国:大手石油、今後5年間で水素ステーション1,000カ所を新設へ
現地専門紙は2021年2月20日、国有石油大手の中国石化集団公司(シノペック)が水素ステーションの全国展開を図る方針であると報じた。それによるとシノペックは、現行中期計画である第14次5カ年計画期間(2021~2025年)中に、中国全土で1,000カ所の水素ステーションを新設する計画である。同社は中国最大の水素生産企業であり、その年間生産規模は350万tに達している。2020年末現在、同社傘下の水素ステーションは広東省、上海市、浙江省、広西チワン族自治区などの27カ所で運用されているが、今後は既存のガソリンスタンドにおける併設などを含めて積極的展開を図ることとしている。
2021.02.19
メキシコ:メキシコ大統領、国民に節電をよびかける
エネルギー情報サイトは2021年2月19日、メキシコのロペス・オブラドール大統領が国民に向けて節電を呼びかけたことを報じた。寒波による米国南部での停電により、米国から天然ガスの輸入量が減っているため、メキシコ国内でも停電が発生している。同大統領は「午後6時~11時の時間帯に電力消費量を削減することで、大きな助けになる。メキシコ国内での停電は解消に向かっているが、あらゆることに備える必要がある」と呼びかけた。メキシコ政府は米国・テキサス州経由での天然ガスの供給を継続できるよう、外交ルートを通じて交渉しているとした。メキシコの電力系統運用者CENACEによると、メキシコ国内では2月15日に最大23州で計画停電を実施し、2月16日には12州での実施と段階的に解消したものの、テキサス州と国境を接する北部地域のチワワ、コアウイラ、ヌエボ・レオン、タマウリパスの4州・54万軒では3日間停電が続いたとのことである。同地域には組立工場が多く立地する保税輸出加工区(マキラドーラ)があり、同地域輸出産業評議会(INDEX)によると、電力不足によって2,600余りの工場や企業が操業停止となり、経済損失は27億ドルに及ぶとしている。さらに輪番停電のあった中央部のグアナファト州には、欧米や日本の自動車メーカーも多く進出しており、GMやフォルクスワーゲンなどは2月16~17日は生産を中止し、18~19日も一部生産を取りやめたと報じられている。
2021.02.17
米国:ニューヨーク州公益事業委員会、5億ドル超の送電線建設を承認
2021年2月17日付の業界紙によれば、ニューヨーク州公益事業委員会は、新たな送電線建設プロジェクト(New York Energy Solution Project)を承認した。送電線の長さ54.5マイル(約88km・同州東部のレンセリア郡から南東部のダッチェス郡までを南北に結ぶ)、電圧345kV、工事費5億3,000万ドルである。同州のアンドリュー・クオモ知事は2021年1月に、同州北部に立地する再エネ電源やカナダの水力からの電力を、南部の大消費地であるニューヨーク市に送電することを目的とした「グリーンエナジー・トランスミッション・スーパーハイウェイ構想」を発表しており、今回のプロジェクトはその一環である。なお、同プロジェクトの開発事業者はNew York Transco社であり、ナショナル・グリッド・ベンチャーズ社が共同所有者となる。
2021.02.16
スペイン:Iberdrolaが大規模浮体式洋上風力のための補助をEUに申請
エネルギー情報誌は2021年2月16日、スペインの大手エネルギー事業者Iberdrolaが大規模な浮体式洋上風力発電検討のための補助金をEUに申請したと報じた。報道によると、EUの新型コロナ復興支援基金からの補助を申請したもので、支援が得られれば10億ユーロ(約1,260億円)の投資を行い、30万kW級の事業の検討を年内に始め、2026年に運転を開始する計画である。事業場所は特定されていないが、スペイン国内で3地点が候補となっている。事業目的はスペイン国内で浮体式洋上風力発電のサプライチェーンを整備し、雇用拡大、産業育成につなげることで、スペイン政府のコロナ復興計画とも連携している。同社は浮体式洋上風力に加えて電化事業、持続可能なモービリティ、グリーン水素、スマートグリッドなど150の事業でEUの補助金申請を行っており、これらの事業の総額は210億ユーロ(約2兆6,000億円)となる。2020年11月には、2025年までに750億ユーロ(約11兆2,500億円)を再生可能エネルギーや電力系統事業に投資することを発表している。
2021.02.15
米国:サウステキサス1号機、寒波で緊急停止しその後に復帰
記録的な寒波となったテキサス州にあるサウステキサス原子力発電所1号機(PWR、131万kW)は2021年2月15日早朝、寒さに起因する機械的トラブルにより緊急停止した。同機はその後、同月17日朝に送電を再開し、同月18日にはフル出力運転に復帰している。機械的トラブルの詳細は明らかになっていないものの、主給水ポンプ2台が停止したため、蒸気発生器水位が低下し、緊急停止したと発表されている。なお、同州内のその他のサウステキサス2号機(PWR)、コマンチェピーク1、2号機(PWR)は、今回の寒波期間中もフル出力運転を継続している。
2021.02.12
ポルトガル・イタリア:EDP、イタリアの太陽光関連企業を買収
ポルトガルの大手エネルギー会社EDPは2021年2月12日、子会社EDP Comercialが太陽光発電による自家消費ソリューションを提供するイタリアのEnertelを買収したと発表した。買収額は非公表。Enertelは2018年以降、主に中小企業を対象に350件、合計1万4,000kWの分散型太陽光発電プロジェクトを手掛け、2020年の売上高として900万ユーロ(約11億円)を計上している。EDP Comercialは2019年にイタリアのエネルギー供給事業に参入しており、今回の買収はイタリア国内におけるプレゼンスの向上につながるとし、同社のVera Pinto Pereira CEOは「当社は単なるエネルギー供給事業者ではなく、国際市場のエネルギー転換におけるメジャーな事業者となることを目指しており、今回の買収はこの戦略に沿う」とコメントしている。
2021.02.12
米国:EEI、2035年電力部門カーボンニュートラル達成は困難と発言
2021年2月12日付のエネルギー専門誌によると、私営電気事業者の業界組織であるエジソン電気協会(EEI)の専務理事トーマス・キューン氏は、同協会が主催した会議の中で、「バイデン大統領が目標として掲げている、2035年までに電力部門でカーボンニュートラルを達成することは極めて困難である」と述べた。同協会は2020年にCarbon-free Technology Initiativeを立上げており、大深度超高温地熱発電、CCS、先進型原子炉、および水素・アンモニアのようなカーボンフリー燃料等の技術開発を模索している。また、同協会の会員企業は、再エネを取り込むためのインフラ整備等に2010年から1兆ドル以上投資してきたが、送電網の拡充が重要であることから、今後も積極的に投資していくとの見解を示すなど、CO2排出削減に取り組んでいる。
2021.02.11
シンガポール:政府、「グリーンプラン2030」を公表
2021年2月11日付報道によると、シンガポール政府は2月10日、環境省、通商産業省などが共同策定した今後10年間の環境政策の指針である「グリーンプラン2030」を公表した。この中で、電力部門での取り組みとして2025年までに太陽光発電の開発量を現在の4倍にすること、よりクリーンな電力の輸入により電力供給をグリーン化すること、また2030年までに6万カ所の充電ステーションを設置し、同年以降の新車登録をすべて環境対応型とすることなどが打ち出されている。
2021.02.11
オランダ:Shell、ネット・ゼロ目標達成に向けた新戦略を発表
石油大手Royal Dutch Shellは2021年2月11日、同社の2050年ネット・ゼロ目標達成に向けた新たな戦略を発表した。同戦略ではまず、年間CAPEX(設備投資額)を190億~220億ドル程度で維持すること(2020年の年間CAPEXは約180億ドル)、純有利子負債を650億ドルへ減らすこと(2020年末時点で約750億ドル)など、適切な資本の投下により財務面でのレジリエンス強化と利益拡大を進めるという財務目標を掲げたている。そのうえで、ネット・ゼロ目標達成に向けたアプローチとして、CO2排出原単位を2023年までに2016年比6~8%、2030年までに同20%、2035年までに同45%、2050年までに同100%削減すること、年間CO2排出量および石油生産量のピークをそれぞれ2018年、2019年として、今後それ以上のCO2排出および石油生産を行わないこと、2035年までに年間の炭素回収・貯留量2,500万t相当のCCSプロジェクトを開発することなどを掲げた明らかにしている。また、同社はこのアプローチに基づくエネルギー転換を進めるに当たって、「成長分野」、「転換分野」、「上流分野」という3つの分野を設定し、これらの分野での細かな目標設定およびそれに向けた具体的取り組みが柱になるとしている。「成長分野」では、年間の販売電力量を2030年までに2倍にすること、EV充電設備の設置基数を2025年までに50万基とすること、低炭素燃料(水素、バイオ燃料等)の開発・生産事業を拡大することなどを掲げ、年間50億~60億ドルを投じるとしている。「転換分野」、「上流分野」ではそれぞれ80億~90億ドルを投じて、カーボンニュートラルLNG(CO2クレジットの調達によりCO2排出量を相殺したLNG)を提供すること、石油生産量を年1~2%ずつ減少させることなど、脱炭素化に向けた既存事業の転換・縮小を進めるとしている。
2021.02.11
欧州:HyDeal Ambition、2030年に6,700万kWの水電解装置設置を計画
2021年2月11日付のプレスリリースによると、欧州内のエネルギー関連企業30社が共同でHyDeal Ambitionを立ち上げ、2030年までにkg当たり1.5ユーロ(約190円、輸送および貯蔵コストを含む)のグリーン水素を欧州内に供給することを目指す計画を明らかにした。目標価格は、化石燃料由来の水素「グレー水素」の現在価格に匹敵し、事業規模目標は太陽光発電設備9,500万kWおよび電解装置6,700万kWとされている。輸送にはガス導管および貯蔵網が利用され、年間360万tと、スペインの石油消費量2カ月分に相当する量が供給される。参加企業は、グリーン水素のバリューチェーン全体に渡っており、太陽光発電開発事業者のDhamma Energy(スペイン)・Falck Renewables(イタリア)・Qair(フランス)、電解装置の技術提供企業McPhy EnergyおよびVINCI Construction(ともにフランス)、その他スペイン、ドイツ、イタリア、フランスのガス導管事業者、金融機関、インフラ投資ファンド等である。EUでは2020年7月に水素戦略を発表し、2030年迄にグリーン水素用の電解装置4,000万kW以上の導入、年間最大1,000万tの生産を目標としている。
2021.02.10
ドイツ:連邦経済エネルギー相、再エネ賦課金廃止の方向性について発言
2021年2月10日付のエネルギー情報誌によると、アルトマイヤー連邦経済エネルギー相は再エネ賦課金を2022年に廃止し、連邦予算で負担する方向で検討していることを取材に対し明らかにした。同国の再エネ法(EEG)は2000年に施行され、以来、同法に基づき再エネ開発の資金援助のため再エネ賦課金(EEG賦課金)が電気料金の一部として回収されてきた。再エネ導入拡大とともにEEG賦課金は年々上昇し、ドイツの電気料金上昇の主要因となっている。2021年1月1日から施行された改正再エネ法(EEG2021)では、消費者負担軽減のため、連邦予算からの資金投入により2027年までにかけてEEG賦課金を段階的に廃止していくことを示唆しているが(2021年は6.5ユーロセント/kWh(約8.1円/kWh)、2022年は6ユーロセント/kWh(約7.5円/kWh)に上限設定)、現在の政府の検討はこの廃止時期を大幅に早めるものである。
2021.02.10
米国:バイデン大統領、DOE副長官にデイビッド・ターク氏を指名
バイデン大統領は2021年2月10日、エネルギー省(DOE)副長官に国際エネルギー機関(IEA)副事務局長を務めるデイビッド・ターク氏を指名した。ホワイトハウスは声明で、「ターク氏は世界中の国々のクリーンエネルギーへの移行を支援してきた。また、デジタル化、エネルギー、水素、および幅広いクリーンエネルギーの技術進歩に関する分析を指導してきた」と述べた。同氏は、オバマ政権下のDOEにおいて、技術とクリーンエネルギーに関する国際調整に携わり、世界的なクリーンエネルギー技術の採用を促進するための取り組み(ミッション・イノベーション)の立ち上げを主導した。また、国家安全保障会議(NSC)では、大統領特別補佐官およびシニア・ディレクターを務め、NSCの意思決定における立法上の助言を行ったほか、国務省では気候変動問題担当の特使代理を務めた経験をもつ。同氏は今後、上院での人事承認を経て正式に任命される。
2021.02.05
英国:2021年度上半期の価格規制上限引き上げへ
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2021年2月5日、ガス・電気の標準料金(SVT)およびプリペイメントメーター用料金(PPM)に適用中の価格上限規制の上限を引き上げると発表した。対象は2021年4月からの6カ月間で、標準的な家庭のガス・電気使用量で年間当たりの料金上限はSVTが1,138ポンド(現適用期間比96ポンドの引き上げ)、PPMは1,156ポンド(同87ポンドの引き上げ)に設定される(1ポンド=約145円)。これにより、上限価格は新型コロナ禍以前の水準に戻ることとなる。OFGEMは上限引き上げの要因として、ガス・電力の卸価格が2020年上半期から回復したことと、新型コロナ禍で小売各社に発生した負債の「回収枠」(今回の引き上げ額のうち約24ポンドを占める)を新たに設けたことを挙げている。負債の回収枠の設置は、雇用率の悪化などにより料金滞納が増加したことが背景にある。OFGEMは、経済回復を待つなど負債回収を遅らせるよりも、ガス・電力需要が減り需要家の支払額が比較的低くなる夏季にあわせて早めに回収枠を設け、回収額を均す判断を採ったと説明している。
2021.02.03
米国:DOE長官候補、既存原子炉の維持と先進型原子炉への支援を明言
2021年2月3日付報道によると、グランホルム米国エネルギー省(DOE)長官候補は、炭素削減目標達成のため、既存原子炉の維持、先進型原子炉の設置および原子力の電力以外への利用拡大に関する支援を継続すると言明した。同日上院エネルギー・天然資源委員会が賛成多数で同氏をDOE長官候補として上院本会議に上程したのに先立って、同委員会へ提出した書面回答の中で述べた。原子力は温暖化ガスを排出しないベースロード電力を競争的な価格で提供する重要な資源であり、DOE長官就任後は米国製先進型原子炉の開発、実証および輸出を支援し、ならびに多目的試験炉(VTR)プロジェクトが確実に成功できるよう議会やDOEと密接に協力するとしている。なお、上院本会議での同候補の指名投票スケジュールは明らかにされていない。
2021.02.03
米国:EIA、2021年エネルギー年次見通しAEO2021を発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年2月3日、2021年エネルギー年次見通し(AEO2021)を公表した。現在の政策をベースとして、経済モデルに基づいた政策中立的な分析を行い、2050年までの米国の長期エネルギー動向を記載したものである。電力需要に関する標準ケースでは、新型コロナにより減少した需要が、コロナ前の2019年レベルに戻るのは2025年になると予測した。電源構成については、2030年までの10年間で、再エネが2億1,300万kW、GTCCが6,000万kW追加され、石炭が1億kW廃止になるとした。また、発電電力量については、現在最大シェアを占める天然ガスが2020年40%から2050年36%にまで低下する一方で、再エネは同21%から同42%と2倍に増加し、2030年断面で天然ガスを追い抜き最大シェアになるとした。原子力と石炭火力の廃止トレンドは2020年代中頃まで継続する一方、経済性があるユニットが運転を継続するとして、それぞれ11%のシェアになるとの見通しを示した。
2021.02.02
ポーランド:国家エネルギー戦略PEP2040を承認
ポーランド気候省は2021年2月2日、「国家エネルギー戦略」(PEP2040:Poland Energy Policy 2040)が閣議決定によって承認されたことを明らかにした。PEP2040では発電電力量に占める石炭火力の割合を2020年現在の72%から2030年までに56%までに低減し、2040年には電源構成の約5割をゼロエミッション電源とする方向性を示している。こうした目標を実現するために、EUからの支援を含めて2040年までに約1兆6,000億ズロチ(約45兆円)の支出を予定しており、最大の投資分野は燃料・エネルギー部門(約25兆円)である。その中でも発電分野の8割(約8兆円)はゼロエミッション電源の再エネと原子力ヘの割り当てとなる。しかし、国内炭をエネルギー安全保障の基盤とする政党(Polska Partia Pracy – Sierpień 80)は急激なエネルギー転換はロシアからの天然ガス輸入量の増加、また電力輸入の増加につながるとして危機感を露わにしている。さらに、石炭労働組合は現在、政府と2049年までの段階的な炭鉱閉鎖に向けて協議中であり、合意形成前の同戦略発表を不安視していると報じられている。
2021.02.02
中国:国産第3世代炉「華龍1号」の福清5号機、商業運転を開始
中国核工業集団公司(CNNC)は2021年2月2日、試運転中の福清原子力発電所(福建省)の5号機(PWR、100万kW)が1月30日より正式に運開したと発表した。5号機はCNNCと中国広核集団公司(CGN)の技術を融合し、中国がその知的財産権を保有する「華龍1号」型原子炉の初号機である。同ユニットは第3世代炉と称され、安全系は動的と静的両方のシステムが組み合わせられており、格納容器は二重構造などといった特徴を持つ。同国は福清5号のほか国内外で同炉型9基を建設中であり、福清5号機は初号機として2015年5月に着工し、2020年9月に燃料装荷した後、試運転を慎重に進めてきたものと見られている。
2021.01.29
ドイツ:11事業者がE.ONとRWEの資産交換に対して2度目の訴訟を提起
フランクフルトのエネルギー供給事業者Mainovaや再エネ事業者Naturstrom、シュタットベルケLeipzig等11の事業者は2021年1月29日、欧州委員会によるE.ONとRWEの資産交換取引の承認に対して取り消しを求め欧州司法裁判所に訴訟を提起した。E.ONとRWEは資産交換により、前者は配電・小売、後者は発電事業へと棲み分けを行った。欧州委員会は当該取引について2019年に承認しているが、原告側はこれを市場の競争環境を歪めるものと主張している。原告の11事業者は既に2020年5月、RWEの事業取得分を争点として訴訟を提起しており、今回の訴訟ではE.ONの事業取得分を主な争点として取り上げている。
2021.01.28
中国:政府系研究所、2050年の非化石エネ比率が8割近くに達すると予測
国家発展改革委員会(NDRC)能源研究所は2021年1月28日、デンマーク・エネルギー庁と共同で「中国再生可能エネルギー展望報告書」を発表した。それによると、中国における非化石エネルギー利用の割合は今後急速に拡大し、2025年までに25%、2030年で34%に達し、2050年には78%までに増加すると予測している。同報告書では、これに伴い2050年における石炭消費量は2019年比で90%減少し、CO2排出量も同76%削減されるという見通しを立てている。
2021.01.27
米国:バイデン大統領、気候変動に対処するための大統領令に署名
バイデン大統領は2021年1月27日、国内外での気候危機への取り組みに関する大統領令「Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad」に署名した。気候変動を国家安全保障上の問題として捉え、温室効果ガス排出を削減し、クリーンエネルギーに移行するため、主要政府機関に対し多岐にわたる取り組みを指示した。国家気候変動担当大統領補佐官は2035年までの電力部門における脱炭素化、政府所有車両の電動化の実現に向け、政府調達権限を活用し、投資促進・雇用創出につながる計画を策定する。内務長官は、連邦所有地・水域における石油・ガス開発の新規リースの一時停止、許可手続きの見直しを行う。また2030年までに同所有地・水域で、洋上風力発電を倍増させる方法や、野生生物保護に向け同地域の30%保全策を検討する。行政管理予算局長は、化石燃料への政府補助金を2022会計年度以降の予算要求から廃止する。一方で、石炭産業および発電所の地域社会と経済活性化に関する省庁間作業部会を設置し、立地地域への支援策も検討する。
2021.01.27
フランス:RTEとIEA、2050年の再エネ比率大幅拡大は可能と報告
送電事業者RTEと国際エネルギー機関(IEA)は2021年1月27日、2050年の電源構成における再エネ比率に関する報告書を発表した。同報告書では、2050年カーボンニュートラル達成のために、変動型の再エネの発電比率が大幅に拡大することについて、「4つの条件が同時かつ厳格に満たされれば、技術的に実現可能」と結論付けられた。4つの条件とは、(1)需要抑制、ピーク時対応電源、電力貯蔵といった柔軟性向上による電力供給の安定、(2)再エネの変動性に耐えうる安定的な電力システム、(3)確保すべき供給予備力水準の見直しおよび再エネ発電量の予測技術の向上、(4)電力系統の開発強化、となっている。なお、RTEは2019年より、2050年までの長期需給見通しを作成中であり、同報告書発表の同日に、8つの電源構成シナリオに関するパブコメを開始した。見通しの確定版は2021年秋に発表予定である。
2021.01.27
スペイン:太陽光・風力発電の入札を実施
2021年1月27日付の現地報道によれば、スペイン政府は2017年以来となる再エネ入札の結果を発表した。環境移行省が実施した今回の入札では、300万kWの募集に対し84社が応札し、そのうち32社、合計容量303万4,000kW(太陽光203万6,000kW、風力99万8,000kW)のプロジェクトが落札された。平均落札額は、太陽光が24.47ユーロ/MWh(約3.1円/kWh)、風力が25.31ユーロ/MWh(約3.2円/kWh)となっている(契約期間はいずれも12年)。今回の入札は、同国初となるペイ・アズ・ビッド(Pay-as-bid)方式が採用されるとともに、太陽光と風力の最低設備容量をいずれも100万kWとし、残る容量分の電源種別を特定しないという条件で実施された。同省の発表によれば、主な落札事業者はエネルギー事業者の再エネ子会社であるIberenova Promociones(落札容量:24万3,000kW、以下同)、Naturgy Renovables(19万6,000kW)、EDP Renovables Espana(14万3,000kW)や、再エネ事業者のCapital Energy、Falck Renewables, Elawan Energy、X-Elio Energyなどであった。今後、2カ月以内のプロジェクト登録、その後6カ月以内のプロジェクトサイト特定、さらに12カ月以内の許認可取得というスケジュールになっており、太陽光は2023年2月まで、風力は2024年2月までに建設を完了しなければならない。なお、同国は国家エネルギー・気候計画に基づき2030年までに再エネを6,000万kW導入する計画であり、今後2025年までに今回同様の入札が引き続き実施される見通しである。
2021.01.26
中国:2020年の炭素排出権取引パイロット市場の取引が低迷
現地専門紙は2021年1月26日、中国の炭素排出権取引市場の2020年度実績に関して報じた。国内8カ所の炭素排出権取引パイロット市場における総取引量は5,683万tと2019年比で約20%減少したが、取引価格が上昇したため取引総額は15億6,200万元(約250億円)と前年とほぼ同水準となった。市場別の1トンあたり平均取引価格は、最も高い北京市市場で91元(約1,456円)超となり、また最大の上昇幅は2013年の10元(約160円)から2020年には20元(約320円)に達した重慶市市場である。取引量のトップは広東省市場で、3,154万7,000tと全体の約56%を占めた。
2021.01.25
タイ:EGAT、大規模な浮体式太陽光発電所を6月に運開へ
2021年1月25日付の現地紙によると、タイ発電公社(EGAT)は、タイ東北部にあるSirindhorn水力発電所のダムに、浮体式太陽光発電設備(FSPS:Floating Solar Power System)を設置する工事を現在行っており、2021年6月に運開する予定であることを明らかにした。この設備は水力発電所(発電容量:3万6,000kW)と浮体式太陽光発電(同:4万5,000kW)とのハイブリッドシステムで、最適な出力調整を目指すものである。当初は2020年12月に運開する予定であったが、新型コロナの影響で工事が遅延していた。
2021.01.22
ギリシャ:政府、洋上風力導入に向けた法的枠組みを検討
2021年1月22日付の業界誌は、ギリシャ政府による同国内の洋上風力開発に向けた法的枠組みの検討状況について紹介した。同国は国家エネルギー気候変動計画で、2030年までに風力発電の設備容量を700万kWとする目標を掲げている。現在、そのうち400万kWが開発済みで、すべてが陸上風力となっている。同国は、洋上風力のポテンシャルが非常に高く、同国島嶼部のエネルギー自立性向上にも寄与することから、その開発に対する期待が高い。2020年夏、ギリシャ政府は洋上風力開発のための新しい法的枠組みを検討中である旨を発表したが、現在、それに基づきギリシャ風力エネルギー協会(ELETAEN)により、2021年2月1日を期限とするパブリック・コンサルテーションが実施中である。同誌は、この法的枠組みが有効となるためには、高い導入目標と入札スケジュールの設定、FIT-CfDによる安定的な収益性の確保、プロジェクトサイトの調査・選定、新たなファイナンス手法の導入が考慮されるべきとし、また、同国沿岸の地中海は水深が深く、目標の実現には浮体式風力の開発が鍵になると述べている。
2021.01.21
スペイン:BP子会社、太陽光発電プロジェクト106万kWを買収
英国のエネルギー大手BPの子会社で太陽光発電事業を行うLightsource BPは2021年1月21日、スペインの太陽光発電事業者RIC Energyから太陽光発電プロジェクトを買収したと発表した。買収対象はスペイン国内で計画されている14件の太陽光発電プロジェクトで設備容量は合計106万kWに上り、Lightsource BPがこれまで欧州内で実施した買収案件のうち最大のものとなる。運開時期は早いもので2023~2025年の間となる見込み。買収額は明らかにされていない。Lightsource BPは同プロジェクト運開後の売電方法について、最大10年間のPPAによる売電を計画しており、すでに売電先の選定および交渉を進めている。また、両社はこれらのプロジェクトの開発に関してパートナーシップを締結し、RIC Energyは今後も同プロジェクトのデベロッパーとして携わる模様。スペインでの太陽光発電事業に関して、Lightsource BPは2019年にサラゴサで計25万kW、2020年にテルエルで計10万kWの太陽光発電プロジェクトをそれぞれスペインの再エネ事業者Forestaliaから買収しており、今回のプロジェクト買収はこれらに続くものとなる。
2021.01.20
米国:バイデン大統領、「パリ協定」復帰など環境政策転換の大統領令に署名
バイデン大統領は2021年1月20日、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰する大統領令(EO)に署名した。2020年11月4日に米国が唯一の離脱国となっていた同協定に、国連に通知後30日間の過程を経て再加盟する。また同大統領は、トランプ氏によるエネルギー・環境政策を見直すEOにも署名した。これにより、「エネルギーの自立、経済成長促進EO(2017年3月)」や「米国第一のオフショア・エネルギー戦略EO(2017年4月)」などは取り消された。前政権から転換される環境規制には、自動車の燃費基準、石油・ガス部門のメタン排出規制をはじめ、発電所の大気有害物質規制、家電製品・建築物へのエネルギー効率基準など多数に及ぶ。エジソン電気協会(EEI)のトム・キューン専務理事は「EEIとその会員企業は、パリ協定への復帰を含む、気候変動に対するバイデン政権の最初の行動を歓迎する」との声明を出した。
2021.01.20
デンマーク:Ørstedがグリーン水素製造事業の最終投資判断を決定
エネルギー情報誌は2021年1月20日、デンマークの大手エネルギー供給事業者Ørstedが洋上風力発電から供給する電力で水素製造を行う事業の最終投資判断を行い、事業が実施されることになったと報じた。世界的な洋上風力発電事業者のØrstedは7件のグリーン水素製造事業を4カ国(デンマーク、ドイツ、オランダ、英国)で検討しており、投資判断を確定したのは初めてである。H2RESと呼ばれるこの事業はコペンハーゲン近郊に2,000kWの水電気装置を設置して、洋上風力発電(3,600kW、2基)から電気を供給する。2021年内に日量1,000kgの水素製造を開始する予定で、燃料電池車など運輸部門で消費されることになる。本事業にはデンマーク政府から3,460万クローネ(約5億9,000万円)の補助金が支給されている。Ørstedの役員は、H2RESから得られる知見は欧州でグリーン水素製造を普及することに貢献することになると話している。
2021.01.20
中国:国家能源局、2020年電力統計速報値を発表、風力発電設備が急増
国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は2021年1月20日、2020年度の電力統計(速報値)を公表した。それによると、2020年の総消費電力量は7兆5,110億kWhと、前年比3.1%増となった。産業別内訳では、第一次産業(農林水産畜産業)が859億kWh(前年比10.2%増)、第二次産業(鉱工業)が5兆1,215億kWh(同2.5%増)、第三次産業(サービス業他)が1兆2,087億kWh(同1.9%増)、家庭用が1兆949億kWh(同6.9%増)となっている。また、新設発電設備容量は1億9,087万kWに達し、2019年の新設容量から81.8%の増加を記録した。これを電源種別にみると、水力が1,323万kW(前年比197.7%増)、火力が5,637万kW(同27.4%増)、風力は7,167万kW(同178.7%)、太陽光は4,820万kW(同81.7%)となっており、特に風力、太陽光、水力の増加が際立っている。
2021.01.20
インド:最大電力が過去最高の1億8,582万kWに
2021年1月20日付の報道によると、インドで1月20日午前9時35分、インド全国の最大電力が1億8,582万kWとなり、過去最高記録を更新した。これまでの最高記録は1億8,289万kW(2020年12月30日)、前年同月の最大電力は1億7,097万kWであった。インドの電力需要は、コロナ禍で影響を受けた商業部門や産業部門の経済活動が再び活発化していることから増加に転じている。
2021.01.19
米国:連邦控訴裁、トランプ政権の発電所のCO2規制緩和策は無効との判決
コロンビア特別区連邦控訴裁判所は2021年1月19日、火力発電所のCO2排出量に関する「アフォーダブル・クリーン・エネルギー(ACE)」規則を無効とする判決を下した。この規則は、トランプ政権下の環境保護局(EPA)により、オバマ政権の「クリーン・パワー・プラン(CPP)」に代わるものとして導入された。判事は「トランプ政権は、ACE規則の策定にあたり、大気浄化法(CAA)に関するEPAの権限について、石炭火力の一部に限るなど不法に狭い範囲とした」と判断した。地元報道によると、連邦裁がCAAに関する EPAの法的権限を広く認めたことで、バイデン新政権は新たなより厳しいCO2排出量規制を導入すると見立てている。なお、トランプ政権の退陣の前日に判決が出たことで上訴ができないことや、CPPは以前に裁判所によって保留されていることから、CO2排出量規制は、CPPやACE規則が不在の状態に戻るとされる。
2021.01.18
英国:Octopus Energy、風力発電を使ったリアルタイム料金プランを発表
英国の新電力大手Octopus Energyは2021年1月18日、風力発電を使ったリアルタイム料金プラン「Fan Club」を新たに発表した。英国では初めてとなる同プランでは、需要家の地元にある風力タービンの回転状況によって、同社の標準料金プランの価格に20%や50%の割引が適用される(30分ごとに計測)。20%割引はタービンが回っている限り適用となるが、同社は、対象の風力タービンはほとんど(98%)の間回り続けるだろうと説明している。50%の割引は風速が一定以上(8m/sなど)となった場合に適用される。現状、同料金プランは、同社がウェールズとヨークシャーで今回新たに取得した風力タービン(出力500W)2基の近くに在住する需要家のみが契約することができる。なお、小売事業者のOctopus Energyが発電設備を取得するのは今回が初である。
2021.01.14
中国:国家電網、建設大手と共同でEV向け充電事業子会社を設立
最大の送配電事業者である国家電網有限公司は2020年1月14日、建築物の設計施工、インフラ建設・投資、不動産開発などを手がける中国建築集団有限公司と、EV向けの充電事業JVを設立すると発表した。国家電網は、2020年末で17万2,000台の充電スタンドを所有しており、そのスマート充電プラットフォームは176都市とその結ぶ高速道路をカバーし、他社設備を含めて103万台の運営規模となっており、充電サービス・ユーザー数は500万に達している。一方、中国建築集団は建設業界をリードする国有企業であり、住宅区、商業区、公共施設などにおける不動産開発資源が多く、建設エンジニアリング事業における収益指標は同業界の中でトップレベルである。両社は、今回設立したJVを活用して、充電インフラの計画、設計、投資、建設、運用の産業チェーンを構築し、この分野の「代表企業」を目指すことにしている。
2021.01.12
英国:英国企業、SMR・風力プロジェクトに米国ニュースケール社の技術を採用
英国のハイブリッド・クリーンエネルギー企業であるシアウォーター・エナジー社は2021年1月12日、米国ニュースケール・パワー社のSMR技術を採用して同社と協力を進めるとの覚書に署名した。シアウォーター・エナジー社がウェールズ北部のウィルファで計画するプロジェクトでは、SMRと洋上風力発電から300万kWのゼロカーボン電力を供給し、余剰エネルギーは輸送部門向けに年間300万kg以上のグリーン水素の製造に充てられる。同社は英国政府ならびにウェールズ、北アイルランドおよびスコットランドの各地方政府へ提案書を提出しており、同プロジェクトでの発電は早ければ2027年にも開始され得る。同覚書に基づいて両社は、ウィルファを旗艦プロジェクトとしながらニュースケール社のSMR技術に基づく原子力発電、洋上風力エネルギーおよび水素製造の複合発電サイト候補地を英国内で探していくとしている。
2021.01.11
米国:EIA、2021年の新規電源の7割が太陽光と風力であると発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年1月11日、米国で2021年に営業運転の開始を計画している電源の約7割が太陽光と風力であると発表した。2021年の新規電源の合計容量は3,970万kWであり、その内訳は、太陽光1,540万kW(39%)、風力1,220万kW(31%)、天然ガス火力660万kW(16%)、蓄電池430万kW(11%)、原子力110万kW(3%)である。天然ガス火力の内訳は、GTCCが390万kW、シンプルガスタービンが260万kWである。蓄電池については2020年の4倍以上の導入が計画され、この理由として、再エネとのハイブリッド設置が増加していることを挙げた。なお2021年後半には、太陽光とのハイブリッド蓄電池としては世界最大となる40万9,000kWがフロリダ州Manatee Solar Energy Centerで営業運転を開始する予定である。
2021.01.11
フランス:Engie、100万kWの太陽光発電と蓄電池等の大規模計画を発表
フランスのエネルギー大手Engieは2021年1月11日、同国の再エネ事業者Neoenらと共同で、発電設備容量100万kWの太陽光プロジェクトから成る大規模再エネプロジェクト「HORIZEO」を発表した。同プロジェクトでは、フランス南西部のGironde県に太陽光発電所を建設するほか、電力の地産地消に向け、4万kWの蓄電池に加え、個人の交通や地域の公共交通機関に焦点を当てたグリーンな水素の製造装置(1万kW)およびデータセンターの設置が計画され、データセンターからの排熱が農業用ビニールハウスで使用される可能性もある。発電された電力は政府の買取支援を受けず、民間との電力購入契約(PPA)を通じて販売する予定である。同プロジェクトは約1,000ヘクタールの敷地を要し、必要となる森林の伐採許可の取得に向け、代替の植林等の措置を含めた協議が行われる。報道によると、最終投資決定は2023年末までに行われ、EngieおよびNeoenの投資額約10億ユーロ(約1,250億円)のうち、太陽光発電所の建設にその約3分の2が投じられる。
2021.01.10
インド:カクラパー原子力発電所3号機が送電系統に接続
インド原子力省(DAE)はグジャラート州スーラト近郊にあるカクラパー原子力発電所3号機(70万kW)が2021年1月10日午前11時に送電系統への接続を果たしたと公表した。同号機は国内で設計された初の70万kW級の加圧重水炉(PHWR)で、2010年11月に建設を開始し、2020年3月中旬の燃料装荷を経て、同年7月22日に初臨界に達していた。同発電所では1、2号機(PHWR、各々22万kW)が運転中であるほか、70万kW級のPHWRはラジャスタン州のラジャスタン原子力発電所7、8号機も建設中である。
2021.01.09
パキスタン:パキスタン全域で停電が発生
2021年1月10日付の報道によると9日夜、パキンスタン全域で停電(ブラックアウト)が発生した。パキスタン南部のシンド州にあるGuddu火力発電所が午後11時41分、技術的な障害により停止した事故が広範囲に波及し、多くの発電所(計1,030万kW)が停止したため。翌10日午前6時44分には首都イスラマバードなど一部の地域で電力供給が再開された。停電は最長で18時間続いた地域もあったとみられる。一部報道では、送電網の保護システムが稼働しなかったとの指摘があり、オマル・アユブ・カーンエネルギー相は、過去の政権が送電網への投資を怠ってきたことを批判している。同国では、2013年、2015年にも大規模停電が発生している。
2021.01.08
米国:DOE、米国における原子力推進のための戦略的ビジョンを発表
米国エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は2021年1月8日、国内の既設原子力発電所を支援するとともに、最新の革新的原子力技術を実証し、新たな市場機会を開拓するための戦略的ビジョンを発表した。同ビジョンでは、原子力分野の課題に対処し、先端技術の可能性を実現させ、技術革新を促進する役割を担う連邦政府をてこ入れするため、以下5つの大目標(goals)を特定している。(1)米国の既存原子炉の継続運転を可能にすること、(2)先進型原子炉の設置を可能にすること、(3)先進的な原子燃料サイクルを開発すること、(4)原子力技術における米国のリーダーシップを維持すること、(5)NEを高パフォーマンス組織にすること。各大目標には、進捗を確実にする中目標(objectives)と成功度合いを測るパフォーマンス指標も明記されている。
2021.01.07
米国:EIA、2020年の天然ガス年平均価格が過去最低と発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2021年1月7日、米国の天然ガス指標価格(ヘンリーハブ価格)の2020年平均が2.05ドル/MMBTUとなり、過去数十年来で最低となったと発表した。主な理由として、暖冬に伴う暖房需要の減少と、新型コロナ感染拡大による経済活動停滞に伴う天然ガス需要の減少が挙げられている。2020年6月の月平均価格は過去最低の1.66ドル/MMBTUまで下落したものの、下半期には天然ガスの生産減少とLNG輸出量の増加により価格は上昇した。一方、2020年の火力発電所における天然ガス消費量は過去最高(平均31.6Bcf/日、2019年平均より2%増加)を記録した。これは、夏季の記録的猛暑と天然ガス価格の低下が要因と見られる。
2021.01.04
米国:NRCスビニキ委員長、2021年1月20日の委員退任を表明
原子力規制委員会(NRC)のスビニキ委員長(共和党)は2021年1月4日、2021年1月20日をもってNRC委員を退任することを発表した。退任理由については触れていない。スビニキ氏はジョージ・W・ブッシュ政権下(共和党)の2007年にNRC委員となり、オバマ政権下(民主党)の2012年に再任、トランプ政権(共和党)が発足した2017年1月から委員長を務めてきており、NRC委員として在職期間は歴代最長である。近年、実効的で効率的な規制機関を目指すNRCの変革を主導してきたスビニキ氏は「すべてのNRCスタッフが先人達の誇り高い遺産のもと、最新のリスク情報に基づく規制機関に変革するなかで、成功を続けていくことを願っている」とコメントしている。
2020.12.31
中国:規制当局、三澳原子力発電所1、2号機の建設許可を条件付で承認
中国生態環境部は2020年12月31日、「核安全法」および「民用核施設安全監督管理条例」に基づき浙江省三澳原子力発電所1、2号機の建設許可書を30日付で発給したことをホームページ上で明らかにした。両基とも、中国の独自開発による第3世代炉「華龍1号」(PWR)が採用される予定である。一方、許可書は付帯する20項目の改善を求めており、事業主である中国広核集団有限公司の対策完了をもって着工(FCD)が可能となっている。
2020.12.30
ドイツ:脱石炭法に基づきRWEの褐炭火力発電所Dユニット廃止
ドイツのエネルギー大手RWEは2020年12月30日、同国政府の脱石炭政策により、Niederaussem褐炭火力発電所Dユニット(発電設備容量約30万kW)について、同年12月31日をもって廃止すると発表した。同国では2038年末までの脱石炭を定める脱石炭法が2020年7月に成立し、同発電所は2020年末までの廃止が規定されていた。報道によれば、市況の悪化により同ユニットは12月18日に停止されていたという。脱石炭法により、RWEの褐炭火力発電所の発電設備容量の3分の2が2030年までに廃止され、同社は廃止に伴い総額26億ユーロ(約3,300億円)の補償を受領する予定である。また、石炭火力発電の廃止については、2020年廃止分の補償入札において同社のWestfalen発電所EユニットおよびIbbenbüren発電所Bユニット(各発電設備容量約80万kW)が落札しており、両ユニットについては2020年末をもって市場への電力販売が停止されている。
2020.12.30
スペイン:2020年の発電実績で再エネが増加、消費量の45.6%に達する
エネルギー情報誌は2020年12月30日、スペインの送電事業者が公表したデータを伝え、2020年のスペインの供給量の45.6%を再エネが占めたと報じた。2020年は新型コロナ感染拡大の影響により電力需要が減少する一方で、太陽光発電が増加したことが大きな要因である。最も発電量が多かったのは原子力発電の553億kWh(供給量の23%)で、これに続いて風力発電530億kWh(22%)、水力発電302億kWh(13%)となっている。太陽光発電は148億kWh(6%)と少ないが、一年前より66%増加した。ガス火力は382億kWh、石炭火力は48億kWhで前年よりそれぞれ25%、55%減少した。
2020.12.22
中国:国家能源局年次会議、2021年エネルギー政策方針を提示
国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は2020年12月22日、エネルギー分野における年次会議を開催したことを明らかにした。毎年年末に開かれる本会議で翌年のエネルギー政策に関する方針が示されるが、今回の会議では、これまでのエネルギー政策および新型コロナへの対応措置を維持した上で、エネルギー安全保障、気候変動対応の2大目標の実現に向けて、エネルギー安全保障対策の強化、供給能力の引き上げ、消費効率の向上、技術革新の推進、体制改革の深化、規制能力の拡大、国際協力の推進および指導力の改善の8つの分野を中心とした施策に取り組むことが示された。
2020.12.21
米国:連邦議会、風力・太陽光の税制優遇(PTC・ITC)適用を延長
連邦議会は2020年12月21日、新型コロナ禍における景気刺激策として、9,000億ドル規模の支出法案を可決した。同法案には、太陽光・風力発電に対する税制優遇(PTC・ITC)の延長のほか、エネルギー効率化やクリーンエネルギー技術への研究開発支援策等が含まれている。風力のPTC(production tax credit、クレジット額×発電量が法人税から減免)は、2020年末で失効する予定であったが、2021年末まで1年間延長され、2020年同様、規定額の60%相当のクレジット額が適用される(2020年のクレジット額は規定額の2.5セント×0.6で1.5セント/kWh、規定額はインフレ調整の可能性あり)。一方、太陽光に対するITC(investment tax credit、投資額×クレジット率が法人税から減免)のクレジット率は、2020年:26%、2021年:22%、2022年以降:10%に引き下げられる予定であったが、2021/2022年:26%、2023年:22%、2024年以降:10%(小規模太陽光は2024年以降適用なし)となり、引き下げが2年間延期された。また、洋上風力に対するITCが新規導入され、2025年まで30%のクレジット率が適用されることとなった。
2020.12.18
フランス:自由化料金を選択した家庭用需要家数は30%を突破
フランスのエネルギー規制委員会(CRE)は2020年12月18日、電力小売市場における2020年第3四半期の自由化進捗状況に関する報告書を発表した。同報告書によると、2020年第3四半期において45万7,000軒の家庭用需要家が新たに規制料金から自由化料金に移行した。新型コロナと外出禁止の影響で前四半期では24万1,000軒にとどまっていたが、第3四半期は移行が増加し、自由化料金を選択した家庭用需要家数は9月末時点で、全3,327万2,000軒の30.7%に当たる1,020万1,000軒となった。また、新規参入事業者の家庭部門における2020年9月末時点の市場シェアは前四半期より0.7ポイント高い27.5%となった。一方、非家庭用需要家については、18万2,000軒が新たに規制料金から自由化料金に移行した(2020年第2四半期は3万9,000軒)。その結果、自由化料金を選択した非家庭用需要家数は2020年9月末時点で、全511万3,000軒の46.6%に当たる238万4,000軒に増加した。また、新規参入事業者の非家庭部門における2020年9月末の市場シェアは前四半期より1.1ポイント高い27.5%となった。
2020.12.18
中国:南部各省で電力需給がひっ迫、電力使用抑制を要請
現地専門紙は2020年12月18日、南部における複数の省で電力需給がひっ迫し、省政府などが電力使用の抑制を求めていると報じた。そのうち、浙江省は省内の役所に対し、年末まで不要な照明や電気機械の使用を控え、室温が一定基準を上回る場合に暖房を使用しないよう呼びかけた。12月19日時点で電力使用の抑制が要請された地域は浙江省、湖南省、江西省等である。需給ひっ迫の理由について、(1)最近の経済活動活発化で工業生産が前年同月をかなり上回る水準に達していること、(2)南部地域が歴史的な寒波に見舞われていることによる需要急増などが指摘されているが、一部の外国メディアは豪州産の石炭の輸入制限も一因ではないかと推測している。
2020.12.17
米国:バイデン次期大統領、環境保護局長官にマイケル・リーガン氏を指名
バイデン次期大統領は2020年12月17日、米国環境保護局(EPA)長官に、マイケル・リーガン氏を指名すると発表した。同氏は現在、ノースカロライナ州の環境規制部門である州環境品質省(DEQ)の長官を務める。同州の環境当局のトップとして、ロイ・クーパー知事(民主党)が掲げる、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための計画策定や、デューク・エナジー社が関わる石炭灰貯蔵池の浄化問題の和解などを主導した。オバマ政権ではEPA長官に、当時の州環境当局トップ(ニュージャージー州のリサ・ジャクソン氏、コネチカット州のジーナ・マッカーシー氏)が登用されており、地元報道は、同じ考え方に基づく選択との見方をしている。新政権はトランプ政権が緩和した100以上に及ぶ環境規制の再規制をはじめ、発電所からの温室効果ガス排出規制、自動車の排ガス基準など気候変動対策を優先課題に掲げている。
2020.12.17
ドイツ:再エネ法の改正法案、上下院で可決され来年1月より施行へ
連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)はそれぞれ2020年12月17日、18日に再生可能エネルギー法の改正法案を可決した。これにより、2021年1月1日より同改正法が施行される。改正法では、2050年より前に電力分野におけるカーボンニュートラルを達成する目標が掲げられた他、暫定的な卒FIT陸上風力に対する施策が盛り込まれた。FITの適用期限が2020年末ないしは2021年末までの設備については、連邦系統規制庁が特別に実施する入札に参加して落札できれば2022年末まで落札価格での補助が受けられる。また、FITの適用期限が2020年末までの設備については、前述の入札による補助を受けられない期間においては2021年6月までは卸電力価格に1ユーロ・セント/kWhを加えた額が支払われる。その後、上乗せ額は段階的に0.5ユーロ・セント/kWh(2021年7~9月)、0.25ユーロ・セント/kWh(2021年10~12月)と引き下げられる予定である。
2020.12.16
米国:新政権、DOE長官に元ミシガン州知事グランホルム氏起用へ
2020年12月16日付の現地報道によれば、バイデン次期大統領はエネルギー(DOE)長官にジェニファー・グランホルム氏を起用する見込みである。同氏は、ミシガン州知事を2003年から2期8年務めており、在任中はクリーンエネルギー政策や電気自動車(EV)等の導入促進で知られ、今後、新政権のもとで気候変動対策の推進強化を図ることが期待されている。2016年大統領選においては、ヒラリー・クリントン氏のエネルギー顧問を務めた。2020年12月時点で、同氏はカリフォルニア大学バークレー校で教鞭をとっている。同氏の人事は大統領の指名後、上院議会の承認を経て正式に決定する。
2020.12.13
中国:習国家主席、温暖化対応で新たな自主的措置に言及
現地紙は2020年12月13日、習近平国家主席がオンラインの国際会議において、地球温暖化対策の新たな自主的措置に言及したと報じた。習氏は同月12日に、国連と英国・フランス等の主催で開催された「パリ協定採択5周年」を記念する各国首脳級のオンライン国際会議「国連気候サミット」でビデオ演説を行い、2030年までに(1)GDPの単位あたりのCO2排出量を2005年比で65%以上削減すること、(2)一次エネルギー消費に占める非化石エネルギー割合を25%前後とすること、(3)森林吸収量を2005年の水準から60億m3増加させること、(4)風力と太陽光発電の設備容量を12億kW以上とする計画を発表した。
2020.12.09
米国:連邦下院議会、超党派提案の4つのエネルギー関連法案を承認
連邦下院議会は2020年12月9日、超党派で提案された4つのエネルギー関連法案を承認した。(1)水力発電へのインセンティブプログラムを2036年まで延長する法案(H.R. 3361)、(2)インディアン部族へのエネルギー支援プログラムを再承認する法案(H.R. 5541)、(3)連邦エネルギー規制委員会(FERC)の委員長に、同委員会の職員報酬に関する権限を与える法案(H.R. 1426)、(4)大型シーリングファンの省エネ基準に技術的な修正を加える法案(H.R. 5758)である。下院エネルギー・商業委員会のパローン委員長(民主党、ニュージャージー州選出)は「これら4つの法案は、エネルギー効率を高め、クリーンエネルギーを促進し、部族コミュニティが手頃な価格で信頼性の高いエネルギー源を利用可能とする重要なものであり、今日、超党派の強力な支持を得て下院を通過したことを誇りに思う」とコメントした。
2020.12.08
フランス:政府、陸上風力開発拡大のための対策を発表
フランス政府は2020年12月8日に開催された環境保護委員会において、陸上風力開発拡大のための対策を発表した。要点は(1)土地開発計画、(2)透明性の向上、(3)地元社会の参画、(4)光害の軽減、となっており、(1)については、政府は全国の県知事と共同で、風力発電所設置に適した土地選定を行う。その際に、一定の地域での開発集中を避けるために上限が設けられ、上限を超えた場合は規制の適用が謳われているが、詳細は明らかになっていない。また、風力発電に適しているものの防衛上の理由から解放されていない土地を解放するための技術選定を進め、2025年までに1万4,000~1万8,000km2の解放を目指す。(2)については事業者に対し、風力発電プロジェクト開始時点から地元社会の了承を得ることを要請する憲章を創設する。(3)については、風力発電プロジェクトへの関与を望む地方自治体を支援するための技術顧問ネットワークを2021年中に創設するために、政府から3年間で500万ユーロ(約6億円)が拠出される。(4)については、風力発電所からの光害(風車に設置された航空障害灯などの光が周辺環境に何らかの影響を与える)を軽減するための実証実験が、今月中旬から行われている。フランスにおける風力発電設備容量は2020年9月末時点で1,730万kWだが、「エネルギー多年度計画」(PPE)での開発目標は「2023年に2,410万kW、2028年に3,320万~3,470万kW」となっている。
2020.12.08
中国:石炭価格が上昇傾向も輸入増加量は限定的との見通し
現地専門紙は2020年12月8日、石炭価格が上昇傾向にあると報じた。それによると、一般炭(5,500kcal)のスポット価格は、2020年11月平均で1t当たり621元(約9,630円)に達し、冬季需要期を迎えるため12月の相場は、さらに上昇する公算が高いとしている。中国の国内炭生産量(原炭)は2020年1~10月は37億4,000tで前年同期比 0.1%増であったが、輸入量は政府の抑制方針で前年同期比10.8%減少、特にオーストラリア炭は約2割減少した。一方、石炭消費量の減少幅はコロナ感染の影響はあったものの、前年同期比0.6%減にとどまった。市場関係者は今回の石炭価格上昇について、輸入減に加えて政府の炭鉱に対する安全検査の厳格化に伴い、企業が生産を抑制したことで、需給が一時的に逼迫したもので、今後は安定するとの見方を示した。また、次年度の長期契約(年度単位)の価格は安定的に推移しているため、輸入急増はないと見られている。
2020.12.05
フランス:環境移行省、8番目の洋上風力計画地点を発表
2020年12月5日の現地紙の報道によれば、フランス環境移行省は同日、ノルマンディー地方のCotentin半島沖に位置し同国8番目となる洋上風力発電所(想定設備容量:約100万kW)の計画地点を発表した。同地点は海岸線から32km以上、ユネスコの世界遺産に登録されたヴォーバンの要塞群から40kmの英仏海峡に位置する。同省は、当該地点について漁業活動が比較的低く生物多様性への問題も限定的としている。2,700人以上が参加し同年10月に終了した公開討論会では、漁業関係者を含む同海域の利用者との共存や、発電所建設に伴う環境への悪影響を最小化する必要性などが強調された。この討論会の結果を受けて、同省は洋上風力開発事業者に対し漁業関係者との共存に関する事前調査を義務付けるとしている。また、同省は2021年より同地点の環境影響評価を開始することと、すべての洋上風力プロジェクトに関するインターネット情報サイトを公開することもあわせて発表している。なお、2020年4月改定のエネルギー多年度計画(PPE)において、洋上風力の開発目標は2023年末までに240万kW、2028年までに520万~620万kWとされている(2019年末時点で導入実績なし)。
2020.12.04
チェコ:チェコ石炭委員会、2038年までに化石燃料電源の段階的廃止を政府へ提案
2020年12月4日付現地紙によれば、チェコの石炭委員会は化石燃料電源の廃止時期について2033年、2038年、2043年と3つのシナリオについて検討を行った結果、2038年までに段階的に廃止することが望ましいとする報告書を発表した。チェコのエネルギー規制局のデータによると、2019年末時点の国内総発電電力量のうち褐炭が最大シェアの約40%を占めており、次いで原子力が約35%である。同委員会は化石燃料電源の段階的廃止の条件として代替供給力およびエネルギー安全保障の確保を挙げており、新規原子炉建設の必要性についても言及している。同委員会は2019年7月に、脱石炭に向けて同国の将来における褐炭の必要性および石炭政策を検討する目的で設立されたもので、産業界や学者、地方政府の代表者ら19名の委員で構成され、2020年末までに政府に対し報告書を提出することが決められていた。
2020.12.04
中国・ロシア:中露ガスパイプライン吉林-河北区間が稼働
現地紙は2020年12月4日、中国とロシアとを結ぶ中露東線天然ガスパイプラインの「中段」区間(距離:1,110km)が12月3日に正式に稼働したと報じた。同区間は2019年7月に着工され、吉林省から内モンゴル自治区、遼寧省、天津市を経由し、河北省永清市までを結ぶものである。今回の稼働開始で、北京市を含む首都圏への天然ガス供給能力が高まり、冬季の暖房燃料として広く使われる見通しである。中露東線天然ガスパイプラインは、ロシア(東シベリア)から上海市までの総延長5,111kmに達する計画で、全面稼働後の年間天然ガス供給量は約380億m3に達する見込みである。
2020.12.03
中国:政府、「一帯一路」フォーラムで年間20億ドル以上の投資継続を表明
中国政府は2020年12月3日、「一帯一路」経済構想に基づくエネルギー協力パートナーシップの国際フォーラムを北京で開催した。国家能源局(日本の資源エネルギー庁に相当)は約300名の出席者に対し、新型コロナの経済対応策としてクリーンエネルギー開発に着目していること、また、パートナーシップの加盟国と協力してクリーンエネルギープロジェクトの実施に年間20億ドル以上の投資を維持することを表明した。
2020.12.02
中国・パキスタン:原子力発電プラント華龍1号の海外版、カラチで燃料装荷開始
中国核能工業集団有限公司(CNNC)は2020年12月2日、パキスタンで同社が建設を請け負っているカラチ原子力発電所2号機において、11月28日から燃料装荷を開始したと発表した。2号機は中国が自主開発した第3世代設計のPWR型原子炉「華龍1号」(110万kW)の海外版が採用されており、同時に建設が進むカラチ原子力発電所の3号機と共に、華龍1号にとって初の海外輸出事例となる。両プラントは、2015年8月と2016年5月にそれぞれ着工し、2021年の商業運転開始を目標にプロジェクトが進められている。CNNCはパキスタンにおける華龍1号の建設が原子力関連産業の育成につながり、約1万人規模の雇用創出をもたらしたと述べている。
2020.12.01
米国:メイン州、2045年までにカーボンニュートラルとする気候計画を発表
米メイン州のジャネット・ミルズ知事(民主党)は2020年12月1日、州の気候行動計画「Maine Won't Wait」を発表した。同計画は、温室効果ガス(GHG)排出量について、2045年までにカーボンニュートラルを達成するために、州が取り組んでいく今後4年間の行動を取りまとめたもので、州の気候評議会によって策定された。具体的には(1)電気自動車(EV)市場の拡大、(2)家庭用ヒートポンプの普及拡大、(3)GHG排出量を抑制するための再エネへの移行などが求められている。また、新しい取り組みとして(1)2030年までにクリーンエネルギー分野における3万人(現在の2倍以上の水準)の雇用創出、(2)EV購入のためのインセンティブの拡大、(3)州全域におけるEV充電施設の建設などが含まれている。さらに同知事は、2045年までのカーボンニュートラルの実現を立法化するよう提案した。同州は既に、州内で使用される電力を2030年までに再エネ80%、2050年までに再エネ100%とする州法が制定されている。
2020.12.01
EU:2020年のエネルギー効率化目標は未達の可能性
エネルギー情報誌は2020年12月1日、欧州環境局(EEA)が発表した報告書について報じ、2020年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標と再生可能エネルギー導入目標は達成するものの、エネルギー効率化目標については未達となる見込みと伝えた。2019年の時点でGHG排出削減は2020年目標の20%削減を超える24%の削減と試算され、再エネ導入は20%目標に近い19.4%まで達し、さらにCOVID-19の影響で経済活動が停滞していることを考慮すると、これらの目標達成は確実と見られる。一方でエネルギー効率化目標については達成できない可能性が高く、EEAでは省エネ努力が不足しているとコメントしている。また、EEAは2030年のGHG排出削減見通しについて、現状の政策では41%にとどまり、欧州委員会が提案している55%削減には届かないと分析した。
2020.11.30
米国:連邦上院議会、FERC新委員2名の人事を承認
連邦上院議会は2020年11月30日、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の委員に、マーク・クリスティー氏(共和党)とアリソン・クレメンツ氏(民主党)が就任する人事を承認した。2020年7月のトランプ大統領の指名に基づくもので、任期はクリスティー氏が2025年、クレメンツ氏が2024年までとなる。クリスティー氏はバージニア州の公益事業委員会(SCC)の委員長を務めており、クレメンツ氏は環境保護団体の天然資源保護協議会(NRDC)の首席弁護士などを経て、現在はエネルギー財団の政策コンサルタントである。今回の人事承認により、本来5名で構成されるFERC委員に2018年より生じていた空席が解消され、共和党3名、民主党2名の体制となる。2021年1月の民主党への政権交代後も、ニール・チャタジー委員(共和党、前FERC委員長)の任期が満了となる2021年6月末まで、共和党委員が多数派を占める構成が続く見通しである。
2020.11.30
中国:新開発の炭素回収装置が稼働
中国国営発電大手の華能電力集団公司は2020年11月30日、自主開発による中国初の相転移(気体・液体・固体間の状態変化)型の炭素捕捉装置が、長春熱電発電所で72時間の連続運転を実現したと発表した。この回収装置は、新規に開発された吸収剤を利用する相転移型で、従来の有機アルコールアミン化学吸収法と比較して45%の省エネが可能とされている。
2020.11.24
ドイツ・英国:英国小売Octopus Energyがドイツ進出
英国の新興事業者Octopus Energyは2020年11月24日、ドイツの電力小売市場への新規参入を発表した。同社は2016年から英国で小売事業を展開しており、スマートメーターのデータ分析プラットフォームKrakenを活用した需要家別料金プラン等により、英国で多数の需要家を獲得している。同社はドイツ国内で2024年までに100万軒の新規顧客獲得を目標に掲げ、8,000万ユーロ(約96億円)の初期投資を計画している。Octopus Energy GermanyのMack CEOは、「ドイツは他国のロールモデルとなりエネルギー転換を急速に進めてきたが、欧州で最も高い同国の電気料金はEVやヒートポンプ利用の妨げとなっている」と指摘しており、ドイツにおいてもKrakenを活用し、EV向け時間帯別料金プラン等によりクリーンで安価な電力供給を実現するとしている。
2020.11.27
中国:自主開発第3世代炉「華龍1号」の系統送電開始
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2020年11月27日、燃料装荷後、試験運転中の福清原子力発電所5号機(「華龍1号」型、115万kW)が系統への送電を開始したと発表した。CNNCは、同日午前零時41分に送電を開始し、その後の原子炉の各パラメータの数値は良好で、商業運転に向け良いスタートを切ることができたとしている。「華龍1号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)が共同で設計した、自主開発比率約85%以上の第3世代炉(PWR)で、燃料集合体を177体とし、炉心のエネルギー密度を引き下げ、安全性を高めた設計とされている。
2020.11.26
フランス:EDF組織再編に向け、政府と欧州委員会の協議が進展か
2020年11月26日付の現地経済紙によると、政府と欧州委員会の間でフランス電力EDF の組織再編に関する協議が行われ、合意が形成されつつある。組織再編の際に行われる料金改定については、原子力発電のコストをカバーするために、すべての原子力発電電力量に対して固定価格を保証する制度となる見込みである。同報道によれば、販売価格は現在のARENH(原子力発電電力量切り出し)制度の42ユーロ/MWhに対して、42~50ユーロ/MWhになると見込まれている。また、EDFの組織再編については、これまでEDFを親会社「EDFブルー」(原子力・水力・火力、送電子会社RTEを管轄)と子会社「EDFグリーン」(小売、配電子会社Enedis、再エネ事業を管轄)に分割する案が検討されてきた。しかし、政府と欧州委員会との協議において、欧州委員会は、事業運営機能を持たず、子会社に対して支配力も影響力も持たないホールディングを設立し、さらに「EDFブルー」から水力部門を分離する3分割案を支持していると見られる。同案に対してEDF労組は強く反対しており、2020年11月26日にはストライキを起こした(EDF従業員の31.6%が参加)。
2020.11.25
ベルギー:Centrica、ベルギー最大の蓄電池施設を2021年中旬に運開予定
英国電力大手Centricaの2020年11月25日付プレスリリースによると、グループ企業Centrica Business Solutionsは、合弁会社EStor-Luxとの提携によりベルギー最大規模となる出力1万kW、容量2万kWhの蓄電池施設を2021年中旬までに同国東部に位置するBastogneにて運開する。Centrica Business Solutionsは当該蓄電池の運用・収益管理を担い、2次調整力の役割を果たすVPPとして、需要状況に応じて高圧線との充放電を行うことで、再生可能エネルギーの有効活用につなげる。同社の国際事業責任者は、「当該事業はベルギーの送電事業者Eliaが掲げる、電力市場を多様な参加者に段階的に開放していく方針に合致するものであり、今後、同国で類似事業開発が進むであろう」とコメントしている。
2020.11.24
中国:国家電網、EV充電スタンド100万基以上、利用者数500万人突破
現地専門紙は2020年11月24日、国有送配電大手である国家電網有限公司のプラットフォームに接続された電気自動車(EV)向け充電スタンドが、100万基以上に達したと報じた。これらのEVスタンドの利用者数は延べ550万人に達している。同社は、2015年に新エネルギー車産業の発展を促進する目的で「国網電動汽車服務有限公司」を設立し、同社を通じて充電設備の拡充を推進してきた。
2020.11.23
米国:バイデン次期大統領、気候変動特使にケリー元国務長官を起用
バイデン次期大統領は2020年11月23日、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の中に新設する気候変動問題の大統領特使に、ジョン・ケリー元国務長官を起用すると発表した。発表を受けて、ケリー氏はツイッターに「米国には間もなく、気候危機を国家安全保障上、差し迫った脅威として扱う政府が誕生する。次期大統領、同盟国、気候変動運動の若い指導者たちと協力し、大統領気候特使としてこの危機に立ち向かうことを誇りに思う」と投稿した。ケリー氏は、マサチューセッツ州選出の元上院議員で、2004年には民主党大統領候補としてジョージ・W・ブッシュ大統領と大統領選挙を戦った。また2013~2017年に、オバマ大統領2期目の国務長官を務めた。同長官時代には、地球温暖化対策の国際的な取り決めであるパリ協定のとりまとめに尽力した。地元報道によれば、環境保護団体や有識者などは、ケリー氏の起用について好意的に捉えている。
2020.11.20
中国:2020年10月の電力需要も順調な増加
国家能源局は2020年11月20日、2020年10月の電力需要実績を発表した。それによると、2020年10月の電力需要は対前年同月比で6.6%増加し、1~10月の累計でも対前年同期間比1.8%増となった。10月の電力需要の内訳をみると、第一次産業、第二次産業、第三次産業、家庭用とも、それぞれ対前年同月比10.9%、7.7%、3.9%、4.0%とすべて増加しており、全分野において電力需要の回復が順調であることを示す結果となっている。
2020.11.19
EU:欧州委員会が海洋エネルギー戦略を公表、洋上風力の目標は2050年に3億kW
エネルギー情報誌は2020年11月19日、欧州委員会(EC)が公表した海洋エネルギー戦略について報じた。これによると2050年にカーボンニュートラル達成のため洋上風力発電の設備量の飛躍的な拡大が求められ、2030年に現在の設備量(1,200万kW)の5倍に相当する6,000万kW、2050年に3億kW設置が目標となる。ECは2050年までの投資額として8,000億ユーロ(約100兆円)が必要と試算しており、目標達成には2030年以降、年間700万kWを新設する必要がある。これは現状の政策では達成が困難と考えられるため、ECは加盟国を巻き込んで新たな政策を議論する必要があると考えている。また、加盟国が個別に事業開発を行う方法では限界があり、国境を越えて国際的な連携を深めて洋上風力事業を加速することが必要と考えている。事業者団体のWindEuropeは、ECによる目標設定を歓迎する一方、目標の実現には港湾整備や電力系統での受入、サプライチェーンに投資が必要であると話している。洋上風力発電はコストダウンが進み発電単価は安価となったが初期投資が大きく、事業開発を進めるには資金調達コストを抑えることが必要で、英国政府が実施している差額決済方式の固定価格買取制度が事業者にとっては望ましいと、WindEuropeは説明している。洋上風力発電は欧州各国が拡大を図っておりEU以外では2050年に英国で8,000万kW、ノルウェーで3,000万kWの導入が見込まれている。
2020.11.19
カナダ:カナダ、2050年までにCO2排出ネット・ゼロを目指す法案提出
カナダのウィルキンソン環境・気候変動大臣は2020年11月19日、2050年までに国内CO2排出量をネット・ゼロとするための施策を講じることを、政府に義務付ける法案を下院に提出した。法案は、5年ごとに排出削減計画の策定と進捗状況を報告することも求める。なおウィルキンソン大臣の所属する与党自由党は議会で過半数を占めていないため、法案成立にはその他の政党の賛成が必要になる。
2020.11.18
英国:ジョンソン首相、脱炭素化に向けた戦略10項目を提示
英国のジョンソン首相は2020年11月18日、脱炭素化に向け同政権が掲げる「グリーン産業革命」の具体的な戦略として10項目のプラン(Ten Point Plan)を発表した。エネルギー関連では、洋上風力の開発(2030年までに4,000万kW)や低炭素な水素製造(2030年までに500万kW)、原子力開発の推進(大型炉の新設やSMR等次世代炉の開発)、電気自動車の導入促進(内燃車の新車販売を2030年から禁止)、家屋や公共施設の省エネ化(断熱性能の改善)が含まれている。その他の項目では、公共交通機関の低炭素化や、航空・船舶からの排出削減、植樹、二酸化炭素回収技術への投資、グリーンファイナンスを挙げている。今後政府は、これら10項目に対し合計120億ポンド(約1兆6,663億円)の公的資金を投じ、さらに民間からの投資も促すことで25万人分の雇用を創出するとしている。
2020.11.17
中国:RCEP協定発足により、太陽光発電の設備輸出拡大を見込む
地元メディアは2020年11月17日、日本を含む15カ国の署名で11月13日に発足した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)について、加盟国への太陽光発電設備などの輸出拡大につながる可能性があると報じた。中国の太陽光発電設備輸出は2019年には前年比37.7%増の8,500万kWであったが、そのうち、RCEP協定国であるベトナム(中国からの輸出全体に占めるシェア9%)、日本(同8%)、オーストラリア(同6%)の3か国で合計輸出額が約48億ドルに達している。地元メディアは今回のRCEP発足で、これら3カ国のほか、インドネシア(関税5%)、カンボジア(同7%)、ラオス(同5%)など加盟国の関税が今後引き下げられるなら、太陽光発電設備などの輸出拡大につながると分析している。
2020.11.17
日本・ASEAN・豪州:日本政府が「アジアCCUSネットワーク」構想を打ち出し
2020年11月17日、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)とEnergy Research Institute Network(ERIN)が共催する3rd East Asia Energy Forumがオンラインで開かれた。この中で経済産業省の川口地球環境対策室長は、日本、豪州、マレーシア、インドネシアなどで各国が取り組む二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)プロジェクトの成果を共有し、アジア全体に展開する「アジアCCUSネットワーク」構想を進める方針を打ち出した。構想の具現化には、日本政府とERIAが共同で取り組む。
2020.11.17
米国:電力など28社、2030年までに新車の100%EV化を目指す業界団体を設立
大手電力のコン・エジソン社、デューク・エナジー社やEV製造のテスラ社など電気自動車(EV)関連企業28社は2020年11月17日、2030年までに米国のすべての新車販売(乗用車およびトラック)の100%EV化を求める業界団体「ゼロエミッション輸送協会(ZETA:Zero Emission Transportation Association)」を設立した。ZETAはEVへの移行を加速させることを求める業界団体で、5つの政策の柱として、(1)成果指向型の(輸送部門の電動化の後押しなど成果を重視した)消費者向けインセンティブの導入、(2)2030年までのEV化を可能とする温室効果ガス排出量・性能基準の策定、(3)連邦政府による充電インフラへの投資、(4)連邦政府による国内製造業への支援、(5)連邦政府と地方政府の協力によるEV技術への研究開発支援を求めている。地元報道によるとZETAは、マーティン・ハインリッヒ上院議員(民主党、ニューメキシコ州)の側近で、同団体の事務局長を務めるジョー・ブリットン氏が設立を主導した。
2020.11.16
中国・パキスタン:パキスタンでの±660kV直流送電案件が完工
国家発展改革委員会は2020年11月16日、パキスタンの北部と南部とを結ぶ±660kV直流送電系統が完工したと発表した。この送電系統は南部のMatiari郡から北部のラホールを結ぶ総延長886kmに達する±660kV直流送電系統で、2015年に合意された中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に含まれる案件である。本案件の総投資額は16億5,800万ドルで、大手国営送配電事業者である国家電網有限公司がBOOT(建設-所有-運営-移転)方式で関与する形で2018年12月1日に着工された。本案件の運用開始により、パキスタンの経済的中心地であるパンジャーブ州や、首都イスラマバードの電力不足の緩和が期待されている。
2020.11.13
チリ・中国:チリ送配電大手CGE、スペインNaturgyが中国国家電網に売却
スペインのエネルギー大手Naturgy(旧ガスナチュラル・フェノサ)は2020年11月13日、同社傘下のチリ送・配電持株会社(CGE)の売却について、中国国家電網グループの国網国際発展有限公司(SGID)と合意したと発表した。Naturgyが保有するCGE株式96.04%の売却額は25億7,000万ユーロ(約3,185億円)になると見られ、Naturgyは約40億ユーロ(約5,000億円)とされる自社の純有利子負債の返済に充てるとしている。今後、本件についてはチリ競争当局による承認手続きが必要とされるが、Naturgyは2021年2月末までに売却手続きが完了すると見込んでいる。今回、売却対象となるCGEは、チリ国内で北部と中央部を中心に配電(9社)および送電(2社)事業を展開し、国内の一般需要家数(合計)の45%を占めており、隣国アルゼンチンやコロンビアでも配電や配ガス事業を手掛けている。一方、SGIDは2020年6月に米国Sempraの事業再編に伴い、同社傘下であったチリ配電大手Chilquintaを22億3,000万ドルで購入しており、今回のCGEとChilquintaをあわせると、全需要家数の57%を占める規模となる。SGIDはチリ国内において、首都圏で供給を行うイタリアEnelの配電子会社Enel Distribución Chileに匹敵する配電事業者(グループ)になると見られている。
2020.11.12
ドイツ:連邦憲法裁判所、脱原子力補償制度の見直しを政府に要求
連邦憲法裁判所は2020年11月12日、エネルギー大手Vattenfallの訴えを認め、脱原子力に伴う原子力発電事業者への補償について定めた原子力法を成立させるよう政府に要求した。憲法裁は2016年12月の判決で、2011年の脱原子力の決定によって生じた損失を事業者に補償するよう、連邦政府に命じていた。補償が認められたのは、VattenfallおよびRWEが所有・運転する原子力発電所であった。これらの発電所は、現行の枠組みでは各原子炉に割り当てられた「2000年以降発電することができる発電電力量(残存発電量)」を確保できないことから、財産権の侵害であると判断された。連邦政府は、事業者に対して未使用分の残存発電量を他社に売却するか、出資比率に応じて政府から補償を受けることを認め、原子力法を改正した(第16次改正)。しかし、法案がEUの国家補助ガイドラインに抵触するかの審査が未だ完了しておらず、改正法が発効していないことが今回「不合理」と判断された。憲法裁は、補償に関する規定がなく財産権の侵害の問題が未解決なこと、事業者が残存発電量を適切な条件で売却できない可能性があることを問題視している。Svenja Schulze連邦環境大臣(SPD)は、憲法裁の判断に対して尊重する姿勢を示したが、2022年までの脱原子力には影響がないと述べた。
2020.11.12
フランス・ドイツ:Total、ドイツのEV充電事業者を買収
エネルギー大手Totalは2020年11月12日、ドイツの冷暖房メーカー大手ViessmannのEV充電事業子会社Charging Solutionsを買収することを発表した。買収額は明らかにされていない。これにより、Totalはドイツで2,000基のEV充電設備を運用することとなる。なお、Totalは2025年までに欧州内で15万基のEV充電設備を設置する目標を掲げており(2019年末現在の設置基数は1万6,000基)、今回の買収は同目標の一環としている。
2020.11.12
米国:DOE、水素関連技術の研究開発・実証における包括的な枠組みを発表
米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)は2020年11月12日、米国における水素および水素関連技術の研究開発・実証(RD&D)のための包括的な枠組みを示す「水素プログラム計画(Hydrogen Program Plan)」を発表した。計画の策定には、エネルギー効率化・再エネ局(EERE)や化石燃料局(FE)、原子力局(NE)、電力局(OE)など様々な局が関わっている。この計画には水素の製造、輸送、貯蔵、変換、アプリケーションの各段階におけるニーズや課題が記載されている。DOE長官であるダン・ブルイエット氏は「水素は、国のエネルギー資源を統合する可能性を持つエキサイティングな燃料資源であるが、経済全体でその可能性を十分に認識するためには、コストを下げ、水素の供給と需要を大幅に増加させる必要がある。これらの問題を解決し、将来のエネルギーの選択肢の一つとして水素を確立するために、全省的な努力と協力が行われることに期待している」と述べている。
2020.11.12
米国:米国で2020年中に運転開始する風力発電は2,300万kW超の見込み
米国エネルギー情報局(EIA)は2020年11月12日、米国で2020年中に運転開始する風力発電は2,300万kWを超え、過去最大になるとの見込みを示した。これは、従来の記録である2012年の1,320万kWを大きく上回る。これは、税制優遇措置である発電タックスクレジット(PTC:Production Tax Credit)は段階的に減額していくことが決まっており、2016年末までに建設を開始したプロジェクトが減額前のクレジット額を受け取るには、原則2020年末(着工後4年以内)までに運転を開始する必要があるためと見られる。直近にEIAが発表した短期エネルギー見通しによれば、2020年の米国の発電量に占める風力の割合は、2019年の7.4%から8.8%に、そして2021年には10.3%まで上昇すると予想される。
2020.11.10
韓国:政府、「グリーン・ニューディール基本法」提案を発議
現地専門紙は2020年11月10日、与党「共に民主党」議員が記者会見で、気候変動および脱炭素社会への移行を内容とする「グリーン・ニューディール基本法」提案を発議したと報じた。同基本法では、(1)2050年カーボンニュートラル達成目標の法制化、(2)脱炭素社会移行のための国家ビジョンと政策目標・推進戦略の樹立、(3)気候危機対応基金の設置などが含まれ、政府が2020年7月に発表した「グリーン・ニューディール(韓国版)」と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が表明した2050年カーボンニュートラル宣言について、法的根拠を設けることを目的としている。
2020.11.10
米国:大手電力AEP社、2030年までに560万kWの石炭火力を廃止
2020年11月10日付のエネルギー専門誌によると、大手電力会社アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP、本社:オハイオ州)は2020年11月9日、2030年までに560万kWの石炭火力を廃止すると発表した。今回、テキサス州のPirkey石炭火力発電所(56万kW)を2023年に廃止すること、ならびにWelsh石炭火力発電所(105万kW)での石炭使用を2028年に停止することを、同社の廃止計画(2020年6月発表)に追加した。同社は2005年に2,480kWの石炭火力(全電源の70%)を所有していたが、2020年には1,210kW(同43%)まで削減し、さらに2030年までに8カ所の石炭火力を廃止することで、石炭の割合を24%まで削減する予定となる。
2020.11.09
英国・チェコ:ロールスロイス社、チェコでのSMR新設に向けCEZと覚書
英国のエンジニアリング大手ロールスロイス社は2020年11月9日、チェコ電力大手CEZと、チェコ共和国における小型モジュール炉(SMR)による原子力発電所建設の可能性を追求する覚書に署名した。ロールスロイス社が率いるSMRコンソーシアムの発電所では、製造プロセスの標準化と屋内組み立てにより、コストダウンや建設期間の短縮化が可能としている。同コンソーシアムは、英国政府と協力して、同国における工場生産型発電所の建設と、同設計の海外輸出を目指している。なお、同コンソーシアムには、同社以外に、Assystem、Atkins、BAM Nuttall、Jacobs、Laing O'Rourke、国立原子力研究所、Nuclear Advanced Manufacturing Research Centre、TWIなどの企業が参加している。
2020.11.03
米国:ネバダ州、RPS「2030年までに50%」の州憲法案を住民投票で承認
ネバダ州では2020年11月3日、再エネ利用割合基準(RPS)に関する州憲法改正案の是非を問う住民投票が実施され、賛成多数で承認された。州内の電力会社に対し、2030年までに電力の50%を再エネから調達することを義務付ける内容である。同州は2019年の州法(SB358)で、既に2030年までにRPS基準を50%再エネに引き上げることに加えて、2050年までに100%クリーン電力とする目標を制定している。住民投票で州憲法改正案が承認されたことにより、今後RPS基準の州議会での変更は難しくなり、実効性が強化される。同州の憲法改正には2回の住民投票で承認を得る必要があり、今回は2018年に続く2回目の住民投票であった。なお州最大手電力のNVエナジー社は、2019年の州法を支持しており、既に100万kWの太陽光発電や10万kWの蓄電池などを設置する計画を推進している。
2020.11.03
英国:世界初となる風力発電によるブラックスタート試験が成功
スペインの大手エネルギー事業者Iberdrolaの子会社Scottish Power Renewables(SPR)は2020年11月3日、スコットランドにあるDersalloch風力発電所(発電設備容量6万9,000kW)の電力によって、世界初となる風力発電によるブラックスタート試験に成功したと発表した。従来、停電状態から系統を立ち上げるブラックスタートは水力・火力発電所等の同期発電機で行われてきたが、SPRは風力タービンメーカーSiemens Gamesa Renewable Energy(SGRE)および送配電系統の運用会社SP Energy Networksと提携し、スコットランド政府から55万ポンド(約7,400万円)の資金援助を受けながら、Dersalloch風力発電所にブラックスタート機能を設けるプロジェクトに取り組んできた。同プロジェクトでは、疑似同期発電機(VSM:Virtual Synchronous Machines)と呼ばれる技術により同期発電機の慣性を模擬しながら発生する電圧と周波数を調整し、安定運転できる単独系統を形成後、停電状態の実系統の一部を復旧することに成功した。従来型の同期発電機の特権であったブラックスタート機能が再エネ電源にも実装可能となったことで、従来型電源の廃止・脱炭素化にもつながる重要な一歩を踏み出したことになる。今後、SPRはSGREと協力し、Dersalloch風力発電所のブラックスタート機能を標準実装とするため、大容量蓄電池を2021年11月までに追加設置する予定である。
2020.11.03
中国:共産党中央委員会、次期5カ年計画の策定方針を採択
中国政府は2020年11月3日、次期中期計画である第14次5カ年計画(2021~2025年)の制定に関して共産党第19回中央委員会第5回全体会議(5中全会)で採択された方針を発表した。この政策方針は、主に2025年までの経済運営方針を示しているが、一部には2035年までの長期戦略方針も含まれている。今回の方針では全部で60項目が示されているが、エネルギー政策については、炭素排出量を2030年までにピークアウトさせるための行動計画の策定や電源構成・送電ルートの最適化、新エネ利用拡大、エネルギー貯蔵能力・遠隔地への送配電能力の強化などのインフラ整備が示されたほか、国有企業への民間資本参加や、競争分野における市場化推進なども示された。
2020.11.02
ノルウェー:Equinor、2050年までのネット・ゼロ目標を発表
石油大手Equinorは2020年11月2日、2050年までに自社のサプライチェーンを含む事業活動全体のGHG排出量を実質ゼロにするネット・ゼロ目標を発表した。同社は2020年初めに、2030年までに自社事業に伴うGHG排出量を実質ゼロにする目標および2050年までにノルウェーでの事業活動を対象にGHG排出量の絶対量をほぼゼロにするという目標を掲げており、今回の発表はこれらに続く新たな目標となる。同社はこれらの目標達成に向け、再エネやCCS、水素等の低炭素技術の開発に力を入れるとしており、中でも再エネの開発に関しては、累計発電設備容量を2026年までに400万~600万kW、2035年までに1,200万~1,600万kWまで増やすという定量目標を掲げ、同社の強みである洋上風力を中心に開発を進めるとしている。また同社は今回発表した新目標に基づき、脱炭素化に向けた戦略を今後数カ月にわたってアップデートするとし、2021年6月に予定しているイベントの場で具体的な新戦略を発表する予定としている。
2020.11.02
中国:政府、2035年までの新エネルギー車産業発展計画を発表
中国政府は2020年11月2日、新エネルギー車産業発展計画(2021~2035年)を発表した。この計画では、2025年までに新車販売における新エネ車(EV、PHEV、燃料自動車を含む)シェアを20%とすることを目標に、充電および換電(電池交換型)サービスの利便性向上に加えて、高度自動運転の商用モデル地区の運用も目指すとしている。そして計画の最終年次である2035年には、新エネ車産業におけるコア技術の国際競争力を高い水準まで引き上げること、あわせて業務用車両の全面EV化、燃料電池車の商業化、自動運転エリアの拡大および充電関連サービスの高度化などの目標も掲げている。また、新エネ車のエネルギー利用にあたっては、太陽光・風力発電電力の利用増につながるようなシステム構築にも言及している。
2020.10.28
米国:DOE、石炭火力の新技術に関する研究開発に8,000万ドル支給
米エネルギー省(DOE)は2020年10月28日、石炭によるネット・ゼロ排出発電や石炭等からの水素製造技術開発に8,000万ドルを拠出すると発表した。これは、DOEが2018年11月に発表している「Coal FIRST」イニシアティブの一環であり、運用性が高く、高効率で、ネット・ゼロ排出を可能とする小型石炭火力(5万~35万kW)の開発を目指すものである。今回は石炭、バイオマス、廃プラスチック等から水素を製造する技術も含まれ、4件のプロジェクトが選定された。
2020.10.28
スペイン:Iberdrola、2027年までに80万kWの水素製造装置設置を計画
スペインの大手エネルギー事業者Iberdrolaは2020年10月28日、グリーン水素製造について化学品メーカーFertiberiaと提携し、2027年までにスペイン国内に計80万kWの水電解装置を設置する計画を発表した。同国政府は2030年までに400万kWの水電解装置の設置目標を掲げており、その2割を占めることとなる。製造されたグリーン水素はFertiberiaのアンモニア製造に用いられ、天然ガス消費量の削減が期待されている。投資額は18億ユーロ(約2,250億円)であり、Iberdrolaはこの大規模な計画を実現するため、EUやスペイン政府からの支援の必要性を訴えている。両社は2020年7月、2万kWの水電解装置を設置して2021年から水素を製造する計画を発表しており、今回の計画はこれに続くものである。
2020.10.28
中国:政府、全国レベル排出量取引の次期五カ年計画期間中の実現を企図
生態環境部(日本の環境省に相当)は2020年10月28日の記者会見で、炭素排出量取引の試験運用に関する実績を明らかにした。中国では炭素排出量取引について地域・産業限定で試験運用を2011年から実施しているが、2020年8月末までに鉄鋼、電力、コンクリート製造業など20以上の産業における延べ3,000社近くの企業が中国内7カ所のモデル市場の試験取引に参加し、その累計取引量は4億t以上、取引金額は90億元(約1,350億円)を超えた。生態環境部はこうした試験運用を進めたことで、取引規則、評価基準など法規整備や経験の蓄積が進んだことから、全国統一市場運用を目的としたプラットフォームの構築を次期5カ年計画期間中(2021~2025年)に実現する目標も示した。
2020.10.28
中国:広西チワン族自治区の柳州市、スマートグリッド構築の協定締結
現地紙は2020年10月28日、大手送配電事業者である南方電網有限公司が、南部の広西チワン族自治区の自治体とスマートグリッド構築に関する協力協定を締結したと報じた。南方電網傘下の広西電網公司を通じて、広西チワン族自治区内の柳州市政府とスマートグリッド構築5カ年計画に関する協力協定を締結するもので、この計画には70億元(約1,050億円)が投じられる予定である。柳州市は広西チワン自治区の中部に位置し、人口は404万人で、自動車、鉄鋼業、医薬品などを主要産業としており、特に重機・建機の生産拠点としての産業基盤がある。柳州市政府は、これまでもスマートシティ建設を積極的に進めており、現行の第13次五カ年計画中(2016~2020年)も物流設備近代化に54億元(約810億円)以上を投じて新エネ車(EV・PHEV・燃料電池を含む)ネットワークを構築した実績を有している。次期5カ年計画(2021~2025年)では、市内全域における電力系統の自動化をはじめとしたスマートグリッド総合モデルの構築を目標としている。
2020.10.26
欧州:環境保護団体、欧州での新規水力開発の中止を要求
約150の環境保護団体らは2020年10月26日、欧州における新規の水力発電所の開発中止を求める声明書を発表した。同書では、水力発電が河川の生態系を破壊しているとの認識を示し、公的資金は新規水力発電所の開発ではなく、廃止されたダムの撤去や、風力や太陽光発電などの開発に分配すべきとの要求が示されている。これに対して国際水力協会(IHA)は、水力発電は世界最大の再エネとして気候変動対策において重要な役割を果たしており、河川および生物保護の観点で相反するものではないと回答している。
2020.10.23
米国:蓄電池システム価格、2015年から2018年の間で約70%低下
米国エネルギー情報局(EIA)は2020年10月23日、米国における大規模蓄電池システムの蓄電容量(kWh)当たりの平均コストが、2015年から2018年の間で2,152ドル/kWhから625ドル/kWhへと急速に(約70%)低下したとの調査報告を発表した。同報告では蓄電池の利用目的の違いも地域別に分析されている。PJM地域では、蓄電池が主に系統周波数の数秒レベルの維持・調整目的に使用されている。一方、カリフォルニア州では蓄電容量の約3分の2は周波数調整に使用されているが、その他のアンシラリーサービス(ブラックスタート含む)や送電線混雑の緩和など、電力量(エネルギー)を提供するサービスにも使用されている。EIAは今後数年間で全米の蓄電池システムは690万kW以上増加すると予想している。
2020.10.22
米国:大統領選テレビ討論会、バイデン氏「石油産業からの移行」と発言
米国大統領選の最後のテレビ討論会が2020年10月22日、テネシー州ナッシュビルで開催された。前回に続き気候変動が議題に取り上げられ、エネルギー・環境政策について論戦が交わされた。とりわけ、民主党のバイデン前副大統領が気候変動の脅威と闘うために「石油産業からの移行」を望み、「石油産業は、著しく大気を汚染する。時間の経過とともに再エネに置き換える必要がある」と発言したことが注目を集めた。共和党のトランプ大統領は、この発言を受けて「ビジネスへの影響が極めて大きい発言だ。バイデン氏は石油産業を破壊しようとしている」と産油州の有権者に呼び掛けた。これについて、産油州の民主党連邦議員はバイデン氏の発言から距離を置いている。スモール下院議員(ニューメキシコ州)が「我々は責任あるエネルギー生産を促進し、気候変動を防止するために協力する必要がある。特定の産業を悪者にはしない」と発言した他、ホーン下院議員(オクラホマ州)は「同氏の発言に同意しない」と反応した。バイデン氏は討論会後、自身の発言について「化石燃料への補助金は廃止するが、化石燃料をなくすことは今後しばらくない」と軌道修正を行っている。
2020.10.21
中国:中国産の第3世代炉「華龍1号」、世界初の臨界状態へ
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2020年10月21日、中国産の第3世代炉「華龍1号」を採用した福清原子力発電所5号機(福建省、PWR、115万kW)が臨界状態に達していることを発表した。「華龍1号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)の開発技術を統合・開発した炉型で、海外を含む7基(パキスタン2基、国内5基)が建設中である。同発電所5号機の臨界は同炉型において世界初となる。
2020.10.20
フランス:脱石炭後の石炭火力発電所敷地でグリーン水素製造を計画
チェコのエネルギー事業者EPHのフランス子会社であるGazelEnergieは2020年10月20日、エネルギー大手Engieの子会社であるStorengyと提携し、GazelEnergieが所有するフランス東部のÉmile-Huchet石炭火力発電所の敷地内で水素を製造する「Emil’ Hy」プロジェクトについて発表した。フランスでは2022年までにすべての石炭火力発電所が廃止される予定であり、同プロジェクトでは最大5万kWの水電解装置が設置され、既設送電設備を通じて地元の再エネ発電所からの給電を受け、2023年からグリーン水素の製造を開始する。製造された水素はバス等の燃料として供給される。2025年以降は5万~10万kWの水電解装置により水素を製造し、岩塩層へ水素を貯蔵することも計画されている。
2020.10.20
ドイツ・デンマーク:50HerzとEnerginetが洋上風力で世界初の試み
ドイツの送電系統運用者(TSO)50HertzとデンマークのTSOであるEnerginetは2020年10月20日、ドイツ~デンマーク間の複合グリッドソリューション(CGS: combined grid solution)が正式に稼働したと発表した。CGSは、バルト海の洋上風力発電所Baltic1とBaltic2と、同じく現在バルト海に建設中の洋上風力発電所Kriegers Flakを相互に25kmの海底ケーブル(20万kW)で接続するもので、国境を越えた再エネの取引が柔軟になり、系統安定性の向上に寄与できるとしている。
2020.10.19
米国:Lazard社、事業用太陽光のコストは陸上風力より急速に低下
発電技術別の発電コストを毎年公表しているLazard社は2020年10月19日、2020年版の米国内における均等化発電原価(LCOE:Levelized Cost of Energy)を公表した。事業用太陽光および陸上風力は3.1~4.2セント/kWh、2.6~5.4セント/kWhとなり、それぞれ過去5年平均で年率11%、5%低下した。米国の再エネ等に適用される税制優遇措置(ITC:Investment Tax Credit、PTC:Production Tax Credit)を考慮すると、新設の事業用太陽光と陸上風力のLCOEは、既設の石炭、原子力、天然ガス発電の運転コストと競争できる水準であるという。また同社は、今回初めて水素のコスト分析を示しており、水素を20%混合した天然ガス発電のLCOEは、ブルー水素で8.8セント/kWh、グリーン水素で12.7セント/kWhとなった。
2020.10.19
フランス:政府、冬季に向けたデマンドレスポンス入札で150万kWを確保
ポンピリ環境移行・連帯大臣は2020年10月19日、2020~2021年冬季の安定供給確保に向け実施したデマンドレスポンス入札により、約150万kWの設備容量に相当する59件のプロジェクトを落札したことを発表した。政府は2020年6月、新型コロナの影響により原子炉保守工事が延期されたこと等を受け、冬季の安定供給確保のために複数の支援措置を発表していた。今回の入札はその一環で、落札量引き上げのために、最高入札価格を60ユーロ(約7,200円)/kWへ引き上げる等の支援強化が行われた。これにより、落札量は昨年度からほぼ倍増した。
2020.10.19
中国:2大送電事業者、初の合弁会社を設立
現地専門紙は2020年10月19日、2大送電事業者である国家電網公司と南方電網公司が合弁会社を設立したと報じた。設立されたのはミンユエ(闽粤)連系電力事業運営有限公司で、資本金は4億8,000万元(約72億円)、出資比率は国家電網55%、南方電網45%である。同社は、福建省と広東省間にある連系関連施設の建設・管理・運営を事業内容とするが、両社による合弁は、2002年の設立以来初めてである。
2020.10.16
米国:ドミニオン社、米国で2番目となる洋上風力発電の商業運転を開始
2020年10月16日付の業界紙によると、バージニア州の大手電力会社ドミニオン社は、同社の洋上風力実証プロジェクト(CVOW:Coastal Virginia Offshore Wind)の信頼度テストを完了し、商業運転を開始すると発表した。同プロジェクトは、バージニアビーチの沖合27マイルに位置し、風力タービン2基(合計1万2,000kW)により州内3,000世帯へ電力を供給する。米国では2番目の洋上風力であり、連邦管轄水域内への設置、また電力会社による所有としては米国初である。今後、同プロジェクトは、海洋エネルギー管理局(BOEM)によるテクニカルレビューを受ける。このレビューは2020年末までかかる予定であるが、レビュー中も運転は継続される。ドミニオン社は同プロジェクトを通じて、大規模洋上風力導入(260万kW、2024年建設開始予定)に向けた知見を蓄えることが可能となる。
2020.10.16
EU:2030年の排出削減目標引き上げにチェコが条件付きで同意
エネルギー情報誌は2020年10月16日、EUの排出削減目標引き上げにチェコが条件付きで同意すると報じた。EUは2030年の温室効果ガス排出削減目標の引き上げを議論しており、欧州委員会は「少なくとも40%削減」を「55%削減」とすることを提案している。これに対して石炭への依存度が高いポーランドとチェコは「現実的ではない」と反対する立場を示していた。10月15、16日に開催された加盟国首脳会議で目標引き上げについて意見交換が行われ、チェコのアンドレイ・バビシュ首相は多くの加盟国が目標引き上げを求めていることを考慮し、条件を付した上で目標引き上げに同意する意向を明らかにした。この条件とは、排出削減目標はEU全体で対応するもので個別加盟国の目標としないこと、チェコが進める原子力開発を欧州委員会が支援することである。12月に開催される加盟国首脳会議で目標引き上げを決定すると見られる。
2020.10.16
中国:2020年9月の電力消費、対前年比7.2%増加
国家能源局は2020年10月16日、2020年9月の電力需給状況を公表した。2020年9月の消費電力量は6,454億kWhと前年同月比7.2%増となった。これを産業別でみると、第一次産業は85億kWh(同11.6%増)、第二次産業は4,108億kWh(同8.6%増)、第三次産業は1,162億kWh(同5.1%増)、民生用は1,099億kWh(同4.0%増)となっており、第一次、第二次産業の生産活動が旺盛であることを示している。2020年1~9月までの累計では、前半においては新型コロナの影響があっため前年同期比1.3%の微増にとどまっているが、影響の少なかった第一次産業と民生用はそれぞれ同9.6%、6.0%と大幅増加となった。
2020.10.14
中国: 2060年まで風力発電30億kW開発の北京風力宣言を発表
現地専門紙は2020年10月14日、北京市で開催された風力発電に関する国際会議において、2060年までに風力発電を30億kWまで開発する「風力北京宣言」が発表されたと報じた。この会議は、400名余りが参加する国際会議「2020年北京国際風力大会」で、上記の2060年までの風力開発目標のほか、策定中の第14次5カ年計画期間中(2021~2025年)には年間平均5,000万kW以上、2025年以降は年間平均6,000万kW以上の風力を開発し、2030年までに8億kWを導入するなどの段階的計画も提案された。同宣言は、習近平国家主席が国連総会一般討論(2020年9月22日)で示した「2060年までのカーボンニュートラル」表明を引き合いに出し、風力開発拡大は、景気回復と気候変動への取り組みという長期目標と合致するとしている。
2020.10.13
米国:ルイジアナ州で過去最大級のCO2貯留プロジェクトが発表される
2020年10月14日付のエネルギー専門誌によると、Gulf Coast Sequestration(GCS)社は2020年10月13日、ルイジアナ州南西部の工業地域近くにCO2地中貯留施設を計画していると発表した。地域のCCSハブとして計画するもので、CO2貯留容量は年間270万トンとなり、これは現在の米国内最大規模であるイリノイ工業CCSプロジェクトの約3倍に達する。GCS社は環境保護庁(EPA)にCO2貯留施設認定であるClassⅥ施設の初期段階の申請を行っている。一方ルイジアナ州はEPAに対し、ClassⅥ施設認定の州への権限移譲を申請しており、認可されれば州政府による施設認定が可能となり、より速やかな手続きが期待される。
2020.10.10
中国:政府、新エネ車産業発展計画を決定
現地専門紙は2020年10月10日、国務院(日本の内閣に相当)は10月9日に開催された常務会で「新エネ車産業発展計画」を策定したと報じた。現時点では計画文書は未公開であるが、公共用の電気自動車(EV)用充電スタンドの新設への財政支援適用が含まれているとみられる。同計画ではこれに加え、2021年以降は重点地域において、路線バス、タクシー、物流配送用トラック等の商用車における新規導入台数に占める新エネ車の割合を80%以上に設定したと報じられている。
2020.10.10
米国:トランプ大統領、太陽光パネルの輸入関税強化に向け大統領布告
トランプ大統領は2020年10月10日、現在施行中の太陽光パネルに対する輸入関税において、税率の引上げと両面太陽光パネルに対する免除措置の撤廃を行うとの考えを大統領布告(A presidential proclamation)で明らかにした。2018年に税率30%で始まった同関税は2021年に税率が15%になる予定であるが、これを18%に引き上げるという。また大統領は2022年に失効する同関税を延長すべきかどうかを評価するよう米通商代表部長官に指示した。エネルギー専門誌によれば、2020年の太陽光発電設備の開発容量は前年比37%になると予想されており、2017年以来最大のパネル輸入量になっているという。
2020.10.07
EU:欧州議会、2030年GHG排出削減目標を60%へ引き上げる指示を採択
欧州議会は2020年10月7日、欧州気候法案(European Climate Law)を修正し2030年GHG排出削減目標を現行の1990年比40%減から60%減に引き上げる指示を賛成392票、反対161票、棄権142票で採択した。欧州委員会が2020年9月、同目標を1990年比で少なくとも55%減とする計画を発表したばかりだが、欧州議会はさらにハードルを上げ、各加盟国の目標は費用対効果の高い公正な方法で引き上げられるべきとし、政策の一貫性を評価し進捗状況を監視する独立系科学機関としてEU気候変動理事会を設置する考えを示した。また、EUの2050年カーボンニュートラル達成を確実にするため、欧州委員会が2040年の暫定目標を提案することも求めている。さらに、EUと加盟国は遅くとも2025年末までに、すべての直接・間接的な化石燃料の補助金を段階的に廃止しなければならないことも付け加えた。今後、欧州理事会が欧州議会の修正案内容に合意すれば、欧州議会は各加盟国との目標達成に向けた交渉等を開始する。
2020.10.07
スペイン:スペイン政府が2030年までの水素戦略を策定
エネルギー情報誌は2020年10月7日、スペイン政府が再生可能エネルギーによる水素製造を促進するための戦略を策定したと報じた。欧州委員会やドイツ、フランスなども水素戦略を策定しており、スペイン政府の戦略策定もこの動きに沿ったもの。スペイン政府はガス貯蔵設備やパイプライン、豊富な太陽光発電、風力発電を活用して水素を製造し、輸出することが可能と考えており、2030年の電解装置設備量で400万kWを目標とする。スペインでは現在、化石燃料を原料に年間50万tの水素を製造しており、これに伴い500万tのCO2が排出されている。今回策定した戦略では製造している4分の1の水素を再エネ起源のグリーン水素で置き換えることになる。10年間の投資金額は89億ユーロ(約11兆1,000億円)が見込まれ、民間資金を呼び込む方針でIberdrolaなど大手エネルギー事業者は再エネを活用した水素製造事業の検討を開始している。
2020.10.06
米国:カリフォルニアISO他、輪番停電の原因に関する中間報告書を公表
カリフォルニア州の独立系統運用事業者であるCAISO、公益事業委員会(CPUC)、エネルギー委員会(CEC)は2020年10月6日、同州において8月14、15日に発生した輪番停電の根本原因分析を実施し、その中間報告書を公表した。これら3者は2020年8月19日、ギャビン・ニューサム知事からの要請を受けて、報告書の作成を約束する共同回答書を提出していた。中間報告書では、(1)資源計画(resource planning)策定プロセスが気候変動に起因した猛暑に対応していないこと、(2)再エネを中心としたエネルギーミックスの移行途上で夕方のピーク需要を十分に満たす電源を確保できていないこと、(3)卸電力市場の一部機能が猛暑による需給逼迫下で正常に働かなかったことを根本原因と特定している。また、同報告書は、2021年以降の安定供給確保のため、資源計画の見直しなど直ちに着手すべき事項についても触れている。最終報告書は2020年末までに作成される見込みである。
2020.10.05
米国:2019年の天然ガス生産、消費、輸出がこれまでの最高を記録
米国エネルギー情報局(EIA)は2020年10月5日、2019年の天然ガス生産、消費、輸出量がこれまでの最高を記録したと発表した。2019年は2018年と比較して、天然ガスの生産が10%、消費が3%、輸出が29%増加した。輸出量は5年連続で増加し、特にLNGでの輸出が増加をけん引している。天然ガスパイプラインでは、1985年に統計を取り始めて以降初めて輸出が輸入を超えた。これは、メキシコへのパイプラインが増強され輸出が増えたことによる。国内でのガス消費については、産業、一般家庭、商業は横ばいであるが、発電用が7%増加しており、増加分はほぼ発電用によるものである。
2020.10.02
中国:山西省の7大炭鉱企業が合併し、全国最大の石炭生産者へ
現地専門紙は2020年10月2日、山西省政府が省内における7大主要石炭生産者を合併する方針を近く発表すると報じた。合併の対象となる石炭生産者は同煤集団、晋煤集団、晋能集団、潞安集団、焦煤集団、陽煤集団、山煤集団であり、合計の年間売上高は8,200億元(約12兆3,000億円)、年間石炭生産能力は5億t以上となるものとみられる。合併が成立すれば、合併後の新会社は現時点で中国最大の石炭企業・発電企業である国家能源集団(2019年の売上高は5,561億元:約8兆3,420億円)を上回る規模となる。
2020.09.30
米国:NextEra Energy社、デューク・エナジー社の買収を検討との報道
現地新聞は2020年9月30日、NextEra Energy社がデューク・エナジー社の買収を検討していると報じた。報道によると、デューク社はNextEra社からの受けた買収提案を拒否したとのこと。NextEra社は敵対的買収に発展する可能性を否定している。両社はノースカロライナ州、フロリダ州、オハイオ州などで事業を展開しており、買収には複数の州規制当局から承認を得る必要がある。買収価格は600億ドル超と試算され、買収が成立すれば時価総額2,000億ドル規模の電力会社が誕生することとなり、電力業界では最高額になるものと見込まれる。
2020.09.30
欧州:バルト海沿岸8カ国が洋上風力発電の推進で協力を確認
エネルギー情報誌は2020年9月30日、ポーランド風力協会が主催する洋上風力発電の会議でバルト海沿岸8カ国の政府代表が、洋上風力発電の推進で協力することを確認したと報じた。8カ国はポーランド、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、リトアニア、エストニア、ラトビアである。会議では、国内外の気候変動やエネルギーに関する目標を達成するためには洋上風力の開発は必須であるため、洋上風力開発に関する海域計画の策定や海洋環境の保護などで協力することを確認した。EUの2050年目標達成には、洋上風力を現在の2,300万kWから2050年に最大4億5,000万kWまで拡大させる必要がある。現在、洋上風力発電の開発は北海が多いが、バルト海沿岸諸国も導入促進に向けた法整備を行うなどの議論が活発になっている。
2020.09.30
中国:石油・ガス大手三社、輸送・貯蔵事業を一括移管
国家石油天然ガス管網集団有限公司(Pipe China)は2020年9月30日、中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団(SINOPEC)、中国海洋石油集団(CNOOC)の国有石油・ガス大手3社から、石油・ガス輸送、貯蔵事業の移管契約を締結したと発表した。これにより、国有大手3社の輸送・貯蔵事業が分離され、Pipe Chinaが一括管理することになった。Pipe Chinaの資本は政府(国務院)の国有資産監督管理委員会が40%、残りは3社に対して移譲資産の対価として付与された60%とで構成されているが、同社の増資計画について国内の年金基金、保険基金など6社との協議が進められている。
2020.09.25
中国:政府、スマートグリッドやエネ貯蔵設備などを戦略産業に指定
中国国家発展改革委員会(NDRC)は2020年9月25日、「戦略的新興産業への投資拡大と新成長促進に関する指導意見(指針)」を発表した。この中で、デジタル分野やバイオ産業分野のほか、エネルギー分野では新エネルギーおよび省エネを戦略的新興産業分野として研究・投資拡大を促進する方針を明らかにした。エネルギー関連の個別産業項目としてはスマートグリッド、マイクログリッド、分散型エネルギー、新型エネルギー貯蔵設備(ESS)、水素製造設備などのインフラ建設、石炭火力発電技術、原子力、非在来型エネルギー探査などが示されている。
2020.09.24
米国:連邦議会下院、包括的なクリーンエネルギー法案を可決
連邦議会下院は2020年9月24日、1,350億ドルを投じてクリーンエネルギー技術を後押しする、クリーン経済・雇用・イノベーション法案(H.R.4447)を220対185の賛成多数(採決では共和党7人が賛成、民主党18人が反対)で可決した。法案には、(1)化石燃料からの炭素排出の削減のため、太陽光、風力、地熱、水力、先進的な原子力発電、エネルギー貯蔵、炭素回収・隔離などの技術研究開発プログラムの創設、(2)電力網の近代化、(3)運輸部門の電化、(4)エネルギー効率化、(5)建築基準、耐候化の取り組み強化などが含まれる。上院には、同法案と類似したエネルギー・イノベーション法案(S.2657)が超党派で議論されている。地元報道によると、上院では最高裁判事の承認に関する闘争などもあり、S.2657の審議の見通しは立っていない。なおホワイトハウスは9月21日、下院法案について、「政権の規制緩和政策を損ない、米国のエネルギーコストを上昇させる」と反対を表明している。
2020.09.23
米国:カリフォルニア州、2035年までに化石燃料使用の新車販売を禁止
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は2020年9月23日、化石燃料を使用するすべての乗用車およびトラックの州内での新車販売を2035年までに禁止する知事令(Executive Order N-79-20)に署名した。熱波や山火事の原因となる気候変動問題が深刻化する中、同州の温室効果ガス排出量の約41%を占める運輸部門に対処することが目的である。同知事令はまた、充電インフラの構築努力を関係機関に求める内容ともなっている。州内の電力会社は、今後数年間で自動車、バス、トラックに向けたEV充電インフラに10億ドル以上の投資を行う予定であり、今夏、Southern California Edison社は小型EV充電器3万8,000台の設置に4億3,600万ドル、中・大型車用の商用充電ステーション870カ所以上の整備に3億5,600万ドルを投資することを規制当局から承認されている。
2020.09.22
中国:習近平国家主席、2060年までに炭素中立を目指すと国連で表明
習近平国家主席は2020年9月22日、国連の一般討論で中国のCO2排出量について、2030年までにピークを迎え、2060年までに炭素中立(カーボンニュートラル)を目指すと述べた。習主席はまた、世界各国は経済の「グリーン回復」を図り、持続可能な発展に向けて結集しなければならないとも呼びかけた。
2020.09.22
英国:欧州司法裁判所、英ヒンクリーポイントC計画への補助無効化要求を棄却
欧州司法裁判所は2020年9月22日、EDFエナジーが建設中の英国ヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画への英国政府からの国家補助について、無効とするよう同裁判所に上告していたオーストリア政府の訴えを棄却した。オーストリア政府は反原子力政策を掲げており、欧州委員会が2014年10月に同補助を承認したことに対し、国家補助規制に違反し、域内の市場競争をゆがめるとし、2015年7月に第一審裁判所へ提訴した。しかし2018年7月に同訴えが棄却されたことから、オーストリア政府は欧州司法裁判所へ上告していた。同補助は、固定価格買取制度(FIT-CfD)の適用、政治的理由で早期閉鎖となった場合の補償、発行債券に対する政府による最大170億ポンド(約2兆3,105億円)の信用保証、の3つによって構成される。
2020.09.21
フランス:Engie、2つの新組織に再編か
2020年9月21日付の業界誌によれば、エネルギー大手Engie会長Clamadieu氏は、2020年9月9日に開催された欧州労使協議会において、組織を簡素化し「新Engie」と「新ソリューション」の2つの新設グループに再編する計画を説明した。「新Engie」には、電力・ガスネットワーク、地域熱供給、再エネ、電力・ガスの小売等の事業が統合され、「新ソリューション」には、現在の顧客ソリューション部門が実施する需要家向けの冷暖房設備、電気設備、分散型発電設備等の設計・設置・運用等の事業が属することとなる。残る火力、原子力、および水道・廃棄物処理等の事業は売却の可能性もあるとされる。この説明に対し従業員代表は、「事業戦略の遂行に深刻な支障を来す提案であり同意できない。また雇用への大きな影響も懸念される」と述べている。なお、同社は2020年7月末、顧客ソリューション部門の戦略的レビューを行い、同部門売上高の3分の2を占める事業活動を対象に、グループ戦略との整合性をもとに活動を見直す計画を発表していた。
2020.09.18
中国・米国:電機大手の上海電気、米国企業とドバイで太陽光発電所を建設
現地紙は2020年9月18日、電気機器大手の上海電気がこのほど、米国の太陽光設備大手のNextrakerとUAEのドバイで太陽光発電所の建設に向けて協力することで合意したと発表した。上海電気が受注したMohammed Bin Rashid太陽光発電所において今回建設される第5期プロジェクト分の設備容量は100万kWで、同発電所全体の設備容量は500万kWに達する見通しである。今回の合意に基づいてNextrakerは、上海電気に対して同社の太陽光追尾システムを供給する。ドバイは、2050年までに都市で供給されるエネルギーの75%を再生可能エネルギーで賄う計画を掲げている。
2020.09.17
中国:政府、送配電事業者の非中核事業分離加速化を要求
現地紙は2020年9月17日、李克強首相が主催した国務院常務会議が、送配電事業者の競争環境下における非中核事業の分離を加速化するよう求めたと報じた。国家電網など送配電事業者の傘下には、許継集団や平高集団といった大手電力関連機器メーカーなどが含まれており、2019年の共産党委員会による検査報告でも、そうした非中核事業の分離が求められていた。なお、今回の常務会議では、これとともに、電力業務のオンライン化および手続き所要時間短縮化の2020年中の全国実施、一般需要家(住宅)の電力業務のオンライン化の2022年までの実現、石油・ガスインフラの公平な開放なども指摘された。
2020.09.16
中国:政府、バイオマス発電の補助金に競争入札を適用
現地専門紙は2020年9月16日、中国政府がごみ発電やバイオガス発電を含むバイオマス発電に対して、2021年1月以降は補助金に競争入札を適用することを決定したと報じた。国家発展改革委員会、財政部、国家能源局が連名で発表した「バイオマス発電案件の建設・運営の改善に関する実施方案(計画)」において、2020年度のバイオマス発電向け国家補助額が15億元(約225億円)と設定され、これを系統連系の早い案件から支給すると決めた。一方で2021年1月以降の案件(承認済み未着工分を含む)に関しては、競争入札を実施して補助額の割当を決める方針が記されている。併せて、2021年以降の補助金は国家と地方政府が分担し、その分担比率は地域ごとに決定する方針も示された。
2020.09.16
ポーランド・チェコ:GHG排出量削減目標引き上げに東欧では懸念
ポーランド気候省は2020年9月16日、欧州委員会が2030年までのGHG排出量削減目標を現行の1990年比40%削減から、少なくとも55%削減に引き上げるという提案に対し、懸念を表明した。ポーランドは、より高い目標をどのように達成するかを欧州委員会が明らかにしていない点を批判し、目標を引き上げるのであれば石炭依存度の高い国の状況を考慮して排出権取引制度(ETS)等の大幅な改革が必要だと訴えている。またチェコではHavlicek産業貿易相が、EUのグリーンディール政策を十分に理解しているものの、重要なことは個々の国にどのように影響するかを考慮することであると述べた。同相は、欧州全体が新型コロナに対応している現実を見ても、それぞれの国によって状況が異なっており、チェコにとっては2030年までに55%削減は非現実的であるとしている。
2020.09.16
EU:欧州委員会が2030年排出削減目標を55%とすることを提言
エネルギー情報誌は2020年9月16日、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が一般教書演説で2030年の排出削減目標を55%へと引き上げることを提言したことを伝えた。EUの2030年温室効果ガス排出削減目標は「少なくとも40%削減」となっているが、現状の排出削減状況やパリ協定で目標とする温度上昇1.5℃以内とするための排出量を踏まえ、50~55%に引き上げることが議論されており、経済や社会全体への影響について詳細分析が行われていた。同委員長は、「55%への引き上げは野心的かつ達成可能で、欧州にとって有益である」とし、詳細分析結果について「我々の経済と産業は対応できる」と説明した。目標引き上げに当たっては農業やエネルギー、運輸などすべての部門で行動する必要があり、2021~2027年の予算や新型コロナ後の経済刺激策を通じて相当の資金を投入することになる。目標引き上げは、欧州議会と加盟国で構成する理事会の合意が必要であるが、既に懸念を表明している加盟国もあり、最終的な合意には時間を要する可能性もある。2020年6月、ポーランドなど東欧6カ国は欧州委員会に共同で書簡を提出し、気候変動目標は現実の社会、経済コストを考慮して決定すべきで、55%は高すぎると主張している。
2020.09.15
米国:テラパワー社とCE社、先進型炉用濃縮ウラン生産の投資計画を発表
米国テラパワー社とCentrus Energy(CE)社は2020年9月15日、濃縮度5~20%の濃縮ウラン(HALEU:high-assay, low-enriched uranium)の米国内商業規模の生産計画を発表した。HALEUはテラパワー社とGE日立が発表したナトリウム発電・エネルギー貯蔵システムを含む多くの先進型炉用燃料に必要とされる。今回の計画は、米国エネルギー省(DOE)の先進型炉実証プログラム(ARDP)の要件にも合い、今後5~7年間に導入を支援する二つの先進型炉の一つにナトリウムが選ばれた場合、HALEUと金属燃料集合体を商業規模で生産することを提案している。CE社は現在、DOEとの3年間の1億1,500万ドルの費用分担契約に基づき、オハイオ州パイクトンで16台のAC-100M型遠心分離機を使用したHALEU生産の実証作業中だが、2022年半ばの同作業完了後、テラパワー社と協力してプラントを拡張し、ナトリウム実証炉の燃料製造にかかる予定である。
2020.09.14
米国:Google、2030年までに毎時のカーボンフリー達成を目指す
Googleは2020年9月14日、2030年までに世界中のデータセンターなど自社事業に使用する電力を24時間365日、1時間単位でカーボンフリーにすると発表した。同社は、2007年にはクレジット購入等を活用しカーボンニュートラルを達成した。2017年以降は、自社が年間で使用する電力量に相当する再生可能エネルギーを調達している。今回は2030年までに、自社の電力需要とカーボンフリーの電力調達を、同じ地域のグリッド内にて、1時間単位で一致させることを目指す。達成に向けて供給面では、コスト競争力が高まった太陽光、風力、蓄電池を活用しつつも、再エネ資源が限られる地域では先進的な原子力やグリーン水素など新技術による電力供給の実現を模索し、大手企業の中で一番乗りを目指すという。需要面では、緊急ではない計算タスクをカーボンフリーの電力供給が多い時間帯、地域に移すことなどに取り組み、AI(人工知能)技術を駆使して自社需要とカーボンフリーの電力調達の最適化を追求する。こうした取り組みにおいて、電力会社との新しいパートナーシップを追求する機会が生まれると説明している。
2020.09.14
EU:2020年上半期の電力の再エネ比率は40%、火力が減少
欧州電事連(Eurelecric)は2020年9月14日、2020年上半期の発電実績と今後の見通しをホームページで公表した。これによると、石炭火力の閉鎖と再生可能エネルギーの増加により、2020年上半期の3分の2の発電量はCO2排出のない原子力と再エネが占め、再エネ比率は40%に達した。一方の火力発電は前年より18%減少することになった。再エネの増加傾向が顕著で、発電に占める割合は2010年に20%であったが2019年に34%となり、今後もこの傾向は継続するとEurelectricは見ている。今後の動向については新型コロナ感染拡大による経済への影響にかかわらず、2030年にはCO2排出のない電源で80%を供給することが可能としている。今後の課題として、再エネ電源開発に伴う許認可手続きの簡素化、EV充電装置など電化促進のためのインフラ整備、近年拡大しているEU域外の石炭火力からの電力輸入の停止を挙げている。
2020.09.08
ポーランド:長期エネルギー戦略PEP2040更新版、原子力新設を明記
ポーランド気候省は2020年9月8日、パブリックコメントを経た2040年までの「長期エネルギー戦略」(PEP2040:Poland Energy Policy 2040)の更新版を発表した。同案は、公正なエネルギー移行やゼロエミッションエネルギーシステムの構築などを謳うもので、2040年までに発電設備容量の半分以上をゼロエミッション電源で賄うとし、2033年に原子力発電所初号機(設備容量100万~160万kW)の運開を目指すとともに、以降2~3年間隔で計6基を建設する計画である。エネルギーミックスにおける石炭火力の発電シェア(現在は約8割)については、二酸化炭素排出権価格に依存するとしており、同価格が低い場合のシナリオ(56%)および高い場合のシナリオ(37.5%)を想定している。ポーランドはシレジア地域等、鉱山地域のエネルギー移行のために600億ズロチ(約1兆7,000億円)をEU基金から受け取る予定である。
2020.09.08
米国:NYISO、電力貯蔵設備へ新ルール適用で参入促進に期待
ニューヨーク独立系統運用機関(NYISO)は2020年9月8日、電力貯蔵設備の参入障壁を撤廃し、市場への全面参加が可能になったと発表した。これにより、蓄電池、フライホイール、揚水発電等の電力貯蔵設備は、電力市場・容量市場・アンシラリーサービス市場に制約なく入札することが可能となった。従来の規則では、市場入札する電力貯蔵設備に対し、最低容量や最低稼働時間に関する参入要件が定められていた。今回の決定は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が系統運用者に対して電力貯蔵設備が市場に参入する際の障壁を排除することを求めたオーダー841を受けた対応である。NYISOは、市場参入の機会が広がったことで電力貯蔵設備開発事業者の更なる投資が期待されるとコメントした。
2020.09.06
米国:DOE、カリフォルニア州の停電を回避するために緊急指令を発令
米国エネルギー省(DOE)は2020年9月6日、カリフォルニアISO(CAISO)からの要請を受け、連邦電力法(FPA:Federal Power Act)第202条(c)に基づいた安定供給維持のための緊急指令を発令した。これにより、9月6~13日までの期間、CAISOは環境規制や電力市場による制約を受けずに、同管内の特定の電源を最大10万kWまで追加調達することが可能となった。DOEのブルイエット長官は、カリフォルニア州の系統がストレスに耐えられるよう「ベースロード電源や火力発電の活用も視野に入れて評価することを推奨する」と述べた。今夏米国西部は熱波に襲われ、CAISOは需要家に節電を呼び掛けたが、依然として停電発生リスクが残っていた。
2020.09.04
中国:国産原子炉「華龍1号」、同型炉で世界初の燃料装荷を開始
中国核工業集団有限公司(CNNC)は2020年9月4日、建設中である福清原子力発電所5号機(「華龍1号」型、115万kW)において、原子力規制機関である生態保護部国家核安全局の運転ライセンス交付を受け、燃料の初装荷を始めたと発表した。「華龍1号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)が開発した第3世代設計のPWR型原子炉で、燃料集合体を177体とし、炉心のエネルギー密度を引き下げ、安全性を高めたとされている。なお、同型炉は福清原子力発電所5号機を含め中国内で5基、パキスタンで2基が建設中である。
2020.09.03
フランス:政府、新型コロナ後の経済復興策を発表
フランス政府は2020年9月3日、新型コロナ禍の影響で落ち込んだ雇用や投資の回復を促すため、総額1,000億ユーロ(約12兆5,000億円)の経済復興策を発表した。同復興策は2030年に向けたフランス経済の立て直しを目的としており、300億ユーロ(約3兆8,000億円)を環境政策に割り当て、そのうち、鉄道等の運輸部門に110億ユーロ(約1兆4,000億円)、エネルギーに関連するグリーン技術に90億ユーロ(約1兆1,000億円)、建物改修に67億ユーロ(約8,400億円)が投じられる。エネルギーに関連するグリーン技術として、特に水素関連へ20億ユーロ(約2,500億円)が割り当てられ、本復興策を含めて2030年までに最大72億ユーロ(約9,000億円)が投じられる。また、原子力については溶接などの建設技術の維持・向上や小型モジュール炉の研究・開発等を目的として2022年までに4億7,000万ユーロ(約590億円)が割り当てられる。
2020.09.03
米国:再エネ推進の強化を目指すロビー団体、米国クリーンパワー協会が発足
2020年9月3日付の業界紙によると、再エネを推進するロビー団体の米国クリーンパワー協会(ACPA:American Clean Power Association)が発足した。本協会と1974年設立の米国風力エネルギー協会(AWEA:American Wind Energy Association)とは今後合併する予定である。ACPAの優先事項は、環境政策、市場改革および電力系統の近代化である。ACPAには、電力会社、開発事業者、メーカー、金融機関などの30社以上が加わる予定である。ブルームバーグ社によると、2019年における再エネ業界のロビー活動費は約1,800万ドルであり、化石燃料業界(石炭、石油、天然ガス)の約1億400万ドルを大幅に下回った。なお太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、ACPAと合併する予定はないが、連携していくとの声明を発表した。
2020.09.02
中国:政府、原子炉4基の新規建設を許可
2020年9月2日に開催された国務院(内閣に相当)の常務委員会で、原子炉4基の新規建設が許可された。許可を受けたのは、海南省昌江原子力発電所第2期プロジェクトの2基、および新規サイトである浙江省三澳原子力発電所第1期プロジェクトの2基である。総投資額は計700億元(約1兆850億円)となり、4基ともに中国産第3世代炉である「華龍1号」(PWR)を採用すると地元紙が報じている。昌江発電所第2期プロジェクトに51%を出資している発電会社大手の華能集団公司は、これまで原子力発電所を保有しておらず、今回のプロジェクトによって核工業集団有限公司(CNNC)、中広核(CGN)、国家電力投資集団公司(SPIC)の3社に続き、中国の第4社目の原子力発電事業者となる見込みである。
2020.09.02
英国:原子力産業協会、原子力発電所建設コストの削減に向けた目標を発表
英国原子力産業協会NIAは2020年9月2日、2030年までに原子力発電所の建設コストを30%削減する野心的な枠組みを含む報告書を明らかにした。2018年7月に発表された「原子力セクターディール」の一環として、産業界を横断するワーキンググループが同報告書を作成した。具体的な策として、計画段階における入念な準備、複数の発電所における同一炉の採用、熟練労働者の育成・活用等が挙げられている。なお本報告書では、ウィルファにおいて日立製原子炉であるABWRを建設予定である旨が明記されている。
2020.09.02
米国:洋上風力発電事業者のØrstedが太陽光発電に乗り出す
エネルギー情報誌は2020年9月2日、洋上風力発電デベロッパーとして世界最大手のØrstedが米国で太陽光発電事業に乗り出し、陸上風力をあわせて再生可能エネルギーの「メジャー」となりつつあると伝えた。Ørstedはテキサス州、アラバマ州で2つの太陽光発電設備(発電出力合計70万kW)を建設中で、いずれも2021年の完成を目指している。同社は、テキサス州のLincoln Clean Energyを買収して北米の陸上風力事業に進出しているが、夜間の発電電力量が多いため、需要家からは昼間の電力需要のピークに対応できる太陽光発電への要望が高い。Ørstedは陸上風力と太陽光発電の合計で、現在の設備容量120万kWを2025年には500万kWにまで拡大する計画である。また、事業拡大のため新型コロナの影響で事業が困難となっている事業者の買収も視野に入れている。
2020.09.01
韓国:政府、2021年度予算案でグリーン・ニューディールに8兆ウォン割当
企画財政部は2020年9月1日、2021年度(1~12月)予算案が閣議決定されたことを明らかにした。それによると、2021年度の予算規模は前年比8.5%増の555兆8,000億ウォン(約50兆円)となった。今回の予算案は、新型コロナの影響を受けた韓国の総合経済対策である「韓国版ニューディール」を主軸として編成されたもので、「韓国版ニューディール」には総額21兆3,000億ウォン(1兆9,000億円)、その中でエネルギー・電力に関わる「グリーン・ニューディール」には8兆ウォン(約7,200億円)が割り当てられた。
2020.09.01
ブラジル:ガス自由化法案が下院を通過、今後は上院で審議
2020年9月1日付の地元紙は、ブラジル連邦下院議会がガス市場に関わる自由化法案を承認したことを報じた。同法案はこれまで石油公社ペトロブラスによる独占的な状態にあったガス市場を開放し、民間の参入によって競争を促進することを目的としている。法案の採決は賛成351票、反対101票の賛成多数で可決された。同法案では、石油ガス規制局(ANP)を通じてガス配給分野におけるコンセッション(事業権の付与)の実施が盛り込まれている。同法案は今後、上院議会で審議される予定である。アルブケルケ鉱山エネルギー相とゲデス経済相は同法案について、ガス分野における投資の拡大やガス料金の低減につながることが期待されるとの見解を示した。
2020.08.31
バルト三国:ベラルーシからの電力輸入の停止に向けてバルト三国が合意
エストニア、ラトビア、リトアニアの3カ国は2020年8月31日、第三国からの電力輸入に関する取り決めについて合意し、その中で、ベラルーシからの電力輸入を将来的に中止する内容が盛り込まれた。報道によれば、ベラルーシがリトアニア国境近くに建設中のオストロベツ原子力発電所の運開後、同国からの電力輸入が中止される。バルト諸国はかねてから安全上の懸念等の理由により、同原子力発電所の建設に反対を唱えていた。同発電所ではロシアの協力の下、ロシア型加圧水型炉(VVER-1200、出力120万kW)2基の建設が進められており、最近の報道によれば、1号機が2021年、2号機が2022年に商業運転を開始する予定と伝えられている。
2020.08.27
世界:2020年上半期の設置量は世界で260万kW、中国が140万kWで最大
エネルギー情報誌は2020年8月27日、洋上風力の事業者団体(World Forum Offshore Wind)が公表した2020年上半期の洋上風力発電所の設置状況を伝えた。これによると、2020年上半期は英国や中国など10カ国で合計260万kWが新設され、国別では中国が140万kWで最大となった。これにより世界の設備量は2019年末の2,721万kWから2020年6月末で2,984万kWとなった。設備量が最大となったのは英国(1,042万kW)で、ドイツ(770万kW)、中国(636万kW)、ベルギー(178万kW)と続く。建設中の事業は世界全体で800万kWを超え、国別では中国(462万kW)、オランダ(150万kW)、英国(86万kW)、デンマーク(61万kW)などとなっているため、数年後には中国の設備量が最大となると見込まれている。現時点で累積設備量が2位のドイツは建設中の事業がゼロと報告されており、新設は当面進まない。
2020.08.27
米国:エクセロン、イリノイ州の4基について2021年の早期閉鎖計画を発表
大手電力エクセロンは2020年8月27日、イリノイ州で所有するバイロン1、2号機(PWR、出力それぞれ116、114万kW)を2021年9月、ドレスデン1、2号機(BWR、同89、88万kW)を2021年11月に早期閉鎖する計画を発表した。計画が実行される場合、現在の運転許可期限に対してバイロンは20年以上、ドレスデンは10年程度を残しての早期閉鎖となる。エクセロンは「PJM市場における電力価格の低下と、同容量市場における化石燃料由来の電源よりも低い価格の入札を困難にするルールにより、バイロンとドレスデンの良好な運転実績にも関わらず、それぞれ年間数億ドル規模の赤字となっている。現在の市場ルールでは同じイリノイ州のラサール1、2号(BWR)、ブレイドウッド1、2号(PWR)も早期閉鎖リスクが高い」としているが、一方で「早期閉鎖を回避するための政策決定者との対話は続ける」ともコメントしている。
2020.08.27
米国:共和党トランプ大統領、指名受諾演説でエネルギー自立を強調
共和党の大統領候補に指名されたトランプ大統領は2020年8月27日、党大会で指名受諾演説を行った。エネルギー関係については、キーストーンXLとダコタ・アクセスの(石油)パイプラインの承認、不公平でコストのかかるパリ協定を離脱、米国のエネルギーの自立を確保したと、政権の実績を強調した。併せて、引き続きエネルギー開発を拡大し、エネルギーの自立を維持すると明らかにした。また、民主党候補のバイデン前副大統領の気候変動対策案について、米国の石油、石炭、シェール、天然ガスの生産を廃絶するものとし、ペンシルベニア州、オハイオ州、テキサス州、ノースダコタ州、オクラホマ州、コロラド州、ニューメキシコ州の経済を荒廃させ、同氏の当選が何百万人もの雇用の喪失、およびエネルギー価格の高騰を招くと非難した。さらに、カリフォルニア州(民主党が州知事)で同様の気候変動対策が大規模な停電を引き起こしたとの認識を示し、自身の政党が電力を安定的に供給できないのにバイデン候補はどうやって安定供給を図るのかとも述べた。
2020.08.26
イタリア:石油・ガス掘削事業者がアドリア海で洋上風力事業を計画
エネルギー情報誌は2020年8月26日、イタリアの石油・ガス掘削事業者Saipemがアドリア海で45万kWの洋上風力発電を実施するため、プロジェクトデベロッパーのAGNESおよび再エネ事業者のQINT'Xと覚書に署名したと報じた。Saipemはエネルギー業界が低炭素事業への転換を進める中でリーダーとなることを目標としており、2019年にサウジアラビア沖(紅海)での浮体式洋上風力発電プロジェクトに合意した他、シチリア島、サルディーニャ島近辺でも浮体式洋上風力事業の実施を計画している。
2020.08.24
中国:三峡ダムへの流入水量、運用開始以来の最大を記録
現地専門誌は2020年8月24日、長江上流域の豪雨により三峡ダムへの流入水量が、同ダムの運開(2003年)以来最大を記録したと報じた。それによると、三峡ダムへの流入量は8月20日8時から18時にかけて、過去最大となる毎秒7万5,000立方メートル達した。三峡ダム側では、これに対応するため毎秒最大4万9,200立方メートル(放水口11個)の流量で放水を実施した。三峡ダムの水位は洪水制限水位(洪水が予想される時期、洪水に備え通常よりも低く設定した水位)である145mを超えて163.15mに上昇したが、通常の運用満水位(175m)は下回っている。また、三峡ダムより上流側にあるダム群の働きにより、三峡ダムへの流入量を毎秒9,000立方メートルほど軽減したと推定されている。
2020.08.20
米国:米エネルギー省、アラスカ州からのLNG輸出を承認
米国エネルギー省(DOE)は2020年8月20日、アラスカ州で計画されているAlaska LNGプロジェクトからFTA非締結国を含む各国への輸出を許可した。本プロジェクトは、アラスカ北部で産出する天然ガスを800マイルのパイプラインで同州南部に輸送、LNG化して年間2,000万トンを輸出するもの。アジア市場に近い西海岸での輸出許可は、Jordan Cove LNGプロジェクトに続いて2件目。連邦エネルギー規制委員会(FERC)が2020年5月に建設を認可し、内務省(DOI)が2020年7月にパイプラインの連邦所有地通過を許可している。一方、建設コストの見積額は従来の442億ドルから387億ドルまで低下したものの、価格競争力が低いとされており、実現は不透明な状況である。
2020.08.20
米国:民主党バイデン氏、党大統領候補の指名受諾演説で気候変動に言及
民主党の大統領候補に指名されたバイデン前副大統領は2020年8月20日、党大会での指名受諾演説を行った。演説では、米国が直面している4つの危機の一つに気候変動(他は新型コロナ、経済、人種差別)を挙げ、「米国民は気候変動に対処することができるし、対処するつもりだ」、「気候変動は単なる危機ではなく、米国がクリーンエネルギーで世界をリードし、その過程で、何百万人もの高賃金の雇用を創出する好機である」と述べた。また、バイデン氏は演説に先立ち行われた労働者との対話で、国際電気工友愛労組(IBEW)の労働者に、同氏の提案する環境インフラとクリーンエネルギー計画の例として、ペンシルベニア州ハリスバーグ郊外の太陽光発電施設を挙げ、「未来は投資にかかっている」とし、同様の施設に投資を行うことで、中産階級の雇用を創出する姿勢を示した。他方、トランプ大統領は8月20日、ペンシルベニア州で演説を行い、同州出身のバイデン氏を「地元を捨て、自然エネルギーを取り入れることで、石油・ガス産業を閉鎖しようとしている」と非難した。
2020.08.19
アラブ首長国連邦:バラカ原子力発電所1号機、電力系統へ接続
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力公社(ENEC社)は2020年8月19日、ENECの子会社でバラカ原子力発電所の運転を担うNawah Energy Company(Nawah)がアブダビ送電送水会社(TRANSCO)と連携して、UAE初の原子力発電所であるバラカ1号機(140万kW、韓国製APR1400)を電力系統へ接続し、送電を開始したと発表した。今後、規制当局(FANR)の監視の下で出力上昇試験を実施するとしている。
2020.08.18
欧州:グリーン水素製造が企業収益に貢献するのは2030年以降
エネルギー情報誌は2020年8月18日、大手エネルギー事業者のグリーン水素事業に対する見方を紹介した。2050年のカーボンニュートラルを目標とするEUや多くの加盟国、事業者が再生可能エネルギーによる水素製造事業拡大戦略や具体的な投資案件を提案しており、100万kWの水電解装置を検討する事業も数多く現れている。しかし、事業者の多くは水素製造事業から十分な収益を上げることができるのは早くとも2030年以降で、事業の実施には当面の間、公的資金による支援が必要であると考えている。世界的な洋上風力発電事業デベロッパーのØrstedは、デンマークで大規模な水素事業を提案しているが、同社のポールセンCEOは、2025年までは収益を得ることは困難で、2030年までに大規模事業を開始して収益に貢献することを期待していると述べている。また、ドイツのエネルギー企業RWEのクレバーCFOは、収益を考えればグリーン水素への投資は数年待つ必要があり、利益を確保するには10年程度かかる可能性があるとしている。一方、同じくドイツのエネルギー大手E.ONのティッセンCEOは、短期的には企業収益に貢献することはないが、電気事業を取り巻く環境が急速に変化しており、特定の分野で数年後に競争力を持つ可能性があるとし、他社とは異なる見方を示した。
2020.08.17
中国:スマートグリッドの5G利用を政策支援
地元紙は2020年8月17日、工業情報化部(部は日本の「省」に相当)が記者会見で、医療、産業用ネットワーク、スマートグリッド、V2Gなど7領域における5G(第5世代移動通信)の運用促進に向けた政策支援を実施する方針を示したと報じた。同時にICチップ、メーターなどの産業チェーンにおける基礎研究の強化にも注目しており、6G(第6世代移動通信)技術を含む基幹技術の開発に当たっては、企業や地方とも協調を図るとしている。
2020.08.13
英国:SSE、ロンドンのバス車庫で世界最大のV2Gプロジェクトを計画
英エネルギー大手企業SSEは2020年8月13日、ロンドン北部のバス車庫Northumberland Parkで世界最大となるVehicle-to-Grid(V2G)の実証プロジェクト「Bus2Grid」を実施する計画を発表した。同プロジェクトは、電力系統の需給状況に応じて電動バスに搭載されたバッテリーの充放電を行うもので、SSEの低炭素エネルギーソリューション事業を担うSSE Enterpriseによって主導され、自動車メーカーBYD、配電系統運用者UK Power Networks、バス事業者Go-Ahead London、ロンドン交通局、リーズ大学などとともに実施される。実証期間は3年間で、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)や低排出車両局(OLEV)からの資金提供を受け、実施される。同プロジェクトの最初の試験では、28台の2階建てバス(合計容量1,000kW超)を用いた実証試験が行われる予定である。
2020.08.12
中国:2020年7月の需要、前年比増加率は5・6月に比べ鈍化
国家能源局は2020年8月12日、中国における2020年7月の電力需要実績を発表した。同月の電力需要は6,824億kWhと前年同月比で2.3%の増加となったが、この増加幅は、5月の4.6%、6月の6.1%と比べると鈍化している。需要の内訳を見ると、第一次産業、第三次産業、家庭用は、それぞれ対前年同月比11.6%、5.3%、13.8%の増加となったものの、第二次産業が0.7%の減少を示したことが鈍化の主要因となった。なお、中国全土における2020年の電力需要は一時大きく落ち込んだが、2020年1~7月の累計では対前年同期比0.7%減にまで回復している。
2020.08.11
米国:民主党バイデン前副大統領、副大統領候補にハリス上院議員を選出
民主党大統領候補のバイデン前副大統領は2020年8月11日、副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)を選んだと発表した。地元報道によると、これまでハリス氏は環境政策として、「環境正義」(環境に関する法律、政策等で、人種、出身等の差別なく取り扱うこと)を重視している。このため2019年以降、気候変動対策に関して、不平等に取り扱われがちな地域社会(低所得層や人種的マイノリティの居住地域など)にも恩恵が等しく行き渡ることを目的とした気候均等法案(Climate Equity Act)などに取り組んでいる。また、カリフォルニア州司法長官として環境違反で石油会社を訴えていたハリス氏は、フラッキング(水圧破砕法)による石油・ガス採掘はバイデン氏よりも批判的である。その他、連邦所有地における石油・ガス採掘の禁止を支持しており、原子力発電の将来については、やや曖昧な姿勢を取っていると見られる。
2020.08.07
韓国:2020年6月の販売電力量、前年同月比で2.1%減少
韓国電力公社は2020年8月7日、自社websiteで2020年6月の電力需給速報を公開した。それによると、2020年6月の発電電力量は前年同月比0.04%増の438億1,100万kWhとなり、販売電力量は同2.1%減の397億5,300万kWh(うち産業用-6.4%、業務用-2.0%、家庭用+8.6%、その他-0.5%)となった。また、2020年1~6月累計での発電電力量は前年同期比2.5%減の2,701億5,600万kWh、販売電力量は同2.9%減の2,522億5,200万kWh(産業用-4.9%、業務用-1.8%、家庭用+5.2%、その他-6.0%)となった。
2020.08.05
米国:米国最大のガス会社、カリフォルニア州で水素への取り組みを強化
2,200万軒の需要家を有する米国最大のガス会社Southern California Gas(SoCalGas)社は、水素に関する取り組みをさらに強化すると見られる。エネルギー情報誌によれば、同社の親会社であるSempra Energy社のジェフリー・マーティン会長兼CEOは2020年8月5日、従来より取り組んできた水素の技術開発で先頭に立つ決意であると述べ、次の四半期決算では複数の水素プロジェクトに関する発表を行うという。SoCalGas社は、厳しいCO2削減目標を掲げるカリフォルニア州の南部でガスを供給しており、2030年に販売するガスの20%を再生可能天然ガスとする目標を掲げ、これまでに太陽光発電で得たエネルギーを利用して水を電気分解したグリーン水素をメタンに変換し、再生可能天然ガスとして利用する技術を実証してきた。水素に関しては、発電や工場での生産工程、大型車両用燃料等での利用に注目しており、本年中に新しい実証プロジェクトを開始する予定である。
2020.07.29
オランダ:Vattenfall、同社最大の太陽光、風力、蓄電池ハイブリッド発電所を建設
大手電力事業者のVattenfallは2020年7月29日、オランダ南部ハーリングヴリートにおいて、太陽光、風力、蓄電池を組み合わせた大規模なハイブリッド発電所を建設していることを発表した。同発電所は、太陽光発電3万8,000kW、風力発電2万2,000kW、蓄電池1万2,000kWで構成されており、2020年中に運開する見通しである。なお、蓄電池にはBMW社製の電気自動車(i3)に搭載されているのと同型の蓄電池288個が利用される。Vattenfallの関係者によると、太陽光と風力の発電出力は季節的に相互補完関係にあり、組み合わせて設置することで安定したエネルギー供給が可能となる。さらに、蓄電池を組み合わせることでアンシラリーサービスの提供も計画している。
2020.07.29
オランダ:76万kWの洋上風力発電事業をShell、EnecoのJVが落札
エネルギー情報誌は2020年7月29日、オランダ政府が実施していた洋上風力発電事業の入札で、石油・ガスメジャーのShellとオランダの電気事業者Enecoの共同事業体(Cross Wind)が落札したと報じた。このHollandse Kust North Zone(75万9,000kW)を対象とした入札では政府補助を受けずに事業化することが条件となっており、応札したのはCross WindのほかにØrstedのみで、Cross Windが競り勝った。またオランダ政府は、入札条件として発電した電気による水素製造を加えるよう求めており、Cross Windの提案では浮体式太陽光発電、蓄電池、水素製造事業を行う計画となっている。Shellはオランダのロッテルダムで大規模な水素製造事業(NorthH2)を計画しており、300万~400万kWの洋上風力発電事業が必要とされ、今回落札した洋上風力も活用される可能性がある。Shell、Enecoともに最終投資判断を行っているとされる。Enecoは2020年3月に三菱商事と中部電力が買収することを発表している。
2020.07.29
米国:フロリダ州、電気料金の支払い遅延の顧客総数は約60万軒の水準
2020年7月29日付の現地報道によると、フロリダ州公益事業委員会は電気事業者から、新型コロナによる経済停滞の影響で、約60万軒の顧客の電気料金の支払いが遅延していると報告を受けた。報告の中で、(1)支払い遅延の顧客の総数は、新型コロナの脅威が最初に高まった4月からは若干改善している、(2)多数の顧客と支払いに関する連絡を取ることに課題が残る、(3)料金の回収不能により、経営に悪影響が及ぶ恐れがあると明らかにした。現在、支払いが遅延している顧客数は、NextEra Energy社傘下のFlorida Power & Light社とGulf Power社をあわせて約35万軒、デューク・エナジー社で約15万軒、Tampa Electric社で約9万軒、Peoples Gas社で約3万軒となっている。
2020.07.28
ブルガリア:政府高官、2032年初頭にベレネ原子力発電所の運転開始を示唆
2020年7月28日付の報道によると、ブルガリア議会のエネルギー委員会委員長が、国営電力会社NEKが計画しているベレネ原子力発電所建設(VVER-1000、100万kW×2)について、2023年までに着工、2032年初頭に運転を開始する可能性を示唆した。ブルガリア政府は2020年内に、発電所の建設および運転するための投資家を入札手続きにより選定する計画であり、建設費は約100億ユーロ(約1兆2,700億円)と見積もられている。入札手続きには、中国核工業集団有限公司(CNNC)、韓国水力原子力公社(KHNP)、露ロスアトム社の子会社であるアトムエネルゴプロム社、仏フラマトム社および米GE社が参加を予定している。
2020.07.27
米国:トランプ大統領、FERC委員に共和・民主両党の候補を指名
トランプ大統領は2020年7月27日、連邦エネルギー規制委員会(FERC)委員に、マーク・クリスティー氏(共和党)およびアリソン・クレメンツ氏(民主党)を指名する意向を示した。クリスティー氏は現在、バージニア州企業委員会(Virginia State Corporation Commission)の委員長であり、2020年内に退任予定のマクナミー委員(共和党)の後任となる予定である。一方、クレメンツ氏は現在、エネルギーコンサルタントGoodgridの代表で、過去には米国エネルギー財団(Energy Foundation)や環境保護団体の天然資源防護協議会(NRDC)等での職務経験もあり、現在空席となっている民主党推薦枠の委員となる予定である。FERC委員は通常5名で構成されるが、民主党1枠が空席のままとなっているため、共和党3名に対し民主党1名で構成されている。上院エネルギー・天然資源委員会のマコースキー委員長(共和党)や同委員会筆頭委員のジョー・マンチン議員(民主党)は、このような偏った委員構成が続いていることは独立機関の慣例に反するもので、FERCの中立性が損なわれると批判していた。
2020.07.27
中国:国営大手石油企業、水素分野の投資を拡大へ
現地紙は2020年7月27日、中国最大の国営石油企業であるシノペック(中国石油化工集団公司)が水素分野への投資を拡大する計画であると報じた。それによると、同社の張玉卓会長は7月24日、社内の水素エネルギー発展検討会において水素分野への開発投資の更なる拡大を表明、同社の長期戦略の一つとする方針を明らかにしたとのことである。同社の年間水素生産量は既に300万トン以上に達し、中国内で生産シェア14%を占めているとされている。同社は現在、水素充填スタンドをガソリンスタンドと併設することで水素の利用促進に向けたモデル事業を実施しているが、今後は自社所有のガソリンスタンド約3万カ所を活用して普及の加速化を図る計画である。
2020.07.24
中国:パイプライン統括会社が設備の取得を開始
中国の現地紙は2020年7月24日、2019年末に設立された国有石油・天然ガスパイプライン管理運用会社である国家石油天然ガス管網集団公司(国家管網)が、石油・天然ガス大手の中国石油天然ガス集団公司および中国石油化工集団公司との間で、石油・ガスパイプラインおよび関連施設の取得に合意したと報じた。取得に要する代金の一部は国家管網の株式で支払われ、この結果、中国石油天然ガスは国家管網の株式の29.9%を獲得して筆頭株主となり、中国石油化工も9.42%を取得して第5位の株主となる。国家管網の体制整備は、当初は2020年6月末までに完了予定であったが、新型コロナの影響で9月末にずれ込む見通しである。
2020.07.24
中国:一部都市部の公共交通導入車両、環境対応車比率8割を義務付け
交通運輸部(部は日本の「省」に相当)と国家発展改革委員会は2020年7月24日、交通分野における新エネ車(EV、PHEV、燃料電池車)、およびクリーンエネルギー車(天然ガス・バイオ)の利用拡大に向けた行動案を発表した。それによると、2022年までの目標として、重要地域(長江デルタ、沿海部における人口100万人以上の都市など)における公共交通用車両の6割以上、新規導入車両の8割以上を新エネ車とすることなどが義務付けられる。また、EV充電などのインフラ整備の加速とあわせて、公共交通の新エネ車利用促進キャンペーンなどの実施も予定されている。
2020.07.24
米国:NextEra社、フロリダ州に太陽光利用のグリーン水素プラントを計画
エネルギー専門誌は2020年7月24日、フロリダ州を本拠地とする電力会社NextEraがグリーン水素プラントを建設すると発表した。子会社であるフロリダ州の電力会社Florida Power & Light(FPL)社が6,500万ドルで建設し、太陽光発電の電力による水の電気分解を利用して、消費電力2万kWの電解槽により100%グリーン水素を製造する。フロリダ州の承認を得て、2023年の営業運転開始を計画している。製造した水素は、FPL社のオキチョービー発電所(天然ガス火力)の燃料の一部として使用する。NextEra社は自社最後となる石炭火力発電所の廃止を発表しており、ゼロエミッションを達成する上で、最終的に残る二酸化炭素の削減方法として水素が有効と考えられると述べている。また、同社CFOのレベッカ・クジャワ氏は、エミッション・フリーを実現するには更なる技術開発が必要であり、太陽光発電や蓄電池の開発を補完するものとして特に水素の長期的な可能性に期待しているとの考えを示した。
2020.07.23
中国:2020年の旧式石炭火力廃止目標、733万3,500kWを通告
電力専門メディアは2020年7月23日、国家能源局(NEA)が2020年における旧式石炭火力の廃止目標として733万3,500kW分を通達したと報じた。今回と同様の措置は政府による供給側構造改革に関する指針に沿ってこれまでも実施されており、2016~2020年における廃止目標の合計は約3,700万kWに達している。
2020.07.23
英国:NGESO、気候変動対策の達成見通しFES2020を公開
英国系統運用者ナショナル・グリッドESOは2020年7月23日、2050年ネット・ゼロ達成の見通しをまとめたFuture Energy Scenarios(FES)2020を公開した。FES2020は、2050年ネット・ゼロ達成に必要な技術革新や政策について評価したものであり、600人超の専門家の協力によって作成されている。脱炭素化に向け最小限の対応しかしないシナリオ(Steady Progression)から、最大限の対応を行うシナリオ(Leading the way)までの4つのシナリオが検討されており、上位3シナリオで2050年ネット・ゼロ達成は可能としているものの、いずれも即時の技術的・政策的行動が必須であると唱える。最大限に脱炭素化するシナリオでは、2030年までにEVが1,100万台(2040年までに3,000万台)導入され、2050年までにEV所有世帯の80%がスマート充電を利用し、電力系統の負荷平準化に活用されると想定している。また住宅においては、ガス暖房の代替として2050年までに約2,000万台のヒートポンプが導入され、住宅の45%が最大3,800万kWのフレキシビリティリソースとして負荷平準化に活用されている想定である。
2020.7.22
米国:ニューヨーク州が250万kWの洋上風力発電事業の入札を開始
エネルギー情報誌は2020年7月22日、ニューヨーク州が洋上風力発電250万kW分の入札手続きを開始したと伝えた。応札期間は2020年10月20日までで、落札者は年内に発表される予定である。入札が見込まれるのはニューヨーク州のほかにマサチューセッツ州、ニュージャージー州沖合の海域で事業の権利を獲得しているØrsted、Shell、EDFなど欧州のエネルギー事業者である。今回の入札は70%が買取価格、20%が地元への経済的なメリット、10%が実現可能性で評価されると報じられている。同州は2035年までに900万kWの洋上風力発電設置を目標としており、これまでに実施した入札で約170万kW分の事業者を選定済みで、今回の250万kWを加えると目標の半分程度になる。同州では今回の入札と並行して、陸上風力や太陽光発電を対象とする入札(150万kW)も行われている。
2020.07.20
チェコ:政府、ドコバニ原子力発電所増設計画への無利子融資を決定
2020年7月20日付の現地紙によると、チェコ政府はドコバニ原子力発電所の増設計画(PWR、120万kW×2基)に必要とされる建設費の一部を、チェコ電力大手CEZに無利子で融資することを決定した。融資額は建設費(1基当たり60億ユーロ、約7,410億円)の70%で、当初は無利子で融資し、運開後に2%の利子を課すとしている。また、政府は同発電所からの買電も行う予定である。CEZは、同増設計画のサプライヤーは2022年に決定されるとしている。
2020.07.15
EU・インド:欧州原子力共同体とインド政府、原子力研究開発協力協定に署名
欧州原子力共同体(Euratom)とインド政府は2020年7月15日、EU・インド首脳会議にあわせて原子力の平和利用における研究開発協力に関する協定に署名した。この協定は、2009年に欧州委員会が理事会から交渉権限を得てから2020年2月に理事会が承認するまで、10年にわたる公式協議を経て締結されたものである。同協定は、原子力安全・セキュリティ、放射線防護、放射性廃棄物管理などの分野における各研究プログラムのプロジェクトへのインドの参加を促進することを目的とし、さらに非発電用原子力や放射線技術の分野における研究開発、およびヘルスケア、農業、工業用同位体といった分野での応用も対象としている。
2020.07.14
韓国:政府、「韓国版ニューディール総合計画」を発表
政府は2020年7月14日、中長期経済政策である「デジタルニューディール」と「グリーンニューディール」を軸とした「韓国版ニューディール」の具体的な計画(以下、総合計画)を発表した。同総合計画では、2025年までに160兆ウォン(約14兆5,000億円)を投じて160万人の雇用創出を目指すとしている。電気事業と関連するグリーンニューディールには、2025年までに総額73兆4,000億ウォン(約6兆6,000億円)を投じて、再エネ普及などを通じて将来的にカーボンニュートラルを目指して低炭素社会を構築する方針である。
2020.07.14
米国:民主党バイデン氏、クリーンエネ投資に4年間で2兆ドルの公約を発表
民主党大統領候補のバイデン前副大統領は2020年7月14日、気候変動対策とインフラ整備計画の一環として、4年間で2兆ドルを投資する公約(従来は10年間で1兆7,000万ドル)を新たに発表した。公約には、(1)2035年までに発電部門を脱炭素化(実現のために連邦のクリーン電力基準を設定)、(2)EV充電施設を50万カ所設置、(3)400万軒の既存建物の改修を含め、2035年までに建物からのCO2排出量を半減、(4)2030年までに米国製のすべてのバスを排ガスゼロ(ZEV)化、(5)野心的な燃費基準を設定、(6)クリーンエネルギー技術である蓄電池、炭素捕捉、再生可能水素、先進的原子力などの技術開発を促進、(7)新しい気候調査機関を創設することなどが含まれている。地元報道では発電部門の脱炭素化について、同氏陣営は何百万枚もの新しいソーラーパネル、何万基もの風力タービンの設置を奨励するとともに、既存の原子力発電所を維持することにより、目標達成が期待されるとしている。
2020.07.13
中国:2020年6月の電力消費、対前年比6.1%増加
国家能源局は2020年7月13日、2020年6月の電力需給データを公表し、消費電力量は6,350億kWhと前年同月比6.1%増となったことを明らかにした。分野別では、第一次産業が同12.9%増、第二次産業が同4.3%増、第三次産業が同7.0%増となったほか、民生用は同14.4%増と二桁の伸びを記録した。1~6月までの累計では、新型コロナの影響で消費電力量は前年同期間比1.3%の減少であったが、影響の少なかった第一次産業と民生用はそれぞれ同8.2%、6.6%増となった。
2020.07.13
イタリア:Enel、石炭火力発電所のエネルギーハブ転換へアイデアを募集
エネルギー大手Enelは2020年7月13日、イタリア国内に保有する4カ所の石炭火力発電所(Eugenio Montale発電所、Andrea Palladio発電所、Torrevaldaliga Nord発電所、Federico II発電所)をガス火力、再エネ、蓄電池を組み合わせたエネルギーハブへ転換することを計画しており、設計に関するアイデアを募集すると発表した。同社は新たな施設の外観をより立地地域の景観に溶け込んだデザインとし、環境負荷が低く、イノベーション技術を採り入れた設計とすることを目指し、40歳未満の若手の建築士やエンジニアを対象にアイデアを募集する。また同社は、同施設の敷地内に地域コミュニティが活用できるオープンスペースを設置することも計画しており、地域社会に根づいた施設を目指すとしている。今回のアイデア募集では、対象の発電所ごとにそれぞれ3つのアイデアが採用され、アイデアが採用された応募者には賞金が与えられ、新たな施設の建築に関する一連の設計が任せられることとなる。
2020.07.13
英国・デンマーク:シーメンス社、世界最長の国際連系線開発に着工
英国ナショナル・グリッドは2020年7月13日、英国・デンマーク間の国際連系線のうち英国側交直変換所の建設にドイツ電機大手シーメンス社が着工したことを発表した。同連系線はViking Link(400kV HVDC、海底ケーブル、容量140万kW)と呼ばれ、主に英国のGHG排出削減目標達成に向けた再エネの利用促進や調整力確保を目的に開発され、完成すれば英国内の約150万世帯に再エネ由来の電力を届けることが可能となる。同連系線は英国リンカンシャー州のBicker Fenとデンマーク南ユトランドのRevsing間を総亘長765km(海底部分約620km)で繋ぐ世界最長の国際連系線となり、完成は2023年末である。
2020.06.26
ロシア:国内に原子炉4基新設へ
ロシア国営原子力企業ロスアトムの子会社で原子力発電所の運転を担うロスエネルゴアトムは2020年6月26日、国内で新たに4基の原子炉を新設するための準備を開始したと発表した。このうち2基(VVER-TOI)はスモレンスク原子力発電所の近くにスモレンスク第二原子力発電所1、2号機として新設し、残り2基(VVER-1200)はレニングラード第二原子力発電所に3、4号機として増設される。レニングラード第二原子力発電所には計4基のVVER-1200が建設される計画となり、既に1号機は2018年10月に商業運転を開始し、建設中の2号機は2021年第1四半期に商業運転開始を予定している。今回発表された原子炉4基は、いずれも2035年までには商業運転開始の見込みである。 印刷用PDF
2020.06.24
中国:山東省、水素エネルギー産業振興に関する中長期計画を発表
山東省政府は2020年6月24日、「山東省水素エネルギー産業中長期計画(2020~2030年)」を発表し、水素産業の振興に乗り出した。当該計画は2018年末から中国の技術開発における最高機関である中国工程院や、政府の各部門、業界が検討を重ねてきた内容である。この計画における目標は達成年度別に3段階に分けられており、(1)2022年まで:水素研究開発体制の構築、コアとなる技術開発、(2)2025年まで:水素の生産、貯蔵、輸送、気化技術および関連施設ネットワークの建設と商業的利用の実現、(3)2030年まで:水素産業の規模、質、効率の面での世界トップ水準の達成、が挙げられているほか、コア技術を持つ複数の大企業の育成、水素産業に情報技術を加えた新しいスマートエコシステムの確立も目指すとしている。なお、山東省では現在、水素ステーションが6カ所設置されており、4市で水素バス(242台)が商用運行されている。 印刷用PDF
2020.06.22
中国:国家能源局、2020年のエネルギー政策運営指針を発表
国家能源局(NEA)は2020年6月22日、2020年におけるエネルギー政策運営指導意見(指針)を発表した。この指針では、(1)エネルギー安全保障を筆頭に考えること、(2)生活向上に向けたインフラ整備の強化と利用料金の引下げを図ること、(3)化石エネルギーのクリーン化と高効率利用の促進に向けて低炭素エネルギー利用への転換を推進すること、(4)エネルギー供給側における構造改革を持続的に展開すること、という4つの基本方針が示された。特に電力分野では、石炭火力発電のクリーン化・高効率化推進の継続、系統のセキュリティ強化および自動化、経済特区への安定供給の強化、EV用充電インフラの整備強化などの項目が示されたほか、揚水発電所建設推進を含めた調整用電源の整備、アンシラリーサービス調達に関する市場メカニズムの活用なども挙げられている。この他、電気料金については2部料金制が推奨されている。 印刷用PDF
2020.06.22
英国:Centrica、新たな小売ブランドの立ち上げを計画
2020年6月22日付の報道によると、エネルギー小売大手Centricaは新たな小売ブランドの立ち上げを計画している。同社は、現在「British Gas」ブランドで小売事業を行っているが、これとは別に安価なエネルギー供給を行う小売ブランドとして新ブランド(仮名「British Gas X」)を立ち上げる。新ブランドでは、需要家とのやり取りはすべてインターネット上で行われ、需要家は自身のアカウントを通じて、需要家自身が行った検針結果や請求書等のやり取りを行う。また、電気とガスのセット料金メニューが提供され、再エネ証書によりオフセットされた再エネ100%の電力が選択可能となる。支払方法は口座振替に限定され、需給契約解約時の違約金は発生しない。Centricaは2020年7月に同ブランドに関する詳細を発表するとみられる。 印刷用PDF
2020.06.21
フランス:気候変動対策に関する市民委員会、提案を政府に提出
2020年6月21日付の現地報道によると、6月19~21日に開催された「気候変動対策に関する市民委員会」の最終会において、各委員による150の提案の大半が可決され、ボルヌ環境移行・連帯大臣に提出された。同委員会は、「エネルギー移行」に関する民意をより反映するために、選出された150名の国民が委員となり、「2030年の温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で40%削減」という目標を達成するための方法等を約9カ月にわたり議論してきた。提案の一部には、「気候変動対策に関する文言を追加するために、フランス共和国憲法の前文および第1条の改正」、「高速道路での速度制限を時速130kmから110kmへ低減」、「2025年から温室効果ガス排出量の多い車両の販売禁止」、「2040年までに建物の断熱改修を義務化」などがある。これらの提案は、国民投票にかけられるか議会で審議される予定となっており、6月29日にはマクロン大統領が委員会と会見予定である。 印刷用PDF
2020.06.20
米国:連邦破産裁判所、PG&E社の経営再建計画を承認
カリフォルニア州の3大私営電力会社の一つであるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社は2020年6月20日、連邦破産裁判所が同社の経営再建計画を承認したと発表した。これは、カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC:California Public Utilities Commission)が2020年5月28日に同計画を承認したことに続くものである。同社は2019年1月に保有する設備に起因した山火事の損害賠償額が300億ドルを上回る可能性が見込まれたため、連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しており、連邦破産裁判所の管理下で経営再建中であった。連邦破産裁判所の承認により、同社は将来の山火事発生による多額の損害賠償金の支払いを軽減できる総額210億ドルの基金への参加が可能となる。 印刷用PDF
2020.06.19
中国:日中共同でEV向け急速充電器の新規格を発表
国家電網公司は2020年6月19日、中国電力企業聯合会(中電聯)、東京電力およびCHAdeMO協議会とともに電気自動車(EV)向け急速充電器の統一規格に関してリモートでの記者会見を行った。今回明らかにされた新規格の「超級(Chaoji)」は、最大900kWまで対応する高出力型のものとなっており、5分間の充電で航続距離400kmの走行が可能とされる。新規格の商用化は2022年頃になると見込まれている。 印刷用PDF
2020.06.18
米国:FERC、送電事業報酬にサイバー対策を反映
連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2020年6月18日、送電事業の報酬率(ROE)の加算要素として、電力系統のサイバーセキュリティ強化を自主的に行ったことを織り込むとする提案書を公開した。送電事業者が、現行の重要インフラ保護基準(CIP)を上回る対策を実施した場合に対象となる。背景には、通常、CIPの策定と展開には時間を要するが、サイバー攻撃を行う側の技術進歩が速く、防衛対策が追いつかないおそれがあるため、送電事業者に先行的で自主的な対策を促す狙いがある。 印刷用PDF
2020.06.18
米国:エネルギー省、先進的原子力技術開発に6,500万ドル超投資
米国エネルギー省(DOE)は2020年6月18日、93の先進的原子力技術開発プロジェクトに対して、総額6,500万ドル超の投資を実施することを発表した。今回の投資は3つのプログラムの下で実施され、その内訳は、大学での原子力研究開発(NEUP)に5,500万ドル、原子力技術研究開発(NEET)に500万ドル、原子力科学ユーザーファシリティーズ(NSUF)に500万ドルとなっている。最も金額の大きいNEUPでは、国際的リーダーシップ維持を目的とし、革新的な原子力技術研究を実現するための教員や学生に対する支援、研究用原子炉やインフラの改善・改良のための投資などが実施される。今回の発表にあたってDOEのブリュイエット長官は、「トランプ政権は原子力の重要性を認識している。先進的原子力技術開発を推進することは、国民のために信頼性の高いクリーンなエネルギーを確保するために最も重要であり、温室効果ガスを大幅に減らすことを真剣に目指すのならば、ゼロエミッション電源である原子力エネルギーについて議論しなければならない」と述べた。 印刷用PDF
2020.06.15
中国:国家電網、デジタル分野拡充を企図、IT大手と戦略的協力協定を締結
国家電網有限公司は2020年6月15日、中国IT大手のHuawei、アリババ、Tencent、百度の4社と北京でデジタル関連インフラ建設に関する戦略的協力協定を締結した。国家電網は同日、ビッグデータセンター、産業用インターネット、5G、人工知能(AI)などデジタル技術推進に関して10項目の実施計画を打ち出しており、その計画実施に向けてIT大手各社と協力関係を構築したものである。国家電網は本計画の一環として、傘下の地方電力会社17社、5直属機関と地方政府、研究開発機構などとの間でも計37件の協力協定を結んだことも明らかにした。国家電網の本分野における2020年の関連投資額は約247億元(約3,710億円)と予想されている。 印刷用PDF
2020.06.15
米国:カリフォルニア州、山火事シーズンに向けてマイクログリッドの構築を急ぐ
2020年6月15日付の現地報道によると、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)は、山火事シーズンに向けた対策を進めるために、カリフォルニア州の3大私営電力会社であるパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社、サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)社、サンディエゴ・ガス・アンド・エレクトリック(SDG&E)社に対してマイクログリッド導入の進捗状況を報告するよう求めていると報じた。カリフォルニア州では山火事対策として「公衆の安全のための電力供給停止」(PSPS:Public Safety Power Shutoff)と呼ばれる計画停電が実施されており、警察や消防署、学校、上下水道施設などの特定の重要な施設を救済するために一時的なマイクログリッドが構築されている。PG&E社では2020年9月までに63カ所でマイクログリッドを構築するよう計画している。 印刷用PDF
2020.05.27
IEA:新型コロナによるエネルギー分野の消費支出などへの影響を予測
国際エネルギー機関(IEA)が2020年5月27日に発表した「世界エネルギー投資2020」によれば、新型コロナ感染拡大による経済社会活動の停滞により、2019年に世界のエネルギー分野の消費支出の50%を占めていた石油や、同じく38%を占めていた電力にも大きな影響が及ぶものとみられる。2020年に世界の石油への消費支出は1兆ドル減少し、また世界の電力分野の収益は、需要減少と価格低下に加えて支払い猶予の増加の影響により、1,800億ドル減少するものと見られる。これによって、2020年には世界のエネルギー分野の消費支出に占める割合において、電力が石油を抜いて最大の支出項目に浮上する可能性がある。 印刷用PDF
2020.05.27
英国:系統会社、風力発電の余剰電力を利用した熱供給を研究へ
英国の系統運用者ナショナル・グリッドESO(NGESO)は2020年5月27日、風力発電の余剰電力を利用して熱供給を行う研究をスコットランドの送配電会社SSE Network(SSEN)と共同で実施すると発表した。NGESOによると、スコットランドの一般家庭で使われる電気暖房設備をスマート制御システムにより風力発電の発電状況にあわせて効率的に稼働させる研究を行う。風力発電が多く導入されているスコットランドでは、系統混雑や供給過多により風力の出力抑制が発生することがあり、NGESOは余剰となる電力を熱供給に利用することで風力発電の出力抑制回数を減らしたいとしている。 印刷用PDF
2020.05.26
台湾:シーメンスガメサ、単機出力世界最大の洋上風力発電機を設置へ
2020年5月26日付の現地紙によると、スペインに本社を置く世界的風力発電機メーカーであるシーメンスガメサはこのほど、台湾に1万4,000kWという単機出力が世界最大となる洋上風力発電機の設置を提案する方針を明らかにした。この発電機の設置対象は、三井物産がカナダやシンガポールのエネルギー事業者とともに計画を進めている西方海域における海龍2号プロジェクト(30万kW)で、2024年の運開が目指されており、2019年11月にはシーメンスガメサが優先的供給者として選定されている。なお、シーメンスガメサは、この発電機を台湾の台中工場で組み立てることを計画しており、これは同社が欧米以外で風力発電機の組み立て作業を行う初めての事例となる。 印刷用PDF
2020.05.22
EU:東欧の8カ国が脱炭素社会の実現にガス利用が不可欠と書簡を発表
エネルギー情報誌は2020年5月22日、東欧8か国が、欧州委員会の進める脱炭素社会の実現には天然ガスが重要であり、インフラ整備のために支援すべきと主張する共同書簡を発表したと報じた。欧州では、欧州投資銀行が2022年以降のガスインフラ関連事業に融資を行わないことを決め、さらにグリーンファイナンスの議論でもガスが認められていないため、危機感を持った東欧の8カ国が共同で主張を行ったもの。8カ国はブルガリア、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキアである。この書簡によると、脱炭素社会を実現するためには再生可能エネルギー導入が必要で、ガス火力は需給調整やバックアップ電源として重要な役割を果たし、石炭を天然ガスで置き換えることはCO2の削減だけではなくNOxやSOxの低減にもつながるとして、天然ガスの重要性を指摘している。書簡では、このような重要な燃料であるガスを活用するにはインフラの整備に資金が必要で、欧州委員会に有効な資金提供を訴えている。 印刷用PDF
2020.05.21
米国:Green Mountain Power社、蓄電池利用を拡大しピーク火力を代替
バーモント州の電力大手Green Mountain Power(GMP)社は2020年5月21日、州規制当局が、GMPの新たな家庭用蓄電池利用プログラムを承認したと発表した。2020年6月5日から登録を開始するこの新規プログラムは、電気自動車大手Tesla社から蓄電池のリースを受けられる「Tesla Powerwall」と、顧客が自主設置した蓄電池を系統に組み込む「BYOD(Bring Your Own Device)」の2つである。GMPは顧客が蓄電した電力をピーク時に利用することができ、系統システム全体のピーク使用量とコストの削減が期待されている。報道によると、GMPは今後数年間で数万kW規模のピーク火力発電所の閉鎖を予定しており、ピーク需要の一部を蓄電池で代替したいと述べている。 印刷用PDF
2020.05.21
米国:FERC、アラスカ州Alaska LNG輸出プロジェクト建設を認可
2020年5月21日付の情報誌によると、連邦エネルギー規制委員会(FERC)は同日、アラスカ州で計画されているAlaska LNG輸出プロジェクトの建設、運転を認可した。本プロジェクトは「アラスカ最北部のノーススロープのガス田から800マイルのパイプラインの建設」と「南部の液化、輸出基地の建設」からなる。容量は2,000万t/年、総工費430億ドルと見積もられており、他の米国のLNG輸出プロジェクトと比較して高コストになると考えられている。プロジェクト主体のアラスカ州が運営するAlaska Gasline Development Corporationは、一般企業と協力して実施していく方法を検討中としている。 印刷用PDF
2020.05.20
デンマーク:デンマーク、巨大な「エネルギー島」を建設
2020年5月20日付の報道によると、デンマーク政府は、洋上風力発電のハブとなる2つの巨大な「エネルギー島」を建設する計画を明らかにした。1つはバルト海のBornholm島であり、もう1つは北海に新規に造られる人工島である。プロジェクト総額は、最大370億ユーロ(約4兆3,000億円)とデンマークの単一インフラプロジェクトとしては過去最大の投資額となる。また、2030年までに各島周辺にはそれぞれ200万kWの洋上風力の設置が計画され、これにより国内の洋上風力設備容量は約3倍となり、デンマークの全580万世帯のうち400万世帯の電力需要を賄える見通し。さらに政府は、将来的に設備容量が1,000万kWまで拡大される可能性や、水素製造設備の設置計画についても言及している。同国は、2019年末に新気候法を制定し、2030年までのGHG排出削減量を70%(1990年比)とする非常に野心的な目標を掲げている。同プロジェクトはその取り組みの一環であるが、目標達成方法の詳細は明らかにされておらず、今後の協議によって決めるとしている。 印刷用PDF
2020.05.19
欧州:欧州投資銀行、2020年に蓄電池関連プロジェクトへ10億ユーロ超を融資
欧州投資銀行(EIB)は2020年5月19日、2020年中に蓄電池関連プロジェクトへ10億ユーロ(約1,200億円)超を融資する方針を発表した。同行は2010年以降、蓄電池関連プロジェクトに総額約9億5,000万ユーロ(約1,100億円)を融資しており、この金額を超える規模の融資を2020年単年で行うこととなる。同融資は、蓄電池に関する研究・開発、原材料の採掘・生産、製造、EV充電インフラ整備、リサイクルに至るまで、蓄電池に関連する事業を幅広く対象とする。 印刷用PDF
2020.05.18
米国・カナダ:バイデン氏、キーストーンXLパイプライン建設中止を公約
民主党のバイデン前副大統領の選挙陣営は2020年5月18日、米大統領選挙で当選すれば、トランプ政権が建設を許可した「キーストーンXL原油パイプライン(KXL:完成すると既存のパイプラインと連系され、カナダ西部アルバータ州から日量83万バレルの原油をテキサス州の製油所へ輸送が可能になる)」について、許可を取り消すとの公約を発表した。バイデン氏は党予備選挙中、候補者の多くが「No KXL誓約書」に署名(反対)するなか、KXLに明確な反対を示してこなかった。バイデン氏の公約を受け、KXLに11億ドルを投資するなどの財政支援を行うアルバータ州のジェイソン・ケニー州首相は、建設推進の姿勢を示し、選挙後に建設の方針が左右されないようけん制している。 印刷用PDF
2020.05.18
スペイン:政府が2050年ネットゼロを含む気候法案を議会に提出
エネルギー・環境情報誌は2020年5月18日、スペイン政府が2050年のネットゼロ排出を達成するための気候法案(climate law)を議会に提出したと報じた。この法案は2019年2月からパブリック・コンサルテーションを実施したもので、今後議会での議論が本格化する。法案では温室効果ガスの排出削減を進めるための具体的な目標が記載されており、2050年の電力供給は100%再生可能エネルギーで行い、すべての石炭、石油、ガス掘削事業を禁止、2040年には販売するすべての車両はEVなどに限定することになる。スペイン政府は2030年の目標を国家エネルギー・気候計画として欧州委員会に提出しており、2030年には電力供給の74%を再エネで実施するとともに、ビルや住宅のリノベーションによりエネルギー使用量を35%削減することを目指している。 印刷用PDF
2020.05.14
中国:政府、再エネ開発などを盛り込んだ西部大開発の新指針を発表
国務院は2020年5月14日、「新時代における西部大開発に関する指導意見(指針)」を発表した。それによると、四川省、重慶市、貴州省、雲南省、甘粛省、陜西省、青海省、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区、チベット自治区を含む西部地区の開発について、2035年までに東部地域並みの生活水準の実現を目標に掲げた。エネルギー分野については需給構造の最適化を図り、再エネ開発・利用促進の観点から、西部から東部に向けた送電ルートを増強するほか、黄河流域の揚水発電開発などに基づくクリーンエネルギーの開発を進めることが示されている。このほか、電力系統の増強・更新による需給調整能力および僻地への供給能力の拡充や、石炭の生産と消費の効率化、石油・ガスのパイプライン・備蓄施設建設の推進なども盛り込まれた。 印刷用PDF
2020.05.14
米国:ハワイ電力、再エネ100%達成に向け、太陽光・蓄電池を設置
2020年5月14日付の現地報道によると、ハワイ州で電力供給を行うハワイ電力は2045年までに再生可能エネルギー100%の目標達成に向けた取り組みの一環として、オアフ島、マウイ島、ハワイ島に太陽光発電設備46万kWと蓄電池300万kWhを設置することを計画していると発表した。ハワイ電力は今後、開発業者との契約交渉に入る予定であり、30日以内にプロジェクトの規模や場所が公開される。なお、このプロジェクトは2022年の稼働を目指しているが、新型コロナの影響により、プロジェクトが延期となる可能性もあるとハワイ電力は述べている。 印刷用PDF
2020.05.12
インド:政府、新型コロナ追加経済対策で配電会社に1.3兆円を資金注入
インドのモディ首相は2020年5月12日、3月下旬から実施してきた全土ロックダウン措置について、期限となる5月17日以降も継続すると発表した。一方で、経済活動の制限は、感染状況に応じて州ごとに段階的に緩和する。また、政府はロックダウンの延長とあわせて28兆円規模の追加経済対策を発表し、このうち、全国の配電会社に9,000億ルピー(約1兆2,800億円、1ルピー=1.42円)を資金注入することを明らかにした。配電会社(小売供給も実施)はロックダウンの影響で産業・商業部門の電力需要が大幅に減少し、資金繰りが悪化していた。 印刷用PDF
2020.05.12
中国:政府、電気自動車の安全基準を公表
工業・情報化部(省)は2020年5月12日、電気自動車、電動バス、および電気自動車(EV)用電池の安全に関する国家標準を一般公開した。今回示された内容は、工業情報化部(省)が国内の一部任意国家標準(GB)の条項をベースに、現在中国が主導で制定している「UN GTR20」(電気自動車の安全性に関する世界統一技術規則第20号)を取り込んで制定されたとみられており、既に規制監督機関である国家市場監督管理局、国家標準化管理委員会の承認も得ている。 印刷用PDF
2020.05.12
米国:エネルギー情報局、エネ関連CO2排出量は過去最大の減少を見込む
2020年5月12日付の米国エネルギー情報局(EIA)が発表した「短期エネルギー見通し」(STEO:Short-Term Energy Outlook)によれば、米国における2020年のエネルギー関連のCO2排出量は前年比で11%減と過去最大の減少を見込んでいる。排出量は2007年をピークに減少傾向にあり、2020年の見通しはピーク時の76%に相当する。燃料別では、石炭からのCO2排出量がピーク時の半分以下となる。石炭は発電部門で天然ガスや再エネにシェアを奪われ続けており、新型コロナによる電力需要の減少がその消費量をさらに押し下げた形である。なお、2021年のエネルギー関連CO2排出量は、景気の回復を前提に5%増加すると予測している。 印刷用PDF
2020.05.08
韓国:「第9次電力需給基本計画」草案の概要が明らかに
2020年5月8日付の報道によると、「第9次電力需給基本計画」(2020~2034年)策定に関する諮問委員会はこのほど、その草案の概要を明らかにした。それによると、2034年までに運開後30年以上が経過する老朽化石炭火力30基(出力合計1,530万kW)をすべて廃止し、そのうち24基(同1,270万kW)はガス火力に転換するとしている。また、原子力については、2024年の26基(同2,730万kW)をピークに、段階的に廃止を進め、2034年には17基(1,940万kW)にまで減少させるとしている。これにより、石炭火力と原子力とを加えた発電電力量シェアは2020年の46.3%から2034年には24.8%に減少するが、再エネ発電電力のシェアを同期間中に 15.1%から40.0%に引き上げて充当することとしている。なお、同計画の最終案は今後、環境部の戦略環境影響評価などを経て、正式決定される予定である。 印刷用PDF
2020.05.07
欧州:2019年下期家庭用電気料金、EU加盟国平均で1.3%の上昇
欧州統計局の2020年5月7日付のニュースリリースによると、欧州連合(EU)加盟27カ国における2019年下期の家庭用電気料金(諸税込み)は、平均で100kWh当たり21.6ユーロ(約2,500円)となった。これは、前年同期比1.3%の上昇に相当し、欧州統計局によると、ユーロ圏の平均消費者物価上昇率とほぼ同等の水準である。ただし、家庭用電気料金の変動幅には加盟国によりばらつきがあり、最大の上昇率を記録したオランダは19.6%増、逆に最大の低下を記録したデンマークは6.3%減などとなっている。また、家庭用電気料金に占める税金・課徴金の割合は、2019年下期において、EU加盟国平均で41%とされており、デンマーク(64%)、ドイツ(54%)ではその割合が5割を超えているという実態が報告されている。 印刷用PDF
2020.05.01
米国:大統領令で、基幹電力システム製品の敵対国企業からの調達禁止
トランプ大統領は2020年5月1日、国家安全保障に不可欠な電力インフラを守るため、米国の電気事業者が敵対国の企業からの基幹電力システム(BPS:Bulk power system)に関する製品の調達・使用を禁止する大統領令に署名した。本命令の背景には、中国やロシアなどの企業が、変圧器やコンデンサなどのBPS設備に、密かにセキュリティ上の脅威となるソフトウェア等を組み入れ、供給信頼度に悪影響を与えるリスク等への懸念の高まりがある。米国エネルギー省(DOE)は今後150日以内に、電気事業者が信頼できる製品を調達できるよう、特定の機器およびベンダーを「事前認定済み」として承認するための基準を確立し、公表する。また、BPSで既に使用されている危険な製品を突き止め、連邦政府が戦略を策定し、所有者と協力して、該当する機器を特定、隔離、監視および交換を可能にするなど、連邦政府のBPS整備への監視を強化する。 印刷用PDF
2020.04.30
米国:NY州のインディアンポイント2号恒久停止、稼働原子力発電所95基に
インディアンポイント2号機(PWR、99万8,000kW、ニューヨーク州)は2020年4月30日、恒久停止し、約45年に及ぶ運転に幕を下ろした。これにより米国内で稼働中の原子力発電所は95基となった。インディアンポイント原子力発電所を所有するエンタジー社は当初、2号機を2033年、3号機を2035年までとする運転延長を申請していたが、ニューヨーク市の北約39kmに位置することから、重大事故発生時の影響が非常に大きいとして、ニューヨーク州のクオモ知事が早期閉鎖を強く求めていた。その後エンタジーは2017年、卸電力価格低迷による経済性低下を主な理由として2号機を2020年4月まで、3号機を2021年4月までに閉鎖することに合意している。合意内容には原子力規制員会(NRC)の認可上の運転期限を2号機が2024年、3号機が2025年とし、系統信頼性の観点から必要と判断される場合はそれらの運転期限までの延長できるオプションが含まれていた。このため、昨今の新型コロナ感染拡大を受け、一部の環境団体がカーボンフリーで需要の大きい夏場も安定して電力を供給できるインディアンポイント2号を早期閉鎖すべきでないとして、クオモ知事に2号の運転延長を要求するといった動きも見られた。 印刷用PDF
2020.04.28
フランス:規制機関、新型コロナに伴う発電所保守作業の遅れについて協議
フランス原子力規制安全局(ASN)のドロスチュク局長は2020年4月28日、上院の国土整備・持続可能な開発委員会の公聴会において、新型コロナ感染拡大による国内の原子力発電所の保守作業の遅れについて、対応をフランス電力大手EDFと協議していると述べた。外出制限により作業員や下請け企業の確保が難しくなっているため、春から夏に予定されていた保守作業に遅れが出ており、冬の電力供給に影響を及ぼす可能性が生じている。EDFは、一部の保守作業の先送りなどの対応案をASNに提示しており、ASNは前向きな態度を示している。また、同局長は同日の公聴会で、EDFに対し2020年6月までに義務付けていた最終バックアップ用非常用ディーゼル発電機の設置期限を延長すること、90万kW級原子炉の運転期間延長に係る意見表明は予定どおり2020年中に行うこと、ラ・アーグ再処理工場の一時停止により、使用済燃料の貯蔵場所確保が課題となっていることも明らかにした。 印刷用PDF
2020.04.24
欧州:新型コロナによる電力市場への影響は長期化の可能性も
エネルギー情報誌は2020年4月24日、新型コロナによる欧州の電力市場への影響について、シンクタンクの分析結果を報じ、4月中旬に電力需要は下げ止まったが今後の影響が長期化する可能性があると伝えた。分析を行ったのはAurora Energy Researchで、欧州の電力市場について現状は需要が前年より10~20%減少し、卸電力価格は30~40%安価となっているとした上で、今後の電力市場について以下の通り予測している。2020~2021年にかけてはすべての電気事業者が影響を受けるとされ、収入の減少は事業内容によって30~50%に達する。石炭火力は既に発電量が減少しており、ガス火力も一部の国では稼働率が低下している。再生可能エネルギーも事業環境は困難となっており、固定価格買取制度など政府支援が受けられる事業への影響は限定されるが、市場取引で収益を確保する事業は最も影響を受けることになる。今回の新型コロナの影響は2008年のリーマンショックを越え、回復するのは2022年以降となる可能性がある。 印刷用PDF
2020.04.20
米国:2019年に米国がエネルギー純輸出国に転じる
2020年4月20日付の米国エネルギー情報局(EIA)の発表によれば、米国は2019年に年間のエネルギー源輸出量が輸入量を上回る「純輸出国」に転じた。2019年のエネルギー輸入量22兆8,000億BTUに対し、輸出量が23兆6,000億BTUと、1952年以降初めて輸出量が上回った。主な要因として、前年と比較して原油輸入量が31%減少したこと、ならびに天然ガス輸出量が29%増加したことが挙げられている。 印刷用PDF
2020.04.17
中国:華北地域でEVの蓄電池を利用したアンシラリーサービス試験を実施
2020年4月17日付の現地専門紙は、華北電力市場において電気自動車(EV)の蓄電池を利用したアンシラリーサービス提供(V2G/Vehicle to Grid)の試験運用において、EV所有者に1日の充電費用の約6割が還元されていると報じた。V2Gの試験運用は、中国内最大の車両間通信ネットワーク(AI車聯網、国家電網が開発運営)によるリモート制御を活用して、専用の充電スタンドを介して実施されている。華北電力市場の管轄地域は北京市、天津市を含み、地域内のEV登録台数は約40万台、合計で180万kW分が調整電源として見込まれている。 印刷用PDF
2020.04.17
インド:電力省、電気法改正法案を公表
インド電力省は2020年4月17日、電気法改正法案(The draft Electricity (Amendment) Bill 2020)を公表し、意見募集を開始した。同改正法案では、電力売買契約に関する調停機関として電力契約執行機関(ECEA:Electricity Contract Enforcement Authority)の設立、国家再生可能エネルギー政策の策定、供給コストを反映した電気料金の設定、配電会社のフランチャイズ方式による民営化等が規定されている。同電力省は意見募集の期間を法案公表から21日間としている。 印刷用PDF
2020.04.16
ベルギー:エレクトラベル、2025年以降の原子力運転延長を政府に要請
2020年4月16日付の現地報道によると、ベルギーで原子力発電所を運転するエレクトラベル(フランスEngieの子会社)は同国のウェルメス首相に対し、2025年以降の原子力運転延長に関する決定を2020年内に下すよう要請した。同国では2025年までの脱原子力が決定しているが、代替発電設備の不足による電力不足のおそれがある。同社は、国内7基の原子炉のうち、最も運転年数の短いドール4号機およびチアンジュ3号機の2025年以降の運転継続を主張しており、これら2基および2~3カ所のガス火力発電所新設により、電力不足を回避し得るとしている。同社は、「新型コロナウイルス収束後の経済回復に電力不足による電気料金の上昇は不利」と主張し、首相との面会を要請している。 印刷用PDF
2020.04.16
英国:新型コロナの影響で風力発電所の新設量が20%減少
エネルギー情報誌は2020年4月16日、新型コロナウイルス対策の影響で、英国の風力発電の設備新設量および発電電力量が減少すると伝えた。英国では2020年3月22日から、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出禁止令が出され、発電事業者は資材調達や技術者の確保が困難となっている。コンサルタントの分析によると、当初は122万kW相当とされた2020年に新設される風力発電設備量は98万kWにとどまる見込みである。また、既存設備についても適切な保修が困難となり、通常は1カ月以内に行われるローターやギアボックスの修理に6カ月を要するケースがある。このため既存設備でも発電電力量が減少する可能性がある。 印刷用PDF
2020.04.15
豪州:再エネ庁(ARENA)、水素プロジェクトに48億円の補助金
オーストラリアの再生可能エネルギー庁(ARENA)は2020年4月15日、7,000万豪ドル(約48億円)の「水素資金調達ラウンド」を開始した。ARENAは、補助金により商業規模の再エネ電力を利用した水素エネルギー開発を支援する。支援対象は5,000kW以上の電解槽を2つ以上持つ大規模プロジェクトで、1万kW以上のプロジェクトが優先される。政府は2019年に国家水素戦略を採択し、水素の生産コストを1kg当たり2豪ドル(約136円)以下にすることを目標としている。関心表明(Expressions of interest)の提出締切りは2020年5月26日である。 印刷用PDF
2020.04.15
米国:2020年3月のクリーンエネルギー失業者数は10万6,000人超と分析
2020年4月15日付の現地報道によると、再エネ関連団体のEnvironmental Entrepreneurs(E2)、American Council on Renewable Energy(ACORE)らは米国労働省のデータを分析し、2020年3月にクリーンエネルギー部門(太陽光、風力、エネルギー貯蔵やEV関連などで、E2によると2019年末の労働者数は約336万人)の労働者10万6,000人超が失業したと発表した。また、連邦政府と議会が新型コロナウイルスの影響に対応するための迅速かつ有効な経済対策を取らない場合、今後数カ月以内に同部門の労働者50万人(15%に相当)以上が失業すると予測している。なお、同部門における経済損失については、カリフォルニア州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、マサチューセッツ州およびミシガン州が、大きな打撃を受けたとしている。 印刷用PDF
2020.04.14
中国:国家電網、2020年にEV充電事業への投資を拡大
中国送電最大手の国家電網有限公司は2020年4月14日、2020年に電気自動車(EV)充電インフラ事業へ合計27億元(約410億円)を投じて、7万8,000台の新規充電スタンドを整備すること明らかにした。また、同社はあわせて「2020年充電設備の開発計画」を発表しており、2020年末までに同社が運用する充電プラットフォームに接続する公共用充電スタンドを100万台とし、260万人のユーザー獲得を目標に掲げている。なお、国家電網は2019年末時点で、9万5,000台の充電スタンドを運営しており、加えて全国の公共用充電スタンド85%以上に相当する45万7,000台の充電スタンドが同社の充電プラットフォームに接続されている。 印刷用PDF
2020.04.14
米国:新型コロナウイルスによる電力価格低下、発電会社が破産申請
2020年4月14日付の地元紙によると、ウェストバージニア州を拠点とする発電会社であるLongview Power社は同日、連邦破産法第11 条(チャプター11)に基づく更生計画を申請した。同社は70万kWの石炭火力を所有しており、申請理由について、新型コロナウイルスの影響によりPJMの電力価格が低下したためとした。2020年4月の電力価格は15ドル/MWhであり、2019年4月の28.4ドル/MWhと比較してほぼ半値となっていた。本石炭火力は2011年に運転を開始した超臨界圧で高効率であり、同社は運転を継続するとしている。また、同社がこの他に計画している天然ガス火力(127万kW)と太陽光発電(7万kW)については計画に変更はないとしている。 印刷用PDF
2020.04.09
フランス:議会、エネルギー移行を軸とする経済危機回復計画を要請
2020年4月9日付の現地専門誌によると、新型コロナウイルス拡大によるエネルギー政策への影響に関する上院経済問題委員会の聴聞会において、ボルヌ環境移行・連帯大臣は4月7日、「気候変動対策へのコミットメントから逸脱することなく経済危機から脱出するために、エネルギー移行を回復計画の中心に置く」べきとの要請を受けた。プリマ同委員会委員長は、「新型コロナウイルス拡大は、エネルギー事業者の収益性、したがって再エネ開発を可能にする投資能力にとって脅威であり、気候変動対策と電源多様化に悪影響を与えかねない」との見解を示した。ボルヌ大臣はまた、コロナ危機管理のために「エネルギー多年度計画」(PPE)および「国家低炭素戦略」(SNBC)の公表に「修復不可能な遅延」を発生させないよう要請した。
2020.04.08
世界:IAEA、新型コロナウイルス危機に原子力関連事業者等の支援を強化
国際原子力機関(IAEA)は2020年4月8日、新型コロナウイルス(COVID-19)危機に対処している世界の原子力事業者や大学・研究機関の原子力施設運転者への支援を強化すると発表した。世界の原子力施設運転者は、COVID-19の感染が拡大する中、運転継続に必要な作業者の健康を保護するための対策を講じており、IAEAはこれら運転者に対して、経済協力開発機構/原子力機関(OECD-NEA)と共同で運営する運転経験国際通報システム(IRS)や、今回新しく開設したCOVID-19運転経験ネットワークを通じた情報交換などの支援を強化する。病気の蔓延を最小限に抑え、要員の安全な補完を維持するため多くの運転者は、要員の縮小、在宅勤務、ソーシャル・ディスタンスの確保、定期的なスタッフの医療検査、作業エリアの消毒、特定の個人用保護具の支給、移動制限、自己隔離、会議制限を行っている。また一部の運転者に対しては、時差勤務、勤務シフトの修正、制御室運転員との遠隔連絡を、さらに重要な要員に対しては、現場での一時的寝泊まりまで要請している。
2020.04.07
米国:EIA、新型コロナウイルスによる需給減の見通しを発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2020年4月7日に発表した短期エネルギー見通し(STEO:Short-Term Energy Outlook)に、新型コロナウイルスによる電力需要への影響を織り込んだ。必要不可欠ではないビジネスが一時閉鎖され、多くの人が在宅勤務を行っている状況が数カ月続くとして、2020年の電力消費量は3%減少するとした。特に影響の大きい商業用では4.7%、工業用でも4.2%の減少を見込んでおり、家庭用需要は在宅勤務により増加するものの、温暖な冬場の需要減によりほぼ相殺されるため0.8%減になるとしている。また、太陽光と風力の設備の新増設については、当初計画より5~10%程度減少するとしている。
2020.04.06
欧州:新型コロナと再エネ電力の増加で各国の卸電力価格が大幅に低下
エネルギー情報誌は2020年4月6日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、電力需要が低迷し、4月に入って欧州各国の卸電力価格が大幅に低下していると報じた。ドイツの4月の取引価格は17.06ユーロ/MWh(約2円/kWh)で、これは1年前より52%安価な水準である。ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)によると第1四半期の電力需要は昨年より1%減少にとどまっているが、取引関係者は4月以降の気温上昇に伴い需要が減少し、風力や太陽光の発電電力量が拡大、水力発電用ダムの貯水水準も高いことから、卸電力価格の大幅な低下が予想されるとしている。ロックダウン(都市封鎖)が行われているスペインやイタリアでも卸電力価格は大幅に値下がりしており、スペインでは20.05ユーロ/MWh(約2.4円/kWh)で取引が行われ、これは前年比で58%低い。イタリアでは4月に入って25.90ユーロ/MWh(約3.1円/kWh)を記録、これは3月から29%の低下である。取引関係者は「現在の卸電力市場はこれまで見たことがないような状況で、電力価格に関連するすべての指標が弱含みとなり、今後の予想は難しい」としている。
2020.04.04
ドイツ:BNetzA、SuedOstLinkプロジェクトの連邦セクター計画を承認
連邦系統規制庁(BNetzA)は2020年4月4日、送電線開発プロジェクトSuedOstLinkの連邦セクター計画のうち最終区間を承認したと発表した。同プロジェクトは、ヴォルミルシュテット(ザクセン・アンハルト州)からイザール(バイエルン州)にかけて南北間をつなぐ525kV超高圧直流送電(HVDC)プロジェクトであり、送電容量200万kW、総亘長約523kmを予定している。また、同計画は、送電線の候補ルート(コリドー)や建設による環境影響評価について整理したものであり、管轄TSOや開発ステップによって5区間で分割申請されていた。今回は、その中で最後に残っていた区間、ヴォルミルシュテット~アイゼンベルク(テューリンゲン州)をつなぐ亘長約182km部分の連邦セクター計画が承認を受けたものである。今後、コリドー内の送電線建設ルート案について、公衆へのコンサルテーションを経て、人や環境への影響が最も少ないルートが議論される予定。なお、同プロジェクトは2025年の運開を予定している。
2020.04.03
中国:核融合装置、1億度の「人工太陽」の10秒間維持に成功
2020年4月3日付の現地紙によると、中国科学院は、先ごろ開発した大型核融合装置「東方超環」(EAST、安徽省)が電子サイクロトロンと低クラッタが相乗的に加熱する状態で、プラズマ中心の電子温度が1億度となる「人工太陽」を10秒間維持したことを明らかにした。業界関係者は、これは中国核融合実験炉CFETRプロジェクトと国際熱核融合炉の運用上重要な技術的成果とされ、人類が核融合クリーンエネルギーを利用する上でも重要な一歩を踏み出したと評価している。EASTは、中国科学院傘下の合肥物質科学研究所プラズマ物理学研究所が独自に開発した設備であり、第4世代核融合実験装置と位置付けられている。
2020.04.02
英国:配電事業者が配送事業者大手と連携してEV充電の最適化事業を開始
エネルギー情報誌は2020年4月2日、配電事業者のUK Power Networksが世界的な配送サービス事業者のUPS、ソリューション事業を行うMoixaと連携してEV充電を最適化するため実証事業(EFLES:EV Fleet-Centered Local Energy System)を開始すると報じた。EFLESはUPSが運営するロンドンの集配センターでのEV充電について、「最も安価で最もクリーン」な電気で充電しながら、電力系統のバランス維持も管理する事業である。Moixaが提供する充電管理システムはエネルギー価格、電力需要、気象情報など数百のデータを分析する。UPSは脱炭素に向けた取り組みを進めており、EFLESを効率的に活用するため2019年1月に1万台の専用EVを発注している。
2020.04.02
米国:Duke Energy FL社、コロナ影響の緩和措置で5月の電気料金を値下げ
Duke Energyフロリダ社(フロリダ州を営業区域にする Duke Energyの子会社、顧客数は約180万軒)は2020年4月2日、新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響の緩和措置として、5月請求分の電気料金の減額を発表した。州公益事業委員会(PSC)が同社の申請を承認した場合、一般家庭向け電気料金は約21%、業務用および産業用向けは約20~45%の減額となる。今回の措置は、本来、翌年に年間を通じて払い戻しする燃料費削減分について、 5月請求分で1回にまとめて迅速に払い戻しをすることで、顧客の経済的影響の緩和につなげる。Duke Energy社は、新型コロナウイルスの影響に伴う特別措置として、料金の支払いが困難な顧客への電力供給停止の猶予、延滞料金の免除、クレジットカードやデビットカードによる支払手数料の無料化を実施している。
2020.04.01
中国:新エネ車の購入補助金、新型コロナ対応で2年間延長
2020年4月1日付の現地業界紙によると、 2020年3月31日に開催された国務院常務会議において、本来2020年末の撤廃が予定されていた新エネ車(EV・PHV・FCV)の購入補助金について、新型コロナウイルスの影響を受けて販売が不振となった自動車の消費喚起の観点から、2022年末まで2年間延長されることが決定された。また、これにあわせて自動車購入税の免除措置も2年間の延長が発表された。中国では2019年6月の補助金の大幅縮小により新エネ車販売台数が大幅に減少しており、2月の新エネ車販売台数は前年同月比75.2% 減(1万2,908台)と8カ月連続の前年割れとなった。また、地方政府は補助金を既に廃止したところもある一方、広東省広州市などでは、2020年3~12月に新エネ車を購入した場合、新車購入者に対して1台当たり1万元(約15万円)を支給するなどの動きも出てきている。

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