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各国の電気事業(主要国)2022年版

 
オーストラリア
2022年8月時点
1.エネルギー供給
(2020年、石油換算100万トン)
 石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他自給率
国内生産294.620.7127.3-1.38.7452.6346%
国内供給38.944.137.9-1.38.7131.0
2.電力供給
(2020年、発電端)
発電電力量
(10億kWh)
構成比(%)
石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他
265.2542200618
(2020年)
年負荷率熱効率送配電
損失率
CO2SO2
排出量
NOX
排出量
(%)(%)(%)原単位
(g/kWh)
総排出量
(百万トン)
(g/kWh)(g/kWh)
68.4N/A4.4657.7165.71.671.27
電気料金水準
(日本=100、2020年)
停電時間
(分/年間、2016年)
産業用家庭用
-82245.40
3.電気事業体制
自由化 従来は、各州電力庁による垂直一貫体制。1990年代後半の電気事業改革により、全国電力市場(NEM)を中心とした東部地域、西オーストラリア州、北部準州の3つの市場に再編。東部地域と西オーストラリア州では発電、送電、配電、小売の各部門に分割され、発電部門と小売部門が自由化。
全国電力市場
(NEM)
NEM参加州:ニューサウスウェールズ州(NSW)、ビクトリア州(VIC)、クイーンズランド州(QLD)、南オーストラリア州(SA)、首都特別区(ACT)、タスマニア州(TAS)の合計6地域。西オーストラリア州(WA)及び北部準州(NT)は系統が独立しており、不参加。
規制 従来、連邦が州際事項、各州が州内事項を管轄。2005年に連邦大で規制するため、NEM参加地域を対象として、連邦規制機関として豪州エネルギー規制局(AER)および豪州エネルギー市場委員会(AEMC)を設立。前者は送配電、料金規制を除く小売事業、卸売市場の規制、後者は市場制度の検証、変更を担当。

※ビクトリア州の例 発 電 発電事業者(州内、州外) 卸 売 相対取引 取引所取引(NEM) 送 電 SP AusNet 配 電 配電事業者(5社) 小 売 地元小売事業者(3社) 新規小売事業者(15社) 需 要 家
4. 最近の動向と今後の課題

(1)自由化・事業体制

〇 WA州を除く全州で小売全面自由化を実施。VIC、SA、NSW、QLDの一部では料金規制も撤廃。送配電費用、卸費用等の増加で小売料金は2010年以降の10年間で約2倍に上昇。

〇 小売事業者は20社以上存在するが、大手電力会社のAGL、Origin、EnergyAustralia(ビッグ3)は、東部州で市場シェアの60~100%を占める。ビッグ3は小売事業に加えて、発電会社も保有。

〇 2019年7月1日から、小売料金の一部に上限規制を導入。対象は市場料金を選択しない需要家(ビクトリア州で家庭用需要家の約6%が該当)。

(2)原子力政策・開発

〇 現在、原子力発電設備はなく、建設には法改正が必要。原子力モラトリアム政策。

〇 ウラン資源は積極的に開発・輸出する方針(2014年にインドと原子力協定締結)。ただし、鉱山開発権限を有する一部の州は否定的。

〇 2019年8月、上院エネルギー委員会が2006年以来の原子力導入可能性調査を開始。

〇 2020年5月にオーストラリア政府が公表した温室効果ガス削減に関する「技術投資ロードマップ」で、SMR を「変革の可能性を秘めた有望な技術」と位置付け。

〇 2021年7月、英国政府とSMR を含む脱炭素技術に係る研究開発の協力趣意書に署名。

(3)気候変動対策

① 政策目標の動向

〇 2022年5月の総選挙で勝利した労働党政権は、6月に気候変動目標を強化する法案を成立させ、国連にNDCを提出。

〇 温室効果ガス削減目標:2030年までに2005年比43%削減(従来の目標は26~28%減)。2050年にネットゼロを実現。

② 再エネ政策

〇 新政権は選挙キャンペーンで2030年に電力供給の80%をゼロエミッション電源とすることを公約。具体的な政策は今度明らかになる見込み(以下は前政権の取り組み)。

〇 再生可能エネルギー導入目標: 2020年までに発電電力量の23.5%(達成済)。

〇 2020年5月、「技術投資ロードマップ」を策定、同9月にこれに基づく声明文書を発表。電力分野では、水素、電力貯蔵、CCS等が優先分野に。「H2 under 2」目標(後述)を踏襲。2030年2005年比で29%のGHG排出削減が可能との見込み。

③ 水素・アンモニア政策

〇 水素大国を目指し、オーストラリア政府評議会エネルギー委員会(連邦・州の合同組織)は2019年11月、「国家水素戦略」を発表。水素ハブ(様々な分野の水素需要が集まった大規模水素需要地)の設立等を提唱。

〇 テイラー・エネルギー相(当時)は2020年2月、水素1kg 当たり2豪ドル未満を目指す「H2 under 2」を発表。

〇 オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)は2020年4月、再エネを利用した水素エネルギー開発を支援するため、7,000万豪ドル(約58億 円 )の助成金制度「Renewable Hydrogen Deployment Funding Round」を開始。36件(計10億豪ドル)が応募、2021年5月に3件(計1億豪ドル、当初より増額)を選定。

(4)電化(EV関連)

① 電化の進展状況

〇 2021年の新車販売に占めるEVのシェアは2%。

② 電化促進に向けた政策

〇 連邦政府によるEV導入のための支援策はなし(今後、新政権下で軽減税制などの導入が検討される見込み)。州政府は独自に支援策を実施(VIC、SA、NSW、QLD州ではEV一台購入時に6,000豪ドルの補助金(リベート)を支給し、税額控除などの支援策もあり)。

(5)その他

① ウクライナ侵攻の影響

〇 国際的なエネルギー(石炭、天然ガス)価格の上昇により、国内のガス、卸電力価格も大幅に上昇。2022年第2四半期の卸電力価格(平均)は264豪ドル/MWh(約24.6円/kWh)に達する。これは2022年第1四半期および2021年第2四半期のほぼ3倍に相当。

〇 2022年6月15日~23日、東海岸地域への寒波の来襲や老朽化した石炭火力の計画外停止、燃料価格の上昇などが要因となって、東海岸各州の卸電力市場の取引を管理者が一時停止。

〇 国際的なエネルギー価格高騰により、LNG事業者が輸出を優先するため2023年以降国内市場でガスが不足するとの見通しとなり、連邦政府はLNG輸出の抑制を検討中(2022年10月までに決定するとの報道)。

② エネルギー価格高騰への対応

〇 2022年5月の総選挙キャンペーンで労働党政権は一世帯あたり年間275豪ドルの電気料金削減を公約(具体的な政策は今後実施される見込み)。


※ 2022年8月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。
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