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各国の電気事業(主要国)2022年版

 
リトアニア
2022年8月時点
1.エネルギー供給
(2020年、石油換算100万トン)
 石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他自給率
国内生産0.010.03--0.031.901.9726%
国内供給0.152.781.97-0.032.537.46
2.電力供給
(2020年、発電端)
発電電力量
(10億kWh)
構成比(%)
石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他
5.31023202045
(2020年)
年負荷率熱効率送配電
損失率
CO2SO2
排出量
NOX
排出量
(%)(%)(%)原単位
(g/kWh)
総排出量
(百万トン)
(g/kWh)(g/kWh)
71.1N/A7.8207.221.090.090.63
(注)SO2排出量、NOx排出量は2019年
電気料金水準
(日本=100、2020年)
停電時間
(分/年間、2016年)
産業用家庭用
6561172.92
3.電気事業体制
事業体制 2000年代初めの電力自由化で、従来の発送配電一貫体制が廃止され、発電事業、送電事業および配電・小売事業の3事業に分割。国有イグニティス・グループを中心とした事業体制。
発 電 発電会社が相対取引あるいは卸電力市場を介して電力を卸売。
卸市場 2013年からNord Poolに参加
送 電 2010年に設立された送電会社Litgridが送電系統運用を実施。
配電・
小売
イグニティス・グループ傘下のESO社がリトアニアほぼ全域をカバーする配電事業者。その他小規模配電事業者が4社。最終需要家(産業用を含む)へ電力を供給する供給事業者は約60社。

発 電 Ignitis Group等 卸 売 相対取引 取引所取引 (ノルドプール) 送 電 Litgrid 配 電 ESO 等 小 売 小売事業者 需 要 家
4. 最近の動向と今後の課題

(1)自由化・事業体制

〇 2000年初め:電力自由化によって、従来の発送配一貫体制が廃止され、事業分野別に水平分割。

〇 2002年:国有のリトアニア・エネルギー社(Lietuvos Energija AB)が設立され、同社に送電系統運用者、卸電力市場管理者としての役割が与えられた。その後、この役割は2010年に設立された送電会社Litgridに受け継がれた。

〇 2019年、国営最大手Lietuvos EnergijaはIgnitis Groupに改称。Lietuvos Energijos Tiekimas、Energijos Tiekimas、Gilė、Litgasが合併してIgnitis UABとなった。

〇 自由化後も、家庭用需要家及び小規模需要家には、従来どおり規制料金で供給。一定規模以上の需要家(有資格需要家)は、供給者を自由に選択可能となるものの規制料金に留まる需要家が大半。

〇 2020年5月、電力法改正が行われ、2021年1月1日以降、段階的に規制料金を撤廃し、自由化料金の選択を促進する方針。

(2)原子力政策・開発

〇 EU加盟前:イグナリナ原子力発電所1、2号機(RBMK:旧ソ連製黒鉛減速炉、150万kW×2)を運転し、総発電電力量の約70%を供給。しかし1987年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所と同じ炉型であったため、EU諸国が安全性に対して懸念を表明。

〇 2005年にTVO社が5基目の原子炉オルキルオト3号機(EPR、160万kW)の建設を開始。当初、2009年の運開を予定していたが、機器・設備の技術面の不具合や、安全審査手続きの遅れなどで工期は大幅に遅延。2022年3月に初併入し、同年12月運開予定。

〇 EU加盟時:EUはリトアニアのEU加盟条件の1つとして、同発電所の運転停止を要求。最終的にEUの要求に従い、1号機は2004年末、2号機は2009年末に閉鎖して廃止措置中。

〇 新規建設計画:リトアニアはイグナリナ閉鎖を受け入れる一方、2007年、バルト3国とポーランドとの間で、新しい原子力発電所の建設に合意。

〇 2011年7月:リトアニア政府は日立GEのABWR(出力135万kW)1基のビサギナス(Visaginas)市(イグナリナ発電所の隣接地)での新設を決定(2012年6月に議会承認)。

〇 2012年10月:国民投票で63%が建設に反対し、先行き不透明に。

〇 2014年3月:ロシアのクリミア半島侵攻などで旧ソ連圏のリトアニアではロシアへの警戒感が高まり、エネルギー自立の重要性が再認識。リトアニア大統領および全政党の代表が同建設計画の維持を確認するも、2018年策定の「国家エネルギー自立戦略」では原子力計画は明記されず。市場環境が変わりコスト競争力が得られるか、エネルギー安全保障上から必要な状況となるまで凍結される見込み。

(3)気候変動対策

① 政策目標の動向

〇 EUの温室効果ガス(GHG)排出削減目標(2050年:カーボンニュートラル、2030年:1990年比55%削減)を加盟国として共有し、具体的な方策はEUが発表した包括的政策に基づき今後具体化する予定(EUの政策については、別紙「EUのエネルギー気候変動政策を巡る最近の動き」参照)。

〇 GHG削減目標:2030年に2005年比9%減(EU-ETS対象外の交通、建設、農業などの分野)。2050年までにカーボンニュートラル達成、森林吸収および炭素回収貯留(CCS)技術の活用を想定。

② 再エネ政策

〇 再エネ導入目標:

- 2030年までに最終エネルギー消費の45%(2020年実績では26.8%)、輸送燃料の15%、電力部門の45%、熱供給部門の67.2%。

- 2050年までに最終エネルギー消費の90%、電力消費の100%。

〇 導入支援策:

- 2019年:入札制(すべての再エネ電源種別を対象)に基づくフィードインプレミアム制度を導入。系統接続コストは再エネ発電事業者の負担。

- 2020年:政府は入札によるバルト海洋上風力の開発促進を発表。2030年までに70万kWの開発を目指す。入札は2023年の予定。

- プロシューマーやエネルギー・コミュニティによる太陽光、風力等の分散型電源について、補助金、ネットメータリング、VPP等のスキームを通じて普及拡大を目指す。

③ 水素・アンモニア政策

〇 2020年:エネルギー省のイニシアチブにより、複数の省庁、産業団体等が参画する「リトアニア水素プラットフォーム」を立ち上げ、産業、運輸、エネルギー分野での水素利用に向けたワーキンググループを設置。

〇 2021年:ガス導管事業者アンバーグリッド社、ESO社らがP2Gを通じた水素製造開発に関する協力協定を締結。2024年のプロジェクト立ち上げと、ガス導管システムへの最初のグリーン水素の供給を目指す。

〇 2022年1月:政府は水素技術開発に関する国家ガイドラインの起草に着手。

(4)電化

① 電化の進展状況

〇 一般家庭の電化率:暖房用1.58%、給湯用8.9%、調理用16.1%(2020年実績)

〇 年間新規登録台数の全車両に占めるシェア:電気自動車(BEV)0.35%、プラグインハイブリッド車(PHEV)0.13%。

② 電化促進に向けた政策

〇 鉄道の電化:リトアニアは欧州内で鉄道の電化が最も遅れている国のひとつ(電化率8%)。政府は2030年までに鉄道の電化率を39%へ引き上げる計画。約4億ユーロの費用のうち、約2億ユーロをEUの基金により賄う予定。

〇 電気自動車:2021年、政府は電気自動車への買い替えに最大4,000ユーロの補助金を拠出することを発表(総予算は500万ユーロ)。

(5)その他

① ウクライナ侵攻の影響

〇 ロシアへのエネルギー依存:国内エネルギー供給の96.1%(2020年実績、推定)

〇 2022年5月:ロシアからのガス、電力を含むエネルギーの輸入を完全に停止したことを発表。ガスについては国内のクライペダLNGターミナルを通じた米国等からの輸入で代替。電力についてはスウェーデン、ポーランド、ラトビアといったEU加盟国からの輸入で代替。

② エネルギー価格高騰への対応

2022年4月:政府、価格高騰対策およびエネルギー自立強化策で22.6億ユーロの拠出に着手。

- ガスおよび電気料金の支払いに対する一般家庭への補助金として5.7億ユーロ。

- 企業に対する補助金1.2億ユーロに加え、影響の大きい特定のセクターに1.42億ユーロなど。

- エネルギー自立強化策として、建物のリノベーション、電気自動車の充電インフラ整備、太陽光パネルの設置、化石燃料焚きボイラーから高効率設備への切り替えなどへ補助金拠出。


※ 2022年8月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。
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