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各国の電気事業(主要国)2022年版

 
フィンランド
2022年8月時点
1.エネルギー供給
(2020年、石油換算100万トン)
 石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他自給率
国内生産0.6--6.11.410.418.458%
国内供給2.97.52.16.11.411.831.7
2.電力供給
(2020年、発電端)
発電電力量
(10億kWh)
構成比(%)
石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他
68.7707342329
(2020年)
年負荷率熱効率送配電
損失率
CO2SO2
排出量
NOX
排出量
(%)(%)(%)原単位
(g/kWh)
総排出量
(百万トン)
(g/kWh)(g/kWh)
53.1N/A3.7169.711.30.150.32
(注)SO2排出量、NOx排出量は2019年
電気料金水準
(日本=100、2020年)
停電時間
(分/年間、2016年)
産業用家庭用
488167.92
3.電気事業体制
発電部門 発電会社、送電会社、配電会社、供給会社、取引仲介業者、垂直統合型会社(発電・供給部門と配電部門など)など300社以上。
発 電 小規模な公営事業者を中心に、発電会社は国内に約150社。最大の発電会社はフォルトゥム社(政府が過半数の株式保有、2017年における国内市場シェア(設備容量ベース)は約20%)。このほか、産業界の共同出資により設立されたTVO社など。
送 電 国や民間の出資からなるフィングリッド社(国および政府機関の所有シェア53%)が、送電系統を所有・運用。
配 電 配電事業者は約90社。一定規模以上(過去3年間の配電電力量が2億kWh以上)の事業者に配電と小売供給の法的分離を義務付け。
小売供給 フォルトゥム社、バッテンファル社(スウェーデン資本)、ヘレン社(旧ヘルシンキ・エネルギア社)など。上位3社の小売市場シェアは41%(2021年)。小売供給事業者数は全国で58社(2021年)。M&Aなどにより2018年の72社から減少。

発 電 大手事業者(フォルトゥム、TVO等)、公営事業者等 卸 売 相対取引 取引所取引 (ノルドプール) 送 電 フィングリッド 配 電 大手事業者、公営事業者等 小 売 大手事業者、公営事業者等 需 要 家
4. 最近の動向と今後の課題

(1)自由化・事業体制

〇 送電分離:1990年代後半、電力会社2社の送電部門が分離され、新設されたフィングリッド社に統合。以降、同社が送電系統を所有・運用。

〇 自由化:送配電系統のオープンアクセス化と共に、1995年に発電部門の自由化と、小売供給の段階的自由化を開始。1997年の家庭用市場の自由化により全面自由化。

〇 卸売市場:1996年に電力取引所EL-EXの運用開始。EL-EXは1998年に北欧国際電力取引所ノルドプールと統合され、北欧地域大での卸電力取引市場を形成。

〇 小売市場:2021年における家庭用需要家の供給事業者変更率は16.2%(2020年15.6%)。

〇 スマートメーターの普及率が99%を超える中、供給事業者はダイナミック・プライシングに基づく供給契約を提供(スポット価格に基づき1時間単位で価格が変動)。2021年末現在、9%の需要家がダイナミック・プライシングで契約。

(2)原子力政策・開発

〇 原子力政策:エネルギー資源に乏しく、エネルギー安定供給、気候変動対策、さらにはロシア依存の軽減を進めるため、積極的に原子力開発を推進。2022年現在、フォルトゥム社とTVO社が計4基(270万kW)を運転中、総発電量の3割強のシェア。

〇 2005年にTVO社が5基目の原子炉オルキルオト3号機(EPR、160万kW)の建設を開始。当初、2009年の運開を予定していたが、機器・設備の技術面の不具合や、安全審査手続きの遅れなどで工期は大幅に遅延。2022年3月に初併入し、同年12月運開予定。

〇 フェンノボイマ社(フィンランド66%、ロシア34%の多国籍コンソーシアム)が、ハンヒキビ1号機(ロシア製VVER-1200、120万kW)の建設を計画していたが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴い、同年5月に建設許可申請を取り下げ。

〇 オルキルオトの地下400~450mに使用済燃料を最終処分する計画を持つポシバ社が2016年から処分場を建設中。同社は2021年12月、処分場の2024~2070年の操業許可を申請。

(3)気候変動対策

① 政策目標の動向

〇 EUの温室効果ガス(GHG)排出削減目標(2050年:カーボンニュートラル、2030年:1990年比55%削減)を加盟国として共有し、具体的な方策はEUの包括的政策に基づき今後具体化する予定。

〇 2030年に、EU排出量取引制度(EU-ETS)の対象外部門で2005年比39%減。

〇 2035年までのカーボンニュートラル達成を目標とし、炭素吸収能力の強化を目指す。

〇 2029年までに国内の石炭火力発電所を廃止。

② 再エネ政策

〇 再エネ電力はバイオマスが中心、その他風力など。太陽光はわずか。2020年の電源別シェア(発電量ベース)はバイオマス17%、風力11%、太陽光1%未満。

〇 再エネ開発目標:

- 最終エネルギー消費に占める再エネのシェアを2030年までに51%に引き上げ(2020年実績では43.8%)。

- 道路交通部門では2030年までに30%へ(2021年実績では18%)。

〇 導入支援策:

- 従来の国レベルでの導入支援策:長らく設備投資補助や税控除が中心。

- 2011年:FIT導入法を制定・施行。対象は風力、バイオガス、バイオマス(木質燃料)。

- 2018年:入札制に基づくフィード・イン・プレミアム制度を導入。FIT制度は段階的に廃止。

- 上述の入札はすべての電源を対象に実施され、結果的にもっぱら風力が落札。一方、木質燃料を燃料とするコジェネプラントには補助金を支給(最大でMWh当たり18ユーロ、欧州排出量取引の排出枠価格の水準により補助額は変動)。

③ 水素・アンモニア政策

〇 2035年のカーボンニュートラル達成という野心的目標を掲げるフィンランドにとって、製造部門や運輸部門での水素利用の拡大は不可欠。非化石燃料による発電シェアが8割を超えるフィンランドでは、グリーン水素の製造ポテンシャルも大きい。エネルギー安全保障の観点からも、政府は今後の水素技術開発に期待。

〇 現状、個別の水素戦略の策定は行われていない一方、政府は新たな気候変動・エネルギー戦略の策定を進めており、この中で、水素戦略、水素経済について言及される予定。同様に、水電解装置による水素製造能力の数値目標の設定も見込まれる。

〇 ロシアからの天然ガス輸入停止に続いて、政府は2022年6月、国内の水素輸送ネットワークの建設計画を発表。フィンランド国有の基幹ガスネットワーク運用者であるGasgrid社が、向こう数カ年をかけてその建設に携わる方針。

(4)電化

① 電化の進展状況

〇 一般家庭の電化率:暖房用24.8%、給湯用24.5%、調理用89.9%(2020年実績)。

〇 年間新規登録台数の全車両に占めるシェア:電気自動車(BEV)1.73%、プラグインハイブリッド車(PHEV)5.38%。

② 電化促進に向けた政策

〇 政府は電気自動車その他低排出車の購入に対する補助金を拠出。2022年より政府は運輸部門の電化目標を以下のように設定。

- 2030年までに電気自動車およびプラグインハイブリッド車を乗用車について累積で70万台、小型商用車について同4.5万台導入(うち少なくとも50%は電気自動車)。

- トラックおよびバスの新規販売について、2030年までに30%、2040年までに100%をゼロエミッションとする。

(5)その他

① ウクライナ侵攻の影響

〇 2022年3月にフォルトゥム社が、ロシアでの新規投資の停止を発表。翌月には系統運用者フィングリッド社が、ロシアからの電力輸入容量を130万Wから90万kWへ引き下げ。その後、ロシアの政府系電力大手Inter RAO社が、未払を理由にフィンランドへの電力輸出を停止。フィンランドのロシアからの電力輸入は年間92億kWh(2021年実績、国内消費量の約10%)。

〇 2022年5月にはロシア国有ガスプロム社が、ガス代金のルーブル建て支払いをフィンランドが拒否したことを理由に、フィンランドへのガス供給を停止。フィンランドのロシア産ガス依存度は92%。ただし、フィンランドの一次エネルギー供給に占めるガスの割合は6.6%程度(いずれも2020年実績)。フィンランド国有ガス会社は、他の供給元からの代替は可能と説明。

〇 同じく2022年5月にフォルトゥム社が、ロシアのエネルギー市場からの撤退を発表。ロシアの発電事業者(火力設備1,130万kWを運営)の株式売却、その他直接保有する火力発電所(470万kW)、熱供給設備(760万kW)の売却など。

② エネルギー価格高騰への対応

〇 社会保障制度に基づき、生活弱者に電気料金の支払い免除を認める措置などあり。

〇 2022年8月までに、全国的なエネルギー節約キャンペーンの呼びかけを開始する予定。秋以降、暖房温度の引き下げ、給湯利用の節約などを含む施策を実施。


※ 2022年8月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。
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