ホーム > データ集 > 各国の電気事業(主要国/2022年版) > フランス

各国の電気事業(主要国)2022年版

 
フランス
2022年8月時点
1.エネルギー供給
(2020年、石油換算100万トン)
 石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他自給率
国内生産-0.80.0292.25.321.5119.955%
国内供給5.362.334.992.25.318.3218.3
2.電力供給
(2020年、発電端)
発電電力量
(10億kWh)
構成比(%)
石 炭石 油ガ ス原子力水 力その他
531.2117671312
(2020年)
年負荷率熱効率送配電
損失率
CO2SO2
排出量
NOX
排出量
(%)(%)(%)原単位
(g/kWh)
総排出量
(百万トン)
(g/kWh)(g/kWh)
69.7N/A7.840.120.40.010.05
(注)SO2排出量、NOx排出量は2019年
電気料金水準
(日本=100、2020年)
停電時間
(分/年間、2016年)
産業用家庭用
778452.60
3.電気事業体制
国有企業EDF 発電・小売部門で圧倒的なシェア(発電及び販売シェアは共に約80%)。送電・配電部門は同社子会社が所有・運用。
電力取引所EPEX
(旧Powernext)
2001年にスポット取引、2004年に先物取引も開始。
送 電 EDFの送電子会社RTEが所有・運用。
配 電 主にEDFの配電子会社Enedis(旧eRDF)が所有・運用。他に公営配電会社も存在。
小売供給 EDFの他に地方配電事業者約100社、国外事業者及び独立系新規参入者が存在。

発 電 発電事業者(EDF、ENGIE、CNR等) 卸 売 相対取引 EPEX(取引所) 送 電 RTE(EDF子会社) 配 電 Enedis(EDF子会社) 地方公営 小 売 E D F 需 要 家
4. 最近の動向と今後の課題

(1)自由化・事業体制

〇 自由化:1999年から段階的に自由化範囲を拡大し、2007年7月に全面自由化を実施。

〇 事業再編:段階的に事業再編を実施。

- 2000年「電力自由化法」:発電市場の自由化、小売市場の段階的自由化のほかに、独立規制機関の設置、送電部門の経営・会計分離などを規定。

- 2003年「電力・ガス市場およびエネルギー公共サービス法」、2004年「EDF・GDF株式会社化法」:送電部門の法的分離(別会社化)、EDFの株式会社化と部分民営化、兼業規制の撤廃などを規定。送電子会社RTEを設立。EDFは一部の株式(約13%)を上場。

- 2006年「エネルギー部門法」:小売市場の全面自由化に加えて、配電部門の別会社化などを規定。配電子会社「eRDF社(現Enedis社)」を設立。

〇 競争促進策:2010年「電力市場新組織法(NOME)」

- 政府が定めた公定価格(ARENH価格)で、EDFの原子力発電電力のうち年間最大1,000億kWh(EDFの原子力発電電力量の最大25%に相当)を国内競合他社に売電することを義務付け。ARENH価格は42ユーロ/MWh。2016年は、化石燃料価格の低下や卸電力価格の低下によって、ARENHによる売電量は低迷したが、その後の卸市場価格の上昇に伴い再びARENH需要が増加。2022年には、エネルギー価格の高騰を抑制する目的から、Arenh販売電力量の年間上限が1,200億kWhに引き上げられた。

〇 EDF再編:2018年末、政府はEDFに対し、原子力発電事業の長期的な継続のために組織見直しを要請。EDFから提示された組織再編案について政府と欧州委員会の間で協議が続けられてきたが、難航していた。2022年4月に再選されたマクロン大統領は、EDFの完全国有化を目指し、欧州委員会との交渉を再開する意向。

(2)原子力政策・開発

〇 石油危機以降、再処理前提に原子力発電を大規模開発。2021年末時点で56基6,137万kW、総発電量の約7割シェア。EDFが建設・運転。90万kW級の約20基でプルサーマル実施中。

〇 2022年2月にマクロン大統領が発表した新エネルギー政策で減原子力を原子力回帰へ転換。2050年までに最大2,500万kWの新設計画、6基のEPR2(初号機2028年着工、35年運開目標)とオプション8基も検討。EDFのSMR「NUWARD」(PWR、17万kW×2モジュール)と廃棄物を抑える革新炉にそれぞれ5億ユーロ(約675億円)を投じ、2030年までに国内実証炉建設を目指す。新設運開前の安定供給のため、全既存炉の50年超運転の検討も指示。

(3)気候変動対策

① 政策目標の動向

〇 EUの温室効果ガス(GHG)排出削減目標(2050年:カーボンニュートラル、2030年:1990年比55%削減)を加盟国として共有し、具体的な方策はEUの包括的政策に基づき今後策定する予定。

〇 GHG削減目標: 2020年までに1990年比20%削減、2030年までに1990年比40%削減、2050年までにカーボンニュートラル達成。

〇 CO2排出量取引:2005年から欧州排出量取引(EU-ETS)を開始。

〇 CO2排出権下限価格制度については、政府は2016年10月に「EU全体で検討すべき問題」との見解を示し、国内での導入見送りを決定した。マクロン現大統領もこのスタンスを引き継ぎ、欧州大でのCO2排出権下限価格導入に向け、各国と交渉を行っている。

〇 2022年までに国内4カ所の石炭火力発電所を閉鎖する方針。2カ所は閉鎖済だが、残り2カ所のうち、Cordemais石炭火力発電所は安定供給確保のため運転を継続し、2024~2026年に閉鎖予定、Émile-Huchet石炭火力発電所はウクライナ危機、エネルギー価格高騰等の状況を鑑み2022/2023冬季に再稼働することとなった。

② 再エネ政策

〇 再生可能エネルギー開発目標:2020年までに最終エネルギー消費の23%、2030年までに33%(発電量ベースでは40%)に引き上げ。

〇 2020年4月発表の「エネルギー多年度計画」(PPE、2019~2023年および2024~2028年のエネルギー開発計画)における再エネ電源開発計画は、2023年に7,350万kW、2028年に1億100万~1億1,300万kW(2021年末時点で5,980万kW)。

〇 再エネ開発状況:2021年の発電比率は24%(水力含む)。

〇 再エネ奨励策:2000年「電力自由化法」で固定価格買取制度(FIT)を導入。家庭ゴミ、1.2万kW以下の再エネ、コージェネ電力が買取対象(風力は上限撤廃)。また洋上風力などには入札制も実施。

③ 水素・アンモニア政策

〇 2020年9月に「水素戦略」を発表。2030年までに650万kWの水電解装置導入を目指すとともに、水素産業を創出するために70億ユーロを投じる計画。

〇 2021年10月に発表された「France 2030」(産業競争力の強化と未来産業の創出に向けた新投資計画)では、2030年までに少なくとも2つの水素製造ギガファクトリーを設置し、グリーン水素製造のリーダーとなる目標を掲げる。

(4)電化

① 電化の進展状況

〇 一般家庭の電化率:暖房用12.6%、給湯用48.9%、調理用48.7%(2020年実績)

〇 2021年に販売された電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の台数は、前年比62%増の31万5,978台。2010年からの累計販売台数は78万6,274台。

〇 EV充電器の設置台数は、2022年4月に100万基を突破。

② 電化促進に向けた政策

〇 住居の断熱改修工事やEVへの買換えに対する補助金支給制度を実施。EV買換えへの最高支給額は、2022年末まで6,000ユーロ(約78万円)が適用。

〇 上述の「France 2030」において、2030年までにEV・ハイブリッド車の年間生産台数を200万台にする目標を掲げる。

(5)その他

① ウクライナ侵攻の影響

〇 2022年7月、ウクライナ侵攻による電力不足を回避するために、今後2年間で燃料、天然ガス、電力の消費量を10%削減(2019年比)することを目的とした「省エネ対策」が発表される。

② エネルギー価格高騰への対応

〇 2021年9月以降、エネルギー価格高騰への対策として、ガス規制料金の凍結と電力規制料金の値上げ抑制を実施。

〇 2022年7月、エネルギー価格高騰による影響の大きい企業に対する支援基準を発表。支援の内容は、2021年の電気・ガスの費用が売上高の3%以上を占め、かつ2022年3~5月または同年6~8月の電気・ガスの費用が前年同期比の2倍以上となった企業のうち、(1)EBITDAが前年同期比に比べて30%減少もしくはマイナスを計上した企業に対し、電気・ガス費用の30%を補填(上限200万ユーロ)、(2)EBITDAがマイナス、かつその絶対値が電気・ガス費用と同額~2倍である企業に対し、電気・ガス費用の50%を補填(上限は2,500万ユーロかつ損失額の80%以下)、(3)(1)または(2)の基準を満たし、かつ国際競争に晒される26の産業部門の企業に対し、電気・ガス費用の70%を補填(上限は5,000万ユーロ)。


※ 2022年8月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。
ページ先頭へ

ページトップへ