(2020年、石油換算100万トン) | ||||||||
石 炭 | 石 油 | ガ ス | 原子力 | 水 力 | その他 | 計 | 自給率 | |
国内生産 | 24.0 | 263.4 | 155.0 | 25.6 | 33.2 | 16.6 | 517.9 | 183% |
国内供給 | 9.2 | 92.0 | 112.6 | 25.6 | 33.2 | 11.1 | 283.7 |
(2019年、発電端) | ||||||
発電電力量 (10億kWh) | 構成比(%) | |||||
石 炭 | 石 油 | ガ ス | 原子力 | 水 力 | その他 | |
632.2 | 7 | 1 | 11 | 15 | 60 | 6 |
(2020年) | ||||||
年負荷率 | 熱効率 | 送配電 損失率 | CO2 | SO2 排出量 | NOX 排出量 | |
(%) | (%) | (%) | 原単位 (g/kWh) | 総排出量 (百万トン) | (g/kWh) | (g/kWh) |
N/A | N/A | 5.7 | 99.0 | 62.7 | 0.27 | 0.16 |
電気料金水準 (日本=100、2020年) | 停電時間 (分/年間、2016年) | |
産業用 | 家庭用 | |
52 | 47 | 4.75 |
電気事業者 |
州・公営(2017年時点の発電設備容量64%)、私営(同30%)、産業自家発(同6%)。 多くの州で州営電気事業者が発送配電一貫運営。1990年代からの事業再編に伴い、従来の大規模事業者は発送配電事業の分離を実施。 |
規 制 | 卸電力市場と小売電力市場は州政府の規制管轄。各州が独自の判断で自由化を推進。 |
卸電力自由化 | 3準州を除く10州のうち8州で実施。米国との間で電力輸出入を行っている隣接州の多くは、互恵的な観点から送電線の開放を実施。 |
小売自由化 | アルバータ州、オンタリオ州では全面自由化実施。ニューブランズウィック州、ケベック州、ブリティッシュ・コロンビア州では大口産業需要家のみを対象として自由化実施。 |
オンタリオ州の例 |
〇 アルバータ州:1996年電気事業法(EUA)により卸市場・パワープール創設。発電部門自由化、送電線開放、機能分離などの組織再編を実施。1998年に卸市場での競争の促進や小売市場自由化を規定した改正電気事業法(EUAA)を施行。2001年から全面自由化へ移行。2003年には独立系統運用者とパワープール運用者をアルバータ・システムオペレーター(AESO)に統合。
〇 オンタリオ州:1998年にエネルギー競争法制定。1999年に州営オンタリオ・ハイドロ社はオンタリオ発電会社とハイドロ・ワン社(送配電等、持株会社)へ分割し、独立電力市場運用機関(IMO)を設立。2002年から卸・小売市場の全面自由化を実施。2004年には電力再編法によりIMOはオンタリオ・システムオペレーター(IESO)と改称。
〇 原子力政策:連邦政府はエネルギーの多様化の一つ、サステーナブルなエネルギー源と位置付け。
〇 原子力発電比率約15%(2018年)。原子炉19基、約1,362万kW運転中(2018年)。ほとんどがオンタリオ州に集中(18基、約1,296万kW)。原子力発電量比率約14%(2021年)。
〇 既存大型炉改修:オンタリオ州で稼働中の18基のうち、ダーリントン原子力発電所全4基(各88万kW)とブルース原子力発電所全8基中6基(各77~82万kW)の合計10基で運転延長のため順次大型改修工事を実施中(2016年~2033年)。各基30~35年運転延長し、最後に改修する原子炉は2064年まで運転する計画。
〇 大型炉新設:オンタリオ、ニューブランズウィック、アルバータ3州の新・増設計画は、延期または現在失効中。
〇 小型炉新設:2018年11月に小型モジュール炉(SMR)可能性調査の「ロードマップ」、2020年12月に具体的な「SMR行動計画」を発表。①2028年までに系統接続地域におけるSMR展開、②2030年初頭に第4世代炉開発、③2026年までに系統未接続地域への電力供給、の3つの目標を掲げ、連邦政府、州政府、電力会社、国内外のベンダーが官民を挙げて開発を推進中。①に関し、2021年12月、ダーリントン原子力発電所のSMR建設プロジェクトにてGE日立ニュークリア・エナジー社の「BWRX-300」(30万kW)が選定された。
〇 放射性廃棄物処分:放射性廃棄物管理機構(NWMO)は、使用済燃料5万7,000tを地下約500mの地層へ処分するサイト選定に取り組み、現在オンタリオ州北部イグナス地区と同州南部サウスブルース地区で試験掘削を実施中。2024年にはこの2候補地からサイトを決定する計画。
① 気候目標の動向
〇 温室効果ガス削減目標: パリ協定により2030年までに2005年比30%削減を公約。その後、カナダ政府は2021年4月、米国主催の気候サミットにおいて2030年までに2005年比で40~45%削減すると目標の引き上げを発表。同7月、正式に国連に同目標を提出。
〇 2020年11月、2050年までに温室効果ガス排出ネットゼロを目標とすることを発表。2021年6月に「ネットゼロ・エミッション・アカウンタビリティ法」が成立し、「2030年40~45%削減」ならびに「2050年ネットゼロ」が法制化。
〇 連邦政府と州政府の間で取り組みに温度差あり。COP21・パリ協定を受け、連邦として炭素税未導入州に対して炭素税を2019年強制的に導入。州が訴訟を起こすケースも。
② 再エネ政策
〇 再エネ発電電力量(2020年):水力54%、水力以外の再エネ(主に風力)13%。太陽光も増加傾向。ノバスコシア州等で潮力発電の開発が進展。同州ファンディ湾の干満差は世界最大級。
〇 2030年までに石炭火力を段階的に廃止することを目指し、CO2排出基準を強化。2020年現在、石炭火力の発電電力量シェアは5.6%。
〇 再エネ導入目標:2030年までに発電電力の90%をゼロエミッション電源とする。2020年現在、水力・原子力を中心に76%がゼロエミッション電源、カナダ全体のGHG排出量に占める電力部門の割合は8.4%。
〇 再エネ導入支援策はこれまで州政府が主導してきたが、2050年ネットゼロの目標に向け、連邦政府の動きが活発化。カナダ政府は2021年6月、再エネ導入促進・送電網近代化のため、9.6億カナダドル(約816億円)を投資することを発表。
〇 州レベルでは、再エネ利用基準(RPS)制度をニューブランズウィック州とノバスコシア州で実施、FIT制度をオンタリオ州とノバスコシア州で実施。
③ 水素・アンモニア政策
〇 ・ 2020年12月、国家水素戦略を発表し、国内で年間2,000万tを超えるクリーン水素を製造し、水素製造国として世界のトップスリーに入ることを目指すとしている。
〇 2021年6月、国内で新車販売される乗用車と小型トラックを2035年までに100%ゼロエミッション車(ZEV)とすると発表(2040年からの前倒し)。2020年現在、カナダ全体のGHG排出量に占める運輸部門の割合は34%。
① ウクライナ侵攻の影響
〇 ウクライナ侵攻後、ロシアからの新規輸入を禁止した後、原油価格は急上昇し、2022年6月にはガソリンの1リットルあたりの平均価格が最高値(2.072カナダドル/ℓ)を記録しており、市民生活への影響が出ている。
〇 カナダの天然ガス価格は2022年6月に2.086カナダドル/ℓを記録。カナダ西部ではアルバータ州では、AECO 天然ガスのスポット価格が 2.75 カナダドル/ℓに上昇。
② エネルギー価格高騰への対応
〇 東部オンタリオ州規制局は2022年7月、卸ガス価格の上昇を受けて、Enbridge Gas Distributionのガス小売料金値上げを承認。同社は、天然ガス上昇コストを通常の 12カ月ではなく、24カ月の期間での転嫁する対応策を提案。需要家の年間支払い額は 21~29% 上昇見込み。